Paranaviトップ ライフスタイル 趣味 “少しの工夫”で生活を彩る、「Ceramichi」の陶芸家・ミチコさんが実践するパリジェンヌ的暮らし方

“少しの工夫”で生活を彩る、「Ceramichi」の陶芸家・ミチコさんが実践するパリジェンヌ的暮らし方

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パリでミシュラン星付きレストランの食器を手掛け、2020年より日本に拠点を移しアーティスト活動をスタートしたセキミチコさん。カテゴリーに縛れず自由な発想で創作される彼女のアート作品の秘密は、幼少期の体験が深く関係していた。生活に彩を与えるアートの存在についてお話を聞いた。

幼少期から身近にアートがある家庭

――ミチコさんが陶芸を始められたきっかけは何だったのでしょうか。

母が絵を描いていて、父もクリエイティブディレクターだったので、比較的アーティスティックな環境で育ったのも一因かと思います。母が平面の絵を描いていたので、私は立体の物に興味を持ったのかもしれないですね。

あとは、食べることも好きな家庭で、和食器と洋食器それぞれ専用の棚があり、小さいころから自分でお皿を選ぶのが好きでした。食器への興味は、インテリアやアートへの興味に広がっていきました。

――生まれながらにアートの世界にいたのですね。

そうですね。日常というか、気づいたらそこにいたという感じです。初めて粘土で造形物を作ったときにすごくしっくりきて「これは私のツールだな」と実感するような感覚はありました。

陶芸家 セラミチさん

――小さいころから食器がお好きだったのですね。

はい。私の中でのいちばん古い食器の記憶は、真っ白い食器。当時母がハマっていたのだと思いますが、白のテーブルに家の壁も真っ白で食器も白くて……。その風景がすごく印象深くて。今私が作っているコレクションも真っ白かカラフルかに分かれているのですが、おそらくその記憶からインスピレーションを受けているのだろうと思います。

――お母さまのテーブルコーディネートから作品が生まれているなんて素敵です。

よく母から「作ったご飯に合う器を食器棚から出してきて」と言われて、お手伝いの一環として自然と食器の色合わせを考えたりしていましたね。ときには一緒に食器を選びに行くこともありました。また、特に贅沢な暮らしをしていたわけではないのですが、洋服に関しても、シーズンに1着くらい一緒に選んでオーダーメイドで服を作ってもらっていました。たくさんの服や流行りのものを持つより、お気に入りを身につけるという感性は母が与えてくれた環境が育ててくれたものかもしれないですね。

――ものを大切にしたり流行りに左右されたりしないのはフランス人の感性とも似ていますね。ミチコさんはパリで暮らされていましたが、ご両親がフランスにルーツがあったのですか?

とくにないですね(笑)。ただ、私が通っていた学校がフランス人の方が創設者でフランス語の簡単な授業が幼稚園からずっとあるなど、比較的身近に感じる機会は今までもありました。実際に移住するきっかけとなったのは、父の友人の紹介でした。

身の回りにあるもので素敵な暮らしを演出

――アーティストとして、フランスで学んだことは現在の作風に影響を与えましたか?

日常にアートが溢れていて、生き方そのものがアートでした。どの家に行ってもそれぞれの身の丈に合った生活をしながら、美しく装うことや、インテリアのこだわりが染みついている感じ。アーティスティックな生活を送る意味ではとても影響を受けました。

陶芸家 セラミチさん

――アートが身近にある分、日常的にセンスが磨かれていくんですね。ミチコさんが考えるアーティスティックな生活の定義は何でしょうか?

例えば、週末にマルシェでお花1本でも買ってきて、コップに生けてテーブルに置いてみること。身の回りにあるもので、ワンランクアップした素敵な暮らしをするための工夫を考えることだと思います。

――フランスの方は小さいころからそういう感性が磨かれている気がします。

何も特別なことではなくて染みついていて、アートという感覚もそんなにないのかもしれません。「フランス人は服を10着しか持たない」というような話がありますが、この服を着るからオシャレに見えるということではなくて、あるものをどうやって着てニュアンスを見せるかが大切なんです。

――日本では新しいものを買って流行りを追いかける風習が根強いですよね。

そうですね。フランスでは「新しいものに飛びついて買うのはカッコ悪い」とう考えが根本にあると思います。デコラティブに装飾的にあれもこれも取り入れず、洗練して研ぎ澄まされた感覚が根底にあるんでしょうね。

――シンプルで上品なコーディネートが自然とできるってかっこいいですよね。ミチコさんが作品づくりで大切にしていることは何でしょうか?

