2022年、日本の出生数は80万人を下回り、過去最少を更新しました。一方で卵子凍結などのフェムテックも話題になっており、2023年4月からは不妊治療の保険適用も始まりました。コロナ禍を通じて“家族”の大事さを意識した人もいるでしょう。妊活を意識しているけど、本格的に踏み出すにはまだちょっと……という方のために、妊活を始める前に知っておきたいメンタルと妊娠の関係性についてお話しします。
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妊娠・出産は奇跡!妊活には長い時間がかかると思っておいて
私が大学病院にいたときに感じたのは、“妊娠・出産は奇跡”ということです。妊娠出産のメカニズムを知ると、それがよくわかります。
まず、排卵日になると卵子が卵巣から放出されます。しかし、卵子の寿命は12~36時間と短く、そこで受精しなければ生理のタイミングで体外へ流れてしまうのです。一方で、精子は1回の射精で約3億個も放出されます。寿命は長く、1週間生きるものもいますが、卵子までたどり着けるのはわずか200個程度。
そして、晴れて受精卵となったとしても、受精卵が1週間かけて子宮内へと進んでいく間に死んでしまうこともあれば、着床できずに流れてしまうこともあるんです。若くて健康な男女が排卵日に性交渉をしたとしても、その1回で自然妊娠する確率は約20%といわれています。
さらに、無事に妊娠しても、すべての赤ちゃんが無事に産まれてくるわけではありません。妊婦のうち約15%は、22週までに自然流産してしまいます。その結果、私たちがこの世に誕生した確率は……実に3億分の1の確率といわれています。奇跡的なことだと思いませんか?
妊娠とストレスの関係
ストレスは妊活によくないんだろうな……となんとなく感じている方は多いと思います。では、具体的にどのように影響しているのでしょうか? 実は、ストレスによって分泌される2つのホルモンが、妊娠と密接に関わっています。
コルチゾール
ストレスを感じたときに、私たちの体内では、副腎から「コルチゾール」というホルモンが分泌されます。心拍数を上げたり体を緊張状態にするなど、ストレスから身を守るための防御反応をするホルモンですが、女性ホルモンの分泌を低下させる作用もあります。
適度な分泌は良いのですが、過度なストレスによってコルチゾールが過剰に分泌された場合、無排卵や生理不順などの原因となることがあります。それにより妊娠しにくい体質になったり、妊娠確率が下がったりしてしまうのです。
プロラクチン
もう一つが、脳の下垂体と呼ばれる部分から分泌される「プロラクチン」というホルモンです。プロラクチンは、出産後に母乳の分泌を促す作用などがある女性にとって大切なホルモンです。しかし、その一方で排卵を抑える働きがあるのです。
ストレスが強く感じていると、出産前であってもこのプロラクチンの分泌量が増えてしまい、排卵に影響が出て、不妊の原因になってしまうことがあります。
自律神経の乱れもケアを
自律神経のバランスが乱れると、動悸、胃腸症状、なかなか眠れない、なんとなくの体調不良や倦怠感、イライラ、気分の落ち込みなどいろいろな症状が出ます。
そして自律神経は女性ホルモンのバランスにも影響します。自律神経の乱れが誘因となって女性ホルモンのバランスが乱れると、うまく排卵が行われなかったり、生理不順が起こったり、妊娠しにくい体質になったりします。
妊活はストレスが溜まりやすい!夫婦二人三脚で取り組もう
妊活をしている方の多くが、「不妊治療・妊活にストレスを感じている」といいます。その理由はいろいろあります。
不妊治療・妊活は毎月毎月、結果が分かれます。なかなか自分がうまくいっていないときに、同世代の友達が妊娠したことをSNSで知ったり、周りから「そろそろ、お子さんは?」と聞かれたり。そんなとき、「どうして自分だけだめなんだろう」と思ってしまう女性が多いようです。いつ妊娠できるか分からない、先が見えない状況に不安を抱えてしまうこともあります。
大事なのは、「妊活は夫婦が二人三脚でするものだ」という意識です。夫婦の片方が一人で背負うものではないし、それはあまりに辛いことです。
あまり理解がない男性もいまだに見かけますが、不妊の原因の確率に男女差はないと言われています。ですから、もしパートナーの理解が得られない場合は、産婦人科に連れて行って、医師からも“妊活は2人でするもの”と話してもらいましょう。
結果が出なくても、自分を追い詰めないで
妊活をすると、食事をはじめとした生活環境を整えることになります。これはとても大切なことですが、あまりにきっちりやり過ぎて、それ自体がストレスになる方がいらっしゃいます。それはすごくもったいないこと。気持ちと行動が乖離してしまっている状態です。せっかく妊活を頑張っていても、裏目に出てしまう可能性も。
ですから、無理をしすぎず、自分のペースで妊活してください。妊活は先が見えないものなので、無理して続けていると本当に苦しくなってしまいます。
適度なリフレッシュを心がけ、しっかり自分を大切にしてあげることが、ストレスフリーな妊活のために大切です。