Paranaviトップ ライフスタイル 妊娠/出産 ステルラ西史織さん×ポジウィル金井芽衣さん「卵子凍結が広げる、私たちの“人生の選択肢”」特別対談!

ステルラ西史織さん×ポジウィル金井芽衣さん「卵子凍結が広げる、私たちの“人生の選択肢”」特別対談!

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最近よく聞かれるようになってきた「卵子凍結」。女性の可能性を広げる新しい選択肢として注目されていますが、経験者はまだ少ないようです。今回、妊活をサポートする「Myera(マイラ)」などを運営しているステルラの代表・西史織さんと、キャリアのパーソナル・トレーニング「POSIWILL CAREER」を提供しているポジウィル代表の金井芽衣さんが対談を実施。卵子凍結の仕組みやコスト、私たちのキャリアに与える影響、そして企業に求められていることとは……? 今を生きる女性2人の、本音トーク炸裂です!

卵子凍結ってどうやってやるの?いくらかかるの?

――最近「卵子凍結」のワードをよく耳にします。ブームがきているのでしょうか?

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西

日本でも、ここ12年でようやく知られるようになりました。でも、一般的な女性にとって現実的な選択肢にはなっていないと思います。その原因は、まだまだ認知度が低く「そもそもどういうものかわからない、知らない」という方が多いこと。さらに、治療を受けられるリクニックが限られていること、お金がかかること、そして信頼できる情報が少ないことです。
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金井

「卵子凍結って、いいらしいよ」と耳にすることはあっても、経験者はすごく少ないと思います。メディアでもあまり報道されていませんよね。

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ステルラの西史織さん

――卵子凍結をすると決めた後の流れがわかりません。改めて教えてください!

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西

卵子凍結は、「不妊治療の工程の半分くらいまで、事前に終わらせておく」というイメージです。検査→排卵誘発→採卵と進んだ後、不妊治療では体外受精または顕微受精にうつりますが、採取した卵子を精子と受精させず-200℃の液体窒素で凍結し、キープしておくのが卵子凍結です。

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不妊治療では「検査→排卵誘発→採卵→受精→培養→移植」と進み、晴れて妊娠判定となります。

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採卵後に卵子を凍結し、保管しておくのが卵子凍結。卵子を解凍したら「受精」の段階からスタートです。

――若いほど妊娠率は高いと聞きますが、年代別の妊娠率はどれくらいなのでしょうか。

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西

この図のとおりです。1年間避妊をせずに性交渉した場合の妊娠率になりますが、おおまかには20代で8割前後、30代前半で6割超、30代後半で5割超といったところですが、もちろん個人差もあります!

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女性の年齢とともに、妊娠率はゆるやかに下がっていきます。

――卵子凍結のメリット、デメリットには、それぞれどんなことがあるのでしょうか。

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西

メリットはこちら。

・凍結した時点の年齢で、妊娠率をキープできる

・妊娠や出産に対して、精神的な余裕を持てる。キャリア設計をしやすくなる

・第二子、第三子を考えるとき、凍結した卵子を使うこともできる

・早発閉経などのリスクにも対応できる

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西

そして、デメリットはこちらです。
・費用が高い(トータルで40〜100万円ほど。ただしクリニック差、地域差、個人差が大きい)
・凍結した卵子の保管費用として、毎年、卵子1つあたり1万円程度がかかる
・凍結した卵子を解凍して使用する(受精から移植する)ときにも費用がかかる
・凍結する卵子の数を増やしたい場合は、採卵が数回に及ぶ
・思っているほど、妊娠率は高くない
・不妊の原因は必ずしも卵子にあるとは限らない(着床障害、不育症など)
・高齢出産(初産で35歳以上)はさまざまなリスクが上がる
・採卵するときに、卵巣過剰刺激症候群のリスクがある・年齢制限を設けているクリニックもある

――卵子の数、ですか。どれくらいの数が必要なのでしょうか。

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西

採卵する時点での年齢と、妊娠成功確率をどこまで上げたいか? によって大きく変わってきます。例えば海外のあるデータでは、34歳なら、10個採卵すれば75%20個採卵すれば91%の確率。40歳なら、10個採卵で30%30個採卵で65%の確率となります。

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採卵時の年齢と、採れた卵子の個数によって、妊娠確率が変わります。もちろん個人差も大。

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西

基本的には、年齢が若いほど、多くの卵子を採取しやすいです。しかし個人差が大きいうえ、クリニックの治療方針によってもいくつ採取できるかは変わってきます。卵巣内に残っているおおよその卵子の数は「AMH」という数値でわかるので、気になる方は検査をしてみてくださいね。また、若いときに採卵しておくほど若い卵子を保管できるうえ、保管する卵子の数がそこまで必要ないという点で有利です。30代後半になって卵子凍結をしたけど、もっと早くしておけば良かった……という声もよく聞きます。

――卵子凍結は、保険適用されるのでしょうか?

