中学生と小学生の子を持ちながら、作家・教育ジャーナリストとしても活動する佐野倫子です。この連載では働きながら子育てをしている方達の教育に関するお悩みについて、一緒に考えていきたいと思います。今回質問を送ってくださったのは、2児のママ、紗子さん。お子さんの受験をいつにするべきか、悩んでいるとのことで、検証してみましょう。
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気がつくと周囲が幼児教室に……!
Q.フルタイムのワーママです。娘たちは4歳と5歳の年子。現在保育園に通っています。最近、同じようにフルタイムで働いているママがお子さんを幼児教室に通わせていることが判明しました。私は毎日18時半に迎えに行く生活なので、正直驚いています。「小学校から私立に入れておけば、中学受験も高校受験もなくて楽ちんだから」とのことですが、小学校受験は親が大変そう……。中学受験というのはそんなに大変なのでしょうか?どんなメリットがありますか?そして高校受験のほうが自分で頑張れるならそうしたい気持ちがあります。メリットデメリットを教えてください。
(北区在住/35歳 紗子さん)
受験のタイミング、メリット・デメリット
お仕事と育児の両立、素晴らしいですね、お疲れ様です!
毎日頑張っていると、ゆっくり将来について考える時間を確保するのも大変ですよね。今回は受験のタイミングについてお悩みとのことで、情報をまとめてお届けします。とくに首都圏では、小学校受験、中学校受験を考えるご家庭も多く、それぞれいい学校がたくさんあるので悩まれる方も多いでしょう。一方で、共働きの場合はどれくらい親御さんの負担があるのかも大事なポイントです。
今回はそれぞれのメリット、デメリットから考察してみましょう。
小学校受験は幼少期に幼児教室も
早い人は3歳くらいから、一般的には5歳くらいから、小学校受験のための教室に通います。小学校受験を視野に入れ、知育や受験対策を行う教室に通うことで、 基礎学力や社会性を養うことができるでしょう。受験シーズンは年長さんの11月。そこに向けて、最後の1年はペーパー対策や面接の練習をします。
メリット
最新のメソッド、特徴あるカリキュラムを主体的に選択して、恵まれた環境でじっくりと学ぶことができます。エスカレーター式の学校を選ぶことで、大学までの一貫教育を受けることも可能。また、親御さんの手番は多い分、ある程度主導権を持って進路を決定できるでしょう。
デメリット
交友関係も均質になる可能性が高く、自ら外の環境や価値観を取り入れる必要も。また私立小学校の授業料や交際費として、最低でも年間200万円程度は用意する心づもりで。
近年は保育園から小学校受験も増えていますが、幼児教室は平日の午後の授業も多く、送迎の時間を捻出する必要があります。

中学校受験は過熱中!勉強量はずば抜けている
大手塾は3年生の2月から本格的にカリキュラムがスタート。以降は週1から、6年生になれば週3~4日程度通塾するのが一般的。私立中学のほかにも都立・県立の中高一貫校を受検するという選択肢も。ただ、傾向が少々特殊なうえに倍率も高いので、塾で対策して時間と費用を投じるのであれば私立も併願するのが現実的です。
メリット
充実したカリキュラム、施設を持つ学校で、特色ある教育や進学指導が受けられます。「意識の高い仲間や先生に囲まれて将来を考えられる環境にお金を払っている」とおっしゃる保護者の方も。近年増えている総合選抜型の大学受験や推薦入試にも対応している学校が多く、手厚い指導が期待できます。
デメリット
近年の中学受験は過熱傾向にあり、小学生の3年間は塾や受験勉強が多かれ少なかれ生活の中心になってしまいます。サッカーや野球、バレエなどの習い事を本格的にしている場合、工夫が必要でしょう。また大手塾は3年間で200万円程度の授業料がかかります。入学後も、年間100万円程度の授業料や活動費がかかります。通学費や交際費、塾代を含めた資金計画が必要です。

高校受験は、地元の内申制度を攻略すべし
都立や県立高校では、内申書と入試の点数の両方が評価されるので、真面目でコツコツ型のお子さんにはぴったりの入試です。ある程度本人に任せられる年齢なので、親御さんの負担は少ないかもしれません。学力に見合った学校を選べるのも魅力です。難関私立高校を受検する場合は、中学1年生から大手塾に通うお子さんも。
メリット
公立中学校から都立・県立高校に進む場合、授業料は安く抑えられるので、そのぶんを習い事や留学、大学受験の資金に回すことが可能です。さまざまな価値観に触れ、視野を広げることもできるでしょう。コストパフォーマンスは最強のルートです。
デメリット
内申点が学校や先生によって取りやすい、取りにくいがあるように感じる、という声も。また副教科が東京では点数が高く換算されるなど、地域や学校独自の計算方法や割合があり、当日1発勝負ではない難しさもあります。また、大学受験までの期間が3年間と短いので、目指す大学がある場合は高校時代の後半をしっかり受験勉強に充てる意識が必要です。

親子に負担がかかりすぎない選択を!
それぞれ甲乙つけがたい、良いところがありますね。同時にどの受験を選んだとことで懸念点はあります。
都心では早い段階で受験をするご家庭も多く、紗子さんのように不安になるときもあるでしょう。でも基本的にはどのルートも自分次第! 心配しすぎずに、ご家庭の状況を見て親子に負担がかかりすぎない選択をすることが重要です。春は新しい環境がスタート。習いごとや通塾を選ぶときに、将来を想定して選べるといっそう効果的ですね。応援しています!