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スマホが鳴った気がするけど……“鳴っていない通知”を感じてしまう「幻バイブ」とは?

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ポケットの中で、ブルッと震えた気がしてスマホを取り出したら……あれ?何も連絡が来ていない。そんな経験をしたことはありませんか? 研究によれば、大学生や若い社会人の7割以上がこのような「幻バイブ」を感じたことがあると言われています。交通系ICやアラーム機能など、1日の行動すべてにおいてスマートフォンが生活必需品になった今、なぜ来ていない通知を“感じてしまう”のでしょうか?

 

幻バイブの正体とは? 

幻バイブは、医学的な「病気」ではなく、脳が錯覚を起こしている状態です。これは「ファントム・バイブレーション症候群(Phantom Vibration Syndrome)」と呼ばれ、現代人の多くが体験している不思議な現象です。1996年にスコットアダムスという方が初めて言及したと言われています。

ポケットにスマホを入れる生活が当たり前になると、太ももの感覚神経はその時からすでに振動を”待ち構える”ようになり、衣服の擦れや筋肉の動きといった別の刺激のことも通知と勘違いしてしまうのです。脳が常に通知を受け取るように“過敏モード”に入っているわけですね。

過敏性の裏にある現代人の背景と心理 

なぜ、私たちは幻バイブを感じてしまうのでしょうか。それは「誰かからの連絡を逃したくない」という期待や不安が背景にあります。SNSやLINEに慣れた世代ほど、“通知を気にする意識”が強く、それが幻バイブを増やす要因になると考えられています。

それでは、現代人はなぜそうなってしまったのでしょうか。

1. 常時接続、即レスの文化 

まず、連絡を即時に返すのが当たり前になっている“即レス文化”のプレッシャーがあります。休日でも仕事の連絡の通知が来てしまうと、オン・オフをつけることが難しくなります。会社が「休日は連絡を見なくてよい」と言っても、性格的につい見てしまうという人もいますよね。会社が“即レス文化”になると、それによって知らず知らずのうちに時間外労働が発生してしまうことは、良くない風潮です。

2. SNSによる承認欲求

SNSを多用している人は非常に多いと思います。そんな私たちにとって、コメントやいいね!など他人からの反応は嬉しいものですよね。しかし、SNSへの反応の通知をオンにしている人にとっては、「コメントやいいね!が来るかもしれない」という期待が、無意識に身体感覚を研ぎ澄ませてしまう理由の一つになってしまいます。 

3. 仕事の即応圧力

昔は電話がメインの連絡ツールで、少しくらいは連絡を待つことも当たり前でした。しかしメッセージでのやり取りが主流になった現代においては、メッセージをすぐに確認して反応できる人は”社会人として有能と見られる”と、なんとなく感じている人も多いかもしれません。そのような仕事への即応圧力が、幻バイブを生みやすくします。

4. 学習された身体反応 

日常的にスマホをポケットに入れている人の場合、一日に何十回も通知を受けることになります。それを繰り返しているうちに、脳が「小さな刺激=通知」と学習してしまうのです。

——このように、社会がテクノロジーで出来上がった文化的背景が組み合わさった結果、私たちの脳は“幻覚に敏感”にしていると言えます。

幻バイブが心に与える影響

幻バイブを何度か経験したことがあるという「ちょっとした勘違い」で済んでいるうちは良いのですが、それが積み重なると心にストレスを与えることがあります。具体的には、以下のような状態です。

  • 集中力の低下:勉強や仕事中に「今、通知が来たかも?」と気が散る
  • 不安感の増加:「返信を逃していないか」という不安が常に付きまとう
  • 睡眠の質の低下:就寝中に“鳴った気がする”ことで眠りが浅くなる

とくに「通知を確認しないと落ち着かない」状態が強くなると、スマホ依存や不安障害に近い症状へ発展するケースもあります。 幻バイブは、スマホ依存傾向にある自分の心の表れ、そして現代の文化に対する心の疲れのサインとして捉えるべきかもしれません。 

どう付き合えばいい?幻バイブ対策

上記のように、日常生活に少し影響が出ているかも……と思った方は少し生活習慣を工夫してみると良いかもしれません。 

  • 通知を整理する

必要なアプリ以外は通知をオフにして、“ブルッ”の回数を減らしましょう。 

  • ポケットに入れない

バッグに入れる、机に置くなど「身体から少し離す」ことで幻覚が減ります。 

  • デジタルデトックスを試す

休日は、数時間スマホを見ないでほかのことをする時間を作りましょう。家にいてぼーっとしていると気になってしまうので、散歩に出たり、何か手を動かしていると良いです。これを習慣化すると、心の過敏さが落ち着いてきます。

  • 「待っても大丈夫」と認識する

本来、メッセージは必ずしも即レス不要です。とくに休日は物理的に仕事から離れるだけではなく、心理的にもしっかり距離を保ち、自分をリフレッシュさせる日です。また、メッセージを“待つルール”を再認識することも非常に大切です。

受け取る通知をしっかり選ぼう!

スマホは便利な道具であると同時に、私たちの知覚や感情に大きな影響を与えています。幻バイブは、人間の心とテクノロジーが密接な関係をもち、切っても切り離せない状態になっていることを示すような現象です。

「通知に振り回される」のではなく、「通知をこちらが選ぶ」感覚を持つこと。これが幻バイブとうまく付き合う第一歩です。便利さと心のゆとりのバランスを保つことが、デジタル時代の新しいメンタルヘルスの在り方だと思います。

画面上のことだけでなく、目の前にいる人や物事を大事にする、その意識でも少し世界の見え方は変わるはずです。スマホにとらわれすぎず、心を豊かにして元気に日々を過ごしていきましょう!

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木村好珠
Writer 木村好珠

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