公共職業訓練は、失業保険を受給している人を対象にした制度です。
無料で受講が可能で、手当てをもらいながら、就職に向けてのスキルや資格を取得できます。
また条件が合えば、失業保険の延長も可能です。
この記事では、公共職業訓練の受講方法や、失業保険との関係について、元受講者の佐々木尚志さんとともに解説を行います。
取材コメント協力

佐々木尚志
佐々木尚志
Profile
ライター・ブロガー。前職は飲食店にて勤務。職業訓練校では、HTML・CSSを習得。パソコンをほとんど触ったこともなく、ファイルの保存方法もわからない程の未経験者だったが、職業訓練の制度を利用。現在はWordpressを利用したライティング業務などを実践中。
Contents
就職に役立つスキルを無料で学べる「公共職業訓練」
公共職業訓練は、国や地方自治体が一定の条件を満たした求職者に対し、基本無料で受講可能な、就職に役立つスキルや資格習得を提供する制度です。
求職者以外でも、就職をしている在職者がスキルアップのため受講するのも可能ですが、その場合は有料になります。
公共職業訓練を受講する際は、ハローワークで申し込みを行い、書類選考や試験を合格すると受講可能です。
関連記事:副業に活かせる資格とは?スキルアップ・収入アップに役立つおすすめの資格12選
【雇用保険の受給者】は公共職業訓練を受けられる
公共職業訓練は、基本的に無料で受講可能です。
公共職業訓練の受講期間は2ヶ月から2年程度と、受講するコースによって異なります。
ただ無条件に公共職業訓練を受講可能なわけではなく、雇用保険の受給者であり、求職中である必要があります。
また、受講する資格に応じた試験があり、試験に合格すると、公共職業訓練が受講可能です。
応募できるのは以下の条件の両方に該当する方です。
公共職業訓練に応募できる人
- ハローワーク(公共職業安定所)に求職の申込みをし、公共職業安定所長の受講指示又は 受講推薦が得られる方で、訓練開始日に就職していない方
- 訓練開始日前の1年以内に次の訓練を受講していない方「公共職業訓練」又は求職者支援制度の「実践コース」
参考文献:委託訓練-求職者(離転職者)向けの職業訓練
公共職業訓練を受講するには、訓練開始日までに離職してないといけません。
公共職業訓練を受けられない5つのパターン
公共職業訓練は無条件では受講できません。
以下に合致する人は、公共職業訓練を受講できません。公共職業訓練を受講できない場合は以下のような条件に当てはまる人です。
公共職業訓練を受講できない人
- 雇用保険の受給者ではない
- 雇用保険受給日数の残数が条件を満たしていない
- 過去1年で退校処分を受けた
- 過去に公共職業訓練を受講し、受講終了から1年未満
また上記に該当しない人でも、書類選考や試験に不合格になった場合、公共職業訓練は受講できないので注意しましょう。
公共職業訓練のコースは人気の「Web系」から「美容系」まで種類が豊富
公共職業訓練の種類は多岐に渡ります。
公共職業訓練で受講可能なコースは、ハローワークのインターネットサービスから検索でき、事務系から美容系まで、幅広く受講可能です。
募集時期により受講可能なコースは変わりますが、基本的に受講可能なコースの例を挙げていきましょう。
受講可能なコース一覧 | |
パソコン系(エクセル、ワード、webデザイン、プログラミング等) 事務系 デザイン系 機械系(電気、電子など) 建築、土木(ビルメンテナンスも含む) 医療 保育や介護 美容系 |
このほかにも、ファイナンシャルプランナーや、ネイリスト、保育士といった多くのコースがあります。
在職者も受講できるので、自分の目指す将来に向けて職業訓練を受けられます。
公共職業訓練を受けるメリットは4つ
公共職業訓練を受けるメリットは大きく分けて4つあります。
メリット1.基本的に受講料が無料
公共職業訓練は、失業者は基本的に無料で受講可能です。
ただし在職者や学校を卒業してからすぐに受講する場合など、失業者以外の方は有料です。
また一部テキスト代が有料な場合もあるので、すべてが無料ではない点は注意しましょう。
