Paranaviトップ ライフスタイル 恋愛/結婚 共感が止まらないはずの「ブラッシュアップライフ」から滲み出る違和感

共感が止まらないはずの「ブラッシュアップライフ」から滲み出る違和感

SHARE

Xでシェア Facebookでシェア LINEでシェア

2023年冬、世間の話題をさらったドラマ「ブラッシュアップライフ」。単なる転生モノと思いきや、ストーリーの至るところに散りばめられたニッチな共感ポイントや見事なまでの伏線回収、考察捗る小ネタの嵐……毎週日曜よる、私たちの心をざわつかせたことはまだ記憶に新しいです。いドラマであればあるほど、放送が終わってからも後を引くように胸に残るーーしばし「ブラッシュアップライフ」のことを考える日が続く中で、あることに気が付いたのです。

マイノリティがまるでマジョリティかのように描かれる”違和感”

主人公・あーちんこと麻美(安藤サクラ)の人生を繰り返し眺める中で、ふつふつと湧き出る違和感に気付いたのは、私だけでしょうか? その理由は、恋愛関係・友好関係・人生観の3つにありました。

あえて避けるように触れられない「恋愛関係」

ドラマには欠かせない要素といっても過言ではない”恋愛”に纏わる描写。にもかかわらず、「ブラッシュアップライフ」の中で触れられたのは、ごく僅かでした。

まずは、麻美の大学時代の元カレ・田邊(松坂桃李)。1周目と3周目において、2人は恋人関係にありました。驚くべきことに、主人公である麻美の恋愛模様が描かれていたのはこの部分のみ。以降、麻美の恋愛には一切触れられることなく、おもに仕事・友人・家族の要素のみで彼女の人生が構成されていきます。

ブラッシュアップライフ

もちろん、全員の人生に恋愛が必要なわけではありませんし、大前提、個人の自由です。ただ、何度もやり直す人生の中で田邉以外との恋愛がゼロで物語が進んでいくことが、違和感でしかなかったのです。もしかすると、田邉との一件で「恋愛なんてもう懲り懲り」になってしまったのかもしれませんが。

ほかに描かれた恋愛模様といえば、麻美の初恋、麻美の保育園時代からの友人・玲奈ちゃん(黒木華)の不倫事件、同級生である福ちゃん(染谷将太)としーちゃん(市川由衣)の結婚、宇野真里(水川あさみ)の福ちゃんへのまさかの恋心、麻美の妹・遥(志田未来)の結婚などが挙げられますが、いずれも微かに触れられた程度。誰かの恋愛模様に対して猛烈にフィーチャーされることはありませんでした。

そういえば、1周目では恋愛話なんて一切したことのなかった市役所時代の同期が、2周目の麻美がいない場面ではそれはそれは楽しそうに恋バナに花を咲かせているところを見かけてショックを受けているシーンもありましたよね。

気にしているということは、きっと本人も色恋に興味があるはず……なのに、なぜ……。

麻美はまだしも、トリオであるなっち(夏帆)とみーぽん(木南晴夏)も見事に色気のない日々を送っていそうで、かの有名なタラレバ娘3人衆との差に歴然としてしまったことは、ここだけの話です。

代わり映えしない「交友関係」

地元の友人とは、いつまでも良い関係性でいたいもの。そうは言っても、長い人生において、環境や価値観の変化により人付き合いが変化していくことには抗えません。そんな中、地元愛が異常に強い麻美たち。

ブラッシュアップライフ

うらやましくもありつつ、「こんなにずっと一緒にいれることって、ある?」と感じてしまったのは、私が地方出身・上京組だからなのでしょうか。とにかく日々を生き抜くために忙しなく過ごす今、箸が転んでもおかしい年頃とは何もかもが違う。それなのに、一切関係性が変わらない麻美たちを見て、嫉妬にも近い違和感が生じてしまったのです。

そしておそらくこの違和感は、主要人物の恋愛模様が描かれていないことも相まって引き立っているのでしょう。

正直、まったく共感できない「人生観」

この「恋愛関係」と「友好関係」を受けてなお、違和感が最大化されたのが彼女たちの「人生観」です。市役所・薬剤師・テレビ局・研究員・パイロットと、さまざまな職種に挑戦した麻美。大切な友人のために学生時代の楽しみを棒に振ってまで勉強に振り切った彼女ですが、最終的には“地元に戻って1周目と同じ市役所に再就職”。宇野真理も同様に、最終的には”地元に戻って1周目と同じ保育園に再就職”したのです。

……悪くはない。決して悪くはないのですが、どうしてもモヤモヤが残ります。

あんなにも苦労してパイロットという道を手に入れたにもかかわらず、簡単に手放して地元に帰ってしまうのか……と。また、再就職先が「市役所」や「保育園」という”いかにも女性の鉄板ルート”感もいただけません。

それだけでなく、なっちやみーぽんもずっと地元で生活している模様。2人に限らず、同級生のほとんどが地元に住み着いている状況です。「代わり映えしない毎日、生涯を地元で終えてしまって本当にいいの?」おせっかいながらもそんな感情が溢れ出てしまったのです。

ブラッシュアップライフ

だからこそ、麻美のテレビ局員としての華々しい活躍にはより惚れ惚れとしてしまいました。関東圏内とはいえ、上京して、一人仕事に励む3週目の麻美、いちばん好きだった。麻美の手掛ける「ブラッシュアップライフ」、見たかった。

大人になってもまるで学生気分な彼女たちの人生観に、どうも納得できないままドラマは終了してしまいました。

“違和感”は”安心感”と紙一重

さて、いろいろと好き勝手書いてしまいましたが、そうなのです。これら違和感は、あくまでも私個人が思う違和感であり、共感してくれる人も多少はいるかもしれませんが、もしかしたらこの意見がマイノリティなのかもしれないのです。

そしてこの違和感は、自身が体験できてないからこその嫉妬心でもあり、安定が確約された生活という安心感に対する羨望でもあります。

もし、2周目の人生が存在するならば、一生地元で生き抜くような朗らかな日々も悪くないーー自身の生き方までもを考えさせられるドラマ「ブラッシュアップライフ」に今一度、拍手を送りたいと思います。

SHARE

Xでシェア Facebookでシェア LINEでシェア

Keyword

桐本絵梨花
Writer 桐本絵梨花

VIEW MORE

Page Top