教育格差、という言葉を見るたびに気になる我が子の教育。「習いごとや塾はいつから?」「小学校・中学受験ってワーママでもできる?」……疑問は尽きませんよね。この連載では、小・中学受験をテーマにした小説「天現寺ウォーズ」「御三家ウォーズ」の作者で2児の母である佐野倫子が、取材や実体験をもとに、働くママから寄せられた疑問について一緒に考えていきたいと思います。
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働くママが実感する「小1の壁」、実態は?
教育コラムニストの佐野倫子です、本年もよろしくお願いいたします!
さて、始まりました新年。ここからはノンストップで時間が進んで、すぐ新年度になるんだろうなあ……という予感がありますよね。働く母には、この新年度はちょっとした緊張感をともなうもの。ようやく慣れてきた日々のルーティンが、進学・進級によって大きく変わるタイミングだからです。
なかでも、いちばん嬉しいながらもザワザワするのが、子どもが小学校に入学するとき。噂にきく「小1の壁」問題です。
今回は、そんなお悩みにお答えしながら、私や周囲の経験を踏まえて「小1の壁ハック術」を共有したいと思います。
Q.この春から小1になる息子と、5歳の娘がいる38歳の母です。我が家は共働きで、夫婦ともに都心の企業に通勤しています。双方の両親は地方在住のため、保育園の送迎は頼ることができず、これまで夫婦のどちらかがお迎えに行っていました。普段は18時半に迎えに行けるのですが、たまに会議が伸びて19時になってしまうこともあります。リモートワークは基本ありません。そんな中で息子が小学校に入学し、学童にお願いするとは言え、「小1の壁」なるものに対応できるのか不安です……。実際、皆さんはどのようにやりくりしているのでしょうか?
わかります。メディアなどでさかんに目にする「小1の壁」。漠然とした不安があるのは、これまでお世話になっていた保育園がなくなり、代わりになにやら忙しいらしい小学校と、未知の学童にお世話になるため。原因はズバリ「実態がよくわからないことによる不安」。
そこで、先輩ワーママに取材し、具体的に何が問題だったのか、それを皆さんや私がどのように乗り越えたのかを詳細に共有できればと思います。
「小1の壁」、具体的にはどんなこと?
【課題①】小学校の登校時間は8時10分~20分。通勤時間によっては、大人のほうが早く家を出てしまう。
望ましいのは、夫婦のうちどちらかがフレックスタイム制度やリモートワーク制度を活用し、出社時間を遅らせること。しかしそれが難しい場合は、子どもに鍵を持たせ、火の始末などは親が済ませた状態にして、タイマーをかけて合図。子どもだけで出発させるというのも止むを得ないでしょう。問題は、入学式から1週間ほど、場合によっては数週間、慣れない登校に親が付きそう期間。この期間は学校から特に指定されるわけではないので、お子さんが慣れればOK。我が家は小学校まで徒歩1分なので、2日目からは一人で行ってもらっていました。周囲は1週間は送迎していらっしゃる方が多かった。時間があるときに入学式に向けて練習しておいて、送迎期間を少しでも短縮するという方法もあります。
【課題②】小1の下校時刻は年間を通して13時~14時半くらい。ときに給食のない日もあり、帰宅後、長時間親が不在になってしまう。
一般的に「学童」と呼ばれる放課後保育サービスを利用する方が大多数。学童には公立のほかに私立もあります。公立の場合、地域にもよりますが、月額はオヤツ代など5,000円程度。また同じ学校の児童が一緒に移動するので、友達もできやすいでしょう。でも、基本的には18時までの預かりのため、それより遅く残業がある場合に対策が必要です。一方私立の場合は、バスによる送迎があったり、習い事をしてくれたりと、サービスは多岐にわたります。時間も延長料金を払えば残業時も対応可能。値段はその分高額になり、月に数万円から、高いところはサービスによって青天井。週3日は公立の学童に、2日は民間の学童に、と使い分けていらっしゃる方もいました。
【課題③】宿題や提出物などが多く、親の負担が急激に増える
