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推し活をすると「幸福度が上がる」のは本当だった!私たちの幸せをつくる5つの要素

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あなたには「推し」がいますか? 最近は「推し活」でリフレッシュする人が増えています。推し活は、特定のアイドルやアスリート、キャラクターから場所やものまで、何か特定の対象を熱狂的に応援することをいいます。実は、推し活をすることで幸福度が上がるという説があります。日本メンタルアップ支援機構 代表理事の大野萌子さんに解説していただきました。

日本人の3人に2人は「推し」を持っている

野村総合研究所のアンケート調査(※)によると、行っている推し活の数について「1つもない」人は35.0%で、「1つ」は31.4%、「2つ」は25.1%、3つ以上は8.5%となっています。おおまかにいって3人に2人は、時間や労力、お金を割いて熱中する趣味や活動を持っていることがわかります。

さらにこの調査によると、「推し活の個数」と「幸福度」には関係があるといいます。幸福度が10点中8点以上の人の割合を「推しの数」別に調べると、3つ以上の推しを持っている人は42.2%、推しが2つの人は40.7%、1つの人は31.8%、推しが0の人は20.9%となりました。推しを持っている人は持たない人よりも幸福度が高く、とくに複数の推しがいる人はとくにその傾向が高まるとわかります。

大野萌子さん

大野 萌子さん
日本メンタルアップ支援機構 代表理事

大野萌子さん

大野

昔「オタク」という言葉には「暗い、地味、ダサい」というイメージがありました。最近は「私生活が充実している、生きがいを持っている」などポジティブなイメージに変わりつつあり、その中で推し活という文化が生まれました。

もともと「推し」はアイドルファンの間で、自分がいちばん応援しているお気に入りのメンバーを指す言葉だったといわれます。そのためアイドルやアニメのキャラクターを指すイメージが強かったものの、最近は幅が広がっています。インフルエンサーや食べ物、コスメ、飲食店に始まり、神社仏閣や鉄道会社、歴史上の人物などを推す人も。重度の推し活にハマることを「沼る」と呼ぶようにもなりました。

推す方法も、お金や時間を費やすだけではありません。手間をかけて愛情を表現したり、ライフワークとして応援したり、SNSなどで推しへの愛を語ったりとさまざまです。

※出典:野村総合研究所「日本人の生活に関するアンケート調査」(2023年2月、対象:全国の15~79歳の男女個人3,617人)

幸福をつくる「PERMA」の5要素

ところで、私たちの「幸せ」はどんな要素で構成されるのでしょうか。健康で、人間関係が豊かで、お金があって……といろいろな要素が考えられます。

ポジティブ心理学の父ことマーティン・セリグマン博士が提唱した「PERMAの法則」では、この5つに整理されています。

  • P(Positive Emotion:ポジティブな感情)楽しい、うれしいなどプラスの感情を持つこと
  • E(Engagement:没頭、没入)何かに没頭すること
  • R(Relationships:人間関係)家族や友人付き合い、職場、コミュニティなどでいい人間関係を保つこと
  • M(Meaning:意味、意義)人生に何かしらの意味、意義を見いだせること
  • A(Achievement:達成)何かを達成できること

この5要素に沿って、推し活のメリットを解説していきます。

推し活は、ポジティブな感情そのもの

推し活は、P(Positive Emotion)に直結します。推しを持つことで、気持ちが前向きになってストレスを発散できたり、ネガティブな気持ちが薄れて家庭や仕事へのエネルギーがわいてきたりするでしょう。

大野萌子さん

大野

何かを見たり経験したりして、自分の心を動かすというのはすばらしいこと。感情の起伏があると、凝り固まっていた心に柔軟性が戻り、気持ちが浄化されます。いわゆる「カタルシス」ですね。
「泣ける」ドラマが人気を得やすいのも同じです。思いっきり感情を動かされて泣くなんて、日常生活でそうそう起きません。いっさいの制限なく堂々と泣いて、自分の感情を表せるのが支持される理由の1つでしょう。

好きなものに没頭すれば、嫌なことを忘れられる

大野萌子さん

大野

推し活は、「夢中になれる」のがすごく大事なポイントです。例えば、仕事で大きなストレスを抱えたりメンタルダウンしてしまったりする人は、昼間も夜もずっと仕事のことを考えて過緊張になりがちです。
誰でも、嫌なことほどなかなか忘れられないし、状況をがらっと変えることも難しいでしょう。こういう場合、ストレスをかかりっぱなしにするのではなく、意識的に思い出さない時間をつくって、どこかで強制リセットする必要があります。他のことに夢中になれば、気持ちを強制的に切り替えることができます。

