Paranaviトップ お仕事 働き方 「人生は、何度でもデザインできる」——65歳、亘つぐみさんに聞く「自分らしさ」の楽しみ方

「人生は、何度でもデザインできる」——65歳、亘つぐみさんに聞く「自分らしさ」の楽しみ方

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数々のファッション誌や広告をはじめ、人気ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」などのスタイリングを手がけたことでも知られるスタイリストの亘つぐみさん。「やりたいことが途切れない」と話す亘さんが新しく手がけられたブランド「TOKYO WEEKLY JOURNAL」のローンチイベントにて、スタイリストになるまでの道のりや、「好き」を追いかけて仕事にする秘訣、いつも前向きでいられる考え方について話を聞きました。

スタイリストという生き方に辿り着くまで

——百貨店勤務から外資系ブランドのPRを経て、スタイリストとして独立されています。スタイリストになったきっかけは何でしたか?

いつも服やファッション写真について話していた編集者に「向いていると思う」と背中を押されたことがきっかけです。でも、友人や知人のスタイリストからは向いていないと思うと言われていたんですよ。それでもスタイリストになる決心をしたのは、やりたかったから。

両親ともに服が好きな人で、私も小さい頃からファッションが好きでした。最初に就職した百貨店にいた頃から、ブランドや服のことをどんどん知りたくなって没頭して勉強するスタイルは変わっていません。

——これまでの人生で転機といえる時期はありましたか?

私の転機は人生で2回。1回目は27〜30歳のときで、スタイリストになるかどうかを悩んだ時期です。会社員からフリーランスになること、違う職種になることなど、何もわからない世界に飛び込んでいくわけだからすごく悩んだし、それに伴って私生活が乱れてますます悩んでいました。でも結果、なってよかった。

亘つぐみ

2回目の転機は50代で。なぜだか精神的に落ち込んで、人と会わず、家からも出ず、悶々としていたんです。自分では更年期を感じたことはなかったけれど、もしかしたら女性ホルモンの関係もあったかもしれません。この時期は、家でずっと村や畑や街を作るゲームをして10万円くらい課金していました(笑)。もうムキになってやっていたけど、やり尽くして飽きたときに、あ、表を向こうと思って乗り越えられましたね。

「やりたいことをやりなさい」父の教えを胸に

——やりたいことや好きなことを仕事にするために大切なことは何だと思いますか?

私はアシスタントにつかず、いきなりひとりでスタイリストになったので右も左もわからない状態でした。ある意味、怖いもの知らずだったからやって来られたところもあると思いますし、モード誌やファッションショーで仕事をするスタイリストになるぞ、といつも強く思っていたのがよかったのかもしれません。

10代の頃に父に何度も言われた“教え”があるんですよ。「やりたいことをやりなさい。失敗は経験だからミスではないと。

これと思ったら突き詰めるタイプだから、自分に甘くせずとことんやります。中途半端にやると中途半端な結果しか出ないけど、しっかりやったら必ず結果はついてくるから。うまくいかなかったら次は同じことをしなければいいし、人生は長いから失敗のやり直しはいくらでもできると思っています。ずっと好きを追いかけて仕事にしてきたので、結果的にいつも好きなことをしていますね。

——アラサーくらいから年齢が気になるという声をよく聞きます。数字にとらわれない生き方のヒントはありますか?

私ね、27歳になったときに「年齢を聞かれたら堂々と答える」と決めたんです。四捨五入したらもう30歳だし、まわりは22歳くらいで結婚していたし、どうしよう?と思ったけど、誰でも年は重ねるし恥ずかしいことじゃなでしょう?

年齢は本当に関係ないし、言ったもの勝ちだと思う。年を公言することで自信がつくし、もうこんな年になっちゃった……という気持ちだってなくなっていきますよ。30歳の私で、40歳の私で、何が悪いの?って感じ。むしろその年齢を楽しむことに注力した方がずっといいって思います。年齢にとらわれるかどうかは自分の想いひとつで変わりますよ。

何歳でも新しいことに挑戦できる

——50代、60代になってからも新しいことに挑戦されています。そのパワーはどこから?

やりたいことがずっと途切れないんです。ある種の欲なのかな。もうこの年だからこんなことを欲しがったらダメよねとか思わず、自分が思った方に進んでいます。もういい年だからピンクは恥ずかしいとか思わない。いいじゃん、好きなら好きでって。

今は韓国と80年代にハマっていて、吸収したことからインスピレーションが湧いたり、新しくやりたいことが出てきたりしていますね。

——手がけられた新ブランド「TOKYO WEEKLY JOURNAL」はまた新しい挑戦ですね。

TOKYO WEEKLY JOURNAL公式は東京のTとウィークリーのWで、つぐみ亘なんです。私が発信するものをブランドを通して届けたくて、この名前にしました。

私はスタイリストであり服を作る人でもあるので、トータルスタイリングをプロデュースできるブランドをやりたかったんです。服はもちろんですが、靴やバッグ、メガネ、アクセサリーがあったら、服がより活きてかっこよく見えるじゃないですか。

だから、TOKYO WEEKLY JOURNALで大切にしているのは“バランス”です。セレクトした韓国ブランドのアイテムも、すべて自分で門を叩いて社長かデザイナーに何度も会い、どうしてもやりたいと伝えて卸してもらったものです。「熱意に負けた」と少量で日本に卸すことを許可してもらいました。

アパレルアイテムでも、あえて女性がメンズライクな着こなしやビッグサイズのシャツを着るバランスを味わってもらいたいですし、ユニセックスウェアなので男性も楽しんでいただけると思います。

人の言葉より自分の声を信じて

——キャリアや人生に悩む30歳前後の読者に向けてメッセージをお願いします。

まず、人と比べない方がいいとお伝えしたいですね。人は人、自分は自分。人が何かをしてくれるわけじゃないし、誰かと同じことをしても同じようにはならないわけです。だから自分で決めること。

亘つぐみ

自分の人生なんだから誰に何を言われても関係ないのよ。人の言うことは聞かなくて大丈夫。「自分が楽しければいい」って一方的で乱暴に聞こえるかもしれないけど、そうじゃなくて、まわりの秩序を保ちながら自分が自分を楽しむってことだと思うんです。

先にも言ったようにやりたいことをやって失敗したら経験になるけど、やらなかった後悔はずっとあとまで残ります。そうするとネガティブになっちゃうから。

ポジティブでいられる方がエネルギーが湧くし、もっといろんなことができる。だから自分が思う方向に進むと決めて、「でも」から始まる言い訳はやめること。「でも」、のあとに続く事柄はやりたいことをやらない理由にはならないし、あとでどうにでも巻き返せます。

大丈夫、私はそうやって生きてきたから。やけどをしたこともあったけど、やけどは治ります。とにかく前に進んでみて。

亘 つぐみ(わたり つぐみ)●スタイリスト。ファッション誌やCM、ドラマ、映画、広告などのスタイリングのほか、ファッションショーやブランドのプロデュースなど多岐にわたる分野で活躍する。2021年よりボディウェアブランド「TW」、2025年5月より「TOKYO WEEKLY JOURNAL」のディレクターを務める。

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Kaori Terada
Writer Kaori Terada

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