Paranaviトップ ライフスタイル 暮らし 60%が「幸せ」でも将来不安が莫大…「既婚の方が不幸」は日本の女性だけ?データが示す「日本人の幸せ」のリアル

60%が「幸せ」でも将来不安が莫大…「既婚の方が不幸」は日本の女性だけ?データが示す「日本人の幸せ」のリアル

SHARE

Xでシェア Facebookでシェア LINEでシェア

博報堂100年生活者研究所の調査によると、日本人の幸福度は1980年代をピークに低下しているそうです。働き方から家族のあり方、価値観までいろいろなことが変わりつつある今。何が私たちの「幸せ」をつくるのか、時代とともに変化したこととは何だったのか、ひもといてみました。

昭和と令和で明らかに変わった!日本人の幸福感

2025年は“昭和100年”。それにあたって、博報堂100年生活者研究所は、日本人の幸福度や価値観に関する調査(※1)を行いました。その結果、「日本人の幸福度(推定・10点満点)は1950年代から上昇傾向にあったものの、バブル景気の80年代をピークに現在まで低下傾向にあり、今後も同様の傾向が続くと考えられている」とわかりました。

つまり、日本人の幸福度が下がっているのは近年の一時的な現象ではないようです。社会構造や価値観の変化、政治や経済の状況など、より根深いところに原因があると考えられます。

実際、日本人が「幸せ」を感じる要素は大きく変化しています。日本人が重視していた要素として、1970〜80年代に1位だった「仕事」は、2020年代に7位と大きく低下しています。また2000年代までは「家族とのつながり」「経済的な安定」が上位でしたが、2020年代には「多様性」「自分らしさ」「柔軟な働き方」がとって代わりました。

かつては、社会とのつながりも自己実現も「仕事」で生み出すのが一般的な価値観でした。しかし現在は、仕事以外の要素にも広く幸せや自分らしさを見出す価値観が一般的です。

例えば、デジタルツールが普及して場所や時間を問わない働き方が一般化したこと、コロナ禍で働き方の選択肢が増えたこと、長時間労働やワークライフバランスに関する課題がいまだに根強く存在していることなどが、その背景といえるでしょう。

※1出所:博報堂100年生活者研究所「日本人の 100 年間調査」

日本は生きづらい国?「寛容さ」「人生の自由度」が低い傾向

世界の中で、日本の幸福度はどのくらいの位置にあるのでしょうか。2025年の世界幸福度ランキング(※2)において、日本は147の国と地域の中で「55位」でした。前回の51位から順位が4つ低下しており、他国と比べても良いとは言えない状況です。

このランキングでは、6つの主要変数をもとに幸福度を計測しています。日本は「国民一人当たりのGDP」「腐敗認識度」「社会支援」といった客観的な指標の順位は比較的高く、一定の評価を得ました。一方で、「他人への寛容さ」「人生の自由度」など、個人の生きやすさや幸福につながる要素の順位は低く、また「社会的なつながり」の弱さも指摘されています。

例えば「親しいと感じる人がいない」と答えている若年成人の割合が、日本は突出して高く、30%以上が社会的孤立を訴えています。韓国と並んで「一人で食事をする人」が増加しているのがその象徴です。実際、「個食」や「孤食」が一般化してきました。調査では「共有した食事の回数が増えるにつれて、人生評価は高まる傾向」があるとも指摘されています。

これらの理由としては、少子高齢化や単身世帯の増加、SNSの広まりなどにより、社会的なつながりが薄くなり、孤独を感じている若者が増えていると考えられます。それが「幸福度の低い国・日本」の一因となっているのです。

また、幸福感は他者との比較に左右されることも多くあります。最近は、SNSなどで他人の生活が垣間見えたり、社会的・経済的に華やかな人を目にする機会が増えました。そうした社会的な状況も、幸福度を下げる要因と考えられます。

※2出所:ギャラップ「世界幸福度レポート(World Happiness Report)」

「将来が怖い」生活の質に対する不安が、幸福度を下げる

GDP基準ではスコアが高く、経済的な豊かさが評価されている日本。しかし一方で、将来不安は大きく幸福度を押し下げているようです。イプソスの調査(※3)によると、日本で「とても幸せ / やや幸せ」と答えた人の割合は60%と、調査対象となった30カ国中27位でした。

