Paranaviトップ お仕事 働き方 マネジメントへの挑戦も、休職もキャリアの選択肢。「自分らしさ」を叶えられる星野リゾートの働き方

マネジメントへの挑戦も、休職もキャリアの選択肢。「自分らしさ」を叶えられる星野リゾートの働き方

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「フラットな組織文化」のもと、柔軟性の高いマルチタスクをはじめとしたユニークな働き方を実践している星野リゾート。結果、個人個人が能力を生かすことができ、先例にとらわれないキャリアを歩んでいる人が多くいるそう。そんなスタッフの代表例として、中途入社から約2年で総支配人になったという「星野リゾート 界 箱根」の立川久美子さん、学習休職の制度を使ってMBAを取得したという人事グループ・キャリアデザインサポートユニット ユニットディレクターの鈴木麻里江さんのお2人に、「自分らしい」働き方を楽しむコツを聞いてみました。

掃除も皿洗いも楽しむことができた

――はじめに、お2人のこれまでのキャリアについて簡単に教えていただけますか? 立川さんは、30歳を過ぎての異業種からの転職だとお聞きしました。

立川 はい。その前は10年ほどフィットネスクラブで働いていました。32歳になって「人生ずっとこのまま? 何か新しいことをしてみたい!」と思って転職してきたのが星野リゾート。最初の3カ月は、「界 日光」の大浴場の掃除から皿洗いまで、実にいろいろな業務を経験しました。ともすると、「下働き」のような仕事に捉える人もいるかもしれませんが、私にとってはすごく楽しかったんです。

星野リゾート女性

「界 日光」時代、日光下駄作りの先生と一緒に。参考: 伝統工芸・日光下駄で湖畔を散策

洗い場の仕事1つとっても若い20代のスタッフと競うと体力的にキツイですが、少しでも早く終わる方法はないかと試行錯誤してみる過程が面白くて「界 日光」で一通りのサービススキルを習得した後に、総支配人に立候補し、その後「界 津軽」に異動して半年後に総支配人になりました。2019年4月からは「界 箱根」の総支配人をしています。

――フィットネスから、ホテルの現場仕事とはかなりの方向転換ですね! それも楽しんでやられたからこそ、広い視野が身についたのかもしれませんね。一方で、鈴木さんは新卒から星野リゾートですが、最初からホテルの仕事に興味があったんでしょうか?

鈴木 実は、就職活動の時点では、最初は映画やドラマの制作に携わりたいという気持ちがあってテレビ局への就職にこだわっていました。ですが、リーマンショックの影響もあって就職浪人に。そこで意図していなかったサービス業である星野リゾートに出会いました。そもそも映画やドラマの制作を希望していたのは、人の心が動く瞬間を作りたかったという理由から。そうすると、マスメディアに限らずとも直接に感性を刺激する旅や観光といった業界もいいなと思いました。

村民食堂・星野リゾート女性

軽井沢ハルニレテラスにある人気レストラン「村民食堂」。 出典:軽井沢星野エリア「村民食堂」

入社すると当時は、現場で様々な業務を経験しながら1年で3カ所の施設を経験しました。軽井沢では星野エリアにある「村民食堂」で揚げ物をして定食を仕上げていく、なんて仕事も(笑)。驚いたのは、私もこういった仕事が楽しかったということ。その後、他社から運営を引き継いですぐの西表島ホテルに配属となり、元の会社からいる人と何ができるかを考えながら、客室清掃、フロント業務などサービス全般の業務を習得しました。その後も会津にある磐梯山温泉ホテルに異動し、いろんな体験をしたことで、1つのチームみんなで取り組む楽しさなど、マルチタスクのメリットを感じた1年でした。

夫が育休を取り、自身は2カ月で復職

――2人とも意図しなかった経験や現場仕事を楽しんでいたという共通点がありますね。そんな2人も現在はマネジメントのポジションに就かれています。立川さんは、中途入社から約2年という早さで総支配人になられていますが、どのように臨んで総支配人になったんですか?

立川 星野リゾートでは、各ユニットの責任者であるユニットディレクター、施設の最高責任者である総支配人を決めるのは、会社の一方的な判断ではないという考えのもとスタッフ自身が自由に手を挙げて、入社2年目からマネジメント職に立候補することができます。

総支配人に立候補したのは、その前に在籍していた「界 日光」の当時の総支配人に、入社して半年経過した頃に「マネジメントを目指したら?」と言われたのがきっかけ。一緒に働くのが楽しい仲間のようなスタッフと、ともに創造力を発揮したいという気持ちもありました。そこで、休みの日には社内ビジネススクールである「麓村塾(ろくそんじゅく)」(※)の講座に参加してインプットもしました。

星野リゾート女性

「界 津軽」「青森屋」「奥入瀬渓流ホテル」の青森3施設の支配人。 参考:界 津軽

実は、「界 日光」にいる間は会社理解もまだまだできていなくて、この立候補プレゼンで実力を発揮することができず、支配人になることはできませんでしたが、心機一転という気持ちで「界 津軽」に異動し、もう一度仕事との向き合い方やチームとの関わり方を見直し、取り組んでいたところ「界 津軽」の総支配人となることができました。

(※)麓村塾:マーケティング、マネジメント、ワイン、地域文化など、専門スキルを持っている社内スタッフが講師を務め、100種類を超える講座の中から興味ある分野を学ぶことができる星野リゾートの社内スクール。

――鈴木さんも、今は人事グループでアシスタントディレクターとしてマネジメント業務をされていますが、マネジメントには当初から興味があったんですか?

