失業保険を受給中なら、知っておきたいのが「再就職手当」です。
再就職手当とは一定の条件を満たすことで受け取れるまとまった額の手当で、早く再就職すればするほど金額がアップします。
再就職手当の給付の条件や、申し込み期日・受給できる額の計算方法などをまとめました。
Contents
再就職手当とは「失業保険を受給中の人に少しでも早く再就職をしてもらう」ための制度
再就職手当は、失業保険の受給中に早期に再就職した場合受け取れる手当です。
再就職手当の支給の目的は、離職者をできるだけ早く、かつ安定した職業に再就職させるためにあります。
雇用保険に加入していると、失業した場合に雇用保険の失業手当(いわゆる失業保険)が支給されます。
失業保険は再就職を目指す人をサポートするための手当てのため「失業保険をもらっている間は就職しなくても大丈夫」と判断してしまうケースもあり、結果失業期間が長くなることで転職が難しくなり、生活費に困窮してしまうことがあります。
そういった事態を防ぎ、早期に再就職をしてもらうために作られたのがこの「再就職手当」です。
再就職手当を受給するための条件8つ
早く再就職すればだれでも受給できるといいうわけではありません。
再就職手当の受給には、以下の8つの要件をすべて満たす必要があります。
1.就職日の前日までの失業の認定を受けた後の基本手当の支給残日数が、所定給付日数の3分の1以上あること
2.1年を超えて勤務することが確実であると認められること
3.待期満了後の就職であること
4.離職理由による給付制限を受けた場合は、待期満了後1か月間については、ハローワークまたは許可・届け出のある職業紹介事業者の紹介により就職したものであること
5.離職前の事業主に再び雇用されたものでないこと(資本・資金・人事・取引等の状況からみて、離職前の事業主と密接な関係にある事業主も含みます。)
6.就職日前3年以内の就職について、再就職手当または常用就職支度手当の支給を受けていないこと
7.受給資格決定(求職申し込み)前から採用が内定していた事業主に雇用されたものでないこと
8.原則、雇用保険の被保険者資格を取得する要件を満たす条件での雇用であること厚生労働省HP「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」Q37
一つずつ詳しくみていきましょう。
1.就職日の前日までの失業の認定を受けた後の基本手当の支給残日数が、所定給付日数の3分の1以上あること
失業保険の所定給付日数のうち、3分の1以上が残っている状態で再就職しなければいけません。
たとえば、所定給付日数が90日の場合、30日以上残した状態で再就職すれば対象となります。
給付日数として数えられるのは就職日の前日までですので注意しましょう。
2.1年を超えて勤務することが確実であると認められること
ただ再就職しても、長く安定して働く状態でないと再就職手当は受け取れません。
そのため、1年以内の有期雇用契約や、次の契約更新が見込めない状態での派遣就業などは対象となりません。
(契約更新の見込みが確定であると判断されれば対象になります。)
3.待期満了後の就職であること
失業保険の手続き後は、7日間の待期期間が設けられています。
この待期期間後に就職が決まった場合にのみ、再就職手当を受け取ることができます。
待期期間中のほか、失業保険申請前に再就職が決まったとしても対象外となります。
4.離職理由による給付制限を受けた場合は、待期満了後1か月間については、ハローワークまたは許可・届け出のある職業紹介事業者の紹介により就職したものであること
自分の都合で退職した「自己都合退職」の場合などは、7日間の待期期間後にさらに2ヶ月(または3ヶ月)の給付制限期間があります。
この期間の最初の1ヶ月間に限っては、ハローワークまたは許可・届け出のある職業紹介事業者の紹介での再就職のみが再就職手当の対象です。
(画像出典:ハローワークインターネットサービス「再就職手当のご案内」)
職業紹介事業者とは「リクルートエージェント」など、厚生労働省の認可を受けハローワークに届け出がある事業者を指しており、許可や届け出のない事業者からの紹介では対象外になります。
