“セロトニン”という神経伝達物質の名前を聞いたことがあるでしょうか?メンタルに興味のある人であれば、一度は聞いたことがあるかもしれません。名前は聞いたことがあるけれど、いまいち何かわからない、本当にメンタル維持に大切なの?と思った人に、今回はセロトニンについて解説します。
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「幸せホルモン」セロトニンがもたらす作用
セロトニンは脳内で神経伝達物質として働く重要な物質で、特に感情や気分の調整に深く関わっています。「幸せホルモン」とも呼ばれるくらい精神的安定や幸福感を感じるために必要な要素として知られており、おもに次のような作用を持っています。
- 気分の安定
セロトニンの最も代表的な役割は、気分を安定させること。セロトニンが十分に分泌されると、ストレスや不安、うつ病といったネガティブな感情が和らぎ、心がリラックスしやすくなります。実は、うつ病は脳内の前シナプスと後シナプスの間(シナプス間隙)のセロトニンが減少し、情報伝達がうまくいかないことが原因と考えられています。ですので、効果のある薬の1つは、セロトニンを必要以上に流れないように栓をして、脳内のセロトニン量を増やす作用で症状を改善しています。医療でもしっかり使用されているメカニズムなのです。
- 睡眠リズムの調整
セロトニンは、睡眠に関わるメラトニンというホルモンの前駆体でもあります。ということは、セロトニンが少ない=メラトニンの材料がないということなので、メラトニンが正常に分泌されにくくなってしまいます。メラトニンは夜間に分泌され、体内時計を調整し、睡眠を促している物質です。セロトニンのバランスが整うことは、質の良い睡眠をとることに繋がります。
- 食欲と消化の調整
セロトニンの多くは消化管にも存在し、消化器系の機能を調整しています。特に、私たちの腸には多くのセロトニンが住んでいるのです。腸内でセロトニンが十分に分泌されると、食欲のコントロールがしやすくなり、健康的な食生活が維持しやすくなるといわれています。
- 痛みの感受性の緩和
セロトニンは、痛みの感受性にも影響を与えます。セロトニンが十分に分泌されると、痛みが軽減されやすく、身体的な苦痛が和らぐ効果もあるとされています。
では、セロトニンが不足すると、私たちの身体はどうなってしまうのでしょうか?
- 精神的不安定
セロトニンの分泌が不足すると、脳内で感情のコントロールが難しくなり、気分が落ち込みやすくなります。ある程度をこえてしまうと、うつ病や不安障害といった精神障害のリスクが高まります。セロトニンの不足は、気分の落ち込みだけではなく、イライラ感となって現れたり、何をしてもだめだといった自己否定感など、精神的な不調に直接結びつくことが多いです。
- 睡眠障害
セロトニンの不足によりメラトニンの分泌も減少し、睡眠の質が低下することがあります。なかなか寝付くことができなかったり、朝早く目が覚めてしまう、夜中に何度も起きるなどの睡眠障害が発生しやすくなり、結果的に日中の倦怠感や集中力の低下を引き起こします。
- 食欲の不安定
セロトニンの低下は、食欲のコントロールにも悪影響を与えます。食欲不振だけではなく、過食になることもあり、特に甘いものや炭水化物への欲求が強くなることが報告されています。これは、食事を通じて脳内のセロトニンレベルを一時的に上昇させようとする身体の反応と考えられています。食べちゃう自分への自己嫌悪もあり、どんどんネガティブスパイラルに陥ってしまう事も。
日常生活でセロトニンを増やす方法
日常の中で、手軽にセロトニンを増やすことはできるでしょうか。効果的な生活習慣をいくつかご紹介します。
- 太陽光を浴びる
セロトニンの分泌は太陽光によって促進されます。特に朝の光を浴びることで、体内時計がリセットされ、セロトニンの分泌が活発になります。毎日少なくとも15分程度、外で日光を浴びることが推奨されています。
- 適度な運動を取り入れる
有酸素運動はセロトニンの生成を促す効果があります。特にウォーキングやジョギング、ヨガなどのリズミカルな運動は、セロトニン分泌に最適です。毎日少しずつでも体を動かす習慣をつけることで、気分が安定しやすくなります。
- 十分な睡眠をとる
