教育格差、という単語を見るたびに気になる子どもの教育。「習い事や塾はいつから? 働くママは送迎どうするの?」「小学校受験、共働きは不利?」「中学受験のサポートってどのくらい必要?」……疑問は尽きませんよね。この連載では、小・中学受験をテーマにした小説「天現寺ウォーズ」「御三家ウォーズ」の作者・佐野倫子が、取材やワーママ実体験をもとに、働くママから寄せられた疑問について一緒に考えていきたいと思います。
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予想以上に低学年化している受験戦争
みなさんこんにちは、作家・ライターの佐野倫子です。働きながらお子さんの受験を考えている方に、少しでもお役に立つべく、お悩み相談コラムを書かせていたくことになりました。
自身の手探りの体験、小説や受験コラムの取材やママ友たちから集めたリアルな情報を余すことなく! 共有していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
さて、現在小学校高学年と低学年の息子を都内で育てている私。はっきり言って、予想以上に激しく中学受験の波にのまれています(涙)。まさか都心の中学受験がこんなに過熱しているとは……。例えば次男は近所の中学受験塾に入るために、新小1、つまり年長から「順番待ち」をしている始末。長男が「席取り」のために止むを得ず新小3から入ったときも、早すぎる! と思ったのに、年々加速している……。
でもいいこともあります。そんな調子で子どもの教育熱の高いエリアなので、毎日のように新しい情報が入ります。ありがたいことに著書やコラムを読んだ方からたくさんのご相談をいただくので、公私に関わらず集まる最新情報をもとに、みなさんの疑問について一緒に考えることができたら嬉しいです。さっそく行ってみましょう。
Q.都内で共働きをしている33歳です。2歳の娘がいて、保育園に通っています。周囲には1~2歳は保育園に通い、年少になるタイミングで幼稚園に入ろうと、受験の準備をしている子も……。我が家は保育園しかムリだと思う反面、最近では延長保育を実施して長く預かってくれる幼稚園やこども園もあると聞き、悩んでいます。働きながら幼稚園って可能なものでしょうか? また、将来小学校受験や中学校受験を考えていますが、保育園出身だと不利という噂は本当でしょうか?
わかります、そのお悩み。私も長年考えてきました。周囲を見ても、ワーママでそのことを1度も考えないほうが珍しいかもしれません。
働き方が多様化し、会社員だけではなくフリーランスのお母さん、パラレルキャリアのお母さんも増えました。在宅ワークも一般化したことで、必ずしも保育園で8時~18時まで子どもを預けなくてもいいのでは? と考える方が増加したのかもしれません。
保育園のメリット、幼稚園のメリット
まず、保育園のメリットと幼稚園のメリットをそれぞれおおまかに挙げてみましょう。
保育園のメリット
- 申請すれば7時台から、夜は19時すぎまで預かってくれるので、仕事の前後に送迎可能。
- バランスの取れた給食が出るので、お弁当を作る必要がない。
- 長い時間集団生活をするので、子どもは社会性が身につく。
- 月に1度医師が健康診断をしてくれたり、看護師が常駐している園もあったり、比較的安心して長時間・長期間預けることができる。
- 保育時間が長いので、トイレトレーニングやお箸の使い方など、生活全般にアドバイスを貰える。
- 夏休みや春休みがないので、その間の預け先を親が探す必要がない。
幼稚園のメリット
- 教育機関に位置付けられ、体系立った教育カリキュラムが充実していることが多い。
- 幼稚園教諭の資格を所持した先生のもとで学べる。
- 基本的に午後の早い時間に終わり、季節の休暇も長いので、子どもが家庭でゆったり過ごす時間が増える。
- 午後の時間を、習い事や教室に使うことができる。
- 親子ともに他のお母さんや子どもと接する時間が長く、連帯感や楽しさを感じやすい。
こうして挙げてみると、仕事をしているお母さんにとっては、保育園に利便性の軍配が上がりますよね。
私は子どもが1歳半のときに仕事に復帰し、まずは保育園に通わせました。認可保育園は満員で入れず、東京都が独自の基準で認めた「認証保育園」(比較的小規模な園が多い。園庭がないなど、いくつかの基準が認可園には及ばないものの、安心して預けられる園が多い)にお願いしました。
「こんなにちっちゃい子があんなに泣いて……他人に預けてまで仕事をしていいのだろうか……」