5.離職前の事業主に再び雇用されたものでないこと
再就職先が退職した前の会社だった場合は再就職手当の対象外となります。
前の会社だけではなく、「関連する」と言える関連企業や子会社への再就職でも対象外です。
また、密接な関わり合いのある取引先などへの再就職でも受け取ることができません。
6.就職日前3年以内の就職について、再就職手当または常用就職支度手当の支給を受けていないこと
「常用就職支度手当」も、再就職手当と同じで離職者が再就職したときに受給できる手当の一つです。
これらを過去3年以内に受け取ったことがある場合は、再就職手当は受給できません。
7.受給資格決定(求職申し込み)前から採用が内定していた事業主に雇用されたものでないこと
再就職手当は雇用保険の手当の一つで、失業保険の申請をし失業状態であるとみなされた後でなければ受け取ることができません。
そのため、ハローワークへの失業申請の前に再就職が決まっていた場合は対象外となります。
再就職先が決まっているのを隠して失業保険や再就職手当を受けとることは不正受給にあたり、給付金の返還や高額な罰金を課される可能性もあります。
8.原則、雇用保険の被保険者資格を取得する要件を満たす条件での雇用であること
再就職手当を受け取るには、再就職先での雇用契約が「雇用保険の加入対象になる」形での就業でなければいけません。
雇用保険の加入対象になる就業形態
- 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
- 31日以上の雇用見込みがあること
また、個人で事業を始めた場合は雇用保険の対象外となりますので、この条件に当てはまらなくても問題ありません。
再就職手当は失業保険より得?再就職手当を受給するメリット4つ
再就職手当を受け取るのと失業保険を最後まで受け取るのでは、どちらがより自分のためになるのでしょうか。
それぞれ個人の置かれている立場や状況によって違いはありますが、再就職手当は受給することには多くのメリットがあります。
ここでは再就職手当を受給するメリットをみていきましょう。
メリット1.失業保険を受給した日数が短いほど再就職手当が多く受け取れる
再就職手当をいくら受給できるのかは失業保険の残日数によって決まり、早く再就職すればするほどより多くの額が支給される仕組みになっています。
そのため、再就職手当をより多く受給したいのであれば、失業保険をギリギリまで受け取るよりも早く再就職を目指す方が良いということです。
詳しい金額の算出方法は「再就職手当の計算方法」で解説していきます。
メリット2.再就職先の給与に+αで受け取れる
失業保険は「働ける状態なのに就職先が見つからない人のためのサポート」なので、就職先が見つかると受給が停止されます。
再就職手当は、再就職できたときに受け取れるものなので、再就職先での給与にプラスして手当が受け取れるということになります。
ある程度まとまった額にはなりますが、失業保険と同様「非課税」の所得ですので、税金を引かれることもないうえ確定申告の必要もありません。
長期的にみると、失業保険をもらい続けるよりも多く収入を得ることができるでしょう。
メリット3.再就職先を退職しても条件を満たせば再度失業保険がもらえる
失業保険の受給期間は最長で1年間(所定給付日数330日の方は1年と30日、360日の方は1年と60日)です。
この期間内に再就職し再び失業した場合は、再就職手当を受給した後でも再度失業保険を受け取ることができます。
また、再就職手当申請中に退職した場合も同様で、すぐにハローワークへ連絡することで残っている失業保険の受け取りが可能です。
退職したら、「雇用保険受給資格者証」と「再就職先の会社を離職したことを証明する書類」をできるだけ早めにハローワークに提出に行きましょう。
メリット4.再就職手当を受け取ってから退職しても返金の必要はない
再就職手当の支給後に辞めてしまったとしても、手当を返還する義務はありません。
ハローワークなどから返金を要求されることもないです。
失業保険を再度受け取ることができる可能性もあるので、失業した場合は早めにハローワークに申請しましょう。
こんな場合でも対象内!実は再就職手当が受給できるケース4つ
