専業主婦経験を経て、34歳で1度目の起業、61歳で2度目の起業を成し遂げた三松真由美さん。プライベートでは2度の離婚と3回の結婚を経験。キャリアもプライベートも振り幅激しい三松さんの、成功の秘訣は「長所を生かして、周りとうまく補い合うこと」だといいます。そのコツを教えていただきました!
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――『堂々再婚~何度でも結婚できる技術』(WAVE出版)を出版されている三松さん。ご自身も、3回のご結婚をされています。
私、理系のインテリ無口な男性が好きで(笑)。1回目は、バブル期に出会ったドクターと結婚したんです。バブル期独特の言い回し、3高(高学歴・高身長・高収入)の夫ゲッチュ! と思ってうれしかったですね。中学教師を経て、結婚を機に上京して専業主婦になりました。子どもにも恵まれ、結婚生活は10年くらい続きました。
ただ、産後は本当に辛かった……。夫は激務で土日も仕事しているし、実家は島根なので両親を頼ることもできず。慣れない東京でママ友もいない。ひたすら孤独なワンオペ育児の日々を送っていたある日、たまたま女性誌で見つけたママさんサークルに出かけてみました。これが、今思うと人生の転機でしたね。
――赤ちゃんと2人っきり、密室で過ごす毎日に一筋の光が見えた感じでしょうか。
そうそう。一気に友達ができて、みんなで育児や夫婦の悩みをしゃべっているうちに、気持ちが明るくなっていきました。当時は、女性が結婚を機にキャリアを諦めて家庭に入るのが当たり前だった時代。あの頃、私と同じ辛さを抱えている専業主婦が、全国に点在していたのだと思います。
ママさんサークルに居場所を見つけて楽しく過ごすうちに、自分でコンセプトがはっきりしているコミュニティを作りたいなと思うようになりました。それでママ友2人と一緒に、ママサークル「B・B・B(ベイ・ブリッジ・ベイビーズ)」を結成したんです。B・B・Bのコンセプトは「ママにスポットを当てる」こと。それぞれの職歴キャリアを活かして、サポートし合う仕組みにしました。相互託児システムを充実させ、単独で動ける時間を生み出す。託児付きのコンサートや英語勉強会、前髪カット講習会、マナー教室、クッキング教室、ファッションショー……。過去のキャリアがすべて軸になります。
だから、私のママさんサークルは人材の宝庫でした。CAや美容師、ピアノの先生、デザイナー、薬剤師、そして電通、博報堂、リクルート、三井物産、三菱、小学館など大手企業を結婚退職した女性たちがそろっていました。
そのうち「家庭も子どももちろん大事。だけど自分を見失いたくない!」という気持ちが燃え始めました。令和の今では考えられない状況ですね。最初に入っていたママさんサークルで見聞きしていたノウハウをフル活用してさまざまなイベントを打ち続け、子育て本も出版しました。もと出版社勤務の女性やライターさんが、270名も登録していましたし。
始まってからは早かったですよ。私の思いに共感してくれるママたちがどんどん仲間に加わってくれて、会員は1900人に達しました。とにかく元気のいいママサークルだとマスコミに毎月のように取り上げられて、大手企業から女性向けマーケティングの仕事を受注するようになりました。仕事といっても、報酬は図書券(笑)。それでもすごくうれしかったです。
自分の得意なことで周りに貢献できればOK
――そして「株式会社エムネットジャパン」を設立されました。起業も順調に進んだのでしょうか。
いやいや、わからないことだらけです。バランスシートなんて読めず資本金の必要額も知らない状態で、とりあえず女性アントレプレナーコンテストに応募したら、合格したというシンデレラ・ストーリー。850万円出資してもらい、3人の取締役が50万ずつ出し合って、1000万円の資本金で株式会社を設立したんです。仕事は順調で数年後、私が株を買い取って大株主になれました。
そのとき私は34歳。怖いもの知らずでエネルギッシュだったから、失敗を恐れず突き進めたんです。今思えば、あの頃は体力があったなあ。
――B・B・Bの成功の秘訣はどこにあったのでしょうか。
まずは「得意分野で生き生き働く」こと。『餅は餅屋』スピリッツなんです。誰にだって得意と苦手があるから、得意なことで周りに貢献できればいいし、苦手なことはみんなで補い合えたらうまく回ります。私は欲望のおもむくまま、営業に邁進しました。それしかできない……。
もう1つは、「B・B・Bのママたちと、極力対面で会うようしてきた」こと。携帯もLINEもZoomもない時代ですから、コミュニケーションには工夫が必要でした。お金と時間のやりくりには、主婦のノウハウがばっちり活きましたね。ネットがない時代に、アナログでよくあんな大きなサークルを運営できていたなと。
専業主婦を経たからこそ、わかったことがたくさんある
――離婚、そして2回目の結婚をしたのはこの頃ですか?
