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思いがけない妊娠で人生が激変…「自分の体を知ると、人生が広がる」染矢明日香さんの思い

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意図していなかったのに……妊娠していることがわかったら、あなたはどうするでしょうか。私たちの日常生活にあるのに、なかなか表に出てこないのが「性」の問題です。「自分の人生を自由にデザインするため、性を学ぼう」と性教育やピルの問題に真正面から取り組んでいるのが、NPO法人ピルコンです。性の問題に長らく取り組む中で、見えてきたものは何だったのでしょうか。理事長の染矢明日香さんにお話を聞きました。

性の問題が「自分に起こること」とは思えなかった

――まず、染矢さんが性にまつわる活動を始めたきっかけを教えてください!

性の問題は、性行為や妊娠はもちろん、月経や性暴力などたくさんの要素を含んでいます。性別や年齢によらず、きちんとした情報を知ることで、人生の選択肢が広がるものです。そうすることでみんながもっと楽に、自分らしく生きられるようになればと思って活動を始めました。

もっと振り返ると、自分自身の体験からです。実は私、20歳のときに思いがけず妊娠してしまって。その時は大学生だったので、就職のことを考えて中絶を選択したんですが、本当に辛かったです。もっとちゃんと知識をつけておけばと後悔しましたし、一方で、周りの友人たちもいつ同じ立場に置かれてもおかしくない状況だと気づきました。

――性のことはどうしても、周りにしゃべりにくいですよね。

プライベートな側面もありますしね。女の子と2人で話すと、彼氏に避妊のことを言えないとか、ピルはなんとなく怖くて飲めないという声が聞こえてきます。でも、一度妊娠すると人生がガラッと変わっちゃうんです。性について知っていることで不本意な状況を避けられる人が、1人でも増えてほしいという思いで活動を始めました。

――ご自身の経験があったんですね。学校で受ける性教育は、なんとなく自分ごと化しづらい気がします。

学校の保健体育の授業で学ぶ「性」は生物学的な身体の仕組みが中心で、正直、妊娠が自分の身に起こることだと思えなかったんです。避妊についてはなんとなく知ったつもりでいましたが、生理不順もあり、そうそう簡単に妊娠しないだろうという思い込みがあって。今思えば偏見ですが、思いがけない妊娠をするのは“遊んでいる人”みたいなイメージを持っていました。でも実際、日本の中絶件数は年間、約16万件。これほどたくさんあるのに、あまり表面化していないいちばんの理由は、性にタブー感や語りづらさがあることだと思います。

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少しずつ、性に対する世論が変わってきていることを感じています。

「性」は、人生の中の大事な1要素

――日本の性教育の現状は、どうでしょうか?

性教育については、東京都議会で中学生の性教育について議論されるようになった2018年ごろから注目が高まり、「義務教育でも性教育を」という署名キャンペーンも行いました。インターネットで手軽に性の知識が得られるようになったことを背景に、保護者の問題意識も上がっていて、性教育の本がベストセラーになったりと盛り上がりを見せています。

「性=いやらしいこと、エッチなこと」ではなく、人生の中で大事な要素であり、健康にも関わるものなんだという認識がようやくできてきたと感じます。でも海外を見れば、人権教育の1つとして早い時期から性教育をするというのが世界のスタンダード。中学生からではむしろ遅いとも感じています。

――緊急避妊薬(アフターピル)が話題になることもありますね。

緊急避妊薬のアクセス改善を求める#緊急避妊薬を薬局でプロジェクト」も共同代表として推進しています。現状日本では、緊急避妊薬を手に入れるためには医師の処方箋が必要です。2019年にようやく、初診からの緊急避妊薬のオンライン診療が条件付きで認可されたところですね。SNSで「#緊急避妊薬を薬局で」というハッシュタグで多くの投稿がされ、社会的にも注目は高まってきていると感じます。

ただ、一度医師の診療を受けないと入手できないというところは変わっておらず、オンライン診療の受診から実際に薬を入手できるまでのタイムラグや決済方法などの問題があって、根本的な改善にはまだ課題が残っています。今後も当事者目線、国際標準に沿って、薬局販売に向けた議論を求めていきたいです。

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性教育にはいろんな要素があります。緊急避妊薬もその1つで、薬局で買えるように制度が変わればと思います。

意外にも「男性からの相談が多い」ピルコン

――ピルコンを正式に立ち上げられたのは、2013年でした。

2007年、学生団体「避妊啓発団体ピルコン」としてスタートしました。実は、大学卒業後に一度民間企業に就職していました。ピルコンの立ち上げにあたって、当時の上司に退職を考えていることも含め相談したところ、「会社の勤務日数を減らしてもいいので、諦めないで、両方やった方がいいよ」と背中を押してくれて。5年くらい、会社員とピルコンの活動でパラキャリしていました。会社でさせてもらったいろんな経験が、ピルコンにもつながっています。本当にありがたい環境でした。

――ピルコンのメインの活動は、どんなことですか?