メリット2.失業保険の受給日が通常よりも早い
公共職業訓練を受講すると、失業保険の受給開始日が短縮され、受講を開始した段階で保険の受給可能になります。
通常、失業保険の受給開始日は、自己都合か会社都合かの離職理由により異なりますが、この制限がなくなるメリットがあります。
失業保険の受給開始日 |
・会社都合の退職の場合:離職理由に関わらず1週間の待機期間が必要
・自己都合退職の場合:3ヶ月間の制限期間後に受給可能 ▶︎公共職業訓練を受講すると、受講を開始した段階で保険の受給可能に |
メリット3.失業保険の延長制度がある
公共職業訓練を受講する場合、失業保険の給付延長が認められます。
通常、失業保険の給付日数は離職理由によって異なり、最低30日から90日が支給されます。
離職理由 | 給付日数 | 給付制限 |
---|---|---|
会社都合(倒産・解雇など) | 90日~330日 | 7日(待期) |
有期雇用で本人の更新希望が叶わなかった | 90日~330日 | 7日(待期) |
正当な理由(病気・ケガ・妊娠・看病など) | 90日~150日 | 7日(待期) |
自己都合・懲戒解雇など | 90日~150日 | 7日(待期)+3カ月 |
定年退職 | 90日~150日 | 7日(待期) |
65歳以上で退職(高年齢求職者給付金) | 30日又は50日 | 5日(又は+3カ月) |
しかし、公共職業訓練を受けているあいだは失業保険が給付されます。
ただし、給付期間の残りが1/3以下の人は、公共職業訓練に申し込めないので注意が必要です。
メリット4.失業保険以外の受講手当と交通費がもらえる
公共職業訓練を受講すると、失業保険以外にも受講手当が支給されます。
受講手当は月額10万円で、別途交通費も所定の金額支給されます。
また寄宿手当も月額10,700円支給されるので、大きな支援を受けながらスキルや資格の取得が可能です。
【支給される金額】
●職業訓練受講手当:月額10万円●通所手当 :職業訓練実施機関までの通所経路に応じた所定の額(上限額あり)
●寄宿手当:月額10,700円
公共職業訓練の試験を受ける方法は4STEP
公共職業訓練を受講するためには、まずは試験を受ける必要があります。
試験を受けるための方法を4ステップで解説していきますので、参考にしてください。
STEP1.ハローワークの職業相談で訓練の必要があるかどうかの確認を受ける
まずはハローワークで職業相談と求職申し込みを行います。
このときにハローワークで相談を行い、あなたが訓練を受ける必要があるかのチェックがされます。
公共職業訓練が必要と認められ、かつ、職業訓練を受けるために必要な能力などを有すると判断された方に対して、受講が認められます(参考)。
STEP2.公共職業訓練の希望資格に申し込む
受講の認定を受けたあとは、希望資格に申し込みます。
希望コースがある場合には、早めに申し込んでおくほうが慌てずにすむでしょう。
また現在在職中の場合でも、離職日をあらかじめ伝えておけば、事前に申し込みが可能です。
ただし講座開始前の2週間前には離職をする必要があります。
またハローワークからもらう求職申込書に記入して、ハローワークでの各種サービスを受けるための登録カード「ハローワークカード」をもらっておきましょう。
STEP3.面接・試験を受けて合否判定を待つ
受験する資格が決まったら、その資格の面接や試験を受験します。面接の際は、スーツで臨む方が無難です。
面接では志望動機や志望理由が聞かれるので、明確に答えられるように準備をしておきましょう。
試験には筆記試験がある場合もあります。事前に、受講する資格に関する知識も入れておいた方がいいでしょう。
受験後、合否判定が出るまで待ち、合格したら受講の準備を行います。
STEP4.合格したら必ずハローワークで受講指示を受ける
試験に合格後、受講前日までに必ず合格通知を持ち、ハローワークに行きましょう。
受講の手続きと指示をもらい、受講開始を待ちます。
公共職業訓練を受けるコツは3つ
