Paranaviトップ ライフスタイル 健康/美容 悪影響は美容のほかにもたくさん……“睡眠の質”を上げるための「9のコツ」

悪影響は美容のほかにもたくさん……“睡眠の質”を上げるための「9のコツ」

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生きている間、約3分の1の時間を「睡眠」にあてている私たち。睡眠の量と質、両方が大切とわかっている方は多いと思いますが、では「いい睡眠」って何だろう? と考えたことはありますか? 今回は、精神科医の私が勧める「睡眠の質の上げ方」についてお話しします。

睡眠時間「5時間」を切ると、いろんな悪影響が

 日本人の睡眠時間は他国に比べて少ないと、耳にしたことはあるでしょうか。OECDの調査(2018年)では、日本人の平均睡眠時間は7時間22分と、加盟30カ国の中で最も短いことがわかりました。またNHKの「国民生活時間調査」(日本人の生活時間・2015)によると、女性はとくに40〜50代の睡眠時間が短く、7時間を切っています。さらに厚生労働省の「令和2年 健康実態調査結果の報告」によると、女性のうち睡眠時間が5時間未満と答えた人は10.9%います。実際に睡眠時間が5時間を切ってしまうと、心身ともに影響を及ぼす可能性が高まります。かなり短い睡眠時間と言えるでしょう。

よく、自分はショートスリーパーだという人がいます。確かにショートスリーパーは存在していて、2019年には神経科学の専門誌「ニューロン」に、アメリカのカリフォルニア大学でショートスリーパーの遺伝子が発見されたという論文が掲載されました。その論文でいうショートスリーパーは「6時間以下の睡眠で足りる人」。その基準の中で、真のショートスリーパーは10万人中4人、0.004%しかいないそうです。ショートスリーパーかどうかは遺伝子レベルで決まるもので、頑張ったらなれるというものではありません。

睡眠時間が短いことで起きる「デメリット4つ」

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睡眠時間が短いと、具体的に何が悪いのでしょうか。単純に日中眠くなったり、なんとなくお肌に悪そう、というだけではありません。どんなデメリットがあるのか、みていきましょう。

① 体重が落ちにくくなる

睡眠不足が続くと、脂肪や糖の代謝が悪くなります。代謝が落ちるとそのぶん体重が落ちにくくなり、せっかく運動や食事制限をしてもダイエットの効果が出にくくなってしまいます。実際、睡眠時間が6時間以下の人は、肥満や糖尿病の有病率が高いという研究結果も出ています。(Sleep. 2013;36(10):1421-7)

② 自律神経が乱れる

自律神経は、身体を動かしたり活発に動くときに働く「交感神経」と、身体を休めるときに働く「副交感神経」の2つから成ります。そして、睡眠が足りていないということは、交感神経が優位に働く時間が多いということ。その状態が長く続くと、自律神経のバランスが崩れてしまい、めまいや耳鳴り、微熱、寒気、動悸といった不調が起こりやすくなります

③ 免疫力の低下

今、世界中で流行している新型コロナウイルス。そのほかにもインフルエンザやノロウイルスなど、私たちはいつもウイルスに晒されて生きています。その中で、ウイルスから自分を守ってくれるのが免疫です。免疫力が高ければ、たとえウイルスが体内に入ってきても、発症するリスクが低くなります。風邪をひきやすい人とひきにくい人の違いは、免疫の違いともいえます。そして、免疫力が下がってしまう原因の1つが、睡眠不足なんです。

④ 肌の老化

睡眠不足というと、肌への影響がいちばん気になるという人もいるでしょう。睡眠不足によって成長ホルモンが不足すると、肌のターンオーバーが遅れます。そして肌や髪、瞳の色をつくる色素「メラニン」をうまく排出できなくなり、シミやくすみの原因につながります。美肌のためには、しっかり睡眠をとることが大事です!