中高生向けの性教育活動です。大学生や社会人のボランティアが、学校に出向いて講演しています。ピア・エデュケーションと呼ばれる手法で、「身近なお兄さん・お姉さんから話を聞こう」という趣旨でやっているのが特徴ですね。年間で、のべ50006000名の学生さんに聞いてもらっています。ほかにも定期的にオンラインイベントをしたり、SNSでの情報提供をしたりしています。助産師や看護師のスタッフと無料のメール相談やLINE相談も行っています。最近はYouTubeで、海外の性教育コンテンツを翻訳して無料公開する取り組みも始めました。

――具体的には、どんな相談が多いんですか?

多いのは「妊娠したかもしれない、どうしよう……」という女性からの相談です。コロナ禍でとくに増えていますね。性行為から72時間以内の場合は緊急避妊薬という選択肢があること、生理が遅れている場合は妊娠検査薬でチェックできることを伝えています。

一方で男性から、性器や性欲について相談を受けることも多いです。ピルコンのHPのアクセスを解析すると、いちばん多く見られているのは、男性の性についてのページなんですよ。女性と比べて表面化しにくいですが、男性だって悩んでいるんですよね。とくに男性には、世間やメディアからの押し付け、プレッシャも強くあります。性について誰かに相談するのはかっこ悪いことだと思われがちで、それが自分否定や生きづらさにつながっていることも多いと思います。だからこそ、性について学ぶことは性別にかかわらず大事で、自分自身を知り、受け入れることにもつながるものだと知ってほしいです。

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講演を通して、10代のリアルに接する機会の多い染矢さん。正しい情報をカジュアルに伝えています。

カップルも、必ずお互いの気持ちを確認しよう

――予期しない妊娠を防ぐために、避妊の知識以外に必要なのはどんなことでしょうか。

避妊の知識だけでは不十分です。「妊娠する・させるかもしれない」という自覚を持つこと、相手との対等な関係を築くこと、そして「性的同意」が重要です。性的同意とは、「性行為を積極的にしたいと望むお互いの意思を確認すること」。

でも、「いちいち口に出して確認するなんて、ムードがない!」という声もあります。性についてタブー感がある社会の中ではそれも自然なことだと思いますが、性的同意は「誰かを傷つけないため」に大切な概念です。性的同意の確認として、「お楽しみ会をしよう」って合言葉を決めているって大学生の話を聞いて、かわいいなと思いました(笑)。性的同意によって自分のことも相手の気持ちも大事にできるし、お互いが安心できて楽しいコミュニケーションの仕方を考えることに役立てられるということが、もっと広まったらいいなと思います。

――染矢さんの、将来の夢を教えてください。

日本の性教育には、まだまだ問題がいっぱいあります。科学的な根拠に基づく情報を、学生たちにわかりやすく、また響くよう発信していきたいですね。そして、自分の身体のことをちゃんと知ってコントロールすることが、自分らしく豊かに生きるうえで大切だと伝えていければと思います。

また、若い方の中には「婦人科=怖い」というイメージを持っている人もいると思います。避妊のために病院にいくことに抵抗感がある人や、生理痛が重くてもガマンするという女性が多くいます。病院にもいろんな選択肢がありますから、自分に合ったところを選んで体をケアして、自分らしく気持ちよく過ごしていく権利が誰にでもあると知ってもらいたいですね。そして社会全体で、若い人が相談しやすい受け皿として大人や専門家がフォローする体制をつくることが必要だと思います。

――染矢さんのように、立ち上がって世の中を変えていく人がいるということが、後に続く人たちの勇気になります。

ありがとうございます(笑)。さらにいうと私の目標は、知識の伝達としての性教育をすることだけじゃないんです。若い人たちが、自分が日々感じているモヤモヤをもとに、社会をよくしていくためのアクションを起こして、よりよいしくみを共に作っていける社会を目指したいです。若い人や女性は無力な存在ではありませんから、みんなが「私たちの声で、社会を変えていける」と感じてくれるようにしたい。そして私がこう思えるようになったのは、思いがけない妊娠と中絶の経験があったからです。つらい経験だって、学びや原動力にしていけるということも伝えていけたらと思います。

ピルコンのHPはこちら!

染矢明日香(そめやあすか)●NPO法人ピルコン理事長。慶應義塾大学環境情報学部卒業。現在、慶應義塾大学大学院健康マネジメント科公衆衛生学専攻修士課程在学中。民間企業を経て、性の健康啓発を行うNPO法人「ピルコン」を2013年に起業。若者向けのセクシュアルセミナーやイベントの企画・出展のほか、中高生向け、保護者向けの性教育講演や性教育コンテンツの開発・普及を行う。ボランティアを中心に身近な目線で性の健康を伝えるLILYプログラムを中高生に届け、思春期からの正しい性知識の向上と対等なパートナーシップの意識醸成に貢献している。メディアでも注目され、性教育の社会状況について、マスコミに登場、発信する機会も多々。第4回チャンピオン・オブ・チェンジ日本大賞入賞。著書に「マンガでわかるオトコの子の『性』」(合同出版、2015)

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小野アムスデン道子
Writer 小野アムスデン道子

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