哲学って、なんだか難しそうなイメージがありますよね。でも実は、私たちの毎日の中に「哲学」が生きる場面はたくさんあるんです。大人の教養として、哲学の基礎を知っておきたいところ。今回はフランスの哲学学者・Emma Careniniさんに、ハリウッド映画から「パラナビ読者の日常生活に生きる、哲学の考え方」を紹介していただきました! Emmaさんから日本の女性へのメッセージYouTubeはこちらから。
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哲学は、永遠に終わることのない、答えのない議論
ーー哲学は、なんとなくとっつきにくいイメージがあります。
パラナビ読者の皆さんは、哲学に対して難しいイメージをもっているかもしれませんね。哲学は、とても実践的で具体化された、楽しい学問なんです! 哲学では、すべての理論が並行して存在しています。それは、真理・死・時間・人生の意味・正義などに関する、永遠に終わることのない、答えのない議論で、科学とは違います。
哲学の世界では、プラトン(古代ギリシアの哲学者)・アリストテレス(プラトンの弟子)・スピノザ(オランダの哲学者)といった偉人たちがいます。そして彼らが、今を生きる私たちに生きるヒントを与えてくれているのだと考えます。私たちには、過去の偉大な哲学者から学べることがたくさんあります!
私はハリウッド映画を哲学の視点から解説するYouTubeをやっていて、それが少しでも、若い人たちに哲学の面白さを知ってもらうきっかけになることを願っています。ハリウッド映画を通して哲学を学べれば、みなさんも、哲学をもっと身近に感じてくれるかもしれません!
日本の若者をむしばむ「文化的冬眠」の波
今、パラキャリをスタートさせる若い世代には「文化的な冬眠」という現象が起きていると思います。みなさん、1日のうち数時間は、スマートフォンを見たり、SNSをしたりして過ごしているようですが、それはあまり建設的ではありませんね。私は今、この状況を改めて見直し、問い直す時がきていると考えます。
私が取り上げている映画も、文化の1つ。映画は、胸がワクワクドキドキしたり、おしゃれな映像を楽しんだりするだけのものではありません。映画という芸術作品を通して、世界の見方や倫理観などを知ることもできるんです。
例えば、1997年のアメリカSF映画『ガタカ』。私のYouTubeチャンネルに載せた動画では、ドイツの哲学者であるユルゲン・ハーバーマスの理論を使って、優生学を痛切に批判しています。※優生学:人類の遺伝的素質を改善することを目的として、劣った遺伝的形質を淘汰し、優良なものを保存することを研究する学問のこと。
EmmaさんのYouTubeチャンネル映画『ガタカ』:子どもが産まれる前に遺伝子操作を行うことで、より優秀な人間を造れる……という近未来の設定。あらすじはこちらにまとまっていますので、興味のある方はぜひ!
今、私たちが「哲学を学ぶ」意味
ーー哲学を学ぶことは、私たちの社会生活にどう生きるのでしょうか?
哲学を学ぶことで倫理的に、そして理性的に考えることができるようになります。それがバランスのとれたメンタルにつながり、自分の考えをはっきりと明確にできるようになります。情報があふれ、決まった答えのない時代だからこそ、そしてパラレルにキャリアを築くためにも、「思考力」は大切なスキルです。
ーーEmmaさんは最近、本を出版されたそうですね!
はい、これまで何冊かの本を出版しました。私の生徒たちに向けた哲学に関する学習本と、「太陽の歴史について」の本です。日本の四字熟語で「森羅万象」という言葉がありますが、太陽の概念の歴史を調べること、つまりこれまでの西洋社会における、私たちと自然光との関係性を研究することは、とても興味深いことです!
なぜならば、太陽の光の意味を考えるとき、西洋の哲学の概念だけでは、この世界のすべての真理の答えを出すことはできないからです。いずれは、東洋における「太陽の概念の歴史」に関する本も出版しなくてはなりませんね!(日本はまさに、「日出ずる国」ですね!)
ーーEmmaさん、ありがとうございました! 今後人類が哲学的な思考をし続け、社会問題や環境問題が深刻化する昨今の世界に、何に解決法と和平と光を見出すのか? ライターYuriaが運営する未来人間フォーラムも、この世界の真理を西洋と東洋両方の視点も重ねて、問いを投げかけ続けることが大切だと考えています。
Emma Carenini●南フランス・グラッセ出身。パリのソルボンヌ大学哲学科を卒業後、現在は哲学の学者として、パリにて教鞭を執りつつ、本の執筆活動を行う。さらに、哲学を若者により身近に興味を持ってもらうため、YouTuberとしてハリウッド映画を哲学の視点で解説する動画を配信。お気に入りの場所は、南フランスとモナコのカジノ・ド・モンテカルロ。