11月になり、肌寒い日が増えてきましたね。この時期になると、毎年なんとなく鬱々とする、気分が晴れない、落ち込みやすくなる……心当たりがある方も多いでしょう。実はそれ、「季節性うつ病」のせいかもしれません。予防や改善のため、気をつけるべきことについてご紹介します!
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「季節性うつ病」って何?
季節性うつ病とは、1984年に精神科医のノーマン・E・ローゼンタールらにより「冬季うつ病」として報告された精神疾患です。毎年、寒くなる秋から冬にかけてうつ症状が現れ、春先の3月ごろになると症状が改善するというパターンを繰り返すのが特徴です。
普通のうつ病と違うのは、季節が関連しているということ。日照時間が短くなる秋や冬に多く、「冬季うつ」「ウインターブルー」とも呼ばれます。
冬以外の季節で、周期的にうつ病が発生するパターンも存在します。例えば、梅雨は気圧の変化が顕著で、また雨が多くなり日照時間が減ります。それらが原因でうつになることもあります。夏は暑さや、エアコンの使いすぎによる自律神経の乱れ、睡眠リズムの崩れなどによってうつ病を発症しやすくなることが考えられます。
また季節の変わり目も発症しやすくなるなど、秋〜冬以外の季節でもリスクが高まる原因はいろいろとあります。冬に限らず、毎年決まった季節に情緒が不安定になりやすい、沈みやすいというケースを含めて「季節性うつ病」と呼ばれます。
季節性うつ病になりやすいのはどんな人?
季節性うつ病は、女性の方が男性よりも約3倍かかりやすいといわれています。原因としては、女性ホルモンが影響していることが考えられ、とくに月経のある年代でかかりやすいとされます。
また、病態には日照時間が関わると考えられているので、曇りや雨、雪の日が多い地域で発症リスクが高まるといわれています。海外を見てみると、晴れの日が少ないイングランドでは、100人に3人が深刻な季節性うつ病に悩まされています。
症状は?普通のうつと違いはあるの?
季節性うつの基本的な症状は、一般的なうつ病と同じです。「DSM-5」という精神科の診断基準でも、従来のうつ病の季節型として取り上げられ、「冬季に限定した抑うつエピソードが最近2年間連続していること、過去の冬季の抑うつエピソード数が非季節性エピソード数を十分上回っていること」が最低基準とされています。
ただし、季節性うつ病では、過眠や過食、体重増加、意欲がわかない、なんとなくやる気が出ないなどの症状が出やすくなります。さらに詳しくみていくと、夜の睡眠時間が長く日中の眠気が多くなったり、午後から夜にかけて炭水化物や甘いものを食べたくなったりする傾向があるようです。
季節性うつかも…改善方法2つをご紹介
① 日光を浴びる
季節性うつ病の一因に、日光を浴びる時間が少ないことがあげられます。日光を浴びると、体内で「セロトニン」という物質が分泌されます。セロトニンは一般に「幸せホルモン」と呼ばれるもので、聞いたことがある人もいるかもしれません。私たちが「うれしいな、楽しいな、幸せだな」と感じるために必要なホルモンです。
またセロトニンは、睡眠ホルモンである「メラトニン」の原料でもあります。メラトニンは睡眠・覚醒に大きく関与しています。朝起きて、まず部屋のカーテンを開けるのが健康にいいとされるのは、日光を浴びることでメラトニンによる体内の睡眠リズムを整えられるからなんですね。日光を浴びるのは、ただ気持ちいいだけじゃなく、睡眠リズムの調整という意味でもすごく大切なんです。
これらのホルモンを不足させないようにするため、日光に当たる時間を増やすほかに、光を当てる治療(光治療)もあります。手軽にできる方法としては、自宅にいても日中はなるべくしっかり電気をつけて明るくしておくこと。これも、意外と効果があります。
② 食事を見直してみる
セロトニンを体の中で作り出すために、食事を改善してみましょう。まずは、3食しっかり食べること。これは健康に生きるための、基本中の基本です。朝食でセロトニンづくりに必要な栄養を摂ることは、その日一日の生活を左右しますし、朝に食事をすることで生活リズムを整える効果、急な血糖上昇を抑えてアンチエイジングする効果もあります。
季節性うつ病の症状として「過食」が出た場合、ごはんや麺類、パンといった炭水化物を特に強く食べたくなる傾向があります。しかし、セロトニンの材料はアミノ酸に含まれるトリプトファン。ですので、アミノ酸を効率よく摂取できる肉や魚を多く食べましょう。
といっても、なかなか時間をとれない忙しい方にオススメする朝食は、ズバリ「バナナと牛乳」です。牛乳に代表される乳製品は、トリプトファンを豊富に含んでいます。バナナは、トリプトファンの含有量は100g中15mgとそれほど多くありませんが、セロトニンの材料となるビタミンB6を含んでいるので、効率よくセロトニンを分泌できます。また、魚介に多く含まれる「グリシン」には睡眠を助ける作用があるので、魚を夜に食べるのもいいでしょう。
とはいえ、普段から適度な量とバランスを保った食事を心がけることが大事です。季節性うつ病になりやすい方は特に、これからの季節の食事に気を付けましょう。
それでも治らない場合、専門家に相談を!
体調が悪いまま、春になるまでじっと待ってるだけじゃあまりにももったいない! 規則正しい生活をして、それでもなかなか調子が戻らないときは、メンタルクリニックを受診することをオススメします。病院にかかったからといって必ず薬を飲まなきゃいけないわけではないですし、漢方でもじゅうぶんな効果が出るケースも多いです。
できるだけポジティブな気持ちで、笑顔で毎日を楽しみましょう!
木村 好珠(きむらこのみ)● 精神科医、漢方医、産業医、健康スポーツ医。学生時代からタレント活動を始める。現在精神科医として常勤する傍ら、都内企業の産業医、ブラインドサッカー日本代表のメンタルアドバイザーを行なっている。最近は、アカデミー年代のメンタル育成の普及について積極的に取り組んでおり、レアル・マドリード・ファンデーション・フットボールアカデミーやMIFAサッカースクールのメンタルアドバイザーとしても活動中。