Paranaviトップ ライフスタイル 趣味 温泉オタク・永井千晴さんに聞く「本当に好きなことでパラキャリするために、私が大事にしていること」

温泉オタク・永井千晴さんに聞く「本当に好きなことでパラキャリするために、私が大事にしていること」

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「温泉オタク」こと永井千晴(ながち)さんは、趣味を生かしたパラキャリ女子。これまでに回った温泉地は約500Twitterフォロワーは2.2万人、そして2020年には書籍『女ひとり温泉をサイコーにする53の方法』を出版と大活躍中です。温泉という趣味をキャリアに昇華できたのはなぜだったのか、その秘訣をたずねると「パラキャリしようと、頑張ってやってるわけじゃないんです」とあっさり。でも、そんなながちさんの爽やかな笑顔の裏には、確固たる“信念”がありました。

大学を休学して、全国の温泉を回った日々

――「温泉オタク」のながちさん。温泉との出会いは、いつだったんですか?

大学生のとき、アルバイトで「温泉JAPAN」というメディア(※)の運営にかかわったのが始まりです。運営元の社長に「温泉メディアをつくったから、載せる記事を書いてよ」と言われて、ライティングするようになりました。それまでもブログを書いたりしていて、書くことは好きでしたが、温泉に行った経験はたぶん5回くらいだったと思います。そこから大学を休学して、1日2〜3件の温泉を回ってレポート記事を書く日々が始まりました。
※現在は閉鎖

――え、バイトで温泉をめぐるために、大学を休学したんですか!?

はい。今もそうかもしれませんが、当時は大学を休学して留学したり、世界一周したりするのがはやってたんですよ。私は海外じゃなくて日本の「温泉」に焦点をあてるのが面白いかなと思って、挑戦することにしました。車中泊したり、事故ったりという大変な毎日を乗り越えながら、半年かけて巡りました。若いころにこういう経験をできてラッキーでした。今じゃ絶対できませんね。

――すごいストイック……。20歳と若いにしても、辛くなかったですか?

辛かったですよ! でも、途中で投げ出して帰ったらダサいなって。それに、1日23件回る生活を続けていると、さすがにだんだん温泉の個性とかお湯の違いがわかってくるんです。記事を書かなきゃいけないので、細かいところまで観察しますから。そうしてるうちに、温泉って面白いな、知らない温泉に出会うって幸せだなと思うようになりましたね。

「パラキャリしよう!」って頑張ってるわけじゃない

――その後はどうされたんですか?

2年間、「じゃらん」で働きました。リクルートには今でも思い入れがあります。で、雑誌編集の仕事をしているうちにメディアの仕事に興味がわいてきて、新卒の就職先にはヤフーを選びました。日本でNo.1のプラットフォームであるYahoo!ニュースで、メディアを学んでみたいなと思って。ヤフーで丸3年働いたあと、CHOCOLATE Inc.に転職しました。今の担当はキャラクター事業で、すごく楽しいし、充実しています! ヤフーにいたころとはまったく違う畑ですが、毎日考えられることやできることがどんどん増えていって、やりがいがありますよ。

――CHOCOLATE Inc.でのお仕事と、温泉のお仕事がクロスすることはありますか?

本業と温泉の仕事が重なり合うことはないし、そうさせる気もありません。まずは本業をしっかり頑張って、この道でキャリアをつくっていきたい。そしてそれとはまったく別に、「やたら温泉に詳しい人」っていう一面を持ち続けていたいんです。

――複数の仕事をクロスさせたいという人が多い中、ながちさんは珍しいかもしれません。ながちさんのパラキャリ熱はどこからくるんでしょうか?

私、「パラキャリしよう!」と思って頑張ってやってるわけじゃないんです。だから、温泉の仕事は辛くならない程度に、受けたいものを受けるって決めています。お受けするのはだいたい、いただくお話の半分くらいでしょうか。レギュラーでしている仕事は、月1の連載だけですし。週7でフルに働き続ける気力は、さすがにないかも。

「温泉初心者の女性」に寄り添っていきたい

――そうおっしゃいますが、著書はすごく充実した内容です。300ページ以上あって、「おすすめ温泉チャート」までついていて読み応えがありますよね。

ありがとうございます! エッセイ的な内容なので、土日で書き上げることができました。この本は温泉玄人向けじゃなくて、「ガイドブックより少し詳しい情報が欲しいけど、玄人っていうほどじゃない」という方々をターゲットにしています。だから1章ごとの内容が軽めになっていて、それが書き上げられた秘訣だったかも。

