こんにちは。中学生と小学生の子どもを持つ、作家・教育ジャーナリストの佐野倫子です。働くお母さんのお悩みについて、一緒に考えていきたいと思います。今月寄せられたのは、現在小学6年生、中学受験入試直前期のお子さんを持つお母さんのお悩みです。緊迫した状況とのことで、ご相談いただきました。お話を伺ってみましょう。
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Q.もうすぐ中学受験入試を控えている息子の成績が上がりません。3年生から大手の塾に通い、5年生からは個別指導塾にも通っていたのに偏差値はずっと35前後……。我が家は共働きでなかなか勉強に付きっ切り、というわけにはいきません。そのため個別指導塾にも通わせたのですが……。4年間で塾につぎ込んだお金は500万円以上です。
いつかやる気スイッチが入るかも、と期待して転塾はせず、ここまで来てしまいました。現状志望校の偏差値とは20以上開きがあり、諦めて高校受験にしようか、この時期なのに悩んでいます。(港区区在住42歳/カナさん)
中学受験終了後の中1ライフは、罠がいっぱい
まず働きながらの中学受験サポート、本当にお疲れ様です……!
塾代が500万円を超えたとのこと、改めて計算すると「こんなにかかる予定じゃなかったのに」と驚きますよね。それだけのお金をかけられたのは、カナさんが頑張って働いているからこそだと思います。
さて、親子で頑張ってきたにも関わらず、成績が低迷しているとがっかりして、中学受験をやめようかな? という気持ちになるのは当然。中学受験は絶対しなきゃならないものではないし、公立に進学する道もあります。
ここからは昨年、中学受験を終えた母である私の個人的な所感になりますが、まずは中学生ライフの現状を参考までに共有させていただけたらと思います。
中学受験塾で数年以上頑張ってきた子、とくに中1男子は反抗期も相まって勉強は相当ペースダウンします。長いと4年、5年もの間塾に通い、最後は寝る間も惜しんで勉強をしたのですから当然といえば当然。大人でも年単位の休息が必要でしょう。我が家も、息子の勉強量は5分の1以下にはなっています。とほほ。
ただ、中学受験で頑張って中高一貫校に入れば、多少「休憩」してもなんとか巻き返す時間の余裕があるのも事実。周囲のママ友を見ていても、御三家にお子さんが入ったような方も「だめだ……ぜんぜん勉強しなくなった……でも今は転んで自覚させようと思って放ってある」と言うのです。
中学受験を撤退したとしても……
カナさんのお子さんはすでに入試まであと2ヶ月ほど。6年生の秋に受験を撤退した場合を仮定してみると、メリットが少ないように感じられます。きっとカナさんもそのことはわかっていらっしゃるはず。真意は、偏差値35で進学できる中学にいくよりも、公立にいって高校受験をすればいいのでは? という親御さんの迷いと推察します。
もちろんご家庭の判断ですが、同じ中学受験母、1年先の男子母として、それは結構いばらの道なのではないかと率直に言って感じています。
これまで頑張ってきた分、中学に入ったからといっていきなり「高校受験で頑張ります!」と急に集中するとも考えにくい。ましてや思春期に突入です。仮に不合格でのショックから奮起を狙っているのだとしたら、リスキーと言わざるを得ません。きっと親子でしばらくは休みたい……というのが本音でしょう。私は半年経ってもそう思っています(涙)。
そして、中学生になるとお友達や部活の関係からスマートフォンをほぼ全員が持つようになります。このスマホが! このスマホが本当に親泣かせ。ほとんど人生を乗っ取られているというような様子もあり、どこのご家庭も非常に制限に苦労しています。
スマホに代表されるように、中学生は親の管理下から少しずつ脱出する時期。そこに、中学受験で長年頑張った疲れが加われば、高校受験できっと今よりいい結果を出すはずというのが楽観的だと想像できます。
もし中学受験を撤退する場合は、ずるずる続けずに、切り替えてしっかり休息をとり、新年から英語を猛然と頑張るのがおすすめです。現状、中学1年生の英語力は差が広がっています。小さい頃から英語力を養って6年生で2級をとっている子もすでにクラスにいることでしょう。中学に入ってつまずかないように、英語の基礎力養成に力を入れましょう。
あと2ヶ月、こうなったら駆け抜ける作戦も
中学受験をするもしないももちろん自由。だからこそ迷ってしまいますよね。長年頑張ってきたならなおさらです。
個人的には、合格できる学校の中から、ここなら行ってもいいかな、楽しそうだな、と思える学校を今からいくつか探すのが近道だと思います。手厚くて面倒見のいい学校はたくさんあるので、そういう学校で6年かけて伸ばしてもらえれば、御三家レベルなどでなくても十二分に進学する甲斐があります。
合格をいただいてから、高校受験にするかどうかをお子さんと話し合ってはいかがでしょうか? 長い間頑張ったので、あと2ヶ月、もうこうなったらえいや! で目をつぶって駆け抜ける。そんな作戦もあると思います。高校受験をするにしても、中学受験でひとつでも合格していれば、きっと大きな自信になると思うからです。
中学1年生以降の解像度が少しでも上がって、判断の一助になれば幸いです。心から応援しています!