はい。2回目の結婚相手は経営者でした。私も起業していたのでその頃、話題のビットバレー(90年代後半、IT関連のベンチャー企業が渋谷に集まっていたことから、渋谷区とその周辺が当時こう呼ばれていた。「渋い=bitter」「谷=valley」を掛け合わせた造語)のパーティーに参加して出会ったんです。まだまだ女性起業家が少ない時代でしたね。
再婚し、10年ほど一緒に過ごす中でたくさん海外旅行に行きました。海外で得たヒントとかインスピレーションはその後役に立ちました。日常を過ごしていると思いつかないことがフワッて降りてくるところが、海外旅行の醍醐味ですね。
――そして、夫婦仲相談の仕事をスタートされます。
株式会社を起業してから10年ほど経って、だんだん私の長所を生かせなくなってきたな……と感じていました。もともとITは苦手なのに、IT系の仕事ばかり舞い込むようになってきていたんです。「ITは好きじゃない。ITは苦手。それなのに……」ですよ。
この頃、周りの女性たちの声を聞いていたら、夫婦仲に悩んでいる人がなんて多いのだろうと気づきました。ITよりも、ママたちの身近な悩み解決に注力したいと思って、会社を友人に譲り「恋人・夫婦仲相談所」を立ち上げました。最近“ライフシフト”という言葉が人気ですが、私は昔にライフシフトを経験していたと(笑)。
夫婦の悩み事を解決するために、自分はマーケティングリサーチが得意なんだからまずは作家として調査した結果を本に書こう!と決意し、『となりの寝室』(講談社)でデビューしました。作家になりたいという夢がここで実現。主婦1609人に性生活の調査をして書いたノンフィクションです。室井佑月さんに帯の推薦文を書いてもらったのがとてもうれしかったことをよく覚えています。
――作家デビューまで果たした三松さん。20冊以上の本を出版し、いろいろなメディアで情報発信を続け、2021年には61歳でGlad株式会社を立ち上げました。
還暦も過ぎて、4度目のライフシフトを企みました。以前からいい妹分を見つけて後継者になってもらい、私の61年の経験やこれまで築いてきた人脈を伝えたいと思っていました。そんなある日、腟に特化したコスメを開発している高林裕果(ひろか)さんと出会って即決。共同代表として、2人でGladを創業しました。
裕果さんは、看護師の経験を持つ1児の母。私と同じく、女性の腟に課題意識を持っていたんです。それに何より、熱量がすごいの。初対面で「腟から女性を幸せにしたい!」という熱い思いを感じて、意気投合しました。
――これまでのキャリアで、専業主婦の経験があって良かった! と思うことはありますか?
