あるときは杭州で白蛇の精の華麗なる衣装で微笑んでいたり、あるときは標高4000mで噴火する火山を照らす朝焼けを眺めていたり、あるときはドナウ川でクルーズ船に乗ってドイツの石畳の街を歩いていたり……。日本全国47都道府県、世界71カ国を旅するアカウント「meyoutravels」を運営する後呂(うしろ)未悠さん。アカウント開設から、取材旅行への招待に声がかかるまで、本業との相乗効果など「インフルエンサーのリアル」について聞きました。
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インフルエンサーのスタートは自分の写真を上げてみたことから
――今やInstagramで1万人以上のフォロワーを持つインフルエンサーとして、いろんなお声もかかると思いますが、スタートしたのはいつからですか?
インスタは2011年からで、当初アカウントを持って4年間は友人の投稿を見るだけでした。アップするようになったきっかけは、父にもらった大学の卒業祝いで物価の高い国を1カ月旅行しようとアイスランド、イギリス、アイルランドに行ったこと。当時は、切り詰めれば50万円もかからないくらいで、意外と費用がかからないと知って海外旅行自体にはまりました。
もともと写真を撮るのが好きで、そういえばインスタのアカウントがあったのを使わないともったいなと……。最初は風景や友人を撮影して、それを載せていたのですが、自分の好きな構図でも、顔が盛れていないから、と友人の許可が降りなかったり、加工して送り返してもらうのを待つのが面倒で自分の写真を載せ始めたところ、それなりに「いいね」をもらって、結構いい感じで伸びまして。インフルエンサーとして旅の取材招待を受けられるようになるといいなとか考えるようになりました。
大学卒業と同時にフリー人生をスタート!
――しかし、大学を卒業して就職すると、休みをとって旅するのは大変ではないですか?
大学の卒業は、私のフリー人生のスタートなんです。ずっとフリーで仕事をしていて、今の本業は「通訳、通訳ガイド、バイリンガル司会、翻訳」です。大学の時からイベントコンパニオンをしていて、それなりにフリーで収入もありましたし、母もフリーで医学専門の通訳者をしていたので。
英語は、小学校からインターナショナルスクールで、いわゆるバイリンガルです。大学卒業後の就職活動は一種の文化体験として取り組んだ感じで、最初から就職はしないでフリーでやっていこうと思ってました。
大学卒業後、世界一周をしながら国際交流をする船「ピースボート」に無料で乗りたくて通訳ボランティアに応募し、3カ月半乗船してみました。それで、通訳としてやっていけそうだなという感触を得て、船旅を終えてからはコンパニオンの仕事を英語案件1本にしぼり、通訳の仕事も増やしました。
ジェンソン・バトン選手の通訳の仕事をする未悠さん
――それらのフリーランスのお仕事はどうやって見つけているんですか?
エージェントに登録して、仕事の依頼をもらっています。イベント、通訳から派生してバイリンガルMCも始め、案件の規模的にもいい波がきたと思ったらコロナ禍に突入してしまい、楽しいイベントがなくなったので固めの通訳翻訳にシフトチェンジしました。そのときは「Go To トラベルキャンペーンを日本一利用してやるぞ」という気概で日本国内を旅行してました。
コロナが終息すると「ラグジュアリー層向けの通訳ガイドをしないか」と同じ時期に数社から声がかかり、これは「旅行好き・バイリンガル・文化体験好き・グルメ」の私にぴったりの仕事でした。お客様のやりたいことと自分の好きなことがまさにマッチしているわけです。今は、インバウンドのラグジュアリー層向けガイドやバイリンガル司会、某大型イベントの翻訳などおかげさまで忙しいです。
高級リバークルーズ「エメラルドクルーズ」の船室より。出典:https://www.instagram.com/meyoutravels/
ガイドは、ツアーや旅の経験のない人だとわからない点を「自分だとこんなことが必要だとか、これを知っているといいな」ということを案内できます。インフルエンサーとしての旅や文化体験は、この会話の引き出しを増やすのにとても役立っているんです。
たとえば、日本の文化体験で芸者さんと遊んだり、能楽を習ったり、水墨画を学んだり……。日本のおすすめスポットや体験などを、いいなと思ったらインバウンドのお客様向けにアウトプットすることができるので、自分も楽しめるんです。
インフルエンサーとして取材に声をかけてもらうには
――なるほど。インフルエンサーとしての活動は、本業に役に立っているわけですね。旅や体験取材などに声をかけてもらうのに心がけていることはありますか?
自分からアンバサダーに応募したり、インフルエンサーと企業をつなげるエージェントに登録したりすることでしょうか。興味を持ちそうなところに直接DMして自分で営業をかけに行く人もいますね。
ただ、クライアントがつくと好き勝手は言いにくくなってしまいますね。仕事だというプレッシャーがあると、ふだんなら行かないところへも撮れ高を求めて行ったりもします。あとは、まだまだ私くらいのレベルだとホテルや体験だけが無料で交通費は自腹なので、そこの収支を検討する必要もあります。と、まあ色々言ってますが、基本的にすべて自腹で行ってます。
絶景のスリランカ鉄道にて。 出典:https://www.instagram.com/meyoutravels/
ガイドの仕事はシーズン性があって、インバウンドの人が日本に来る時期は忙しいのですが、そうでないヒマな時期もあります。私は、ちょっとでも空いている時に自分のスケジュールで好きなところに行きたいし、正直な感想を発信したいので、SNSは完全に趣味です。夢を壊してしまうようで申し訳ありません……。
撮影したら、移動時間に写真や動画を編集
――フォロワーを増やして、インフルエンサーとして認められるようになるにはどんな努力をされてますか?
好きなことをしているので努力をしている感じはないのですが、旅行に行きすぎて、撮ったものが貯まるので、毎日投稿しています。撮影したらその日のうちにデータをダウンロードして写真や動画を選別して、帰りの新幹線や飛行機で写真の編集を終わらせて、日々の移動時間にキャプションを書き溜めます。動画は同じく移動時間に台本を書いて家でパパッと録音して、また移動時間に編集します。あとは時間になったら下書きから投稿するだけなので簡単です。こまめにやると負担に感じないので、溜めないのがポイントです。
フランス・パリのオペラ座にて。 出典:https://www.instagram.com/meyoutravels/
フォロワーがぐんと伸びたのは動画を上げるようになってから。動画1本につき最低30分くらいかかるので、最初は手間がかかってあまりやりたくないなと思っていたのですが、あげてみたらフォロワーがぐんと伸びました。
自分の強みとしては話が面白いこと、変わった体験が好きで見つけるのも得意なこと。これからもいろんな旅や体験での楽しみをSNSを通じてシェアしていきたいです。