いい睡眠をとるために大事な「9のコツ」

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睡眠の量はもちろん、質も大事。いい睡眠の条件は、「寝つきがいい」「いったん寝たら途中で起きない、起きたとしてもすぐまた眠りにつける」「朝はスッキリ起きれる」ということです。いい睡眠をとるために、日常から心がけたいポイントを9個まとめました。

  • 寝る90〜120分前にお風呂に入って、湯船に浸かる
  • 手のひら、足の裏は温めない
  • 寝る前にはスマホをいじらない
  • カフェインをとるのは、寝る4時間前まで
  • 寝る前は激しい運動をせず、軽いストレッチ程度にする
  • 毎日3食食べて、生活リズムを整える
  • 夜は魚介類、朝はバナナや乳製品を食べる
  • 基本は「無音遮光」の状態で寝る
  • 朝、起きたら日光を浴びる

人間は体温を下げるときに眠気を感じる生き物です。とくに手のひらや足の裏は汗をかきやすく、汗が蒸発するときに熱を発散する部位。ここを温めてしまうと、うまく体温を下げられません。よく、足が冷えるから靴下を履くという人がいますが、足が冷える人には湯たんぽやレッグウォーマーを使うのがオススメです。

「睡眠薬=怖い」は誤解、漢方もうまく使って

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不眠ぎみだけど、睡眠薬はクセになるから処方してほしくないという方がいます。これは「半分正解で、半分間違い」。まず、睡眠薬にはいろいろな種類があります。一部の睡眠薬は確かに耐性がつきやすく、同じ量を飲み続けているとだんだん効き目が薄くなってしまう人もいます。最近出ている「ベルソムラ」「デエビゴ」という睡眠薬は、今までの睡眠薬と違う種類で、クセになりにくいです。これらを飲むと、覚醒状態を維持する「オレキシン」という脳内物質の働きが弱まり、自然に眠りやすくなります。

クセになりにくい薬の代表として、以前から「ロゼレム」という薬がありました。でも「クセになりにくいけど、肝心の効き目はイマイチ……」という声も多かったんです。それに比べると「ベルソムラ」「デエビゴ」は、効果もしっかり期待できる、最近の処方のファーストチョイスです。それでも、どうしても薬に抵抗がある人には、漢方をオススメします。なんとなく眠れないという人は「酸棗仁湯」、寝る前にいろいろ考えてしまって眠れないという人には「桂枝加竜骨牡蠣湯」がいいでしょう。

確実にいえることは、「眠れないなら、睡眠薬を飲んででもちゃんとした睡眠をとった方がいい」ということ。そして睡眠薬は、正しい療法で使っていれば怖いものではありません。私の患者さんにも、睡眠薬を飲んで睡眠をとり、メンタルが安定した結果、睡眠薬なしでもしっかり眠れるようになったという方はたくさんいらっしゃいます。

お酒を飲んで寝るのは「気絶しているのと同じ」

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お酒を飲むとよく眠れるという人がいますが、それは「お酒を飲んで寝るのは、気絶しているのと同じ」だから。確かに少量のアルコールをとると脳の興奮が鎮まり、寝つきがよくなるとされています。しかし一定量以上の飲酒は、確実に睡眠の質を悪くします。アルコールが分解されるときに発生する「アセトアルデヒド」の影響で、一時的にレム睡眠(夢を見ているときなど、脳が動いている状態)が抑えられるという仕組みです。その反動で、睡眠の後半にはレム睡眠で浅い眠りが続き、脳があまり休まりません。またお酒を飲んだ日は、いびきもかきやすいでしょう。これは、アルコールに筋肉を緩める作用があることが原因。のどの筋肉が弛緩することで、気道が狭くなってしまうんです。

絶対にやってほしくないのが、「お酒と睡眠薬を同時に飲む」こと。記憶が飛びやすくなったり、呼吸をしにくくなったりします。お酒を多めに飲むと「お酒に強くなった!」と勘違いしますよね。あれは、ただアルコールへの耐性がついただけ。肝臓など臓器に対する悪影響はしっかりあります。そしてお酒と睡眠薬を同時に摂取すると、一気に耐性がつきやすくなるんです。これはアルコール依存症のリスクも招くので、かなり危険な行為です。

いい睡眠は、毎日イキイキ過ごすためにも、美容のためにも必須条件。よく寝て、楽しく人生を満喫しましょう!

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木村好珠
Writer 木村好珠

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