Paranaviトップ ライフスタイル 家事/育児 【対談】三木佳世子さん×高橋恭文さん「“母親だから”の呪縛からうまく抜け出す、家族主語の考え方」

【対談】三木佳世子さん×高橋恭文さん「“母親だから”の呪縛からうまく抜け出す、家族主語の考え方」

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「私のキャリア、このままでいいのかな?」「パラレルキャリアに興味があるけど、きっかけがなくて……」と悩む女性たちに向けて、2023年8月「女性のライフステージとリスキリング」をテーマにしたイベントが行われました。その中から、パラレルキャリアの実践者として活躍する三木佳世子さんと、母親向けのコミュニティサービス『ママリ』を運営する高橋恭文さんの対談内容を紹介。2人の赤裸々なトークから、何かしらヒントが見つかるはず。

三木佳世子(みきかよこ)さん:株式会社MiraiE代表取締役 ブランドプロデューサー
高橋恭文(たかはしやすふみ)さん:コネヒト株式会社 代表取締役。「地域」(産業・雇用)×「生活者課題」(労働・生活)のインターネット事業家

頭の中をとことん言語化すると、人生の羅針盤が見えてくる

ーーたくさんのお母さんたちと関わってきたお2人。育児の現場について、どう見ていらっしゃいますか?

三木 まじめな方が多く、「育児も家事も完璧にやらなきゃ」と考えて苦しんでいるように見えます。肩に力が入っちゃって、「母親とはこうあるべきだ」という世間からの要請からはみ出た部分があると悩んでしまう。自分がどう生きていきたいか、いわゆる”ミッション”を軸として持っていれば、柔軟に考えて選択していけるのですが……毎日膨大なタスクに追われて、見えなくなっちゃっている人も多いと思います。私も息子を出産したとき、NHKのディレクターという立場が外れた「1人の母親」になったことで、自分が見えなくなってしまう”暗黒時代”を体験しました。

高橋 ママリは、子どもの月齢が近いお母さん同士が情報交換したり会話したりする「デジタル井戸端」的な場所としても使っていただいていて、月間300万件くらい会話が生まれています。匿名じゃなきゃできない生々しい話や(笑)、ズボラな子育てエピソードなどをきっかけに会話が盛り上がることも。「母親だからちゃんとしなきゃ」と思う方が多いようですが、実際はそうでもないと思います。

特に第一子の出産・育児のときは、そもそも何を調べていいかわかりませんよね。1人で全部抱え込んでパニックになったり、塞ぎ込んでしまったり。妊娠中の女性はホルモンバランスが大きく変化しますので、情緒不安定になるのは当然のこと。一息ついて、自分と似た状況の仲間を見つけると少し楽になれると思います。

三木 お母さんも百人百様なのに、「母」という1つの言葉で括られることにも違和感がありました。悩んでいる時にやりがちなのが、人と比較すること。仕事も育児も順調で家事を完璧にこなしているキラキラしたお母さんたちをSNSで見て、自分と比べちゃう。でも「この道でいいんだ」って決めるのは自分です。何を羅針盤にするか決められたら、自分と他人を比較し続ける負のスパイラルから抜け出せます。

三木佳世子(みきかよこ)さん

三木佳世子(みきかよこ)さん:株式会社MiraiE代表取締役 ブランドプロデューサー。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、NHKに入局。報道番組のディレクターとして12年間、2000人以上を取材。「NHKスペシャル」「クローズアップ現代」「おはよう日本」等、100本以上の番組を制作し、NHKスペシャル「認知症行方不明者1万人」で菊池寛賞・NHK会長賞など受賞。幻冬舎から書籍出版。2018年、サイボウズ株式会社へ転職、同時に起業。PRコンサル、セミナー講師、ライターなどのパラレルキャリアを邁進。講演会やトークイベントへの登壇や取材多数。2020年、株式会社LITAの取締役。一般社団法人PRプロフェッショナル協会 理事。2023年、独立。学校・行政・企業での講演研修事業と、ブランディング動画制作事業、そして自己PR力を身につけるスクール【CHANGE】、オリジナル講座づくりブートキャンプを主催。

ーーそれは、どうやったらわかるのでしょう?

三木 自分と向き合って言語化することに尽きますね。私も昔は、息子を保育園に迎えに行く前の10分間でもカフェに駆け込んでノートを開いて「なりたい自分、そのためにできること、手放せること」「事実に対して私の心がどう動いたか、そこから何がわかったか」をひたすら書き出して、自分と一人会議していました。1日1ページは絶対書くと決めて、徹底的に書き続けていたら、そのうち「あ、これだ!」という答えが見えてきたんです。最終的には、そのノートは10冊を超えました。

高橋 なるほど、自分の頭の中を言語化するということですね。忙しいとどうしても自分に使う時間は後回しになりますが、だからこそ習慣化したいですね。私は自転車に乗りながらものごとを考えると、デスクの前に座っている時とは違う脳を働かせられます。左脳だけで考えると出てこないのかも。分との向き合い方は人それぞれですよね。

リスキリングにも通じますが、人間は誰でも毎日成長しています。今日新しく知ったことやできるようになったことが1つはあるはず。どんなに小さいことでもよくて、むしろ「そんな小さなことに気づけた私ってすごい!」と肯定して、自分に感謝しながら、自己肯定感を高めていけたらいいなと思います。