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西

2022年4月から不妊治療は保険適用になりましたね。でも残念ながら、卵子凍結は保険の適用外です。トータルで40100万円ほどの費用負担は決して軽くありません。

――初めはわからないことだらけの妊活。それをサポートしてくれるのが、新サービス「Myera(マイラ)」だと聞きました。どういう内容なのでしょうか?

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西

2022年6月にスタートした、自宅での妊活をサポートする定期便サービスです。月に1回、妊活に必要なグッズ5つ(妊娠検査薬と排卵検査薬、葉酸サプリ、産婦人科医監修のスタートブック、月替わりのアイテム)が自宅に届きます。さらに専属の看護師が付き、相談しながら妊活を進めていけるというものです。もともとクリニックの検索サイト「婦人科ラボ」を展開してきました。ユーザーさんにヒアリングする中で、「もっと早い段階から妊活にまつわるいろんな情報を知っていれば、効率的に進められたのに!」という声がたくさん寄せられたんです。そのニーズに応えたいと思って、「Myera」を始めました。

30歳が区切り」という呪縛から離れることができる

――卵子凍結は、女性にとって「人生の選択肢」を広げる手段でもあるんですね。特にキャリアという面で、どのようなメリットがあるのでしょうか。

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金井

女性は30歳が近づくと、周りの変化にも影響されて、「とりあえず結婚して子どもを産まなきゃ! キャリアの方向性も決めなきゃ!」という謎の焦りを抱えがち。環境に左右されず、キャリアもライフイベントも落ち着いて考えたい、自分に合った人生を歩みたいという女性にとって、卵子凍結はとてもいい選択肢だと思います。
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西

卵子凍結することで精神的に余裕が生まれて、「今は仕事を頑張ろう」「妊娠・出産は、私がしたくなったときに考えよう」と、冷静に順番立てて考えられるようになりますよ。

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ポジウィルの金井芽衣さん

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金井

妊娠・出産って、キャリアにも人生そのものにも関わる大きな決断。正しい情報を知らなかったばかりにベストな道を選べなかったら、すごくもったいないと思います。西さん自身、卵子凍結の経験があるんですよね?
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西

はい! 私自身、27歳のときに卵子凍結をしました。不妊治療している友達から話を聞いたのがきっかけで、それまでは卵子凍結の存在すら知りませんでした。3年後、5年後、10年後、自分がどうなっているかわからないからこそ、「プランB」を用意しておこうと思って卵子凍結に踏み切ったんです。まるで、人生にかける保険みたいな。卵子凍結したことで、30代半ばごろまでは自分のやりたいことを思いっきりやって、それから妊娠・出産を考えよう! と気持ちがスッキリしました。この経験が、ステルラを起業したきっかけにもなっています。
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金井

私は去年結婚したんですが、結婚前は卵子凍結を検討していました。「いつか妊活することになるかも?」「2人目を考えることになったら?」って想像をふくらませると、早めに卵子凍結しておくほうが有利なんじゃないかなって。
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西

周りには、38歳を超えて急に子どもがほしくなって妊活を始めた人もいます。人生何があるかわからないから、昨日までの「プランB」が突然「プランA」に変わる瞬間だってある。そういうときに選べる選択肢が多いに越したことはありません。
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金井

結局、「自分がどうしたいか」が大事です。周りの友達が結婚したから私もしたいとか、みんな子どもを産んでいるし30歳になったから私も……という考え方は危険だと思います。幸せのかたちはひとそれぞれ。自分にとっての幸せを普段から考えておくことが大事で、そうすれば納得いく結論を出せるんじゃないかなと思います! キャリアだって、昔みたいに大手企業に入れば定年まで安泰という世の中ではなく、自分の意思で動かしていかないといけません。妊娠・出産のタイミングは、キャリアとも密接につながっているからこそ、難しい選択になるんですよね。