――確かに、温泉のプロが読む本はどれも難しそうです……。

私はこれまで500くらいの温泉に入りましたが、1000、2000入っているプロもたくさんいる。500程度で本を出すなんてチャレンジですけど、でも、私だからこそ書けるものがあるかもと思いました。プロ向けの本ももちろん貴重ですが、初心者が読むにはハードな内容が多いので。私はあくまでもターゲットに寄り添って、「いいお湯かついい宿」を紹介し続けていきたいと思っています。

ひとりなら、温泉もそれ以外も、自由に楽しみ放題

温泉オタク・永井千晴さんに聞く「本当に好きなことでパラキャリするために、私が大事にしてること」

ながちさんの本「女ひとり温泉をサイコーにする53の方法」(幻冬舎)。温泉初心者向けのやさしい内容ながら、ながちさんの「温泉愛」がダダ漏れ。読み応えばっちりの一冊です!

――「女ひとり温泉」だからこそのメリット、おすすめの楽しみ方などについて教えてください。

なんといっても「いつでも何時間でも、温泉に浸かっていられること」です。家族や友達と行くと、集合時間に約束があったりして、100%気ままに過ごせるわけじゃないですよね。そこから自由になれるというのはすごく大きいです。温泉以外の部分でも、ひとりで行けば思うままに過ごせていいですよ。スマホでだらだらネットサーフィンしたり、Netflixを見たり、ソシャゲに没頭したり。

私なら温泉が優先順位No.1なので、グルメや観光地めぐりは二の次。愛媛に行って松山城には寄らず道後温泉だけ行くとか、長野では善光寺に行かず湯田中に直行とか。ひとり温泉なら、こういう「温泉ファースト」な旅程だって、好きに組み放題です。

――コロナ禍で、温泉の楽しみ方は変わりましたか?

こういうご時世ですし、少し高めの“憧れ宿”にこもるのが好きになりました。値段でいうと、だいたい2万円台後半からでしょうか。予定を詰め込みすぎないのがポイントです。1泊2日で行くなら、チェックインに間に合うように行って、チェックアウトの時間になったら宿を出る、それだけ。「せっかく来たのに」って動き回りすぎると、次の日まで疲れちゃう気がしています。

マイルール「温泉の仕事で稼いだお金は、温泉で使う」

――大事にされているマイルールはありますか?

「温泉の仕事で稼いだお金は、温泉で使う」です! 私の温泉の仕事は「温泉に浸かって幸せだった」「泊まった旅館が素晴らしかった」という経験を生かしているものだからです。これからもっといろんな温泉に行って、お金を落とすことで全国の温泉を盛り上げていきたいし、私自身の経験も増やしていきたい。基本は「推しの温泉・旅館に課金する」っていう気持ちでやっています。

――か、かっこいい……。特定の温泉に肩入れしたくなりませんか?

いえ、あくまで会社員として働くかたわら、温泉が好きで通っている人というスタンスを守りたいです。例えば私が無料で接待を受けていたら、私の発信する情報は全然信用されなくなっちゃいますよね。中途半端に甘い汁を吸って、自分の情報価値を下げるのは嫌なんです。

――ながちさんのように、趣味を生かして自分らしく生きていくためのコツを教えてください!

コツは「ディスらない」こと! 好きなことで長く活動していきたいなら、なるべく敵をつくらないのが秘訣です。私は「今回の宿、正直イマイチだったな」と思ったら、SNSに書きません。「好き」を言うだけなら頭を使いすぎる必要がなく、低カロリーで書けるメリットもあります。あくまでも真摯に「私はこれが好き! みんなこれを見て!」って、好きな気持ちを表現していくだけで十分ですよ。

>ながちさんのnoteはこちら

永井千晴(ながい ちはる)●学生時代に温泉メディアのライターとして、半年間かけて日本全国の温泉を取材。その後、旅行情報誌「関東・東北じゃらん」編集部に2年在籍し、「人気温泉地ランキング」などの編集を担当。退職後は別業種で会社員をしながら、経験を活かしてTwitterやnote、各種メディアで温泉の情報を発信している。著書『女ひとり温泉をサイコーにする53の方法』(幻冬舎、2020)。現在も休みを見つけてはひとり温泉へ出かける、市井の温泉オタク

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さくら もえ
Writer さくら もえ

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