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出産・育児→「健康経営」を軸に起業。「美容業界のモデルケースになりたい」経営者・赤羽亜希さんの挑戦

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ヘッドスパサロン「頭皮と肌の専門店 希翠(きっすい)」を運営するフェリコの経営者・赤羽亜希さん。3度の出産・育児をきっかけに、女性スタッフが安心して働けるサロンをつくろうと起業に至りました。「大事なのは心身ともに健康に働き続けられる環境」という考えから、「健康経営」を軸にした独自の経営スタイルを貫き、経済産業省の「健康経営優良企業」にも3年連続で選出。もとは専業主婦だったという赤羽さんの、意外なキャリアを深掘りしてみました。

専業主婦期間を経て、美容の会社にパートで参加

――赤羽さんは、もともと美容業界でキャリアを積んでいたのでしょうか?

大学卒業後は商社で4年ほど事務の仕事をしていました。結婚し、長男を妊娠して退職、以後は専業主婦だったんです。長男が3歳になったころ、パートで働くのもいいなとなんとなく思って、美容関係の企業を手伝うことにしました。

――赤羽さんは、最初から起業を目指していたわけではないんですね。

むしろ、経営者だった父を見て育ち、その大変さもわかっていましたから、経営者になりたいと思ったことはありませんでした(笑)。昔から子どもが好きで、夢は幼稚園の先生になることだったのですが……私が大学を卒業したタイミングでちょうどバブルが崩壊。自分の希望は二の次で、とにかく職があれば十分だと思いました。レールが敷かれた人生もそれなりに幸せだなあと、のんびり思っていましたね。

ヘッドスパサロン「頭皮と肌の専門店 希翠(きっすい)」を運営するフェリコの経営者・赤羽亜希さん。

――美容といっても幅広いですが、どんな業態だったのでしょう。

光脱毛のお店です。当時、痛みが少ない脱毛! と人気で、ぐんぐん売り上げが上がりました。毎年のように新店舗を出し、関西で3店舗、東京で5店舗展開しました。

経営は順調でしたが、1つ大きな壁に直面します。それは、「人が育たない」こと。20代〜30代前半の女性スタッフが、みんな数カ月で辞めてしまう。お客さんはたくさんくるのに、スタッフの育成はいっこうに進まない……というアンバランスな状態で。この深刻さは年々増していきました。

――なぜそんな状態だったんでしょうか。

スタッフにヒアリングする中で見えてきたのが、労働環境のひどさです。サービス残業は当たり前、育休は取りづらい雰囲気で、育児と並行して働くのは事実上不可能に近かったと思います。

スタッフは20代〜30代前半の女性がほとんどでしたから、結婚や妊娠、出産といったライフイベントが起きます。でも、自分の状況に応じて働き方を変えられないから、どれだけ会社に貢献してきても、結局辞めざるを得ない。その分残されたスタッフの業務が増え、ストレスで生理不順になるケースも。とても見ていられない状況でした。

3人の子どもを育てた経験は、必ずキャリアの糧になる

――そんな中、赤羽さんご自身もご出産をされたそうですね。

そうなんです(笑)。働きながら、長男を産んだ5年後に次男を、その3年後に長女を産みました。3回目に妊娠したとき改めて、「産休・育休を終えて会社に戻っても、ここには私の居場所がないだろうな」と肌で感じました。

ヘッドスパサロン「頭皮と肌の専門店 希翠(きっすい)」を運営するフェリコの経営者・赤羽亜希さん。

――ずっと頑張ってきたのに、辛い思いをされましたね。

私は当時、がんで闘病していた母のケアを担い「仕事・育児・介護」と3つの顔を持っていました。サロンのお客さんも、子育て中の方や、子育てが終わって一区切りついた方などがたくさんいらっしゃる。そうした方の思いを理解する意味でも、ライフイベントはすべてキャリアの糧になるというのが私の考えです。育休から復帰後は、スタッフ全員から悩みを聞き出し、就業規則の見直しをしました。

私は、「フルで働けない人は、辞めてしまっても致し方ない」という風潮にどうしても納得がいかず……。一方で会社からは「有給や育休・産後復帰にまつわる提案は、スタッフのメリットにはなるが、経営としてはデメリットだ」と言われ、精神的に辛くなってしまい、限界を迎えました。私1人の力では、スタッフたちを守りきれないことを痛感しましたね。

「戻る場所がなくなってもいいや」と思って起業を決意

――そして独立されたんですね。

私が経営者になり、勉強熱心で向上心のある女性たちがキャリアを継続していける職場を作れば、1つの社会貢献になるのでは? と考え、前職を離れて起業する決意をしました。もし失敗して戻る場所がなくなっても、それでいいやくらいの気持ちでした。

――同じエステ業界で起業しようと思ったのはなぜですか?