「男性が前提になっている」企業の現状を変えていこう

――凍結するときはさておき、卵子を解凍するときにはパートナーの理解も重要になってきますね。

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金井

パートナーが妊活や不妊治療に理解がある人かどうかはとても重要! というかみんな、しっかり理解してくれる人としか一緒にいないかも(笑)。「仕事は、私の人生そのもの」という女性が増えていますからね。
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西

友人や知り合いに私の卵子凍結の経験を話すと、意外と男性のほうがすんなり理解してくれます。身体的・金銭的負担のことまで詳しく知らないし、自分がやるわけじゃないからどこか他人事だからかもしれませんが、妊娠率が年齢とともに下がるのであればすごく理にかなっている選択だよね、という反応が多いです。

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――企業の意識も大事です。日本は遅れているといわれますが……。

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西

そもそも働き方や企業の制度が、「育児を妻に任せる男性」を前提として作られていること自体が間違いだと思います。健康診断だって、デフォルトメニューには子宮頸癌検査が入っていないことが多いですよね。妊娠・出産、不妊治療といったテーマに対して向き合うよう、企業の考え方を根本的に見直さないといけないと思います。現場の努力も大事ですが、国全体が変わっていくべき。
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金井

例えば、職場や働き方にもよりますが、時短勤務になると毎月のお給料が34割減るケースもあるんですよ。時短でも、穴埋めしようと隙間時間に稼働したり、パートナーと工夫しながら頑張って働いている人ばかり。バリューが下がっているわけじゃないのに、お給料が大幅に減らされるなんてフェアじゃないと思うんです。少なくとも私は、そういうことで、メンバーの頑張りをないがしろにしたくないです。でもこれは、私が女性だから、この熱量で怒れるのかもしれない。だからこそ、声を上げられる女性が増えないと組織も国も変わらないし、そういう人が、大企業でも重要なポジションに登用される社会になってほしいです。
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西

大企業の、いわゆる人事部長のポジションにいる男性たちに妊活や不妊治療の話をしても、正直あまり刺さらないんです。「支援が必要だということは理解できるけど、その後、育休取って人員が減っちゃうわけでしょ?」なんて言われて、脱力したことも……。残念だけど、これが現実です。大きな声で女性の権利を主張すると「傲慢だ!」って言われがち。ずっと日本で生きてきた私たちには、この文化が染みついちゃっていると思います。

――20〜30代の女性に向けて、メッセージをお願いします!

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金井

妻になっても母になっても、ずっとシングルでも、自分の人生をいかに楽しめるかがいちばん大事だと思います。誰かのために生きるって素晴らしいことだけど、そのためにはまず、自分自身が自立して、幸せになっていないといけません。だからみんな、もっとわがままになっていいんじゃないかな。卵子凍結のような選択肢をうまく使って、自分の可能性を広げていけるといいですよね。みんな、もっと幸せになろう!
ステルラ西史織さん×ポジウィル金井芽衣さん「卵子凍結が広げる、私たちの“人生の選択肢”」特別対談!

西

20〜30代は、キャリアについても結婚・出産についてもいちばん悩む時期。周りがどんどん変わっていく中、私だけずっと同じところにいる……って思うと焦りますよね。そういうときは、他人のことじゃなく、自分のことだけ見てあげてください。あれもいいな、これもいいな、と目移りするのは普通のこと。その中から、自分で納得して決断していくことが重要だと思います。そうすれば、もっと人生が豊かになるんじゃないかなと思います。

西史織(にししおり)●1991年大阪府出身。関西学院大学文学部卒業。新卒で証券会社に入社しリテール営業を経験した後、IT企業に転向しEC運営や事業開発に従事。27歳の時に卵子凍結をした経験から、2019年にフェムテックカンパニーである株式会社ステルラを設立。自宅での妊活をサポートする定期便サービス「Myera(マイラ)」や、妊活クリニック検索サイト「婦人科ラボ」の運営を行い、女性のライフデザインを支援している。

金井芽衣(かないめい)●1990年生まれ。短大で保育士・幼稚園教諭の免許を取得した後、2010年に法政大学キャリアデザイン学部に編入学。13年に卒業後、リクルートエージェント(当時)に入社。人材紹介部門の法人営業を担当する。17年、国家資格キャリアコンサルタントに登録、ポジウィルを設立し、代表取締役に就任。総額約3億円の資金調達を実施し、キャリアに特化したパーソナル・トレーニング「POSIWILL CAREER」を運営する。

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さくら もえ
Writer さくら もえ

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