最近、パートナーとセックスしたのはいつですか?――今、セックスレスに陥る夫婦が増えているそう。「話し合うのもめんどくさいし、まあいっか」で済ませると、その先には大きな落とし穴が待っているかもしれません。夫婦仲相談所の三松真由美さんに、セックスレスの予防・改善法を教えていただきました。
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セックスレス改善に「万能薬」はない
――夫婦仲相談所は、セックスレスに特化した相談機関ですね。相談内容は、具体的にどういったものが多いですか?
私が受ける相談のうち8割くらいがセックスレスについてです。レス問題は本当にそれぞれですが、原因は「夫からの拒否」「夫のED」「夫としたくない」が多数です。ほかには浮気、日常のストレスなどもあります。とくに産後のセックスレスは妻が拒否しているケースが多いですね。育児が大変で、ホルモンバランスが大幅に崩れるので、それどころではない。
夫婦関係がマンネリ化する40〜50代がレスに陥るのは昔から“あるある”でしたが、最近は20〜30代も珍しくなくなっています。最近驚いたのが、あの結婚情報誌『ゼクシィ』がセックスレス特集を組んだことです。もちろん私が監修しました。婚約中のカップルや新婚ホヤホヤの夫婦をターゲットにしたメディアでさえ、レスに注目しているんです。
ちなみに、レス以外の夫婦仲相談は「嫁姑」「金銭感覚」「浮気」の3つが鉄板。とくにお盆やお正月の時期に件数が増加します。私が10年前に書いた「夫の実家に帰りたくない」記事も、いまだにかなりのアクセス数があります。夫婦問題は時代が流れても永遠不滅のテーマです。
――セックスレス問題は、とくに最近深刻化しているんですね。
結婚してから、あるいは出産後、「セックスだけがすっぽり抜けている」という夫婦は本当に多いです。キスやハグはするけどセックスはしない。それについて相手と話し合うこともできない。思い当たる節はありませんか? それ、あなただけじゃありません。氷山の一角ですよ。
私の相談所には、女性側が1人で来ることが多いです。男性は他人に性の相談をすること自体を嫌がるようですね。でも、夫婦はいつだって1対1の人間関係です。2人で一緒に考えなければ前に進みません。それに、レスという言葉は1つでも、その原因は2人の性格やライフスタイル、健康状態などによって全然違う。だから「どんな症状にもよく効く!」って市販の風邪薬みたいなレス対策はありません。
――最近の男性は性欲が減っているという話も聞きました。
はい。今どきの男性はね、既婚・未婚によらず「セクシャルデザイアー、略してセクデザ」が少ない傾向にあります。セクデザ0%の人もいますよ。実際、男性の精子の数が世界的に減っているという科学的な研究結果※もあります。
ネットで検索すれば大量に出てくるアダルト動画。しかもきれいな女優さんが多様な演技をしてくれる。動画を見ればいくらでもセルフプレジャーで処理できる。相手に気を遣うこともなく、「下手くそ」「イカせてくれない」と怒られることもない。めんどうな前戯もしなくていい。当然といえば当然ですよ。
そんな時代に生身の誰かとセックスするって「めんどくさいこと」なんです。相手を気遣って、いやらしくならないよう誘って、相手がどうすれば喜ぶのか探り探り。ようやくセックスできたと思ったらイケなかったり、中折れしたり。元カレと比較されたり。テクニックをバカにされたりしないか不安になることもあるでしょう。男性の悩みは尽きませんよね。娯楽が満ち溢れた時代に、わざわざコミュ力を問われるセックスなんてする気にならない。そういう人が増えているんです。
※出典:学術誌「ヒューマン・リプロダクション・アップデート」
究極のコミュニケーション「セックス」を省くのは超危険
――女性はどうでしょうか?
