自身のパラレルキャリアの原体験から、令和時代に合った新しいポートフォリオの形「Profiee(プロフィー)」を開発したSpreadyの柳川裕美さん。さまざまな経歴や生き方をするパラキャリ女子に向けて自由度の高いポートフォリオサイト「Profiee(プロフィー)」を作ったその想いを伺いました。
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「はじめまして」の裏のつながりを見逃すのはもったいない
――なんでポートフォリオに注目したんですか?
企業と個人を「人の紹介で」つなぐコラボレーションSNS「Spready」を運営している中で、1年間で約700の企業と個人の”はじめまして”を生み出してきました。その中で、“はじめまして”に負の部分がいっぱいあるなという課題を感じて「Profiee」を作ったんです。
――「はじめましての負の部分」とは、具体的にどんなものでしょうか?
一言でいうと“はじめまして”って盛り上がらないんですよね。「○○会社の柳川です」と言いながら名刺を渡すことが一般的な“はじめまして”だと思いますが、会社名と職種と名刺だけでは伝えられないことがありますよね? 「私、実はこんなことも得意です」「こんな経験もあります」「趣味は○○です」といった具合に、実は2人にはもっと盛り上がる共通の話題があるのに、いわゆる“はじめまして”のタイミングではそれがまったく伝わってないんですよね。実は、野球観戦っていう共通の趣味があるかもしれない、実はメディアを立ち上げようと思っている方と立ち上げた経験がある方との出会いになっているかもしれない。そういった裏側のつながりを見逃すのはもったいないなと思っていて……。だからといって、みんないきなり自分のことをぺらぺらしゃべるのも苦手ですよね(笑)。
――確かに(笑)。ビジネスだと特に、どこまで込み入った話をしていいのか難しいですよね。
そうなんですよ。あと、もう1つは時代的背景もありましたね。ちょうど副業が解禁になって、いろんなことに個人で取り組む人がすごく増えてきて、会社の肩書や名刺のキャリアだけでは語れないことが多くなったと思うんです。個人でライターをやってて、とか趣味でアクセサリーを作っていてECですごく売れているとか。いろんな経験が増えてきている中で、自分のやっていることを全部まるっと伝える手段がnoteで一生懸命書くこと以外はあまりないなと思っていて……。もし、それが名刺みたいに、はじめましての人に気軽に渡せるものであれば、もっと自分のことがうまく伝わるのにな、と思ったのが「Profiee」の始まりですね。
――ポートフォリオって、どう作っていいかわからないという人が結構多いのかなと思っていますが、そのハードルをだいぶ下げてくれたのが「Profiee」ですね。
ポートフォリオってデザイナーさんの特権みたいなところがあって、みなさんおしゃれなポートフォリオサイトを作られていて素敵ですよね。私はずっと営業とか人事とか広報とか、ポートフォリオをわざわざ作るキャリアではないのですが、私たち……私たちっていうと変ですが(笑)。そんなにおしゃれに並べられるものはないから、ポートフォリオサイトを作るほどではないんだけど、自分の趣味とかパラレルキャリアでやってることとか伝えたい! と思っている方は結構いるんじゃないのかなと思ってて。そういう人向けにも本当に簡単に作れるということを目指しました。お互いに紹介文も書きあえたりするので、既存の知人や友人の方との仲を深めるとか相互理解にもつながりやすいですよ。
いわゆる「普通」のキャリアがなくなってきている
――いろんなキャリアの人たちのために新しいツールが必要だと。
そうですね。今までだったら、大学名と会社名を聞けばその人の人生を想像できると言ったら大げさかもしれませんが、ある程度標準的な人生の型ってありましたよね。今の時代は多様化が進んでいて、リンダ=グラットンの著書「LIFE SHIFT〜100年時代の人生戦略〜」にもあった通り、例えば、会社に勤めた後に大学院に行くキャリアもあるし、出産してから会社に就職するキャリアもある。会社に就職しているけど、副業の方の稼ぎが多い人もいるだろうし、本業と趣味の境界がない人もいる。いわゆる「普通」のキャリアがなくなってきて、みんながそれぞれ自分らしい人生を歩むようになってきているかなと思っていて。
パラレルキャリアは本業以外の活動(副業など)を並行して持つことの意味で使われますが、それを横軸とするならば、縦軸のバリエーションも出始めている。会社に勤めた後に大学院に行ったり、ビール醸造を始めたり。縦も横も全部自分のキャリアをまるっと簡単に、しかも仰々しくなく作れるポートフォリオサイトがあればなと思って作ったんです。
――それこそ、柳川さんから自己紹介がわりにいただいた「Profiee」を見ていて、あ、ビール好きなんだ、私も! と、お会いする前に親近感がわきました。
その人の解像度が勝手に上がりますよね! 最初の出会いからめちゃめちゃ盛り上がるみたいな。昨日も「Profiee」を作ってくれたことをきっかけに会うことになった人とランチをしたんですけど、お互いにお店に着く前にお互いの「Profiee」を見て予習しておく。そしたら、はじめて会ったとは思えないくらい盛り上がることができました。人と深く出会うためにもいいツールだと思いますね。
――実際どんなユーザーさんが使ってますか?