高橋恭文(たかはしやすふみ)さん

高橋恭文(たかはしやすふみ)さん:コネヒト株式会社 代表取締役。「地域」(産業・雇用)×「生活者課題」(労働・生活)のインターネット事業家。日本最大の妊産婦専門コミュニティサービス『ママリ』を運営するコネヒト株式会社を経営。『ママリ』の周産期別並びに子の月例別の10年間100穣に及ぶデータを背景に、社会との結節ら融合をテーマに「労働」と「家事育児」に関する活動を実施。育休に関する妊産婦の家庭内実態調査を日本財団と共同調査し「とるだけ育休」を2019年に提言。その後、育休ガイドブックを80の自治体に配布し支援増進活動を実施。また、読売・毎日新聞、NHK、時事通信等多数報道機関において男性育休関連専門家として取材協力。一貫して生活者保護社会保障でなく、産業振興や企業の生産性に資するテーマとして育休を扱う。また、行政の切れ目ない支援を増進目的に、こどもDX並びに、自治体の伴走型相談支援に資する事業を妊産婦からの支持を背景に佐賀県と提携。広域型の伴走型相談支援事業を実施している。

自分から「家族主語」に変えたら、うまく回り始めた

ーーいざ育児が始まると、夫婦間で葛藤が生まれることもあるようです。どうやって支えあっていくのがいいでしょうか?

高橋 1つ言えるのは、なるべく夫婦で対立構造を作らないほうがいいということ。「母vs父」と二項対立で考えると辛くなります。いざ当事者になると、客観的に考えるのはなかなか難しいですが……。目の前にある事実とその裏にある課題を分けて考えるのが、夫婦がお互いの戸惑いや育児への困惑を理解しあう第一歩だと思います。

三木 夫婦2人の間はお互いのキャリアを応援し合えますが、子どもが生まれると一気に「私だけ時短で働いて、フェアじゃない」「育休を取ってほしいのに……」と不満が溜まりやすくなりますね。私もそうで、ある時「このまま『私主語』でキャリアを考えていたら夫婦が崩壊しちゃう!」と気づいて、「家族主語」に変えました。私がこう考える、ではなく「家族として、みんなでこうなりたいね」と未来を一緒に描くスタイルにしたら、ぐっとうまくいくように。

岡部のぞみ

パラナビ編集長の岡部のぞみが司会を務めました!

高橋 働くことを、家族みんなの共通のテーマにしていくのがコツかもしれませんね。家族みんなで“チーム三木”を作るという。あまりカタく考えず、「お金が貯まったらどこに行く?」と楽しく考え、辛いことや大変なことは分担していく。でも三木さん、よくご自身でそこにたどり着きましたね。

三木 思い出すと、夫が一人で風呂場で泣いているところを見たのがきっかけでした(笑)。出産・育児を経て心身ともに変わるお母さんだけじゃなく、お父さんたちも追い詰められてるんだと思い知りました。

高橋 男性も女性も、頑張りすぎればメンタルに不調をきたします。追い詰めるんじゃなく、みんなでゆるくつながって、支援し合っていこうという社会にだんだん変わってきたのはいいことだと思います。

キャリアもコミュニティも「パラレルがいい」理由

ーー三木さんは、キャリアの突破口の1つが「パラレルキャリア」だったそうですね。

三木佳世子(みきかよこ)さん、高橋恭文(たかはしやすふみ)さん

三木 NHKを辞めてサイボウズに転職した時の私は、新しい仕事にワクワクしながらも、マスコミならではの面白さを手放した欠乏感をぬぐえずにいました。そんな時にひょんなことからwebライターの副業をさせてもらって、私のスキルで人の役に立てるんだ! と感激したんです。人の話を聞いて編集して正しく表現するという私の力を、求めてくれる人がちゃんといるんだとわかってすごくうれしかったのを覚えています。

サイボウズの社員という安全な場所にいながら、パラレルキャリアで外の世界に挑戦できるという安心感があったのは大きいです。いきなり独立していたらもっとずっとシビアな世界ですから。私はパラレルキャリア道を突き進んでいるうちに「私はPRという領域が向いてるみたい!」と気づいて、方向性を定めていくことができました。高橋さんはどうですか?

高橋 実は、僕もパラレル人間でして(笑)。パラレルキャリアもですが、「パラレルコミュニティ」を持つのがいいと思っています。コミュニティは何かの目的を達成する集団だから、自分のスキルをわかりやすく価値に変えられます。周りから承認を得ることで自己効力感を高めていける場所。それが複数あれば、精神的な逃げ場になるし、生きるのが楽になると思うんです。

コネヒトでは女性アスリート向けに、「競技も仕事も恋愛もやろう」という活動をしています。セカンドキャリアではなくて、全部を同時並行で動かしていくパラレルキャリアです。例えばハンドボールの選手には介護の現場で働いて、お年寄りと「応援しあう」関係性を築いてもらっています。誰かを応援することって、生きがいにもなりますから。育児もキャリアも、応援しあえる誰かとチームを組む中で自分に合ったやり方やポジションを見つけていくんだと捉えれば、少し気が楽になるかもしれません。

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さくら もえ
Writer さくら もえ

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