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お寿司も握れるメイクアップアーティスト、「つながり」で極めた2つのプロの道

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サスティナブルな暮らし方が全米でも“最も住みたい街”として人気のオレゴン州ポートランド。そこで、シェフとして独立してオーダーをとる「no more raw fish Catering」とメイクアップの仕事をパラレルにこなすウィリス美樹さん。食と美と、好きを極めていったら両方が仕事になったといいます。片方だけでも大変そうなのに、どうやって両方ともプロフェッショナルになれたかを聞きました!

シェフの仕事は、大学の勉強も実務も生かせる

――アメリカ人のご主人と一緒に最初はユタ州のソルトレイクシティに来られたとのことですが、現在にいたるまでどうやってシェフになられたのですか?

もともと、高校生の頃からフードとメイクアップにはとても興味があり、卒業したらまず調理師専門学校に入ろうと思っていたほどです。結局「大学には行ってほしい」という両親の意向もあり、女子栄養大学に行くことになったのですが、この時に学んだダイエットをはじめとした栄養学の理論、カロリー計算などはいろんな場面で仕事に役立っています。

調理については学校に行ったわけではなく、アメリカに来て最初に住んだソルトレイクシティに日本人オーナーの日本食店があり、そこで寿司職人見習いを始めました。実務経験というのは、シェフの世界では大切なことです。その後に、主人が行く学校の都合で、ペンシルベニア州のフィラデルフィアに移住しました。

フィラデルフィアには、『料理の鉄人』の「和の鉄人」であり、全米でもアイアンシェフとして有名な森本正治シェフの店「Morimoto」の第1号店があります。そこに飛び込みの営業をして、仕込みから始めて最後は森本シェフに寿司を出すという丸1日のトライアウトに合格。シェフとして働き始めることができました。

早朝から立ち仕事、かつ水を使うので、とても冷えるハードな職場。子どももまだ小さく、勤務できたのは7ヶ月ほどですが、この「Morimotoで働いた」というキャリアは、その後のシェフとしての転職にはとても威力がありました。どこでもこの履歴書だと見てはいただけるので。

ここで、また主人の通学に合わせてNYに移住することになり、Whole Foods などに寿司を納品する会社に入りました。やはり「Morimoto」での勤務経験があるというのがアピールできたと思います。ここで、商品開発部に入りセントラルキッチンでの試作品を社長にプレゼンする際の資料や改良マニュアルを作っていました。大学での基礎もあり、調理をデータに落とし込むことができたんですね。そこで、コーポレートエグゼクティブシェフにまでなりました。

「つながり」から広がっていたメイクの仕事

――その後にポートランドに移住して、シェフとして勤務されたと思うのですが、メイクアップはどうやって始められたのですか?

彼の実家のあるポートランドに移住して、2つのレストランでシェフを勤め、最後はお客様に“おまかせ”という自分のメニューを出すのをまかせてもらえるまでになりました。ただ、かつてのレストランのように最高のものを求められるというのではないことに、物足りなさというかショックがあったんですね。

そんなこともあって、昼間にアートスクールに通いメイクアップを習い始めました。シェフの仕事は夕方からでしたので。人づてに小さなファッションショーのヘアメイクからスタート。ノーギャラでしたが人脈で仕事が来る世界なので、“つながり”の大切さを学べました。これはレストランでは得られないことです。

メイクは、日本人“つながり”でウェディングの仕事が入ったりしているうちに、「シェフをされているならケータリングもお願いします」というような発展も出てきました

コロナによる働き方の変化が新しい仕事につながった

――独立してno more raw fish Cateringを始めることになったのは、コロナがきっかけですか?

はい。忘れもしない2020年3月16日に県知事からロックダウンの命令があって、飲食店はすべてテイクアウトのみになり、私たちも自宅待機になってしまったんです。もうそれなら、自分でテイクアウト専門の店を作ろうと思い立ち、ライセンスを取り、場所を探す所から始めました。

シェアキッチンという時間帯によって4社で使うキッチンでやっているので、初期投資がローコストででき、プレオーダーを基本にデリバリーかまたはピックアップで注文を受けてやっています。

「no more raw fish 」というのは、コロナ時代のコンセプトで、シーフードにはこだわっているのですが、加熱するメニューで出しています。雇われてシェフをしていた時には、不本意な食材を使わないといけない時もあったのですが、自分の納得のいく食材で手間ひまかけたものを出せるのが嬉しいですね。スーパーフードなど免疫力のある食材にもこだわっています。

――メイクアップのお仕事の方はどうですか?

仕事をするうちに、スキンケアがきちんとできていないモデルはやはりいくらメイクアップでカバーしてもだめだということに気がついて、エスティシャンの学校に通って、そちらのライセンスも取りました。ウェディングの仕事にはこのライセンスが必須なんです。

こちらもコロナの影響は大きく、イベントはキャンセル。そして、自宅に開設したエステサロンも休業しています。しかし、ウェディングや日本人の方向けなどに成人式の着物撮影の際にメイクを頼まれたりと、人づてに入る仕事の方は増えました。

シェフの方も同じく、パーティでのケータリングをしたところ、紹介が紹介を呼び、今は自分でも驚くVIPな方からのお声がけをいただいたりもしています。コロナ時代で働き方が変わらなかったら、きっと関わることがなかったお客様だと思います。

最近はこのケータリングオーダーが増えていて、まるごと魚を買っていただき、目の前で調理をして、最後は潮汁にして無駄なく全部生かしきるお料理が、フードロスもなくとても好評です。

――コロナで新しいお仕事が開けていった一面もあるのですね。今後やりたいと思っている夢はなんですか?

「no more raw fish」で作っているお料理を、日本のクール宅急便のような仕組みで全米に配送できるようになるのが夢です。広いアメリカは、まだまだおいしい和食のレストランがないところも多いですから。

ここで、食品開発時代に培ったパッケージの方法や冷蔵、配送プロセスなどの知識が役立つと思っています。鯖寿司や穴子棒寿司など、ローカルで見つけられないおいしさを取り寄せで味わっていただけたらと思います。

メイクアップの仕事も「いつか日本、東京でやってみたい」という夢を持ち続けています。ファッション業界のメイクアップにこだわってきた者として「東京コレクションでショーモデルさんのメイクをする」というのが本望ですね。

シェフもメイクも自分がこだわってきたことを多くの方に味わい、見ていただいて、感動と笑顔を届けられたらと思います

no more raw fish Catering

no more raw fish Catering

4943 NE Martin Luther King Jr Blvd #101, Portland, OR 97211

347-545-0018

Thursday 6-9 pm
Friday 6-9 pm
Saturday 5:30-8:30 pm

https://www.nomorerawfish.com/

メイクアップ・アーティスト Miki Willis

 

 

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小野アムスデン道子
Writer 小野アムスデン道子

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