公共職業訓練は、給付金をもらいながら資格やスキルを持てるありがたい制度です。
しかし公共職業訓練は、無条件で誰でも申し込めるわけではありません。
ここでは公共職業訓練を受けるためのコツを3つ解説します。
コツ1.公共職業訓練の試験合格には失業保険の給付期間が長いと有利
公共職業訓練の試験は、自己都合の離職の場合、失業保険の給付期間が3分の1以上残っていることが条件です。
会社都合の場合には、条件がまた異なります。
公共職業訓練の試験は、失業給付金の給付期間が長いほど、プラスに働きます。
離職後次のステップに早く進みたい場合には、すぐに申請して試験の合格率をあげる方がいいでしょう。
コツ2.公共職業訓練を受けるべき客観的な理由があるとよい
公共職業訓練を受講するには、ハローワークからの受講指示が必要です。
ハローワークでの相談時や面接の際は、就職支援が必要な客観的な理由を自分で説明可能なように、準備しておきましょう。
公共職業訓練の選考基準として「現在有する技能、知識、適性等の状況から判断して職業訓練が必要」とみなされる必要があります。
コツ3.公共職業訓練の申し込みに合わせて離職日を調整する
公共職業訓練の申し込みは、基本的に受講開始の約2ヶ月〜3ヶ月前から開始されます。
自己都合退職で、公共職業訓練の希望のコースがある場合には、コースの受講に合わせて離職日の調整も重要です。
離職日を調整すると給付日数が多くなり、試験に有利に働くほか、離職からタイムラグがなくスムーズに受講ができます。
公共職業訓練を受けるデメリットは3つ
メリットの多い公共職業訓練ですが、デメリットももちろんあります。
ここでは公共職業訓練を受講するデメリットについて、解説を行なっていきましょう。
デメリット1.倍率が高い講座は試験に落ちる可能性がある
公共職業訓練で受講可能なコースは先述したように、多岐に渡ります。
多くのコースがありますが、人気のあるコースは希望する受講者も多く、倍率は高めです。
人気のあるコースで試験を受けると、試験に落ちる場合もありますので、注意しましょう。
また人気のあるコースもあれば、定員割れのコースもあります。
過去の募集結果を見れば、人気のあるコースと定員割れのコースがわかりますので、リサーチしておくといいでしょう。
現状としては、web動画クリエイターや簿記などに人気が集まっているようです。
デメリット2.公共職業訓練の【欠席・遅刻・早退】は基本NG
公共職業訓練は、まじめに受講しないと不支給、退校の処分になるので注意が必要です。
欠席の場合「やむを得ない理由」「病気や負傷」といった、明確な理由がなければなりません。
「やむを得ない理由」で欠席する際も、証明書がないと認められず、また認められたとしても、支給単位期間ごとに8割以上の出席率が必要です。
不正や退校処分が命じられた場合、給付金の返還命令も出されますので、まじめに取り組むのが絶対条件になります。
デメリット3.講座の受講と求職活動を並行して行わなければならない
公共職業訓練を受講する際は、求職活動も並行して行う必要があります。
講座は基本的に平日の9時から17時まであり、原則として欠席不可です。
ハローワークの斡旋(あっせん)以外でも、自分で求職活動を行う必要があるので、スケジュール調整をしっかりと行わなければなりません。
また受講と求職活動を同時に行うため、ある程度の覚悟を持って、公共職業訓練を受講しましょう。

元受講者
佐々木さん
公共職業訓練の卒業生を優先して採用している会社も少なくないので、そのような会社は比較的入社しやすいです。
しかし職業訓練をあまり知らない会社などもあるので、職業訓練で学んだことをポートフォリオにして、実力を示しましょう。
公共職業訓練の講座を受講する際の注意点は3つ
公共職業訓練の講座を受講する際、注意点があります。
以下に受講の際の注意点を3つ解説していきますので、確認して講座を受講していきましょう。
注意点1.公共職業訓練中は自分で行う失業保険の支給手続きは不要
公共職業訓練中は、失業保険受給中の義務である月1回の失業認定を受けに行く必要がありません。