「自分のケースは再就職手当の対象じゃないかも」と不安に思っている方も多いはず。
ここでは、実は再就職手当の対象になるケースを紹介していきます。
受給できるケース1.再就職先がアルバイトの場合
アルバイトやパートであっても、先ほど紹介した8つの条件を満たしていればもちろん受給の対象になります。
アルバイトの再就職で注意しておきたいのは「雇用保険の加入対象になる雇用契約か」と「雇用期間はどうなるか」の2点です。
アルバイトは正社員と違い時間が不規則であるため、雇用保険の対象外になるほど短い勤務時間になってしまったり、1年以上の雇用が見込めない契約であったりすると再就職手当の対象外となります。
雇用の時間・期間の基準になるのは雇用契約書ですので、再就職手当の対象なのかは契約書の内容を確認しましょう。
受給できるケース2.再就職先がハローワーク以外での紹介の場合
自己都合退職に限り「給付制限期間の最初の1ヶ月間はハローワークまたは許可・届け出のある職業紹介事業者の紹介での再就職のみ対象」です。
逆に言えば、会社都合退職の方や、自己都合退職の方でも最初の1ヶ月を過ぎればどこからの紹介でも対象になるということです。
たとえば、知人の紹介や新聞広告での応募なども対象になります。
業種や勤務地によってはハローワークだけでは良い求人に巡り合えないことも多いので、「リクルートエージェント」など職業紹介事業者へ登録し、効率的に転職活動を進めていきましょう。
受給できるケース3.申請期限の1ヶ月を過ぎてしまった場合
再就職手当の申請期限は、就業日の翌日から1ヶ月以内です。
「申請期限を過ぎてしまった」という方でも、2年以内であれば申請が可能です。
(画像出典:厚生労働省HP「申請期限が過ぎたことにより給付を受けられなかった方へ」)
ただし、期限以降の申請は給付が通常より大幅に遅れたり、他の給付金を返金しなければいけない可能性もあるので、管轄のハローワークに問い合わせてみましょう。
受給できるケース4.自分で事業をはじめて個人事業主になった場合
会社に再就職ではなく、自営を開始した場合も再就職手当を受け取ることができます。
待期期間の7日を過ぎて(自己都合退職の方は待機後1ヶ月過ぎて)から事業を開始することで再就職手当の対象になります。
事業を始めた日になるのは「開業届」を提出した日ですので、待期期間など対象外になる期間に開業届を出してしまうと再就職手当はもらえません。
自営業をすると決めたら開業届を出す前にハローワークに申告し、必要な手続きや書類を確認してから動くようにすれば安心です。
いくらもらえる?再就職手当の計算方法
自分はいくらくらいもらえるのか、再就職手当の計算方法をみていきましょう。
再就職手当の金額は、失業保険で受給している「基本手当日額(上限あり)」と、何日残して再就職手当したかの「残日数」、そして「給付率」を使って算出します。
再就職手当の給付率
失業保険の全体の給付日数のうち、どれくらい残って再就職したかによって給付率が変わってきます。
- 支給残日数が3分の2以上の場合:給付率70%
- 支給残日数が3分の1以上の場合:給付率60%
給付率の目安は以下の通りです。
所定給付日数 | 給付日数の残数 | |
3分の2以上
(給付率70%) |
3分の1以上
(給付率60%) |
|
90日 | 60日以上 | 30日以上 |
120日 | 80日以上 | 40日以上 |
150日 | 100日以上 | 50日以上 |
180日 | 120日以上 | 60日以上 |
210日 | 140日以上 | 70日以上 |
240日 | 160日以上 | 80日以上 |
270日 | 180日以上 | 90日以上 |
300日 | 200日以上 | 100日以上 |
330日 | 220日以上 | 110日以上 |
360日 | 240日以上 | 120日以上 |
再就職手当の計算方法
該当する給付率を調べたら、次は計算式にあてはめていくらなのかを計算してみましょう。
再就職手当の計算式
- 支給残日数×基本手当日額(上限あり)×給付率
給付率や計算式をみてもわかる通り、多く再就職手当をもらうには、1日でも多く残日数を残した状態で再就職するべきと言えます。
