実は2024年、子どもを出産しました!30代半ば、自分のクリニックを開業してすぐ……という絶妙なタイミングだったため、妊娠の心身の変化と仕事の両立にてんやわんやな日々。自分でも、どうなることやら……と毎日を生きるのに必死になっている日々でした。「出産もしたいけど仕事もしたい」「それって両立できるの?」そんな方もいらっしゃると思いますので、今回は私自身の体験も踏まえながら、妊娠中のホルモンのお話を少ししようと思います。
妊娠中のホルモンと身体の変化
妊娠すると、身体の中ではホルモンが劇的に変化していきます。そのおかげで赤ちゃんが成長しやすい環境が整いますが、一方でママの身体にはいろんな影響が出るんです。妊娠初期から後期、そして産後まで、どんなホルモンがどんな風に変化して、どんな症状が出るのかを説明します。
妊娠初期(0〜12週)
ホルモンの変化
妊娠するとまず増えるのが「hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)」というホルモン。このhCGは、受精卵が着床するとすぐに分泌が始まって、妊娠が継続できるように働いてくれます。このhCGが卵巣に働きかけて「プロゲステロン」と「エストロゲン」という2つの女性ホルモンの分泌を促します。ちなみに、プロゲステロンとエストロゲンは普段の月経が起こるメカニズムにも作用していますが、hCGは月経では変化しないため、妊娠検査薬はこのhCGを計測しています。
- hCG:妊娠の維持をサポート、特に妊娠初期に急上昇
- プロゲステロン:子宮内膜を厚くして、赤ちゃんが成長できる環境を作る
- エストロゲン:血流を増やして、胎盤の発達をサポート
身体の変化・症状
この時期は、ホルモンが急激に変化するせいで、さまざまな症状が出てきます。
- つわり(吐き気・嘔吐)
– hCGが急激に増えることで吐き気や嘔吐が起こる
– 特に朝に強く出ることが多いが、1日中続く人もいる - 眠気やだるさ
プロゲステロンの増加で身体がリラックスモードに入るため、強い眠気を感じやすい - 情緒不安定
ホルモンの急激な変動で、イライラしたり落ち込みやすくなったりする - 乳房の張りや痛み
エストロゲンとプロゲステロンの影響で乳腺が発達し始める - 頻尿
hCGの影響で腎臓の働きが活発になり、尿の回数が増える
この時期は、身体が妊娠に慣れていないこともあって、特にしんどいと感じることが多いかもしれません。ちなみに私は食べづわりで、食べていないと気持ち悪いというつわりでした。1日中とにかく食べ物を欲していて、仕事の合間に食べるのではなく、食べる時間を確保するために仕事をいかに短縮するかという謎の思考に。正直、自分の頭がおかしくなったんじゃないかと思うくらいで不安な時でした。でも、つわりは12〜16週頃には落ち着くことが多いので、無理せず乗り切ってくださいね。
妊娠中期(13〜27週)

ホルモンの変化
妊娠中期になると、hCGの分泌が少し落ち着いてきて、胎盤が完成します。ここからは胎盤が主に「エストロゲン」と「プロゲステロン」を作るようになります。
- エストロゲン:血流を増やして、赤ちゃんの成長をサポートする
- プロゲステロン:子宮の筋肉を柔らかくして、赤ちゃんが快適に育つ環境を作る
- リラキシン:骨盤を緩めて、出産の準備を始める
身体の変化・症状
この時期にはつわりが落ち着く人が多く、比較的体調が安定してくることが多いです。でも、その代わりに別の変化が出てきます。
- お腹が大きくなってくる
赤ちゃんが成長するにつれて子宮が大きくなり、見た目にも妊婦さんらしくなってくる - 便秘になりやすい
プロゲステロンが腸の動きをゆっくりにするので、便秘がちになる - 肌の変化(色素沈着や妊娠線)
エストロゲンがメラニンを増やすため、乳首やお腹の中央の線(正中線)が濃くなったりする - むくみやすくなる
