大手IT企業で広告のプロダクトに携わりながら、パラレルキャリアとして、プロダクトマネージャーのための塾を運営している為矢明日香さん。今でこそ生き生きと働く彼女ですが、そこにたどり着くまでには人知れず重ねてきた苦労や経験がありました。今回は、「人の顔色を伺ってオドオドしてしまう」という悩みを長年抱えてきた彼女がどうやって「コンプレックスを武器に変える」ことができたのかについて語ります。
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人の顔色を伺いすぎて、声が出ない
いつも人の顔色を伺い、私が発言したあとに誰かの顔が曇ると「何かまずいことを言ったんじゃないか……?」と自己嫌悪。そのように長年、人の顔色を過剰に伺い、落ち込むことを繰り返した私は、人前で話すことが怖くなり、ついには声が出なくなってしまった時期がありました。自己紹介を人前でお願いされたとき、マイクを通してもあまりに私の声が聞こえないので、会場の誰かがこう言って笑ったのが聞こえたこともあります。
「きっと心のきれいな人にしか聞こえないんだよ」
焦れば焦るほど、言葉になりません。人前で話す場面になると、喉の奥が締め付けられてしまい、どう頑張っても声が出ないのです。発言をして人の顔色を察して傷つくくらいなら、何も話さない方がマシ。私はなるべく目立たないように、人の後ろにずっと隠れるようにして行動するようになりました。
弟が気づかせてくれた「未来への希望の持ち方」
私には大好きな弟がいます。弟にとって頼れる姉であることを目指して勉強や仕事を頑張ってきました。そんな弟が社会人になり、決算期の忙しい時期をやっと過ぎたある朝、自ら命を絶ちました。その日から、私は「何のために生きるのか」がわからなくなりました。
弟はなぜ死ななければならなかったのか……!
強い怒りに突き動かされ、理由を必死に探し始めました。今となっては、人が自ら命を絶ったとしても、それは「誰かや何かのせいではない」と思うようになりましたが、当時の私はやりきれない気持ちを理由を探すことで抑えようとしていました。そして、弟が社会人になってからの状況を知ったとき、私が同じ境遇だったら、こう感じるかもしれないなと思ったんです。
「未来に希望が見えない」
ちょうどそのとき、職場では市場環境や組織の変化で、みんなが右往左往しているのを感じていました。弟を亡くした状況に、そのような職場の状況が合わさり、自分自身も精神が参ってしまいそうな時期が続きました。
みんなが未来に希望をもつにはどうしたら良いんだろう?
そう悩んでいたとき、会社のプロダクトをユーザーとして使ってきた経験を活かし、何か研修を作れないかと声をかけていただきました。
そのとき、私なら「みんなが頑張って作っているプロダクトにどれだけ意義があり、どれだけユーザーのためになるものなのか」自分の言葉で伝えることができる、と思ったんです。そして、そのためにも、今までずっと逃げてきた「人前で話すことに挑戦する」ことを決意しました。
「周りの希望になるために、前に出る」
この言葉で自分を奮い立たせ、大きな一歩を踏み出しました。
矛先が変われば、コンプレックスは自分を支える武器になる
そのような思いで始めた研修は徐々に社内でも評判が広がり、計200名以上の人に受講いただき、現在も拡大し続けています。私は今まで「自分が傷つかないために」人の顔色を伺いながら生きてきました。
でも強い決意を元に、「自分のために」顔色を伺うではなく「周りのために」顔色を伺うことに思いの矛先を変えてから、人の顔色を伺うコンプレックス自体が私を支える強い武器になっていることに気がついたんです。
研修が今どのような空気であるかに気づき、話す内容をアレンジする。ぼーっとしている人にすぐに気がつき、その人に話を振って盛り上げてみる。人の顔色を過剰に伺ってきたからこそ、その場の空気を察し、柔軟に対応できている自分に気がつきました。
コンプレックスを自分を傷つけるために使うのではなく、周りのために使う強い決意をしたとき、「コンプレックスは自分を支える強い武器となる」と、この経験から感じています。
今でも「会議で話して」と言われただけで、前日は緊張で眠れずに苦悩していますが(笑)、私は今も、自分のコンプレックスを強い武器に、人前に出る挑戦をし続けています。