失業保険は誰でも受給できるわけではなく、クリアしなければいけない受給資格があります。
この記事では、受給の条件やあなたが「いつから・いくらもらえるのか」を解説していきます。
「失業保険って誰でもすぐもらえるんじゃないの?」と焦る前に、しっかりと受給資格をチェックしていきましょう。
Contents
失業保険は「一日でも早く就職するために」給付される
最初に、失業保険とはなんのために給付されるものなのかを知っておきましょう。
失業保険は、「失業された方が安定した生活を送りつつ、1日も早く就職していただくために給付するもの」です。
(厚生労働省HP「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」より)
働いて退職すれば必ず受けられるものではなく、一定の要件を満たした人だけが給付できる制度です。
失業保険の受給資格は大きく2つ
失業保険の受給資格は、以下の2つです。
- 雇用保険に加入していること
- ハローワークの定める「失業の状態」であること
一つずつ詳しくみていきましょう。
受給資格1.一定期間、雇用保険に加入していること
正確にいうと「失業保険」という保険はありませんが、一般的に「雇用保険に入っていた場合に受け取ることができる基本手当」のことを指します。
そのため、給付の対象になるのは「雇用保険の被保険者」で、失業保険をもらうためには雇用保険に一定期間加入していなければいけません。
失業保険を受け取ることができる雇用保険の加入期間は、離職理由が会社都合か自己都合かで変わります。
詳しい加入期間は「あなたはどれ?退職の理由で変わる受給資格者の種類」の項目でまとめて紹介します。
受給資格2.ハローワークが定める「失業の状態」であること
ハローワークが定める「失業の状態」とは、次の条件をすべて満たす場合のことをさします。
- 積極的に就職しようとする意思があること。
- いつでも就職できる能力(健康状態・環境など)があること。
- 積極的に仕事を探しているにもかかわらず、現在職業に就いていないこと。
(厚生労働省HP「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」より)
そのため、健康面などの問題からすぐに就職することが困難な人や、最初からするつもりがない人は受け取ることができません。
あなたはどれ?退職の理由で変わる受給資格者の種類
失業保険の受給資格の一つ「雇用保険に加入している」には、定められた期間加入していることが条件で、受給に必要な加入期間は離職理由で変わります。
仕事を辞めた離職者には、離職理由ごとに振り分けられる「種類」があり、その種類ごとに失業保険の総額や給付日数が定められています。
離職者の種類と、その人が失業保険を受給するために加入すべき期間をみていきましょう。
一般の離職者
スキルアップや希望職種への転職など、自分の都合で離職することを決めた自己都合で退職した人のことを「一般の離職者」といいます。
契約期間満了の際に自分の意志で更新しなかった場合や、定年退職もここに該当します。
一般の離職者は、失業保険を受け取るまでに2ヶ月の給付制限期間(※雇用保険を受給できない期間)が設けられます。
(令和2年10月1日以降、自己都合退職者は5年間のうち2回までに限り、給付制限期間が3ヶ月から2ヶ月に短縮されました。)
受給に必要な雇用保険の加入期間
- 離職の日以前の2年間に12ヶ月以上
特定受給資格者、特定理由離職者
「特定受給資格者」は会社の倒産による失業やリストラされたなど、会社都合で退職を余儀なくされた人のことをいいます。
また、「特定理由離職者」とは会社側から契約を更新されなかった、家族の転職や介護などでやむおえず退職した人のことです。
給付制限が無いほか、一般の離職者よりも給付日数が手厚くなっています。
受給に必要な雇用保険の加入期間
- 離職の日以前の1年間に6ヶ月以上
自分が特定理由離職者、特定受給資格者にあてはまるかは、「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要(ハローワークインターネットサービス)」を参考にしてみましょう。
失業保険の受給資格が「ない」とみなされる5つのケース
受給資格についてみてきましたが、ここからは反対に、失業保険の資格がないケースをみていきましょう。