女性は二極化しています。パートナーともそれ以外ともいっぱいセックスしたい! というワイルドな女性もいれば(笑)、全然したくない人、苦手意識が強い人もいます。身体にコンプレックスを持つ女性も非常に多い。
とくに30代以降の夫婦に多いのが、家事や育児をワンオペで担う妻が、不満を爆発させる。「夫は私にだけすべてを押し付ける」と言い出す。理想の結婚相手とかけ離れてしまった夫をまるで尊敬できなくなり、「こんな男とセックスなんて、絶対無理!」と感じ始めるケース。こうなったら負のスパイラルに突入です。夫を人として尊敬できないなんて、セックス以前の問題だから。
――セックスは性欲を解消するだけでなく、コミュニケーションの意味合いも大きいように思います。
お互いに惹かれあってお付き合いして、プロポーズされて、結婚して一緒に暮らして場合によっては子どもにもめぐまれて……濃厚に人生を共にしてきたはずの夫が、セックスをしかけてこない。ささいなことに見えるかもしれませんが、これって結構致命的なことです。なぜなら、セックスは究極のコミュニケーションであり、人生においてすごく大事な要素だからです。
単にめんどくさい、ダルいという理由でセックスレスに向き合わないでいると、やがて2人のパートナーシップ自体に悪影響が生まれかねません。もちろん2人ともセクデザゼロで、家庭を切り盛りする共同体として仲良くしているなら全く問題ないです。でもセクデザは、上がったり下がったりと、体調、年齢、環境、経験値に寄って上へ下へ激しく振れるものです。セクデザゼロのまま32年間生きてきた男性が、先輩に「おっパブ」に誘われて行ってみたら、突如スイッチがはいって、エロエロ男に変貌したとか。そんな実話は何千件も聞いています。
女性もそう。40代まで「セックスなんて苦痛。子どもができたらもうしなくていい」と嫌がっていた女性が、あるタレントの追っかけをし始めて、そのタレントを思い浮かべてセルフプレジャーデビューしたら、うずいてうずいてたまらない身体になってしまったとか。まじで作り話じゃないですよ。私、実例をたくさん聴いていますので。いつも「事実は小説より奇なり」と感じています。だから、なるべく事実に寄せた小説を書くようになったんです!
セックス以外でもヤング世代は面倒なことを嫌がる傾向が多いですね。タイパ重視。合理的でないことはトライしない。好きな人への告白も別れもLINEでチャチャっとするとか。
セックスレス解消の第一歩は「本音で話し合う」こと
――セックスレスをなんとか解消したい女性たちは、どうしたらいいのでしょうか?
私が言いたいのは「妻が変われば夫も変わる」ということ! そして「なんで私たちはセックスしないんだ? 夫はなぜ私にムラムラしないんだ?」と自分に問うことの重要性です。
AV視聴も官能小説も官能コミックも、セクデザを刺激してくれます。最低でもこの3つは生活に取り込んでください。
女性視点でも、セクデザがおとなしい時期に夫に誘われると相当めんどくさいと思います。でも、夫はこれからずっと一緒に生きていく相手。セクデザや性格、タイプをちゃんと見極めた上で、自分からアクションを起こしてみてください。家事育児の分担もレス解消も同軸で「夫婦が本音で話し合う」のが第一歩です。家事の分担表は作るのに、セックスのルールは話さないのが現代夫婦。
レスを解消するのは確かに難しいけど、無理ではありません。私は、レスから抜け出した夫婦を何組も知っています。ぜひ2人で乗り越えてほしいですね。
独身の方向けに1つ言えるのは、結婚する前に必ずお互いセクデザを確認してすり合わせておこうということ。ここが根本的にズレていると、後から埋めることが難しいので。
――セックスは、美容にもいいそうですね。
はい。ハートフルに愛されていることを感じられるし、QOLが上がるし、「かわいいよ」「きれいだよ」など言われて承認欲求も満たされるし、ワクワクする脳内物質も出ます。いいこと尽くし! 気持ちが満たされていると、こわばった表情がほどけて、いい顔になる。ってことが「きれいになる」につながると思います。医学論文で「セックスすると肌のキメが細かくなる」と論じられているわけはないけれど、「きれいだな」って元々エモーショナルな感覚だから。
セックスしないよりもした方が、身体にも心にもいいことだらけ。セックスをする女性は「裸を異性に見せられるボディ」にしなければいけないと意識します。お肌もボディラインもフェムゾーンも綺麗に整えるようになります。自然と美容にも興味が湧くし、フェムケアもしっかりやるでしょう。至近距離で見つめられ、肌も腟も撫でられ、匂いをかがれ、味わわれる。そりゃ意識しとかないとモテませんもの。
――さきほど「セクシャルデザイアー」略してセクデザという言葉がありました。年齢や気分によって変わるのではないでしょうか。
そうなんです。セクデザの難しさは、自分ではわかりにくいうえに年齢・環境に応じて変化するところ。例えば20代では落ち着いていても、アラフォーで爆発する可能性は往々にしてあります。出産してガラッと変わったという方もたくさんいます。
ちなみに、セックスに関しては、ママ友のアドバイスをまともに聞いちゃダメです(笑)。いい友達かもしれないけど、夫婦仲の専門家ではありませんから。的はずれなことを、したり顔で言ってしまう友達もいる。夫婦のことは、ほかの夫婦にはわからないものと心がけてくださいね。