日本の女性が、いかにしんどい環境に置かれているか気づいたのは専業主婦の期間です。真面目に生きて、頑張って就職して正社員になっても、結婚や出産を機に退職したら復帰できなかったり、セカンドキャリアの選択肢が極端に少なかったり。私も1度目の結婚では、それを知らずに専業主婦になっちゃったんです。自分が何を知らないかということを知らなかったから、自分がそれだけ不利な状況に置かれているか気づけませんでした。バブル期は「夫を24時間働かせて経済に貢献しよう。妻は家にいて、稼ぐ夫を支えよう」的な風潮でしたもん。
B・B・Bで初めて仕事を受けて、報酬として500円の図書券をもらったとき、すごく嬉しかったんです。あの気持ちは、一度専業主婦を経験していないとわからなかったと思います。今はあの頃と違って、スマホがあれば何でも調べられて便利ですよね。でも嘘の情報も多いから、その都度真偽を見抜かないといけないのはかえって大変かな。
顎クイ、壁ドン、バックハグは日課!たっぷり愛してくれる彼と、3回目の結婚
――そして現在のパートナーと、3回目のご結婚を。
はい! 今のダーリンはちょうど20歳下の医師です。出会ったのは彼が20代のとき。私が運営しているイケメンのお医者さんサークル「イケメンドクターズ」(イケドク)に入隊してくれたのがきっかけです。「あ、かわいい!」と胸キュンしたのを覚えています。
今も毎日ラッブラブです。結婚もライフシフトと同じで、更新して、よりハッピーになると思えば、離婚もネガティブに捉えなくていいでしょ。『マリッジシフト』という本を書いてもいいかな。
――20歳という年の差婚。戸惑うことはありませんでしたか?
ないですね! 歳が離れている上、キャリアも生きてきた環境も何もかも違う2人。私には孫もいますし。だからこそ、無駄な期待をせずに自然体でいられます。同じ経験をしても、感じ方が違って当たり前。だから「彼はどうして私の気持ちをわかってくれないの?」「こんな小さなこと、どうして気にするの?」と価値観の違いにいちいち悩む必要がありません。「あなたの世界」「わたしの世界」とガッチリ認めて過ごしています。
それから、お互いに素直に相手の意見を聞いています。2人とも”心のコップ”が上向きですから。プライドをぶつけあったり、見栄を張り合ったりせずに済むのって、本当に楽なんですよ。性別や年齢なんてただの記号です。みなさんも思い込みを捨てて、好きな相手ができたら自由に楽しんでくださいね。魂でぶつかろう!
――彼の好きなところ、尊敬しているポイントを教えてください。
気持ちをちゃんと言葉にしてくれるところがとても好き! 「ムッチャ愛されてるわああ」と実感します。彼は超真面目で、もともとそういうタイプではなかったんですが、私が思ったこと(プラスのこと)をそのまま口に出すタイプだから、彼も影響されて言ってくれるになりました。よく「夫婦は鏡」といいますが、お互いのいいところを自然に真似し合うものだなと感じます。
逆に私も、彼の勉強熱心なところ、真面目さを尊敬しています。心から患者さんのことを思っていて、土日もずっと医療のことを考えてる。彼の、利他精神はすごいなあと思います。
――ずっとアツアツですね!
よく手をつないで一緒に映画やドラマを見ているのですが、キュンとするラブシーンを再現してくれます(笑)。顎クイ、壁ドン、バックハグの3点セットは日課です。
それから、私が女性用風俗を取材するのも賛成してくれています。どんなデートをするのか教えてね、と言われるので風俗最前線の報告をしています。
――今は、3組に1組が離婚する時代です。うまくいく結婚、うまくいかない結婚にはそれぞれどんな特徴があるのでしょうか。
「足るを知る」の姿勢が足りない。男性も女性も、20代も60代も。夫婦生活は「あれもほしい!これもしてほしい!やってくれたらしてあげる!」ではダメ。いつまで経っても満足できない荒んだ人生になってしまいます。無理せず自分たちなりの満足を知れば、穏やかにやっていけると思います。幸せの基準は国によっても違うけれど、2人の単位で幸せの定義を見つければいいと思います。
夫婦であれ親子であれ、他人のことは変えられません。「もっとセックスしてよ」と言っても、「あと300万円多く稼いできてよ」と言っても、相手は動かない。まずは自分がマイナーチェンジから始めてみる。自分が変わってゆけば、パートナーも必ずそれに気づいて、1ミリ単位で動き始めます。あくまでも1ミリ単位。気長にのんびり、ゆったり歩んでいきましょうね。100歳で昇天するまで……けっこう長いですもん。