Paranaviトップ お仕事 転職 転職エージェント 「アイドル卒業の翌日、自由が怖くなった」元・仮面女子リーダーの転職エージェント桜のどかさんが、すべての現役アイドルに伝えたい“未来の守り方”

「アイドル卒業の翌日、自由が怖くなった」元・仮面女子リーダーの転職エージェント桜のどかさんが、すべての現役アイドルに伝えたい“未来の守り方”

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空前のアイドルブームが続く昨今。華やかな衣装に身を包み、ステージを彩るアイドルたち。そのキラキラした姿に憧れる女の子は少なくありません。しかし、アイドルの数だけステージを降りたあとの「セカンドキャリア」のストーリーがあることを、皆さんは想像したことがあるでしょうか。今回は、アイドルグループ『仮面女子』の初代リーダーとして活躍したのちに、現在は芸能活動経験者専門の転職エージェントとして、おもにアイドルのセカンドキャリアを支援している、株式会社ツギステ取締役・桜のどかさんに話を聞きました。ご自身の経験を振り返りながら、現役時代にこそ知っておきたい「未来の守り方」や、芸能経験を社会で活かすためのキャリア戦略について紐解きます。

ステージを降りた翌日に気づいた「人生の長さ」と過去への後悔

——本日はよろしくお願いいたします。以前、取材させていただいたイベント『せかきゃり!サミット』での、桜さんにしか語れないエピソードに感銘を受けました。まずは、アイドルとしてご活躍されていた現役時代のお話から詳しくお聞かせください。当時は、ご自身の卒業後のキャリアについて、どの程度具体的にイメージされていましたか。

お恥ずかしながら、当時はその先のことをまったくと言っていいほど考えていませんでした。365日がライブで、睡眠時間が2時間ということもある目まぐるしい生活の中で、先のことを考える余裕すらありませんでした。また、当時は「芸能界で売れること」以外の未来を考えるのはタブーであるという風潮もあり、目の前のことだけに熱中していたのが正直なところです。

——アイドル人生をがむしゃらに駆け抜けていた中で、卒業を意識し始めたきっかけは何だったのでしょうか。

もともとは俳優になりたくて芸能界に入ったため「アイドルとして最高潮の舞台で卒業したい」という計画が自分の中にありました。大きなきっかけとしては、2015年にオリコンのウィークリーチャートで1位をいただいたこと、そして、その翌年にさいたまスーパーアリーナでの単独ライブを行ったことでした。私としては、そこをアイドル人生の区切りだと考えていたんです。しかし実際にはそこで卒業することができず、実質的に活動を終了できたのは約3年後の2018年末のことでした。

——アイドルを卒業して、その後の人生に危機感を持ったのはどのタイミングでしたか。

それが……卒業した次の日でした。朝起きて、今までのように慌ただしく着替えてライブの準備をする必要がなくなり、突然手に入った「自由」が急に怖くなったんです。それまでの私は30歳くらいまでのイメージしか持っておらず、芸能界で人生を終えてもいいとすら思っていたのですが……いざ“30歳を目前に控えた一人の女性”になったときに「ここから先の人生のほうが圧倒的に長い」と気づき、急激に焦りを感じ始めました。

——アイドル卒業後は俳優としての活動期間を経て、現在の転職エージェントのお仕事へとシフトされました。大きな方向転換だったと思いますが、どのような経緯でのキャリアチェンジだったのでしょうか。

俳優のお仕事も経験しましたが、正直なところ思い描いていた理想像と現実との間にギャップを感じていたんです。そのときに「私にとって芸能界での一番のピークはやはりアイドルだった」と気づき、俳優は自分が向いている職業ではなかったと悟りました。

そんな折、かつて仮面女子で一緒に活動していたメンバー(元・ツギステ代表取締役の橋本ゆき氏)から「周りで就職に困っているアイドルの子がいるから、一緒に支援する会社をやらないか」と誘いを受けたんです。

当時は私自身も将来の人生設計に悩んでおり、その日暮らしを続ける未来に危機感を抱いていました。「正社員として働くことは無理だ」という諦めもありましたが、この事業なら自分自身の未来も、就職に困っているアイドルたちの未来も変えられるかもしれないと思い、本気で取り組む決意を固めました。

アイドル経験はビジネスでも活きる!「スキルの言語化」と逆算のキャリア戦略

——ここからは、現在転職エージェントとしてサポートされている立場からお伺いします。アイドルが卒業する際に、次の進路がすでに決まっている状態を作るためには、何ヶ月前くらいから動き出すのが理想的ですか。

その方にもよりますが、半年ほど前から動き始めるのが理想的ではないでしょうか。いきなり辞めて次の道に進もうと思っても、自分が何をしたいのか、何ができるのかイメージがつかない方が多いはずです。業界や職種について情報収集をし、自分の適性をじっくりと考える期間として半年程度は必要になると思います。

