with コロナの時代、パラレルキャリアは追い風傾向にあります。ただ、一口に副業解禁といっても、会社によって内容や理解度は様々。そこで今回は、@cosmeなどで知られるアイスタイルで働きながら、“美容系YouTuber・ありちゃん”としても活躍する有賀美沙紀さんと、人事を担当する奥田早央里さんにインタビューを敢行。副業のしやすさや、会社としての副業の捉え方を伺いました。
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社員の要望から、新たな制度の確立も
――アイスタイルさんはいつから副業を解禁されたんですか?
奥田さん 解禁自体は2018年です。アイスタイルでは、ビジネスと社員の成長を同時に実現できる会社を目指しているため、社員の皆さんが生き生きと力を発揮できるよう新しい働き方の選択肢を増やしていきたいということがきっかけでした。なので、副業だけではなく、在宅勤務や自己啓発休職の導入、語学の学習費用補助なども同時に採用しました。
――ちなみに、現在何名くらいの方が副業をされているんですか?
奥田さん 実際に、今在籍して副業を行っているメンバーは40名ほどになります。
――かなり多いですね……! その中の1人である有賀さんにもお越しいただいたわけですが、有賀さんはどういったきっかけで副業を始めようと?
有賀さん 改めてこの場でお話をするのは恥ずかしいのですが……(笑)。もともと就職活動をしている時から、会社に依存しない働き方を目指そうと思っていて、自分の名前で働けるような人になりたいと思っていました。でも、実際に入社をしてみると、1年目は目の前の仕事にいっぱいいっぱいになってしまって。1年目が終わった時に振り返りをしたら、自分の名前で働ける人になる、という理想に対して、現実にすごくギャップがあったことに気がつきました。
そこで焦って、自分の理想の働き方や、幸せだと思う働き方をもう1度改めて1から書き出した時に、“社内でもっと存在意義を出したい”、という新たな気持ちが生まれていたことに気づいたんです。私の周りには圧倒的に仕事ができる人たちがたくさんいて、その先輩たちがすごく眩しく見えてたんです。もちろん、キャリアを重ねることでその人たちに近づけるのかもしれないけれど、今の自分の実力からするとまだまだ時間がかかるな、と思ってしまって。
では、今すぐにその人たちと同じような存在意義を出すにはどうすればいいだろう? と考えた結果、先輩たちにできないところで勝負しようと思い、SNSでの情報発信にたどり着いたんです。しかも、ちょうどその時、ゆうこすさんをはじめとする同世代のYouTuberが活躍し始めたタイミングでもあったので、この活動の延長には私の理想とする自分の名前で働ける人になる、という未来もあるのではないか?とも思い、本格的に力を入れ始めました。
――すごく先を見据えたものの考え方をされていますね。今はタレント社員制度というものも活用されているとか。
有賀さん そうですね。私の方で要望を出して、制度を作っていただきました。
奥田さん ちょうど同じくらいのタイミングで、外での情報発信を積極的に行う人が今後増えてくるんじゃないか、ということが議題に上がっていました。そんな中で、有賀さんという実例がでてきて、これをいい意味でのトライアルケースとして、制度としての形を作ってみたらいいんじゃないか、と。その時制度を作っていたメンバーは、どうすれば副業する社員と事業のリスクを極力低減しながら、社員を活躍させられるのか? という観点で制度を整えるよう心がけていました。
――それによって、具体的にどんなことが変わったのでしょう?