鈴木 はい。マネジメントには興味がありました。配属先は希望が出せるのですが、そのためにまずはしっかりしたスキルアップをしてからと思い、ラグジュアリーブランドである「星のや京都」に社内の公募エントリーで異動。場所柄、要望レベルの高いお客様が多いため、様々なサービススキルが身に付くのではないかと考えました。

星のや京都・星野リゾート女性

京都・嵐山で全室リバービューの部屋から日本の四季が楽しめる「星のや京都」。 出典:星のや京都

昨年春までは、基本的には「星のや京都」での勤務を続けていたですが、異動後数年経って自分のスキルの不足と会社の成長スピードとのギャップを感じて、学習休職という選択をし、9カ月間グロービスのビジネススクールに通ってMBAをとりました。その後、復職して立川さん同様に立候補に挑戦し、サービスチームのユニットディレクターに就任。そして、「星のや京都」にいるときに第一子を出産しました。

実は社内結婚をしているのですが、当時は夫が1年間の育児休暇を取り、私は出産後2カ月で復職。その後、人事業務の専門性を磨きたいと思い、人事グループで再度立候補して、キャリアデザインサポートユニットのユニットディレクターに就きました。

「フラットな組織文化」ならではの考え方

――お2人とも社内外でのビジネススクールに通うなど学ぼうとする姿勢と行動力がすごいですね! また、現場でのマルチな経験がマネジメントにしっかり生きているのも感じられます。

鈴木 星野リゾートでは、基本的に自律的なキャリアデザインを目指していますが、社内の仕事全部を把握するというのは難しいもの。そのためこれまでも、会社からの「こんな選択肢があるよ」という提案によって、自分では意図しなかった気づきやいい縁のつながりになることも。現在、ディレクターを務めるユニットでは、、社員一人ひとりが考えるキャリアについてヒアリングをし、個別に相談を受けたり、異動希望などの情報を集めるという取り組みもしています。

立川 私は他社も経験していますが、縦割り分業の会社では「もっとこうしたらいいのに」と思っても部署の垣根があってできないといったフラストレーションがありました。ですが、星野リゾートに来て、これだけいろいろな業務を経験できることが、とても新鮮だったんです。体力的にキツくて寝る前に足がつったりもしましたが(笑)。自分の引き出しが増えていくという感覚です。

転職してすぐ若い新入社員を迎えて一緒に皿洗いをしたときも「この一皿をキレイに早く洗ってやる」というのにやりがいを見いだしたりして。自分なりの工夫によって、効率がアップして人件費が減ったり、顧客満足度が上がったりといった成果が数字に現れて見えるのも喜びでした。 

――女性管理職の活躍や男性育休の取得が当たり前になっているのも、フラットな組織文化から来ているように思います。実際に、風通しのよさや挑戦したいことをやらせてくれるという風土は感じますか?

立川 「女性だからできない」とか「男性だからやりやすい」というような男女の差は総支配人としては感じていません。今、勤務している「界 箱根」では、育休スタッフが2名、育休時短スタッフが1名います。サービス業は、時間帯の制約やお客様に合わせる仕事なので、皆が皆フルタイム・フルコミットでやらないと難しいと思われわれがち。ですが、星野リゾートでは、マルチタスクで全員がスキルを持っているので、空いた穴はチームで補えるという点が大きいです。

星野リゾート女性

鈴木さんファミリー

鈴木 星野リゾートでは「fairness(公平性)」をとても大事にしています。逆に言えばこれはとてもシビアで、結局スキルがあるかどうかによって選択できることの幅も大きく変わってきます。

このfairnessを保つために重要な機能を果たしているのが、立候補プレゼンなのですが、立候補プレゼンを通してマネジメントが入れ替わることを“昇進か降格か”という概念では捉えていません。代わりに“充電か発散か”という風に捉えています。

同様に、育児休暇の取得も“充電”という捉え方ができると思います。夫は育児休暇を自分の人生を豊かにするために取ってみたいということで選択しました。それで得られることは、会社のなかでのキャリアの選択と並列で見ることができます。

総支配人になるのは発散、そうでなくなるときは充電期間に入るとイメージしているという風に考えれば、育児や学習による休職といった一見「キャリアの停滞」に見えるような選択肢にも迷いなく、自信を持って進めますよね。

女性のキャリアはたいてい「バリキャリかぶらさがりか」という二元論に陥りがち。ですが、全員にとってストレッチのきいた挑戦をし続けることだけが幸せに結びつくわけではありません。「発散と充電」という視点で考えることで、自分にぴったりな働き方ができるのかもしれません。

立川 久美子(たちかわ くみこ)●異業種から中途入社で星野リゾートに入社して「界 日光」でサービススキルの取得や現場経験を経て立候補。「界 津軽」の総支配人に就任し、界津軽の開業以来の大型リニューアルを経験。現在は「界 箱根」の総支配人を務める。コロナ禍で観光エリアとして注目度が高い箱根で感染対策の徹底や、スタッフ教育など対応。

鈴木 麻里江(すずき まりえ)●新卒で星野リゾートで入社し、星のや京都で現場経験を積み、学習休職でMBAを取得。復職後に「星のや京都」のサービスチームのディレクターを経て、現在は人事グループキャリアデザインサポートユニットのユニットディレクターに。自ら、立候補や学習休職などの星野リゾートのさまざまな制度を利用しながらキャリアデザインし、現在は、育児もしながら人事という立場でスタッフのキャリアサポートに従事する。

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小野アムスデン道子
Writer 小野アムスデン道子

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