Paranaviトップ お仕事 起業/独立 「女性はマイノリティ」と痛感。当事者経験から本気のDE&Iを目指すソルビスの挑戦

「女性はマイノリティ」と痛感。当事者経験から本気のDE&Iを目指すソルビスの挑戦

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本当の意味で「誰もが自分らしくキャリアを選択できる世界」を目指し、2024年8月に創業した株式会社ソルビス。CEOの玉村優佳さんはコンサルタントとしてのキャリアを歩みながら、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の領域にずっと課題を感じていたといいます。起業後にX(旧Twitter)のDMを通じて、会社にジョインしたいとコンタクトを取ったのが現COOの宮本佳歩さん。お互いの経験やスキルを活かしながら、普段は日本とベルギーとで離れて経営を行うお2人に話を聞きました。

働き続けることの難しさを誰よりも感じていた

──主な事業内容として女性向けコミュニティの運営をされています。起業したきっかけについて教えてください。

玉村 多様性・公平性・包括性の3つの要素が組み合わさった考え方がDE&Iですが、働き続けることが難しくなってしまう局面というのはまだまだ女性に多いと感じ、まずは女性向けコミュニティの運営から始めました。現在は130名ほどが在籍しています。

私自身、会社員時代にコンサルタントとして働いていましたが、小規模な会社の中で女性は私1人。マネジメントの仕方、コミュニケーションの取り方、クライアントとの接し方など多くのことのロールモデルが男性主体で描かれていると感じていました。社内の中で「普通」とされるやり方が私には難しい……そう感じても相談できる人がおらず、自分はマイノリティであることを痛感していましたね。

ソルビス代表の玉村優佳さん

働き続けることの難しさは体調面からも感じていました。昔から生理が重すぎて手術をしたりピルを飲んだりしていましたし、大学生のときにはヘルニアが悪化し歩くこともままならない状態に。うつ病を経験したこともあり、ちょっとしたきっかけから働けなくなってしまうことを何度も経験しています。

ですが、例えばヘルニアなら座っているより立っている方がラクなので、オフィスでも立って仕事ができるスペースがあれば助かりますし、他にも調子が悪いけれどまったく働けないわけではないときは休憩をはさんで調整しながら働ける環境があれば、仕事をやめなくて済む人は多くいると思います。でも、実際は企業が社員の事情に合わせる方が難しく、本当のDE&Iは実現されていないなと大きな課題を感じて起業に至りました。

多様性の実現は「個人」と「企業」の両面から

──宮本さんが参加されたのは、XのDMがきっかけだったと聞きました。

宮本 そうなんです。玉村の「ソルビスを始めます」というポストを見て、参加したいですと突撃DMを送ったのがきっかけです。もともとコミュニティマネージャーの経験があったので力になれたらと話していました。私のあまりのしつこさに玉村が根負けしたのだと思いますが(笑)、無事に参画。その後、話していくうちに私たちの目指す世界観がすごく一致していることがわかり、現在はCOOをやっています。

実は玉村とは今日初めてリアルで対面したんです。私はベルギー在住で、これまでずっとオンラインなど遠隔でやりとりしていました。コミュニティの運営ももちろん遠隔です。自分たちの会社でもDE&Iの考え方を実践していきたいと思っています。

──ソルビスのどのような点に共感しましたか?

宮本 多様性のある社会を目指す上で、「個人への支援」と「企業の変革」はどちらかに偏るのではなく、両輪でまわしていかないといけないと強く感じていました。ソルビスはどちらにもアプローチしていきたいという事業設計を一緒にしていますが、その点、玉村と意気投合ができたのは本当に嬉しかったですね。

ソルビスCOOの宮本佳歩さん

また、私自身も玉村と同様に、女性として働きづらさを感じてきた1人でもあります。日本で働いていたときに外資系企業に勤めていましたが、苛烈なパワハラとセクハラに遭っていました。当時、近しい男性の先輩に相談しましたが、新人なら仕方ないと流されてしまって。第2新卒で転職したばかりだったこともあり、もう失敗できないと円形脱毛症になってもずっと耐えていたんです。ここで働いていたときは上司が言うことは絶対。私に断る権利はないという空気でいっぱいでした。

こんな環境下では女性であることを1mmでも出したら余計に目をつけられると思い、いつもパンツスーツで、髪はピシッとまとめて絶対に下ろさずにいました。素の私は見せない、ふわふわした隙を見せたら舐められると思っていたんです。心に鎧をまとっていましたね。

社会や組織の中で女性はマイノリティであることを実感しましたし、他にも女性特有の健康問題や働きづらさなど、玉村と私が取り組みたい課題はとても近いと感じています。

誰もがやりたいことに取り組める社会を

──現在はBtoB向けの事業もされています。どのような事業内容でしょうか?

玉村 DE&Iや女性活躍推進に取り組みたいけど、リソースが足りなかったりうまくいかなかったりする企業向けにコンサルティングのような形で支援をさせていただいています。こういう知識があるとスムーズにいきますよといった話から、実際に職場環境や制度の改善に取り組み続けるにはどうすればいいのかという点でのサポート、DE&Iを推進している企業同士で集まれる場の運営などもおこなっています。

今後もBtoC、BtoBの両面で、置かれた環境によってやりたいことができなくなっている人と社会を変えるために、サービスを開発し提供し続けたいと思っています。女性だから、心身に懸念があるから、家庭の事情があるから、人とは違うから……そんな枕詞を使うことなく、誰もがどんな状況であってもやりたいことを目指し叶えられる社会を作るサポートをしていきたいですね。

玉村 優佳(たまむら ゆか)●株式会社ソルビス CEO。コンサルティング企業へ新卒入社。その後、戦略コンサルタントとして従事。事業戦略、サービス設計、デジタルマーケティング領域など、幅広いコンサルティング案件を担当する。DE&Iに関する社内セミナーや女性活躍推進など、人事関連の取り組みも複数経験。2024年8月に株式会社ソルビスを創業。

宮本 佳歩(みやもと かほ)●株式会社ソルビス COO。新卒で外資系国際物流企業に入社。その後、外資系IT企業へ営業職として転職。チリへの駐在帯同を経てグーグル・クラウド・ジャパンへ参画。スタートアップへの転職を経て現職。コミュニティマネージャーとしても活動する。著書に『成功するコミュニティの作り方』(リックテレコム)。

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Kaori Terada
Writer Kaori Terada

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