「こうあるべき」というところから解放されたい、カテゴリーに縛られないものを作りたいなと思っています。例えば、以前レストランのオーダーメイドのお皿を作っていたのですが、星付きのお店が多かったんです。どんなお皿がいいかなと考えていたときに、結構なお金を払って非日常を楽しみに来る場所だから「お皿とは白くて丸くて平なもの」ではない非日常を楽しめるお皿をつくっていました。「これはお皿なんですか?」みたいものを作っていたいですね(笑)。自分の作品だけでなく、ファッションも暮らしも何でもそうありたいなと思います。

陶芸家 セラミチさん

――だからミチコさんの作品はどれもほかでは見たことがないような素敵なものばかりなのですね。

ありがとうございます。お皿は最初から曲がっていたりセパレートしていたりするものもあります。曲がった部分に箸をおいたりとか、色味も日本では珍しいものが多いと思います。

陶芸家 セラミチさん 作品

窯の中で割れる器の欠片もジュエリーに

――曲がった部分が箸置きとして使えるなんてアイディアが素敵です!フランスの素材も使っているのですね。

そうですね。和食器には無い発色なんです。日本にいる間にせっかくなので日本の素材も使ってみようと思いましたが、あまりピンとくるものに出会えず……。私の美的感覚はヨーロッパ育ちなのだと気がつきました。

――かわいい食器ばかりで全部欲しくなります(笑)。

うれしいです。これは、セパレートしているお皿なのですが、違う色みを一緒に使って色合わせを楽しめます。食洗器でも洗えて、耐久性があるのもポイントです。

陶芸家 セラミチさん 作品

――遊びゴコロたっぷりのお皿たち、かわいいです。白い食器のシリーズも素敵ですが、金継ぎとは違いますか?

これは白磁にプラチナやゴールドでデザインしています。金継ぎは、壊れた器を金で継いで元に姿に戻す方法ですが、私の作品は割れっぱなしなので違うんです。こうした器は焼いているときに窯の中で変形したり割れたりすることも多々ありますが、その欠片たちもジュエリーにしているんです。よく、どこも無駄にしないで使っていて素晴らしいと言っていただけるのですが、私の場合もったいないというよりは単純に欠片を美しい思うからつくっています。

――欠片なのでいろんな形があって色もかわいいですね。

お皿の欠片って破棄するのが当たり前とされていますが、私にとっては素材になるんです。陶器を焼いて、割れてしまった欠片は宝物。あえてアップサイクルを始めたわけではないですが、陶器から生まれるすべてを大切にしています。割れたところから、これを何のジュエリーにしようかなと考えるのも楽しみのひとつです。

陶芸家 セラミチさん 作品


――ミチコさんの作品は、陶器を食器やマグカップとしてだけではなく、いろんな使い方をしていいんだと使う人の視野も広げてくれますね!

ありがとうございます。枠にはまらず、楽しくテーブルの上をアーティスティックに楽しめたらいいんじゃないかなと思っているので、これからもそんな作品を作っていきたいです。

陶芸   ↑撮影用に編集部員が特別につくらせてもらった作品(現在新規の生徒さんは募集されていません)

 

Brand profile

𝑪𝒆𝒓𝒂𝒎𝒊𝒄𝒉𝒊 (セラミチ)
アーティスト、ミチコ セキによるセラミックアート。パリではミシュランの星付きレストランやホテルからオファーを受け、シーズン毎にオーダーメイドの食器を製作。実用性を備えたアートピースの器シリーズを始め、お皿のかけらをモチーフにしたジュエリーや、花器・オブジェなど、食器の概念にとらわれない自由なデザインで、クラフトにもファッションにもカテゴライズされないアートワークを展開する。また𝟤𝟢𝟤𝟤年よりフラワーベースの新しいライン«𝖲𝖺ï(サイ)»をスタートし、新たな活動の場を広げている。

𝑪𝒆𝒓𝒂𝒎𝒊𝒄𝒉𝒊 (セラミチ)のInstagramはこちら

𝗦𝗮ï(サイ)のInstagramはこちら

𝖬𝖨𝖢𝖧𝖨𝖪𝖮 𝖲𝖤𝖪𝖨(ミチコ セキ)●東京都まれ。大学休学中に渡仏し、𝖠𝖱𝖳𝖲 𝖤𝖳 𝖳𝖤𝖢𝖧𝖭𝖨𝖰𝖴𝖤𝖲 𝖢𝖤𝖱𝖠𝖬𝖨𝖰𝖴𝖤 𝖣𝖤 𝖯𝖠𝖱𝖨𝖲卒業後「𝖢𝖾𝗋𝖺𝗆𝗂𝖼𝗁𝗂」を立ち上げ独立、以後レストランやホテルにオーダーメイドの器を創作する。2020年より拠点を東京に移し、アートピースの器を制作する一方、インスタレーションによる展示やファッションブランドとコラボレーションする等、日常をアートに変えるUnique piece =1点もののクリエーションをテーマに、枠にとらわれないクリエイティブな活動をしている。

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杉森 有規
Writer 杉森 有規

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