ケース1.雇用保険の加入期間が足りない
「失業保険の受給資格は大きく2つ」でまとめた通り、失業保険をうけとるには雇用保険に一定期間加入している必要があります。
定められた期間雇用保険に加入していれば、正社員だけではなく、派遣やアルバイト・パートなどの雇用形態でも受給対象になります。
ただ、入っていても加入日数が足りていない場合は失業保険の受給資格はありません。
辞める前に、自分の退職の状態に当てはまる期間、雇用保険に加入できているのかを確認してみましょう。
ケース2.働く気がない・働けない
失業保険は、次の転職先が決まるまで経済面で不安がないようにするサポートの仕組みです。
「いつでも働ける状態で働く意欲がある人」のためのものなので、以下のような状態は「働く気がない」とみなされ失業保険の受給資格がありません。
- 結婚して家事に専念する
- 学業に専念する
- 定年後働く気がない
- 妊娠、出産、育児(3歳未満)や介護、病気やケガで物理的に働けない
(受給を延長できる場合もある)
ケース3.次の就職先が決まっている
失業保険は「就職するため」の給付なので、就職が決まっている場合は受け取れません。
就職先が決まっているを隠して失業保険を受給すると、不正受給となり給付金の返還や罰金を支払うことになる可能性もあります。
失業保険の受給中に再就職が決まったら失業保険の給付は打ち切られますが、「就業促進手当」という別の給付が受けられます。
関連記事:再就職手当をもらう条件と受給までの流れ|いつから、いくらもらえる?
ケース4.傷病手当金を受け取っている
「傷病手当金」とは、健康保険組合から給付される、在職中に病気やケガで十分な給与がもらえなかった際に受給できるものです。
これを受け取っている場合、失業保険は受け取れません。
そもそも、傷病手当金を受け取っているということは、失業保険の受給資格である「働ける状態」とはいえません。
ちなみに、雇用保険にも「傷病手当」というものがありますが、こちらは”失業中”にケガや病気で転職活動ができないときに受給できるもの。
法律により、健康保険の「傷病手当金」と雇用保険の「傷病手当」は併給できません。
ケース5.会社の取締役や役員、個人事業主
会社の取締役や役員などの経営者は、「労働者」ではないので雇用保険の被保険者に該当しません。
雇用保険に入れないということは、失業保険も受給できないということになります。
また、個人事業主も役員同様”経営者”という立場になるため、雇用保険への加入はできません。
ただし、経営層の役職に就きながらも従業員として働いている場合には、雇用の実態を確認できる書類等をハローワークに提出し認められることで加入できるようになります。
受給できる失業保険の金額・給付期間
給付額は、「基本手当日額×給付日数」で金額を計算します。
また、給付期間は退職の理由や雇用保険の被保険者期間によって決まります。
ここでは簡単に計算式や、給付日数の表などをみていきましょう。
くわしい計算方法や給付日数の算出方法を知りたい方は「失業保険、【いくらを、いつからもらえる?】金額と期間の計算方法」の記事に目を通してくださいね。
受給額の算出方法
給付額は、「基本手当日額(1日当たり貰える失業保険の額)×給付日数」で算出します。
基本手当日額は、以下の3ステップで計算します。
- 退職前6か月の賃金(社会保険と税金が引かれる前の額で、賞与は含まない)を合計する
- (1)の算出額を180で割り、賃金日額を出す
- (2)の算出額に給付率をかける
給付率は50〜80%(ただし60〜64歳の方は45〜80%)で、賃金日額と離職時の年齢によって異なり、賃金が低い人ほど高い給付率が設定されるようになっています。
給付日数の確認方法
給付日数は、一般の離職者か特定受給者なのか、離職したときの年齢、雇用保険に加入していた期間の3つで決まります。
一般離職者の場合
一般離職者の場合は以下の通りです。
離職時の年齢 | 被保険者の期間 | 給付日数 |
65歳未満 | 10年未満 | 90日 |
10年以上20年未満 | 120日 | |
20年以上 | 150日 | |
65歳以上 |
1年未満 | 30日 |
1年以上 | 50日 |
障害者など就職の困難な人の場合は以下の通りです。
離職時の年齢 | 被保険者の期間 | 給付日数 |
45歳未満 | 1年未満 | 150日 |
1年以上 | 150日 | |