血液量が増えることで、水分をため込みやすくなり、足や手がむくみやすくなる
妊娠中期は、よく「安定期」と言われる時期です。先ほども「比較的体調が落ち着く」と書きましたが、はっきり言って安定なんて時はないし、“比較的”というだけです。何かしら不調な日々が続いたり、お腹が大きくなってきたり、気持ち悪いのが消えなかったりで、妊娠前のようにバリバリ元気かと言われたら、そんなことはありません。
それこそ情緒については、不安も相まって妊娠中はずっとお豆腐メンタルです。ちなみに私はそのほかに、普段ならあり得ないようなミスが連発していました。「なんでこんなこともできないの?」と悲しくなったのを覚えています。体力的にも少しずつしんどくなる人もちらほら。人によって症状は違いますが、本当に、安定というのはないと思っていた方が良いと思います。
この時期、働くのをセーブするというのもありですが、それよりも私は周りの助けを借りることが大切だと思います。できればパートナーに。だってパートナーも親ですから。男性はどうしても妊娠のような身体の変化がないため、親という実感を得られにくいですし、女性がどれだけ大変なのかもよく分かりません。だからこそ、しっかり自分のつらさや状況を伝えて「私は今こうしてくれると助かる」と提示してあげてください。目に見えない、体験できないことを察してくれというのはかなり難しいことですから、言葉にして伝えてみてください。
妊娠後期(28週〜出産)
ホルモンの変化
妊娠後期は、ホルモンの分泌がピークになります。特にエストロゲンとプロゲステロンは最高レベルまで増加。さらに、新しいホルモンも加わってきます。
- オキシトシン:陣痛を促すホルモン。出産が近づくと増える
- プロラクチン:母乳を作る準備をするホルモン
身体の変化・症状
この時期は、赤ちゃんがどんどん大きくなってくるので、身体にも負担がかかります。
- お腹の張りや腰痛
– 子宮が大きくなり、腰に負担がかかる
– リラキシンの影響で骨盤が緩み、腰や恥骨が痛くなることも
- 息苦しさ
子宮が肺を圧迫することで、息切れしやすくなる - 頻尿や膀胱の圧迫
大きくなった子宮が膀胱を押すため、頻繁にトイレに行きたくなる - 前駆陣痛(偽陣痛)
オキシトシンの影響で軽い子宮収縮が起こることがある
この頃には大分お腹も大きくなっているため、仰向けで寝ると苦しかったり、胎動で眠れなかったりします。更に、体重コントロールをしなければいけないのに、空気にカロリーがあるのかというくらい太ります。ちなみに私は妊娠前、16kgくらい太ってくださいと言われて「そんなに太れるわけないだろ!」と思っていたら、しっかり13kg太りました(笑)。
また、お腹の重さで、身体を動かすだけでもしんどい。私は自営業なので出産直前まで働いたのですが、もし聞かれたら確実に産休をとることをお薦めしますし、有給がある方は少し早めにとっても良いのではと思うくらい、自分の体力との戦いになってきます。大体30週くらいで「キツいかも……」と思い、32〜33週になると「あ、やばい、終わった」みたいになっていました。体力は、無に等しいです。
出産後(産褥期)
ホルモンの変化
出産すると、一気にホルモンバランスが変わります。
- プロゲステロンとエストロゲンが急激に低下する
- プロラクチンが増えて、母乳が出るようになる
- オキシトシンが子宮収縮を促して、身体を回復させる
身体の変化・症状
産後は、ホルモンの影響で気持ちが不安定になりやすい時期です。周りのサポートを受けながら無理せず過ごしてくださいね。
- ホルモンバランスの乱れによる情緒不安定(マタニティブルー)
- 母乳の分泌が始まる
- 子宮の戻り(後陣痛)
産後については、今後の記事でもまた詳しく書きたいと思います。 妊娠中や産後のママは、ストレスも感じやすくメンタルも不安定になりがち。仕事もプライベートも無理をせず、キャリアを続けていけるように周囲や公共のサービスを頼ってみてくださいね。