また、事務所との契約で「何ヶ月前に退所を申し出なければならない」といった規定があることも多いため、事務所へも早めの相談が不可欠です。ただ、卒業してからご相談に来られる方も多く、最短で1ヶ月半ほどで就職が決まるケースもありますので、卒業後から転職活動を始めても決して遅すぎることはありません。

——転職においては一般的にも「35歳限界説」といったことが囁かれていますが、年齢の壁についても率直にお聞きしたいです。一般企業での就労経験がないアイドルの方が、未経験として就職に挑戦しやすい年齢のラインはあるのでしょうか。

25歳が一つの大きな区切りになります。企業側も第二新卒やポテンシャル採用として受け入れやすい年代ですし、実際に相談に来られる方も25歳前後が非常に多いです。またアイドル業界においても「25歳定年説」が囁かれていますが、就労経験のない方の就職活動のリアルを見ても、あながち間違っていないと思います。

とはいえ、アラサー世代でのキャリアチェンジは決して不可能なことではありません。ただ、年齢が上がるにつれてエントリーできる企業の選択肢や条件が変化していくのも、一つの事実です。

過去に私たちが伴走した事例でも、30代での初就職で1年越しに内定を掴み取られた方がいらっしゃいます。何度も壁にぶつかり、途中で心が折れそうになる瞬間もありました。しかし、決して諦めることなくご自身の「本当の強み」と向き合い続けた結果、法人向けサービスを展開する企業の事務職への正社員就職に成功されました。

就職活動には気合いと粘り強さが必要ですが、目標に向かって走り続けるその熱量こそが、アイドル経験者の大きな強みでもあります。

——「履歴書に書けることがない」「私にはスキルがない」と悩む元アイドルの方も多いと思います。アイドルの日常業務をどのようにビジネススキルとして言語化して、企業にアピールしていますか。

求職者がこれまでアイドル活動の中で何を一番頑張ってきたかを深掘りしていくと、立派なビジネススキルに変換できます。例えば、一人ひとりの目を見てファンへの神対応を心がけ、長く応援してもらえる関係性を築いてきた方は、高い「対人スキル」や「コミュニケーション力」を持っています。

ステージでのパフォーマンスに命をかけ、映像を見て日々研究し、メンバーに調整を促していたような方は「マネジメント力」や「課題解決力」を備えています。また、ワンマンライブを成功させるためにビラ配りやSNSでの発信を毎日続けていた方は、「企画力」や「継続力」「集客力」に長けていると言えるでしょう。そうした経験をビジネスの言葉に置き換えて、企業に伝わるようにお手伝いをしています。

——具体的に、元アイドルの方が活躍しやすい職種などはあるのでしょうか。

現在、私たちがご紹介する中で最も多いのが「人事」のお仕事です。人事の業務は、採用活動や組織づくりなど、人と向き合うことが基本になります。アイドル時代に幅広い年代の方とコミュニケーションを取り、初対面で相手の心を掴む経験をしてきた彼女たちは、面接などで候補者を見極めたり、自社の魅力を発信したりするポジションに向いています。自分自身の魅力をアピールしてきた経験を、今度は「会社の魅力」を伝えることにスライドさせて、人事として活躍されている方は多いですね。

同様の理由で人事以外にも、営業・広報なども向いている方が多いと言えます。

——企業側からは、元アイドルの方のどのような点が評価されていると感じますか。

第一印象の良さや愛嬌、人柄といった部分は非常に高く評価されているポイントです。あとは何より「目標達成への意欲」ですね。「ライブハウスを満員にして、次はもっと大きな会場を目指す」といった明確な目標に向けて努力してきた経験があるため、仕事においても目標を与えられると燃える方が多いのです。加えて、物怖じせずに初対面の人と信頼関係を築くことができるコミュニケーション能力は、どの企業に行っても重宝されています。

アイドル活動に本気で取り組むことが、卒業後の自分を救う

——もし今の桜さんが、アイドル現役時代のご自身に言葉をかけるとしたら、どのようなアドバイスを贈りますか。「あのときこうしていればよかった……」と思うのは、どういったことでしょうか。

「もっと幅広い知識を得て、いろいろな人と交流を持っておいたほうがいいよ」と伝えたいです。当時の私は、上の人の言うことを真面目に聞き、敷かれたレールの上を一生懸命に走る人生でした。メンバー同士ですら連絡先の交換が禁止されているほど、大切に守られていた環境ではありましたが、それゆえに外部との繋がりをほとんど持つことができず、孤独に過ごした時代でもありました。だからこそ、もっと外の世界を知り、多様な価値観に触れておくべきであったと強く感じています。

とはいえ、現役アイドルがいきなり業界外の社会人の方々と交流を持つことは簡単ではありません。ですから、まずは今の環境での人間関係を大切にすることが、未来の自分を救う第一歩だと思います。運営スタッフとどう関わるか、メンバーの中で自分はどういうポジションを取り、どう接していくか……そういったことを本気で意識するだけでも、立派な社会経験になります。