前職の総合エステ事業の中で、ブランディングができておらず売り上げも立っていないのが「ヘッドスパ」でした。2014年ごろ、ヘッドスパの存在も今ほど知られていない状況でしたが、美容師免許がないとできない施術ですから、専門性は生かせると考えました。

三軒茶屋に店舗を構え、地域密着型のコンセプトを確定。銀行から数千万円借り入れて、準備を進めていきました。私なりに業界の経験や事業展開のノウハウがあったので、半年後には会社を立ち上げ、あれよあれよという間に頭皮と肌の専門店・「希翠」をオープンしました。

「健康経営」は、私がブレずにいるための軸でもある

頭皮と肌の専門店〜希翠

希翠には、フェイスコースやメンズコースもあります。毎日PCやスマホに向かっているみなさん、ぜひ!

――スタッフはスムーズに集められましたか?

はい。今いる正社員4人はみんな、オープニングスタッフではない「2世代目」。求人広告を出さなくても、スタッフが集まってくれるのでありがたいです。知り合いのスタッフたちが私のお店に働きに来てくれたのはうれしかったですし、お客さんとして来店した人が「ここで働きたい!」と言ってくれた例もあります。

オープニングメンバーの3人は育休・産休を経て、パートとして戻ってきてくれました。基本は在宅勤務で、スタッフのシフト作成やSNS運用、SEO対策などを担当してもらっています。誰かが休んでもほかの誰かがフォローできる体制を整えて、うまく回しています。

――フェリコの特徴である「健康経営」は、どう定められたのでしょうか?

「健康経営」は、スタッフの満足度を上げながら持続的に経営していこうという考えを、言葉にしたものです。みんなが心身ともに健康に、元気で働くことこそがいちばんだという思いから生まれた軸であり、私自身がブレないための指針でもあります。

経営の視点から「もっと利益を追わなくちゃ」と葛藤を抱えたこともありました。スタッフから、福利厚生よりもお給料を上げてほしい! と言われたこともあります。でも、「健康経営」という軸があるから、ブレずにやってこられました。

経済産業省の「健康経営優良法人認定制度」は1年ごとの更新。今は3年連続で選ばれていますが、有給取得率やメンタルヘルス対策などの目標をクリアし続けないと、認定企業でいられなくなってしまうぞ! と、自分にプレッシャーをかけながらやっています。

健康経営のモデルケースになりたい

頭皮と肌の専門店〜希翠

「頭にはたくさんのツボや反射区があって、その色味や硬さで身体の不調がわかります!』

――赤羽さんは、ソーシャルビジネスコミュニティの「ワクセル」に参加されているそうですね。

経営者のコミュニティで知り合った方が、ワクセルを紹介してくれました。ワクセルのみなさんには「人と人のつながり」を大事にする文化があって、例え自分の利益にならなくても、誰かを誰かの橋渡しをするのでところが素敵だなと感じます。

それから、いろいろな業種・職種の人たちとゆるくつながっていられて、普段は接点がない方々と出会える魅力がありますね。単なる経営者の集まりではなく、未知数の可能性を持ったコミュニティだなと思います。

>>ソーシャルビジネスコミュニティ『ワクセル』(主催:嶋村吉洋)

――赤羽さんは、今後の会社経営をどう広げていきますか?

コロナ禍でサロン業界はかなりの打撃を受け、うちは未だに時短営業のままです。コロナ対策で業務は増えたのに、お店の稼働率は下がっているのが現状。そんな中で頑張ってくれているスタッフのすごさ、そして定着率が高いことのありがたみを改めて実感しました。

スタッフが心身ともに健康で、いいパフォーマンスをすれば、自然と会社の業績も上がる。中小企業の経営者でこの点を理解している人はまだまだ少ないはず。当社がいいモデルケースになれればと思います!

赤羽亜希(あかばねあき)●1971年生、現在51歳。家族構成は、夫と社会人2年目の長男、大学1年生の次男、高校1年生の長女の3人の子供と愛犬2匹。職歴は、大学卒業後、専門商社に4年勤め、社内恋愛で結婚。妊娠後、育休は取らずに退職、専業主婦に。子育てしながら、社会復帰先は、美容業界の人事マネージャーとして、13年間従事。ブライダルエステ、脱毛、ヘッドスパ専門店の立ち上げ、スタッフ100名の管理と育成をしている中、資格、キャリアを積みながらも結婚や出産で美容業界での活躍を諦める人が多く、女性のライフステージに合わせて、仕事と家庭を両立しやすい環境を整えた会社の運営を目指して、2015年11月起業。今年7周年を迎えた。

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さくら もえ
Writer さくら もえ

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