45歳以上65歳未満 |
1年未満 | 300日 |
1年以上 | 360日 |
特定受給資格者及び一部の特定理由離職者の場合
特定受給資格者及び一部の特定理由離職者の場合は、離職時の年齢と被保険者であった期間ごとに給付日が異なります。
離職時の満年齢 | 被保険者であった期間 | ||||
1年未満 |
1年以上 5年未満 |
5年以上 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 | |
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | – |
30歳以上 35歳未満 |
120(90)日 | 180日 | 210日 | 240日 | |
35歳以上 45歳未満 |
150(90)日 | 180日 | 240日 | 270日 | |
45歳以上
60歳未満 |
180日 | 240日 | 270日 | 330日 | |
60歳以上
65歳未満 |
150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
「受給の期間がはっきりわからない」というかたは「退職コンシェルジュ」などの、退職サポートサービスがおすすめです。
退職コンシェルジュでは、「社会保険給付金サポート」というサービスがあり、給付金がいくらでいつまでもらえるのかを、無料でプロに相談できます。
受給額の上限・下限
賃金日当、基本手当日額には上限額と下限額があり、「毎月勤労統計」の平均定期給与額の増減により、金額はつど変更されます。
令和2年8月時点での賃金日額と基本手当日額の上限額と下限額は以下の通りです。
離職時の年齢 | 賃金日額の
上限額 |
賃金日額の
下限額 |
基本手当日額の
上限額 |
基本手当日額の
下限額 |
29歳以下 | 13,700円 | 6,850円 | 2,574円 | 2,059円 |
30~44歳 | 15,210円 | 7,605円 | ||
45~59歳 | 16,740円 | 8,370円 | ||
60~64歳 | 15,970円 | 7,186円 |
失業保険はいつからもらえる?手続きから受給までの流れ
離職から失業保険を受け取るまでの流れをまとめました。
- 「離職票」と「雇用保険被保険者証」とを勤務していた会社から受け取る
- ハローワークで求職申込をする
- 申請後に7日間の待機期間を過ごす
(一般離職者はこれに加えて2ヶ月間の給付制限がある) - 雇用保険受給説明会に参加し、「雇用保険受給資格者証」を受け取る
- 「認定日」にハローワークへ行き、失業認定を受ける
- 認定後からおおむね1週間前後で、手当が振り込まれる
この後は失業手当を受け取りつつ、「決められた回数の求職活動をする→決められた失業認定日にハローワークへ行く→失業状態と認定される」、給付期間中はこれを繰り返します。
失業保険を受け取り続けるには、転職先を探す活動つまり「求職活動」をしてハローワークに申告することで「転職活動中ではあるものの失業状態である」と認定してもらう必要があるのです。
最短1日!自宅でできる求職活動の作り方
失業保険の受給のために必須の「求職活動」ですが、実績を作るのはそんなに難しいことではありません。
一番簡単な方法はネットで転職サービスから求人に応募することです。
外に出ることなく、自宅で実績を作ることができるため、コロナ禍でも感染リスクを気にすることなく実績をつくることができます。
求職活動でこまったら、「ネットで求人に応募」と覚えておきましょう。
もちろん応募したら面接など断らずに受けるようにしましょう。途中で辞退した場合、実績として認められないケースもあります。
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失業保険の受給に関する注意点
失業保険を受給する際に気を付けたい注意点をみていきましょう。
注意点1.一度もらうと雇用保険の加入期間がリセットされる
失業保険は、受け取ることで雇用保険の加入期間が0に戻ります。
前職で10年、20年、それ以上の期間雇用保険に加入していたとしても、一度受給すると期間がリセットされ、転職先では加入日数が0日からスタートすることになります。
雇用保険の加入期間が長いほど失業保険の給付日数も長くなりますので、転職先がすぐに決まりそうな場合は、転職先での失業も考えて「受給しない」という選択肢も頭に入れておきましょう。