行かなくてもハローワークが支給手続きを代行してくれますので、受講を欠席して認定を受けに行かないようにしてください。
注意点2.自分に合わない公共職業訓練の資格やコースを選ばない
公共職業訓練のコースを「とりあえず」で決めるのは危険です。
なぜなら途中で辞めてしまうと、給付金の返還などの罰則もあるからです。
事前のリサーチと、ハローワーク担当者との相談や打ち合わせを行い、コースの選択を行いましょう。

元受講者
佐々木さん
説明会なども随時開催されている為、興味のある分野は参加することをオススメします。
注意点3.長期間の講座は開始時期が限定される
公共職業訓練の講座は、コースによって開始時期が異なります。
とくに長期間の講座は開始時期が限定されていますので、あらかじめ開始時期や募集時期を調べておく方がいいでしょう。
募集時期を調べておらず、いざ申し込もうとした際、「募集が終わっていた」や「次回募集まで期間が長い」といった結果にならないようにする点が重要です。
雇用保険の受給がない求職者は【求職者支援訓練】がおすすめ
雇用保険の受給がなく、公共職業訓練を受講できない人には「求職者支援訓練」がオススメです。
職業訓練の種類 |
公共職業訓練:失業保険を受給している人が対象
求職者支援訓練:失業保険を受給していない人が対象 |
求職者支援訓練は、国や地方が行う制度ではなく、民間(NPO法人、専門学校、企業)などが行う訓練になります。
一定の要件を満たせば無料で受講でき、手当として月額10万円も支給されます。
受講期間は3ヶ月から6ヶ月。訓練施設に通う際の交通費も所定金額支給されます。受講を希望する場合は、ハローワークで申し込みが可能です。
雇用保険受給者でなく、職業訓練を受講したい場合には、求職者支援訓練を視野に入れていきましょう。

元受講者
佐々木さん
失業保険を受給しながらでも受講する事は可能ですが、その際の失業保険の延長は無いので注意が必要です。
また、手当の月額10万円は規則が少し厳しく必要書類も雇用保険より多く必要になってきます。
そのため、民間企業のコースに申し込む際は事前にハローワークで給付してもらえるかの確認を必ずしておいた方がよいです。
雇用保険の受給がない求職者が【求職者支援訓練】の試験を受ける方法5STEP
求職者支援訓練も、公共職業訓練同様に試験があります。
試験を受けるためのステップは以下の5ステップです。
- STEP1 ハローワークに行き、求職者支援制度の説明を聞き、職業相談を受けながら、希望の訓練コースを選択する。
- STEP2 受講申し込み書を受け取り、受講を申し込む。この時給付金の事前審査を申請する。ハローワークで受付印をもらい、受講申込書を訓練機関に提出。
- STEP3 訓練期間による選考試験(面接、筆記)があるため、それを受験する。
- STEP4 合格した場合、受講前日までにハローワークに行く。
- STEP5「就職支援計画」を作成してもらえるため、それをもとに職業訓練を受ける。
上述の5ステップが、求職者支援訓練を受講するまでの流れです。
訓練受講中や、訓練終了後の3ヶ月間は、原則として月1回はハローワークにいかなければなりません。
定期的に職業相談を行い、給付金の支給申請もこの時に行う必要があります
まとめ
- 公共職業訓練は雇用保険の受給があり、求職者が対象である。
- 公共職業訓練は試験に合格すると受けられるが、失業保険の給付日数が3分の1以下だと試験が受けられない。
- 公共職業訓練は基本的に受講料が無料。

元受講者
佐々木さん
再就職してすぐに即戦力になれる技術までは身につきません。
しかし、基礎の部分を徹底的に学べるため、未経験で再就職した場合、訓練を受けたのと受けてないのでは仕事を覚える際に差が生まれるので、新たな分野にチャレンジしてみようと思っている人は是非受けてみてくださいね。
元受講者
佐々木さん
筆記試験は義務教育の範囲なので簡単ですが、面接などでコースに対してのやる気や意欲を見られます。
面接官に意思を伝えられなければ受講人数が満ちてなくても落ちてしまう事もあります。