睡眠不足はセロトニンの分泌を抑制してしまいます。質の高い睡眠を確保するためには、規則正しい生活リズムや適切な睡眠環境が大切です。特に、寝る前のスマホやパソコンの使用を控えることで、メラトニンの分泌が促進され、結果的にセロトニンのバランスも整います。
- ストレスを管理する
慢性的なストレスはセロトニンの分泌を阻害します。適度なストレス管理がセロトニンのバランスを保つために重要です。リラクゼーション法としては、深呼吸や瞑想、趣味に没頭する時間を持つことが推奨されます。
- 腸内環境を整える
腸は「第2の脳」とも言われるほど、精神的な健康に深く関与しています。「脳腸相関」と言う言葉もあるくらいです。最近流行の腸活ですが、腸内環境を整えることは、実はセロトニンの分泌を促すためにも有効です。食物繊維や発酵食品を意識して摂取することで、腸内細菌のバランスが整い、セロトニン生成に貢献します。
食事でセロトニンを摂取しよう
セロトニンを増やすために摂取すべき食材の多くは、トリプトファンというアミノ酸を豊富に含むものです。トリプトファンは体内でセロトニンの材料となるため、これを十分に摂取することでセロトニンの生成をサポートできます。トリプトファンは必須アミノ酸というアミノ酸に分類され、残念ながら体内で生成されることはなく、食事での摂取が不可欠となります。さらに、ビタミンB6やマグネシウムもトリプトファンをセロトニンに変換するために必要です。
セロトニンを増やす食材って?
- バナナ
バナナはトリプトファンやビタミンB6を豊富に含み、セロトニン生成を促進します。また、手軽に食べられるため、今まで朝食をとる習慣がないという人にも気軽にはじめられるものとしておすすめです。
- ナッツ類(アーモンド、クルミなど)
ナッツにはトリプトファンが多く含まれています。また、マグネシウムも豊富で、これもセロトニン生成に関与します。間食でついついお菓子を食べ過ぎてしまう人はナッツにチェンジすると良いでしょう。私も必ずナッツを持ち歩いています。
- 乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズ)
乳製品にはトリプトファンが多く含まれ、さらにカルシウムも豊富で身体に良いこと間違いなし! 特に夜にホットミルクを飲むと、リラックス効果とともにセロトニンの生成が促進されます。
- 大豆製品(豆腐、納豆、味噌、豆乳)
大豆製品は、植物性タンパク質の優れた供給源で、トリプトファンも豊富です。
- 卵
卵は、トリプトファンやビタミンB群を含むバランスの良い食品です。また、東洋医学的にも気(エネルギー)と血(栄養分)を同時に補うことのできる貴重な食材として重宝されています。
- 魚(特に青魚:サバ、サンマ、イワシなど)
青魚にはトリプトファンだけでなく、オメガ3脂肪酸も含まれており、これが脳機能の健康に寄与します。
セロトニンを増やす効率的な摂取方法と時間帯
- 朝食でトリプトファンを摂取する
まず、朝食をとることはすごく大切です。トリプトファンを多く含む食品を朝食に摂ることが、日中のセロトニン生成を効率的に促します。これは、朝に日光を浴びることでセロトニンの生成が活発になることと合わせて、より効果的にセロトニンを分泌させるためです。おすすめしているのは、ヨーグルトとにバナナをトッピング。これなら手軽に始められそうだと思いませんか?
- ビタミンB6やマグネシウムと一緒に摂る
トリプトファンをセロトニンに変換するにはビタミンB6やマグネシウムが必要です。ナッツや緑黄色野菜と組み合わせた食事を取ることで、より効率よくセロトニン生成が進みます。
- 間食にナッツやフルーツを取り入れる
午後の間食としてナッツやバナナを取り入れると、エネルギー補給とともにセロトニン生成を助けます。特に午後にエネルギーや集中力が落ちるタイミングでの摂取が有効です。
- 夜は乳製品でリラックス
セロトニンはメラトニンに変換されて睡眠をサポートするため、夜にはホットミルクやヨーグルトを摂取することで、質の良い睡眠を得やすくなります。寝る1〜2時間前に乳製品を摂取することで、リラックス効果も期待できます。
セロトニンは、メンタルヘルスにおいて非常に重要な役割を果たしています。適度な運動、バランスの取れた食事、十分な睡眠、そしてストレス管理が鍵となります。これらを意識すれば、気分を安定させ、睡眠の質の向上を図り、食欲をコントロールすることもできるので、日々の生活をさらにイキイキと過ごせるでしょう。