有賀さん 本業において何かが変わったというよりは、副業の方で@cosmeの名前が出せるようになったことでしょうか。あとは会社側から、“美容系YouTuber・ありちゃん”にお仕事の依頼をいただくこともあったり。
奥田さん 原宿に弊社が運営する@cosme TOKYOというお店があるのですが、そこでのイベントのMCを彼女に依頼したと部門の方から聞きました。やはり制度を作った方としては、そういった話は嬉しいんですよね。大変かもしれないけど、彼女のような人材がもっと増えてくれればと思っています。
有賀さん 今の私にとってベストと思える働き方を会社が許容してくれて、なおかつ制度も作って応援してくださる環境を作ってもらえていることは、本当にありがたいですね。
世の中に合わせた働き方を実現
――すごくいい関係性ですね。とはいえ、パラレルで働くことは大変な側面もあるのではないかと思いますが……。
有賀さん 大変なことは、時間と体力。それだけです、本当に(笑)。でも、今だからこそできることだと思っていますし、何より本業も副業も、時間と体力を費やしても惜しくないんです。そういう仕事に出会えて幸せだなと思いますね。
――そこまで言い切れるのは素敵です。反対に、やっていてよかったことを教えてください。
有賀さん 会社員とYouTuber、どちらもあることで、補い合うことができる点です。わからないことを質問できる人が常にそばにいてくれる会社のありがたみや、自分の知らない領域のフォローに入ってくれる同僚の心強さなどに、より感謝するようになりました。
――ちなみに、本業と副業の切り替えの方法など、何か意識されていることはありますか?
有賀さん 本業を優先するというのは絶対ですね。本業がうまくいっていないと、精神的に不健康になって副業の方にも影響してくると思います。平日は本業、SNSは休日にやるっていう住み分けはしています。仕事内容についても、フォロワーさんからは本業でもコスメのことをやっていると勘違いされがちなのですが、実際はECの店舗運営を担当しているので、IT関連のスキルをメインで経験させていただいています。それに対して副業は、コスメやパーソナルカラー、イメージコンサルタントの知識など、必要となるところは実はまったく異なるんです。
奥田さん 彼女のように、社員の皆さんにはいい意味でうまく会社を使っていってほしいですね。さっき言っていた、私にできて先輩たちにできないことはなんだろう? という視点もいいですよね。変化を促してくれるような提案をきっかけに、会社がさらに良い方向に変わればいいなと思っています。
――柔軟な考え方を持っていらっしゃる方が多いんですね。
有賀さん 実例がないからダメ、ではなく、ちゃんと世間の働き方も考慮した上で判断してくれているなと感じます。
奥田さん もちろん、ここまでの過程で彼女にも諦めてもらわなければいけないこともあったんだと思うんです。彼女にとって100%ハッピーだったかはわからないですけど、折り合いをつけながらやっていけたら嬉しいです。
社員の働き方を次のレベルへ
――社内にそう思ってくださっている方がいるだけでも心強いと思います。ちなみに、会社側から見て有賀さんのように副業をしている方がいるメリットは?
奥田さん 有賀さんに関していえば、社外の方たちが“ありちゃん”を通して弊社を見た時に、魅力的に感じてくださること。また、副業を解禁したことによって、転職せずとも新しい領域にチャレンジできるところはメリットとしてあるのかな、と。アイスタイルという環境の中では得られない経験やスキルを身に付けられることは会社にとってもプラスになります。例えば最近では、もっと積極性を付けたいという理由で、副業でエキストラを始めようとしている社員からの相談があったり。
――そんな副業の活用方法もあるんですね!
奥田さん さらに今後は、有賀さんの要望からタレント社員制度の確立が実現できたように、社員の働き方をもっと次のレベルに持っていくことができないか、と。もしかしたら今後、彼女がSNSでの情報発信をメインにして、アイスタイルでの仕事がパートタイムになる。そんな可能性も出てくるんじゃないかと思っているんです。それでももしアイスタイルに貢献したいと思ってくれるのであれば、何か方法を模索したい。アイスタイルに貢献したいという思いと、自分のインタレストを追求したいという思いをうまくつないでいく制度ができたらいいですね。彼女をきっかけに、会社のあり方を変えられるようにと私たちも刺激を受けています。
――奥田さんから今後についてのお話も出ましたが、有賀さんの今後の目標や理想などあれば教えてください。
有賀さん 個人的な理想としては、この働き方は続けていきたいです。それだけではなく、副業で得た経験やリソースをもっと会社のためにも活用して、自分の本業と副業が重なったお仕事ができるようになれるのが理想ですね。いつか、@cosmeから“ありちゃん”へ、バシバシお仕事をもらえるくらいまで伸ばしていけたらいいなと思っています。