注意点2.受給中も健康保険・国民年金は支払う必要がある
仕事を辞めると、勤務先で加入していた健康保険・年金の支払いを自分で行う必要がでてきます。
失業保険の給付金から、健康保険や年金の支払うことも考えなければいけません。
「失業保険料だけで払える?」と不安な方もいるかもしれませんが、失業中には補助や減免制度があるので活用していきましょう。
補助・減免制度についての詳しい記事:失業保険、【いくらを、いつからもらえる?】金額と期間の計算方法「知っておきたい失業中の健康保険・年金の補助」
健康保険の支払い方は、大きく分けて以下の3つの方法があります。
失業後の健康保険の支払い方
- いま加入している健康保険を任意継続する(最長2年)
- 市区町村の国民健康保険に加入する
- 家族の扶養に入る
任意継続をする場合は、退職後20日以内に手続きする必要があるので注意してください。
失業後の年金の支払い方
- 厚生年金から国民年金に加入する
会社を辞めると厚生年金から国民年金に加入することになります。
お住いの自治体の役場・年金事務所で手続きをすることで、切り替えることができます。
国民年金の保険料は全国一律で、令和2年度は1万6,540円です。
離職中支払いが困難な場合は全額免除され、10年以内であれば後から納付することが可能です。
失業保険の受給資格に関するQ&A
失業保険の受給資格に関する、よくある疑問をまとめました。
Q1.受給に年齢制限はある?
65歳以上は雇用保険の新規加入の対象外でしたが、法改正で平成29年1⽉1⽇より雇用保険の対象になりました。
65歳以上の雇用保険に加入している人は「高年齢被保険者」といい、「高年齢求職給付金」というものが受給できます。
通常の失業保険は年金と同時の給付ができませんが、高年齢求職給付金は一括で支給される「一時金」という扱いのため年金との併給が可能です。
受給に必要な雇用保険の加入期間も6ヶ月以上と、基本手当よりも受給条件が緩和されています。
Q2.雇用保険受給資格者証をなくした。どうしたらいい?
雇用保険受給資格者証とは、失業手当(基本手当)を受け取る資格があることを証明するための書類で、ハローワークで「失業の認定」をされる際に必要になります。
通常、雇用保険説明会後にハローワークからもらいます。
なくしてしまったら再発行するしか方法はなく、管轄のハローワークの窓口で無くしたことを伝え、身分証明書などを提示し申請を行いましょう。
ハローワークによっては郵送などでも対応していますので、活用してください。
再発行できるとはいえ雇用保険受給資格者証は失業保険を受け取るのに重要な書類ですので、無くさないように心がけましょう。
Q3.受給中にアルバイトをしたら資格を失う?
受給中でも、アルバイトはできます。
しかし、アルバイトの労働時間や賃金額によっては、給付額を減らされたり給付が先延ばしになったりします。
また、アルバイトが継続的に行われていると判断されてしまうと「就職した」とみなされ、給付ができなくなる可能性もあります。
アルバイトと失業保険についての詳しい記事:アルバイトと失業保険の基礎知識|受給の条件・申告の方法
Q4.被扶養者は失業保険を受給できない?
結論から言うと、受給はできません。
なぜなら、失業保険は働く気がある人をサポートするシステムなので、扶養に入っているということは働く気がないとみなされるためです。
また、失業保険は収入になりますので、被扶養者になるための「年間の収入が130万未満(日額3612円)である」という認定条件から外れてしまう可能性もあります。
ただ、扶養に認定される要件をみたしているのであれば、失業保険の申請手続きをした後の「雇用保険の給付が始まるまでの期間(給付制限期間)」に限り被扶養者になることができます。
もちろん失業保険の受給が始まったら、扶養から外れなければいけません。
まとめ
- 失業保険の受給資格は、「雇用保険に一定期間加入していること」「失業状態であること」の2つ
- 働く意欲があり、いつでも働ける状態の人の転職を支援するための給付金なので、働けない人や次の就職先が決まっている人はもらえない
- 雇用保険は労働者のみ加入できるので、役員などの経営層は入ることができない
- 失業保険は一度もらうと被保険者期間がリセットされ、次の職場で0日からのスタートになる