推しを通して、自分の居場所が見つかる

大野萌子さん

大野

就職・結婚・出産でライフステージが変わるときや、転職などでキャリアが変化するとき、自分の価値観が揺らぐことがあります。そのときに特定の「推し」がいれば、自分の拠り所、安定した居場所にできます。
例えば推し活仲間がいれば精神的な居場所になるでしょうし、自分と推しの関係性もRelationshipsに含まれます。推しのSNSアカウントを見れば、リアルタイムで推しの状況がわかったり、投稿にコメントすることでまるで直接会話しているかのような感覚になれたりします。良くも悪くも、推しとの距離が近くなりました
ほかにも、推しと同じ服を着たり、推しのイメージカラーを身につけたり、推しの趣味を自分も好きになったりするでしょう。これは、推しやそのコミュニティとの一体感を感じられるから。こういう体験はプライスレスですね。

誰かの役に立つことで、自分の存在意義が明らかに

大野萌子さん

大野

人は誰でも「誰かから必要とされたい、誰かのためになりたい」という気持ち、つまり承認欲求を持っています。例えば1990年代に爆発的に流行った「たまごっち」のように、誰かの世話をする、成長を見守るといった奉仕欲求もそれに含まれますね。植物を育てるのも同じです。誰かの役に立つ経験自体が、やりがいになり、自分の存在意義を明確にしてくれるわけです。
推し活も、一見「応援する / してあげる」という行為に見えますが、結局は自分自身が幸せになるための行為です。いわゆるギブアンドテイクの関係です。かの有名なアドラー心理学でも、幸せになるための3条件のうちの1つを「他者貢献」と定義しています。

具体的な目標ができるとモチベーションになる

大野萌子さん

大野

推し活を通して、具体的な目標やゴールを設定できるのもいいポイントです。例えば「推しを人気1位にしたい」「無名な推しを有名にしたい」などのはっきりした目標があると、モチベーションになりますね。
いずれにしても、自分自身の達成ではなく「推しが何かを達成する」ことが大事です。上記のM(意味、意義)にもつながります。ゴールもやり方もいろいろありますが、最近はSNSで推し活できるのが大きいです。誰もが隙間時間で応援できるようになりました。

推し活をすると、心理的所有感が高まる

推し活をすることで「心理的所有感」が高まるという研究もあります。心理的所有感とは、情緒の面で「所有している」と感じること。法的・物理的な所有とはまったく別の感覚です。

大野萌子さん

大野

心理的所有感の1つに「安心してエネルギーを注げる」という感覚があります。こうした安心感は、推し活の必須要素。思いっきり推しても拒否されない、ウザがられることがないという安心感がベースになって、推し活に邁進できます。
例えば、推し活のために仕事している人もいます。モチベーションは何だってよくて、気力が上がったり、生きる意味が見つかったりすれば、これ以上のメリットはありません。

推し活に没頭しちゃう!そんな人が気をつけたいこと

いいことづくしの推し活。でも、のめり込みやすい人ほど気をつけたいポイントがあります。

大野萌子さん

大野

度を超えた推し活には要注意です。人それぞれに適性範囲があるので、自分のキャパシティを見極めて、そこから外れないようにしましょう。とくに、もともと人付き合いが苦手な人や、猪突猛進でのめり込みがちな人、精神的につらい状況にいる人は、推し活をしすぎてその世界しか見えなくなってしまうこともあるでしょう。
例えば、スケジュールや経済的な問題で、推し活仲間と同じように応援できない……となれば辛くなっちゃいますよね。「あれ?」と思ったら、一度立ち止まってみてください。何かに夢中になるのはいいことですが、客観的に見て助言してくれる人が周りにいるといいですね。未成年が多額のお金をかけて推し活すると、人生を棒に振ってしまうことにもなりかねませんから。

推し活を持つことで、自分の世界が広がったり、コミュニティが増えたり、幸せと感じる要素の幅が広がっていくのではないでしょうか。例えば家族や友人との関係がうまくいかないときや、仕事でつまずいてしまうとき、「推し」というサードプレイスがあるだけで救われるかもしれません。

「幸せ」に、決まった形やただ1つの正解はありません。人からなんといわれようが、判断基準は、自分が幸せだと感じられるかどうかだけ。毎日を心地よくパラレルに楽しむための秘訣の1つが、推し活だといえるでしょう。

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さくら もえ
Writer さくら もえ

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