暑い日が続いていますが、皆さんどうお過ごしでしょうか。暑さですこしバテちゃった……そんな方もいるのでは。でもそれって本当に夏バテでしょうか? 実は、夏バテだと思っている人の中には、「夏季うつ」という季節性のうつも含まれているんです。
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「夏季うつ」って何?
夏季うつ(夏季季節性うつ病)は、季節性のうつ病の一種で、主に夏季に現れる症状を指します。季節性のうつって、聞いたことある! という人もいらっしゃるかと思います。ただ、多くの方が、「季節性のうつって冬の『冬季性うつ』だけじゃないの?」と考えるようです。
実は、季節性うつは冬だけではありません。夏になるとうつっぽくなる……“夏季うつ”も存在するんです。
夏季うつの症状
基本的な症状はいわゆるうつ病と同じです。大事なポイントは、毎年、暑くなってくると同じような時期に調子が悪くなるという点です。
主な症状としては、以下のようなものがあります。
- うつうつとした気分や憂鬱感
- 寝付けない、途中で起きる、または過眠(寝すぎてしまう)
- 食欲が低下する、もしくは増加する。それとともに体重の変化
- 集中力や注意力の低下
- ミスが多くなる
- やる気が出ず、休日も家でベッドから起き上がれない
- とにかく体がだるい
- もともと興味があったことに対して興味がなくなっている、もしくは楽しめていない
- 焦燥感やイライラなどの感情を抑えられない
夏季うつの予防法
もし、なんとなく今うつっぽい……と思う方は、まず例年どうかを思い出してみてください。季節性うつ病は、自覚できることがいちばん重要。私の患者さんでも、「この時期に必ず調子が悪くなる」と自覚して、暑くなる時期だけメンタルクリニックに通って対策している方もいます。
自分でできる予防法は、以下の5つが代表的です。
- 適切な休息と睡眠
- 日光をあびる量の調整
- 快適な室温・湿度を保つ(冷房の使用や適切な風通し)
- 適度な運動を、朝など涼しい時間に取り入れる
- バランスの取れた食事を同じ時間に摂る
「睡眠」は、太陽の光と深い関係がある
睡眠に関しては、環境を整えることがすごく大切です。「最近眠れないんです」とか「朝早く目覚めるようになってしまって……」という方に、「温度は適切にしていますか?朝、日差しが入らないようにしていますか?」と聞くと、「冷房は寝る前に切ります」だったり、「遮光カーテンはつけていません」という答えが返ってくることがしばしばあります。
睡眠には、体内で放出される「メラトニン」という物質が大きく関係しています。睡眠のリズムをつくる物質の1つがメラトニンで、昼間に太陽の光を浴びることによって生成されます。このメラトニンが、1日の長さを決めているんです。朝、人間の体に太陽の光が届くとメラトニンの分泌がストップして、その時点から体内時計がスタートします。さらに、その16時間後の夜に眠くなるリズムが整うようになっています。
いい睡眠を取るには、毎朝同じ時間に目覚めることが大切なんですね。そうやって毎朝のスタートをそろえることで、規則正しく生活することができるんです。しかし、ずっと部屋のカーテンを閉めたままで光が得られないと、目覚めも寝つきも悪くなってしまいますし、逆につねに日光が入ってくる環境にしていると、変な時間に目覚めるようになってしまいます。
人間の体は環境にとても素直です。良くも悪くも、光が睡眠に影響するので、意識して脳に光を届けてみましょう。そもそも眠っているとき、人間の体温は通常より下がっているので、暑すぎる状態で起きてしまうのは当然のことです。
予防のためにオススメしたい食材5つ
夏は食欲が落ちやすいため、栄養バランスも乱れがちです。ですので、意識して栄養バランスを整えるようにしてください。
幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」を増やすには、その前駆物質であるトリプトファンを取ることがすごく大切です。トリプトファンを多く含む食材は、こちらの5つ。
魚
サーモン、マグロ、サバなどの魚は、オメガ-3脂肪酸とトリプトファンの両方を豊富に含んでいます。
豆類
大豆、レンズ豆、チックピーなどの豆類は、タンパク質とトリプトファンを豊富に含んでいます。
卵
卵はタンパク質とトリプトファンのいい供給源です。黄身にもトリプトファンが含まれているので、丸ごとの卵を摂ることがおすすめです。卵は、東洋医学でも血(栄養)と気(エネルギー)を補うと言われており、かなりオススメな食品です。
牛乳やヨーグルトなどの乳製品
アーモンドやカシューナッツなどのナッツ類
これらの食材をバランスよく食事に取り入れることで、トリプトファンの摂取量を増やし、セロトニンの合成をサポートすることができます。
ちなみに、トリプトファンは「ビタミンB6」と一緒にとるといいと言われています。ビタミンB6を摂取するためには、枝豆や豆腐などの大豆製品、牛乳やチーズなどがオススメです。
夏季うつと夏バテの見分け方3つ
夏季うつと夏バテは似たような症状を示すことがありますが、以下の点で見分けましょう。
①症状の期間
夏季うつは基本的に数週間以上続く傾向があります。夏バテは数日休めばある程度回復します。
②症状のパターン
夏季うつは毎年この時期になると抑うつな気分や無気力感がでてきますが、夏バテは主に体力の低下や食欲不振が特徴です。「楽しい」「うれしい」などポジティブな感情がなくなることはありません。
③原因
夏季うつは季節要因によるうつ症状ですが、夏バテは暑さや体力の消耗によるものです。
食事や睡眠、運動で対策しつつ、もしそれでも症状が続く場合は、一度メンタルクリニックを受診するのも一つの手です。どんな季節も楽しく、毎日を充実させていきましょう!