最初にルーティンを決めて、子どもにも協力してもらうことが大切。多く聞かれたのが「お母さん確認してボックス」を作り、学校から帰ったらまずそこにマルつけが必要な宿題やお便り、プリント、検温表を入れてもらうという方法。「親は家事が終わってから、まとめて目を通し、その箱に戻しておきます。朝、子どもに自分でランドセルに入れるように約束しています」(小学生ママ歴3年・2児の母)。流れを決めてしまえば、心配するほどの負担にはなりません。宿題は、できれば学童の時間内に終わらせて来るように約束できるといいですね。「宿題やったの?」「プリント出した?」などのやり取りこそがママにダメージを与えるので、とにかくルーティン化しましょう。
【課題④】PTAや個人面談、親子レクレーション、旗当番、卒業対策委員など、なにかと親の出番が多い
これは学校によるのが実情なのですが、多くの学校ではコロナ禍を機にPTA役員の負担を減らそうという動きが広がっています。PTA役員に関してよく言われるのは6年間の在学中に1度は担う必要がある、というものですが、これも学校によりけり。もしその場合は、ご両親の仕事の予定、兄弟や本人の受験のタイミングなどを考慮し、できるだけ余裕のある年に立候補してしまうのも手。気心の知れた友人と一緒に立候補することで、役員同士のコミュニケーションにかかるストレスを軽減するという作戦もあります。
【課題⑤】夏休みなどの長期休暇の預け先に悩む
基本的には学童がオープンしているので、子どもは平日行くことができます。公立の学童はお弁当を持たせる必要があり、そこが少し難点。民間の場合は給食がオーダーできることもあります。また、子どもも夏休みの全部を学童に行くのは大変なので、サマーキャンプや短期の民間学童の利用、両親の休暇をこの期間にとって旅行に行くなどメリハリをつけてあげるのがオススメです。
【課題⑥】子どもが急に体調不良になった場合、病児保育のような預け先がない
子どもの急な発熱や体調不良。困りますよね……。保育園時代は、事前に病児保育施設に登録するなどでしのぐことができましたが、小学生になると通常そういう預け先はありません。リモートワーク、有給休暇、祖父母を頼る、やむを得ないときには子どもに留守番をしてもらう、という苦肉の策で皆さん乗り越えている模様。
小学生になれば、保育園時代よりは体力がつき、体調を崩す回数は減ると思われますが、そのような場合にそなえて、GPSつきのキッズ携帯を契約しておく、鍵を持たせる、一人で過ごすときに火の元は絶対に触らない、などの約束を徹底しておくことが必要です。
働く小学生ママが「絶対に忘れたくないこと」
……ざっと課題を挙げましたが、これだけ読むとますます心配になってしまいますよね。でも、おもだった問題はここに挙げたものに集約していたなという実感もあります。つまり、上記の問題に対して準備をしておけば、小1の壁もそこまで恐れる必要はありません。私は、息子たちは仕事をしながら幼稚園に通わせていたこともあり、最初こそ慣れるのに四苦八苦しましたが「やっぱり小学生、いままでより大きくなってだいぶ楽だわ!」と思いました。ほんの少しも目が離せなかった乳幼児時代を乗り越えたお母さんならば、きっとそう思う日も遠くないはず。
一方で、これまでは「生命維持」「安全確保」に注力していた幼児期から、次第に子どものメンタルケアやサポートが必要になってきます。学童の力を借りながら、一緒にいる時間はこれまで以上に、学校はどうだった? と、じっくり話を聞くように心がけています。
これまで保育園が生活の大半を占めていた子どもたち。小学校に入ると、専業主婦のご家庭もあり、帰ったらお母さんが家にいる、夏休みはずっと自宅で過ごす、という子とも仲良くなります。お友達同士、おうちにお邪魔して遊ぶこともあるでしょう。これまでよりも「放課後の親の不在」を実感してしまい、淋しく思う日があるということ。そういう状況を親が認識し、子どもが少しでも居心地のいい学校生活を営めるように心を砕いてあげられたら、小さな課題のことはきっとなんとかなると思います。
働く小学生ママとして、一緒に頑張りましょうね。