Paranaviトップ お仕事 働き方 上野先生、出口先生、「幸せに働く」はファンタジーですか?『あなたの会社、その働き方は幸せですか?』

上野先生、出口先生、「幸せに働く」はファンタジーですか?『あなたの会社、その働き方は幸せですか?』

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「幸せに働きたい」誰でも一度は、そう夢見たことがあるのではないでしょうか。個人よりも組織の都合を優先しなければならない、会社員の方は特に。オリジナルな働き方を実践してきた大先輩二人が、「幸せな働き方」の真実を語ります。

「幸せに働く」は夢物語? 大先輩2人に聞いてみよう

「幸せに働く」って、どういうことでしょうか。

好きなことを仕事にする? プライベートと仕事を両立させる?

そのどれも、会社員の身の上ではなかなか難しいように思えます。人事異動などの会社都合で、ある日いきなり事態がひっくり返るようなことも日常茶飯事ですよね。

会社勤めをしている限り、「幸せな働き方」を叶えるのは夢のまた夢なのでしょうか?

「あなたの会社、その働き方は幸せですか?」上野千鶴子、出口治朗

『あなたの会社、その働き方は幸せですか?』(上野千鶴子・出口治明/祥伝社)

今日ご紹介するのは、2020年に刊行された上野千鶴子さんと出口治明さんの対談集。フェミニスト・社会学者として、働く女性を巡る環境を研究してきた上野さん。出口さんは、日本生命を飛び出してライフネット生命を設立、その後教育業界に転身したというキャリアの持ち主です。

上野さんは日本人の働く環境を見続けてきた立場から、出口さんは大企業に勤務してきた経験から。「会社で幸せに働くには」「好きなことを仕事にするには」を喧々諤々話し合う、実は同い年のお2人。

現代日本のオピニオン・リーダーズから、「幸せな働き方」を実現するためのアドバイスをいただきましょう!

不合理な制度を変えられないのはなぜ?「劣等均衡」状態の日本企業

上野:新卒一括採用、終身雇用制度、年功序列給、定年制、さらに私が挙げた企業内労働組合が全部セットになって均衡を保っています。(中略)均衡の一角を崩すと全体に影響が及ぶから、一部だけをやめるわけにはいかない。

出口:本当はすべてを変えないといけないのですが。

――『あなたの会社、その働き方は幸せですか?』

日本型経営を構成する制度を一つひとつ取り上げ、それらがすでに「機能不全」に陥っていることを指摘していく上野さんと出口さん。

人口動態・産業構造・ジェンダー観・人々の人生観は急速に変化をとげています。変化をとらえて働き方を見直した国との間で日本が大きな差をつけられていることは、各種経済指標を見れば明らか。

それなのになぜ、日本企業は変われないのでしょうか。

働く人の現場に目を向ければ、テレワークの導入・女性管理職・ギグワーカーの増加……、変化が起きていないわけではありません。しかし、新しい取り組みにはすぐ反対意見が出て抑え込まれてしまう……。いわば、3歩進んで2歩下がる状態です。

不毛な堂々巡りからなかなか抜け出せないのは、日本企業が「劣等均衡」状態にあるからだと上野さんは指摘します。

テレワークや女性は評価されにくい。なぜならば、管理職の監視下で働くことや勤務時間の長さで会社への忠誠心を測る評価制度になっているから。会社への忠誠心が重要視されるのは、年功序列制が評価の下敷きにあるから。年功序列制の背景には、終身雇用制度が……。

小手先の「働き方改革」では、この不合理な均衡状態を崩すことはできません。考えるべきは「すべて変える」レベルの改革です。

「好きなことはお金になりません」先生2人からの衝撃のアドバイス!

上野さんと出口さんには、大学勤務という共通点も。就職に悩む学生たちへの、先生2人からのアドバイスとは?

誰に頼まれなくてもお金にならなくてもやることを好きなことと呼ぶんです。だから順番が逆なんです。――『あなたの会社、その働き方は幸せですか?』

東京大学名誉教授・上野先生のアドバイスはずばり、「好きなことはお金にならない」

お金は稼げないけれどどうしてもやりたい。でも、生活もしなければならない。そういう順番で考えていくと、「どうすればこれをお金に換えられるか」「好きなことをしながら生活するにはどうすればいいか」を必死で考えるようになります。

かつては学問として認められていなかった「女性学」を、バッシングを受けながらも研究し続けてきた上野さん。説得力がありますね。

一方、立命館アジア太平洋大学(APU)学長・出口先生のアドバイスは、「早くあきらめて、目の前のことを頑張りなさい」

新卒入社した日本生命ではやりがいを見いだせず、その後も社内政治により左遷の憂き目に。「幸せに働く」の対極のような状態ですが、そんな「あきらめ」がモチベーションだったといいます。

変えられない現状は一旦受け入れて、目の前の仕事に集中する。「どこかにもっと素敵な仕事があるんじゃないか」と妄想に逃げ込んで仕事をおろそかにしては、負のスパイラルにはまってしまいます。

60歳でライフネット生命を設立、70歳でAPU(立命館アジア太平洋大学)の学長に選任されるという出口さんのキャリア。それは、運命を受け入れて置かれた場所で頑張る人のもとにチャンスはやってくるということを証明しています。

偶然の出会いで、仕事を決めてええんやでと。やりたいことや好きなことは、一生かかって見つければええんやから、焦らんでもええでと、学生にはいつも話しています。

――『あなたの会社、その働き方は幸せですか?』

「流されてここまできた」と自身のキャリアを振りかえるお2人。しかし、健全な問題意識と愚直な努力により、そのときどきで「幸せに働く」を叶えてきたことがわかります。ぜひ本書を通して、2人からのアドバイスを受け取ってください。

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梅津奏
Writer 梅津奏

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