当初はそれはそれはクヨクヨしました。でもそう思っていたのは3カ月ほど。そこからは正直に言って「保育園の先生と一緒に子育てしています! 保育園がないと無理です!」という境地に(笑)。新米ママだった私にとって、先生は本当に頼れる存在。命より大切な我が子を預ける保育園に、全幅の信頼を寄せられたことを、心から感謝しています。
ぶっちゃけると、薄味で栄養満点、ほかほかの給食を子どもが食べてきてくれることも、本当にありがたかったです。このままずうっと保育園に通ってほしかった……。
それでも幼稚園を受験した理由
しかし、3歳が近づくにつれ、幼稚園も気になるように。私が住んでいる区は、幼稚園受験、という言葉がメジャーなほど、当時はどこの幼稚園も高倍率。入園のためにお教室に通っている子も大勢いました。近所には超名門幼稚園があり、そこのお母様たちは皆、紺一色のワンピースで送迎しています。うーん、別世界。
そうすると単純な疑問がわきます。お教室に通い、大変な思いをしてまで、なぜ幼稚園を受験するのか。何かメリットがあるはずです。
そんな物書き的好奇心もあり、3歳からは幼稚園に行くことに。幸い、この頃は会社を辞めてフリーライターの仕事のみだったので、なんとか送迎が可能でした。でも、正直に言って、本当~に大変な3年間でした。
もし皆さんのなかで、働きながら幼稚園を検討している方は、以下のポイントをクリアできるかを考えてみてください。ここが結構、大切なところでした。
共働きで幼稚園を選ぶ場合のチェックポイント
- 幼稚園はたいてい、登園は9時前後、降園は1時~2時。この指定された時間に子どもを送迎する必要があるので、家族にそれが可能なひとはいるか。
- 延長保育があるところも多いので、どの程度希望通りにそれが利用できるのか。
- お弁当か給食かを確認。選べる場合も、実際の利用状況をきいておく。
- 平日の昼間の行事も多い幼稚園。どの程度親の出番があるのか、もしも頻繁に欠席する場合は周囲に迷惑をかけないか、子どもが周囲と差を感じて淋しい気持ちにならないか。
- 夏休みなどの長期休暇の子どもの預け先はあるか。
- 夫や両親とのコンセンサスは取れているか。ママが1人で決めると後々、協力が得られないことも。
私の周囲で、働きながら幼稚園に通わせていた方は、ご両親の協力がある、夫婦どちらかが在宅ワーク可能やフリーランスなどで時間の融通がきく、送迎用にベビーシッターを頼んでいた、保育園としての機能も併せ持つこども園を選んだ、などの方法で解決していました。
正直に言えば、このどれかでない場合、無理が生じてしまうかもしれません。
無理して幼稚園に入れる必要はない
そもそも、そこまで無理をして幼稚園に入れる必要があるのか? と言えば、私は経験からNOと言えます。確かに、保育園のあとの3年間幼稚園に通った息子たちを見れば、保育園時代と比べて幼稚園は降園後の時間に余裕があったので、お友達と出かけたり、習い事に行ったりすることができました。親子で過ごす時間が多いぶん、「親子で一緒に」いい経験ができたと思います。
でも、それは工夫すれば保育園でも可能な範囲だと思います。習い事は土・日にもできるし、保育園も選べばイベントや習い事がたくさんあるところも。もはや保育園vs幼稚園、という対比が意味をなさないほど、どちらも多様な園があります。
小学校受験に不利では? という噂に関してはどうでしょうか。これまでは確かに幼稚園から小学校受験、が王道でした。しかし最近は共働きのご夫婦が多いので、保育園から受験をする人もいるとききます。当然、保護者がどの程度、子どものために時間をかけることができるか、教育に気持ちを向けられるかは面接でもシビアに問われるはず。あらかじめご夫婦で相談し、自信を持って両親が小学校生活に参加できるという展望を伝えるのがいいと思います。
また、中学受験に関しては、幼稚園か保育園かは全く関係ないと思います。もちろん、働くお母さんが突き当たる別の問題はありますので、中学受験の現状については次回以降に譲ります。
今、私の子どもたちは小学生になりましたが、お友達を見ても誰が幼稚園で誰が保育園かなんて全然、わかりません(笑)。それよりも、家庭の関わり方がしっかり出てしまうのが子育ての怖いところ。自戒しながら、子どもたちに向き合って、一歩ずつ進んでいこうと思います。
過ぎてみれば、「なんであの時、あんなに悩んでたんだろう……?」と思うこと、沢山ありますよね。幼稚園or保育園問題もそのひとつ。だからこそ、皆さんのちょっとだけ先輩として、これから仕事と教育の両立についてヒントがお伝えできればと思っています。