「これからは、100歳まで生きる前提でキャリアを考えなければならなくなる」強烈なメッセージを世界に放った『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』から約5年。「少子高齢化って言われているし、寿命は延びているのかも」「コロナ禍を経て、働き方が変わってきている気もする」そんな予感をもっているライフシフター予備軍の皆さんへ。キャリア戦略実践編となる続編、『LIFE SHIFT2 100年時代の行動戦略』をご紹介します。
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人生計画は、「一度立てたら終わり!」じゃない
前作の『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』が人生100年時代を生きる教科書だとしたら、本書はより実践的な「参考書」です。本書には、20代の日本人カップル・ヒロキとマドカをはじめとして、様々な国籍・年齢・キャリアのキャラクターが登場。彼らが向き合う現実と課題(結婚・出産、就職、クビ、老後……)をひもときながら、今後のキャリアプランを考えていきます。
次第に分かってくるのは、人生100年時代において、キャリアプランは何度も「見直し」を繰り返さなければならないということ。
これまでは、多くの人にとって「教育」「仕事」「余生」という3ステージの人生を送ることが一般的でした。しかし現代人が100歳まで生きるとすれば、65歳で定年退職し引退生活に入ってしまうと、体力・気力ともに元気な年ごろに社会生活の基盤を奪われてしまうことになります。年金制度を過剰に信用しなければ、老後の資金計画も心許なくなるでしょう。
長寿生活を楽しむためには、「仕事」期間を延長したり、複数の仕事を同時進行させてリスクヘッジしたり、「教育」にもう一度取り組んだり……。人生をマルチステージでとらえ直し、これまでより短いタームで、プランの見直しをする必要があるのです。
人生計画のスクラップ&ビルド。カギは「豊かな人間関係」
シンプルな3ステージ人生が定番だった時代と比べて、私たちの人生は複雑であいまいで、安定しないものになるのでしょう。「良い企業に入ればいっちょ上がり」ではないし、大学卒業して数十年たってから「新しい技術を身につけないとクビ」と言い渡される可能性もあります。
それは大変なことでもあるけれど、裏を返せば、「選択肢と時間的猶予が増えた」ということでもあります。これまで年齢や制度がハードルとなり、キャリアにおける「自己像(こうなりたいというセルフイメージ)」は個人の希望に関わらず制限されてきました。人生が拡大したことにより、私たちの選択肢は格段に多様化しています。
もちろん、選択肢だけがあっても仕方ありません。本書の中では、経済的な基盤とともに、二種類の「人的ネットワーク」をもつことが大切だと書かれています。
家族やパートナーのような近距離の人間関係においては、とにかくコミュニケーションの頻度と深度を高めていくことが大事。従来の日本社会のように、男女の役割・キャリアの進め方が画一化されていた時代とは違うので、「今、自分は何を求めているのか」とこまめに相手に伝える努力がよりよいパートナーシップにつながるのです。
そして、世代や業界を超えてつながるもっと広い人間関係もあります。たとえば、家族でも友人でも同僚でもない、学びや出会いのきっかけになるコミュニティに属すること。
マルチステージ化する社会においては、大学で60歳のクラスメイトと席を並べるかもしれないし、セカンドキャリアで年下の上司のもとで働く可能性だってありえます。これまでは関わりの薄かった人たちと共存する社会になっていくはずで、コミュニケーション能力や多文化理解が重要になってくるでしょう。
また、社会の変化・新しいチャンスにアンテナをたてることが重要になってくるので、多くの人とゆるくつながり、お互いモチベーションを与え合うような人間関係をもっておくことは大きな財産となるに違いありません。
時間の価値は流動的?「私にとって大事な時間」を考えよう
豊かな人間関係を育てるために、いちばん大事なものはなんでしょうか。
「純粋」な人間関係を構築するには、長い時間がかかる。一緒に長い時間を過ごし、じっくりと相互の信頼と愛情、共感と理解をはぐくまなくてはならない。あなたは、いま思い描いている人生の進路とステージのなかで、こうしたことに費やす時間を確保できているだろうか。
――『LIFE SHIFT2』より
そう、「時間」です。
「人生計画をこまめにアップデートする」というと、学びや仕事の時間をどんどんスケジュールにつめこんでいくイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし人生100年時代においては、「時間のとらえ方」そのものがこれまでとは大きく違ったものになるということを覚えておかなければなりません。
子どもと密着して過ごせる幼児期、祖父母との海外旅行、就職したら世界各地に散らばってしまう友人たちとの集まり……。そんな時間は、長寿化を前提とすると相対的に価値が上がるのです。つまり、分母の年数が多くなればなるほど、年数が限定的な分子の重要性が上がるということ。「自分の時間は、いったい何に振り分けるべきか」そんな問いを、日々繰り返すことが大切です。
『LIFE SHIFT』シリーズは、「長い人生、どう生きたらいいんだろう……」という私たちの不安を煽るものではありません。「いつだって、誰だって、人生を再構築できる」という前向きなエールに満ちた二冊です。みなさんもこの「人生100年時代の教科書&参考書」を携えて、自分オリジナルな人生をつくっていきませんか?