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妊娠9カ月のときに起業。「毎日ヘトヘトだけど、どんな状況でも挑戦できることを示したい」

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株式会社SEAM代表の石根友理恵さんは2017年、第一子の妊娠中に会社を設立。仕事で忙殺される日々と2度の流産の危機を乗り越え、同年に長女を出産しました。起業を決意したものの、成長していく娘を見て「子どもと過ごす時間を削ってまで仕事をする理由はなんだろう」と自問自答するように。母としても経営者としても“自分が納得できる生き方”を見つけるまで、1年ほどかかったと言います。3歳児の子育てをしながらスタートアップ企業の経営に日々奮闘している石根さんに、悩みや葛藤との向き合い方、そして叶えたい未来の姿について話を聞きました。

6kg痩せた苦しいつわりと臨月中の危機を乗り越え出産

石根友理恵さん

――まずは事業内容について教えてください。

「和もん」というお酢とだしとベースにした和ピクルスのD2Cブランドの製造・販売をしています。2020年6月からスタートし、クラウドファンディングでは約3,000食を完売しました。リリース後はオンラインだけでなく、デパートでポップアップストアを開催したり、飲食店とペアリング企画を立ち上げたりするなど、さまざまなコンテンツを発信していきました。去年末には資金調達をして採用を強化し、新ブランドの開発にも注力しています。

石根友理恵さん・商品写真

和ピクルス「和もん」 出典:和もん

――石根さんは妊娠9カ月のときに起業されたんですよね。妊娠中に会社の立ち上げをすることに不安はありませんでしたか?

なんとしても両立するつもりでした。しかし、気持ちとは裏腹に体調は芳しくなく……。特につわりが辛かったです。最初の2ヶ月は15分ごとに吐いてパソコンの前に戻って、の繰り返し。6キロほど体重が落ちました。さらに仕事によるストレスや不規則で栄養の偏った食事により、赤ちゃんがお腹の中で育たない「胎児発育不全」になりました。赤ちゃんに栄養を送るため、たくさん食べてたくさん寝るようにして、なんとか体重を5キロ増やし、出産することができました。

今考えると、「出産後すぐに復帰できない」という焦りから、前倒しで仕事を詰めてしまったのがよくなかったですね。もし二人目を妊娠したら、周囲の人に安心して仕事を任せられるような組織体制にするつもりです。

「こうあるべき」に振り回されて自分が見えなくなった

石根友理恵さん

――出産を経て、仕事に対して意識の変化はありましたか。

実は最初は、YouTubeを使った知育事業を展開していました。しかし、妊娠や出産の経験を経て、“食と身体”、“食とメンタルヘルス”の関係性を身に染みて感じました。さらに父が食欲不振で体が弱くなり若くして亡くなったこともあいまって「食というアプローチで社会に価値を創りたい」という思いが強くなったんです。その結果、私自身も好きで栄養素の高い“お漬物”のD2Cに転換することにしました。 

――お子さんの存在が事業の方向性に大きく影響していたんですね。子育てをしながら会社経営を行う上で、苦労に感じたことはありましたか。

物理的に時間がないというのもありますが、それよりも周囲の人の声が気になり、自分を見失ってしまったことが辛かったです。家族や友人など身近な人にも「子育てはこうすべき」「経営者はこうであるべき」とたくさん言われて。アドバイスをいただけるのはとてもありがたかったのですが、「じゃあ自分はどうしたらいいんだろう?」と自分の進む道がわからなくなってしまいました。子どもがいて好きな仕事をしているのに全然幸せじゃない。未来が見えず、長いトンネルに入っていました。 

――先が見えない長いトンネルから抜け出せたきっかけはなんですか。

子どもが1歳になるころ、世の中にある「こうすべき」というという考えは妄想だと思ったんです。周囲の声に振り回されて、その中から答えを探そうとしていました。でも、私とまったく同じ状況の人はいません。最終的には、“自分がどうすべきか”がいちばん大事だと気づいたんです。そう思ったら、ふっと気持ちが軽くなりました。 

正直、仕事と子育てを両立できているとは思っていません。夜遅くまで会議が入って子どもに向き合えなかったり、子どもが熱を出して打ち合わせを代打してもらうこともしょっちゅうです。常に葛藤はあるし、悩みは尽きません。出張先に子どもも連れて行ったり、打ち合わせ先の近くのベビーシッターに預けたりなど、かなり無茶なこともやってきました……。だから今でも周囲の意見に惑わされて気持ちが揺れることはあります。それでも、最終的には主体的に自分で決めるようをモットーにしています。

経営者として挑戦し続けて誰かのロールモデルになれたら

石根友理恵さん

――家族間で子育てや家庭のルールはありますか。 

我が家は完全シフト制。月・水・金は私が、火・木は夫が育児を担当し、ほかの曜日はそれぞれ自由に過ごします。土日は相談しながら分担しています。

自由に過ごす日は基本的に仕事をしますが、「疲れたー」と思うときはサウナに行っています。ついストイックに行動してしまいがちなのですが、心と体のバランスをとるためにたまに息抜きを挟んで自分を労る時間も大切にしています。

――ありがとうございます。最後にこれからお子さんも会社も成長していく中で、今後子育てと仕事を両立するためにやりたいこと、目標にしていることなどあれば教えてください。

子育てに関しては、子どもの人生だから自分の好きなように生きてほしいです。1つあるとすると、しっかり自分で考えて自分で決めれる人間になってほしい。そのためにそばにいて子どもの未来の可能性を一緒に探していきたいです。最近は「私も漬物屋さんになる」と言ってくれているので、もしかしたら後継者になるかもしれません(笑)。

事業に関しては、女性としての働き方の1つの参考になりたいと思っています。女性はライフイベントに応じて、選択しなければいけないタイミングや優先順位を決めないといけないことがやっぱり多い。けどそれ自体が社会の固定概念だと思うんです。何かを諦める選択をしなくていい方法を探したい。私は会社を大きくして、「どんな状況でも挑戦できる」ということを体現し、誰かの希望のひとつになれたらうれしいです。

石根 友理恵(いしね ゆりえ)●神戸大学卒業後に新卒でサイバーエージェントへ入社、その後株式会社ワンオブゼムに転職し、デジタルマーケティング、PRに従事する。2017年に株式会社SEAMを設立。「ココロとカラダを満たす食体験を創る」をミッションとし、食のD2Cサービスを展開している。

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橋本岬
Writer 橋本岬

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