そして何より重要なのは「アイドル活動を全力でやり切る」ということです。ただ漠然と日々の活動をこなすのではなく「何のためにこの活動をしているのか」という目的意識を持ってほしいと思います。

例えばSNSを更新するにしても、漠然とかわいい自撮りを載せるだけでなく「どんなターゲットに見てほしいのか」「グループを売るためにどう活用するのか」といったことを、自分の頭で考えながら動くことが大切です。誰かに言われたからやるのではなく、主体性を持って全力で取り組むことは、結果的に“社会で活きるスキル”としても繋がっていきます。

——卒業時に笑顔で次のステージへ進める子と、そうでない子の決定的な差はどこにあると感じられますか。

やはり、アイドル活動に後悔がないくらい全力で打ち込めたかどうかが一番の差になるのではないでしょうか。真面目に一生懸命活動してきた方は、ファンの方々はもちろん、事務所のスタッフやメンバーからも愛されます。周囲に惜しまれながら、笑顔で卒業していくことができるのです。

私自身も現在の転職支援の仕事について、アイドル時代のファンの方から「リーダーがやる活動なら安心だね」と言っていただけたり、今応援している現役アイドルの方にツギステを宣伝していただけたり(笑)、そんなふうに卒業後もあたたかく応援していただけるのは、アイドル時代を全力で駆け抜けたからこそだと思っています。

一方で、未練を残してしまったり、環境のせいにしてしまったりする方は、結果的に自分の努力が足りなかった部分を見つめ直す時間が、後から時間差でやってきます。全力でやり切ったという自負が、そのまま社会に出たときの自信へと変わっていくのだろうと感じています。

——ここはタブーの領域かもしれませんが……あえて聞かせてください。アイドル卒業後のセカンドキャリアとして、キャバクラなどのいわゆる“夜職”を選択する方も多いと伺いました。その現状についてはどうお考えですか。

近年はとくに、気軽に働き始められるコンカフェなどを選ぶ方が多いようです。それ自体は悪いことではありませんし、本人が望んで選択しているのであれば尊重されるべきです。「まずは目の前の生活をなんとかしなければ」という焦燥感は、私も痛いほどにわかります。しかし実態としては、単なるポジションチェンジをして「その日暮らし」を続けていることに変わりありませんし、結果としてキャリアの悩みを先延ばしにしている状態に陥ってしまいます。

そうすると、30歳の節目などで自分の年齢をリアルに実感したり、結婚や出産を意識したりといったタイミングで「この仕事をずっと続けられるのか」と、再びキャリアの壁や計り知れない不安と向き合うことになります。加えてその頃には、就職の難易度もますます上がってしまうのです。

それならば、若くてポテンシャルがあるうちに企業に入って、一度は社会人を経験してみることをおすすめしたいです。企業は、想像以上に自分を成長させてくれる環境だと思います。そこでスキルを身につけてから、次にやりたいことを見つけたり独立を考えたりしたほうが、結果的に人生の選択肢が大きく広がっていくはずです。

——生々しい現実ですね。実際に就職を成功させた方が、その後どうしているのかも気になります。企業で働いている元アイドルの方々からは、どのような声が届いていますか。

「社会に出る自信がない」「自分は社会不適合者だ」と思い込んでいた方たちが、就職して1ヶ月もするとガラッと表情が変わるんです。「毎日朝起きられないと思っていたけれど、全然余裕でした」「あのとき背中を押してくれて、人生が変わりました」といった話を、キラキラした目で語ってくださいます。それが嬉しくて嬉しくて……。

また、一般社会に出たことで出会う人が変わり、交流の幅が広がったことで「初めて結婚や将来のライフプランを具体的に考えられるようになりました」と報告してくれる方もいます。安定した収入を得て、しっかり休みを取り、旅行の計画を立てられるといった「普通の幸せ」を心から噛み締めて喜んでいる姿を見ると、私自身も本当に支援をやってきてよかったと感じます。

——最後に、今まさにステージで夢を追いかけている現役アイドルの皆さんへ、メッセージをお願いします。

ステージに立ち、夢を追いかける時間は本当に尊いものです。一度降りてしまえば、もう一度立ちたいと願っても簡単に戻れる場所ではありません。だからこそ、今立っているステージや、応援してくださるファンの方々、支えてくれる周囲の皆さんを大切にして、目の前の夢に向かって全力で突き進んでほしいと思います。そのひたむきな努力と覚悟は、ステージを降りた後の長い人生において、必ずあなた自身を助けてくれる武器になります。決して自分の可能性を諦めず、自信を持って輝き続けてください。

桜 のどか(さくら のどか)●「仮面女子」の初代リーダーとして約9年間アイドル界を牽引。年間1,000本以上のライブやさいたまスーパーアリーナ単独公演、オリコン1位などを達成後、俳優へ転身。自身の引退後の葛藤や元メンバーからの相談を機に、セカンドキャリアを支援する株式会社ツギステの立ち上げに参画。現在は同社取締役として、元アイドルなどエンタメ業界に身を置いた人々の「次の輝き方」をサポートしている。

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