とくに注目するべきは「生活の質」に関する項目です。日本で「現在の自分の生活の質はとても高い」と答えた人は13%、「5年後には全体的な生活の質は今よりもずっと良くなっていると思う」と答えた人は15%。いずれも、30カ国中最下位でした。日本人は、今現在の幸福度が低いだけでなく、未来への期待感も乏しいのです。

さらに「私たちを幸せでなくするものは?」という問いに対して、日本人の断トツ1位は「経済的な状況」(64%)でした。続いて「人生に意味を感じる」(27%)、「自国の経済状況」(25%)です。

昨今は物価上昇やインフレが続いていますが、それをカバーできるほど賃金が伸びないこと、国民負担率が高く手取りが増えないことなどが社会問題になっています。ここから経済的な不安が生まれ、日本人を不幸にしているとわかります。

※3出所:イプソス「イプソス幸福感調査2025」

幸福度を上げる鍵は「人とのつながり」にある

幸福度を上下する要因はいくつもありますが、その中でも重視されているのが「人とのつながり」です。実際にイプソスの調査では、「私たちを幸せにするものは?」という問いが設定されています。日本においては、「家族と子どもたち」「感謝されている / 愛されていると感じる」がともに41%で、1位となりました。

日本人の幸福感には、家族や、感謝・愛情といったポジティブな感情の応酬、それを可能にする人間関係が強く関係しているとわかります。世界幸福度ランキングでは、日本は孤立を感じる若年成人の割合が突出して高いと指摘されていることともつながります。幸福度には、家族をはじめとする「人とのつながり」がとても重要なのです。

もちろん、結婚し子どもを持つのは「当たり前」ではなくなっています。近年は、自ら独身を選ぶ「非婚化」が進み、少子化の大きな原因になっています。生涯未婚率は2020年時点で男性が約28.3%、女性が約17.8%と、いずれも過去最高となりました(※4)。選択的に家族を持たない人は、これからも増えると想定されています。

また、日本の女性は、未婚者よりも既婚者のほうが不幸感が高いという調査(※5)もあります。2017~22年に各国の研究者が共同で実施した『世界価値観調査』によると、アメリカやイギリスなどほかの国はどこも、男女ともに、未婚者のほうが不幸感が高い結果でした。日本の女性だけが「既婚者のほうが不幸」なのです。また、日本の「男性未婚者」の不幸感が飛びぬけて高いこともわかりました。

この背景には、日本にいまだ根付いている古いジェンダー観や、家庭内での性別役割分業があるとされます。日本の既婚女性は一般的に、家事や育児の負担を重く担っており、それが一種の束縛となって、不幸感を高めているのかもしれません。また男性も、経済的な不安や社会的孤立、“男らしさ”へのプレッシャーなどから不幸感を高めているかもしれません。

つまり、結婚して家族を持っていれば幸せというわけではありません。むしろ状況によってはそれが不幸にもつながるといえます。そんな中、豊かな人間関係(社会関係資本:人々の間にある、信頼関係や結びつき、ネットワークなどのこと)を持ち続けるには、工夫が必要です。

例えば、大人になってからも友人関係を大事にしたり、趣味や興味を生かしてコミュニティに参加したり、地域活動に顔を出してみたりといったことです。こうして自分の周りの人間関係を豊かにし、悩みを相談できたり喜びや悲しみを分かち合えたり困ったときに助け合えたりする人間関係を築くことで、孤立感が薄まって精神的な安定がもたらされ、幸福度が高まるでしょう。

※4出所:国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集(2023)改訂版」
※5出所:「世界価値観調査」

日本でもだんだん、価値観の違いや考え方、ライフスタイルの多様性が認められるようになってきました。「幸せ」の定義は人それぞれ。だからこそ、「自分にとって、何が幸せなのか」「どんな要素が幸せをつくるのか」を考えることが大事ではないでしょうか。

SHARE

Xでシェア Facebookでシェア LINEでシェア

Keyword

さくら もえ
Writer さくら もえ

VIEW MORE

Page Top