取材記事をまとめたり写真も入れられるので、ライターさんやデザイナーの方も使ってくれてる方が結構いますね。ほかには、会社全体で「Profiee」を書きあって、みんなでお互いを知ろうという取り組みをしてくれていたりもします。普通の会社のプロフィールだと、経歴とか前職、趣味や好きな食べ物とかをさらっと書いてあるだけだと思うんですけど、割と自由度が高い設計になっているので、自分のストーリーとか想いといったエモーショナルな部分まで伝えやすくなっています。「はじめまして」がすごく楽になった、という声をたくさんいただいています。
「好き」も趣味も、自分をまるごと伝えられる
――開発するうえでこだわったところを教えてください。
まずは、本当に簡単に作れるということ。ポートフォリオって、デザイナーの皆さんはこだわってすごくおしゃれなものを自分で作れちゃうと思うんですけど、「Profiee」はどちらかというと、そういうのが億劫な人向けなんです。文字を入れただけでもそれっぽくなります(笑)。
あともう1つは、自分らしさを簡単に表現できるということ。トップページの色がウェブ上で表現できる1600万通りのカラーから自分の好きなものを選べるので、自分らしさを表現できる。会社のロゴカラーを選ぶ方もいらっしゃいます。URLやアカウント名などもTwitterのように自分らしいものを選べます。また、写真や記事などは簡単に載せられるので、自分らしいものだけピックアップして、「らしさ」を簡単に表現できるのも特徴です。
――ポートフォリオというより、プロフィール帳を書いてる感じで楽しく作れますね!
そうなんです! それこそ、「履歴書に見えない」という点もこだわったポイントです。送ったときに履歴書っぽいなっていう印象を与えないように、デザインにもこだわりました。また、性格とか、エムグラムとかストレングスファインダーとかも入れられるので、パッと自分のことを伝えやすいんです。
――キャリアだけの情報じゃなく、全方位から多面的に自分の存在を伝えられるんですね。
そもそも、仕事で活躍している、取材記事が多くある人のためだけのサービスにはしたくなかったんです。副業やパラレルキャリアをしている以外にも趣味のことを表現してもいいわけですよね。こんなに趣味があるよ、とか、こんなことが好きだよということも含めてすべてをまるごと伝えられるということを実現したかったんです。主婦の方が、今は専業主婦だけど、昔はこんなことして働いてましたとか、実は今子育てをしながらこんな趣味をしてますとか、今こんなドラマにハマってますでもいいわけです。そういういろんな面をもった自分を伝えられるサービスにできればとこだわりました。
――誰もがポートフォリオを気軽につくれる時代になりそうですね。自分の半生を振り返れるのも魅力的です。
そうなんです。簡単に簡単にって言ってるんですけど、みんな、いざ作リ出すと時間がかかるみたいです(笑)。なぜかっていうと自分の棚卸しが始まって、何を載せようとか考え出して、結果的にめっちゃ時間かかるって言われちゃうんですよ(笑)。
Profieeはこちら柳川裕美(やながわ ひろみ) ●新卒で大手人材紹介会社に入社。営業としてを4年半務めた後、スポーツマーケティング会社で広報・PR業務に従事。その後、大手グルメサービスで人事、採用担当を3年半務めながら、2018年に個人事業主として開業し、副業を開始。2019年よりSpready株式会社に入社。現在は取締役として自社サービス「Spready」「Profiee」の開発からカスタマーサクセス、ユーザーコミュニティデザイン、人事採用、PRマーケ、その業務は多岐にわたる。