早期の再就職を目指すにはより効率的に転職活動を進めることが重要ですので、ハローワークだけではなく、転職エージェントの利用も検討してみましょう。
どこに登録すべきかまよったら、まずは業界最大手で求人数も豊富なリクルートエージェントに登録するのがおすすめです。
▼編集部おすすめの転職エージェントを知りたい方へ【転職アドバイザーおすすめの転職エージェント18社を徹底比較】
再就職手当はいつもらえる?申請から受給までの流れ4STEP
再就職手当の、申請から受給までの流れをまとめました。
STEP1.採用証明書を再就職先に記入してもらう
採用証明書は、失業保険の初回講習のときなどに受け取る「受給資格者のしおり」の中にあります。
見当たらない場合は、管轄のハローワークでもらえたり、ハローワークのインターネットサービスからダウンロードすることも可能です。
採用証明書は原則事業主が書くことになっているので、再就職先に記入を依頼しましょう。
「支給番号」のみは本人しか知らないので自分で記入します。
STEP2.採用証明書と必要書類をハローワークに提出する
次に、採用証明書とともに以下2点の必要書類をハローワークに提出します。
1.雇用保険受給資格者証
2.失業認定報告書(求職活動などを記入する用紙)
この手続きで再就職したことがハローワークに認められ、まずは失業保険の給付が停止されます。
STEP3.再就職手当支給申請書を記入しハローワークに提出する
「再就職手当支給申請書」は、失業保険の停止申請をした後に入手できます。
事業主に書いてもらう欄もありますが、内容が分かるのであれば本人が書いても問題ありません。
また、再就職先にこういった書類を書いてくれる部署があるのであれば任せてもOKです。
業務の内容などによっては、タイムカードや出勤簿の写しなど「きちんと働いている」証拠書類の提出を求められる可能性もあります。
STEP4.審査が行われ「およそ1~2ヶ月後」に支給される
再就職手当は申請してすぐ受給できるわけではなく、本当に条件全てを満たしているのかハローワークが審査します。
審査が通れば「就業促進手当支給決定通知書」が届きその後1週間程度で支給されますが、認められなかった場合は不支給の通知がきます。
1件1件審査を行うため、支給までは最低でも1ヶ月以上はかかると思っておきましょう。
審査の状況は個人情報の観点から電話での問い合わせはできず、どうしても気になるときは直接ハローワークに出向く必要があります。
失業保険の再就職手当に関するQ&A
失業保険と再就職手当に関する疑問をまとめました。
Q1.失業保険を受給していないと再就職手当はもらえない?
雇用保険に加入していたとしても、条件にあったように失業保険の申請前に再就職手当を申請することはできません。
そのため質表保険を受給していないと、再就職手当も受給できません。
再就職手当の他にも「就業手当」や「就業促進定着手当」などがありますが、各手当すべて失業保険を受給することで受け取れます。
Q2.再就職手当の審査時に「在籍確認」があるって本当?
絶対ではないようですが、在籍確認が「ある」ケースもあります。
在籍確認とは、手当の申請者が実際にその事業所で働いているのかどうかを、申請後1~3ヶ月の間にハローワークから事業所に確認することです。
在職確認までに退職していると再就職手当は受給できませんが、条件を満たせば失業保険を再度もらえる可能性があります。
Q3.再就職手当をより多くもらうためにはどうすべき?
所定の期間になるべく早く再就職先を見つけるのが望ましいです。
早く再就職を見つけるためだけでなく、自分の満足のいく形で再就職するには、ハローワークだけで求人を探すのではなく転職エージェントなどの転職サービスにも登録して、効率的に多くの求人に出合うことが大切です。
\多くの求人を見て条件に合う就職先を見つけたいなら/
まとめ
- 再就職手当とは「失業保険を受給している人に、早期の再就職をうながす」ための制度
- 失業保険の残日数が多ければ多いほど、もらえる金額も多い
- 再就職手当をより多くもらうためにも、ハローワークや転職エージェントなどを併用し転職活動を進めるのがおすすめ