Paranaviトップ お仕事 働き方 「自分がいなくても回る環境づくりを」SHE代表が考える、成長する組織と育児の共通点

「自分がいなくても回る環境づくりを」SHE代表が考える、成長する組織と育児の共通点

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コロナの影響によるリモートワークの浸透もあって、それまで少しずつ進んできていた、完全在宅勤務や地方移住、パラレルキャリアといった柔軟性の高い働き方が一気に身近な選択肢となってきました。選択肢が増えた一方で、「自分の理想のキャリアが見つけられない」「何をすればいいかわからない」という声も多くあります。そうした中で、ミレニアル女性へキャリア&ライフコーチング事業を展開してきたのがSHE。自身も代表就任と同時に、産休・育休に入るという異例の選択をした福田恵里さんに、目指す世界観や女性のキャリアについて聞きました。

「代表就任と同時に産休入り」が組織にもたらしたもの

SHE代表・福田恵理さん

出典:PR TIMES

――2020年4月、SHEの代表就任と同時に産休・育休に入られました。会社としても、1人の女性としてのキャリアにおいても、異例の選択だったのではないかと思います。

当時、SHEは創業4年目。事業の成長に向けてまさにアクセルを踏んでいく時期でした。もっと落ち着いたタイミングで子どもを迎える選択肢もありましたが、社内のメンバーも8割以上が女性。彼女たちがいつ妊娠・出産をしても、キャリアを諦めずにSHEで楽しく気持ちよく働いてもらえる環境を整えておきたかったんです。女性のキャリアを応援する会社の代表として、SHElikesの会員さんのため、会社のメンバーのため、そして自分のために、妊娠・出産というライフイベントを経験しておくことが結果として、SHEの進化にもつながると思いました。

――これからというタイミングで、会社や仕事を離れることに不安はありませんでしたか?

不安はあまりなかったですね。メンバーをとにかく信頼していましたから。実際に私の産休後、「残った私たちがSHEを守らねば」と全員がコミットしてくれて、事業がすごく伸びたんですよ。私がいなくても意思決定をできる仕組みや体制をつくれていたのかなと思います。

誰かが抜けることで新陳代謝が生まれたり、新しいポジション登用ができたりと、組織にポジティブな影響もたくさんあります。それに、私に限らず、未来を担う子どもが生まれるというのは、本当に喜ばしいこと。産休・育休で迷惑をかけて申し訳ないと思わず、自分が離れたあとの組織をいかに強くしていくかにベクトルを向けられると、全員がハッピーになれるなと感じました。メンバーからも、「恵里さんのおかげで、産休に入っても『ごめんね』とは言わないようにしようと思えた」と言ってもらえたことが嬉しかったですね。

母親になっても、自分の人生を生きていきたい

SHE・銀座拠点

2020年9月には表参道に続き、東京・銀座に拠点をオープン。
出典:SHE

――周りが「おめでとう」と気持ちよく送り出せるポジティブな職場は、誰にとっても居心地が良さそうですね。お子様が生まれて2カ月後には仕事復帰されたそうですが、仕事と育児を両立する秘訣を知りたいです。

「やらないことを決める」ことですね。胸を張って言えることではないかもしれませんが、離乳食を手作りせずベビーフードを活用したり、シッターさんにお願いしたり、アウトソースできることはためらいなく手放すようにしています。私は、子どもに向き合う時間やかける手間がイコール愛情ではないなと思っていて。一緒にいすぎてストレスを抱えながら子どもと接するのは、親子の関係としてはサステナブルと言えません。やらないことをやめて生まれた時間でしっかりと仕事に打ち込む。そして、子どもと一緒にいるときは精一杯の愛情で向き合う。こんなメリハリが大事だなと感じます。

――「母親だからしっかり子育てしなきゃ」と抱え込んでしまう人も多いと思います。ときに手放すことは大切ですよね。

「いい母親でいなきゃいけない」みたいな無意識バイアスを持ってしまう女性はまだまだ多いですよね。結婚後、パートナーと「どちらが家事をやるか」でよく衝突してしまう時期があったんです。家事をすべてリスト化して役割分担を明確にしようと話し合っていたときに、夫からふと出た言葉が、「これって本当にどちらかがやる必要ある?」。この視点から考え直してみた結果、家事代行をお願いすることになり、お互いすごくストレスフリーになれたんです。根本の目的に立ち返って、実現できる仕組みづくりをするのがよいと学べました。子育てにおいてもこの考え方を活かせていると思います。自分を犠牲にした子育てではなく、親子ともにご機嫌でいられる仕組みを作ることが肝心だと実感しました。

SHE独自のコミュニティとコーチングで「ありたい姿」を実現

SHE・レッスン風景

同世代の女性受講者が多いため、目標や悩みを共有しやすい。
出典:SHE

――コロナの影響でリモートワークが一気に普及しました。SHEではもともと通学制で講座を提供していましたが、オンライン受講制への変化はその波を受けてのことだったのでしょうか?

実は、オンライン化に踏み切ったのはコロナが来る半年前の2019年9月。以前は通学制だったので、通える圏内にお住まいでない方や、子育て中の方からサービスが受けづらいという声がありました。そこで、SHEの価値をもっと多くの人に届けたいと、時間や場所の制限をなくして、どこでも誰でも受けられるようにブランドリニューアルをしたんです。

――コロナの影響に先駆けて、サービスを進化させていたんですね。女性向けのキャリアスクールとして、SHEが大切にしていることを教えてください。

私達がSHEで会員の皆さんに提供したいのは、「自分で自分の人生を生きられるようになる力」スキルアップ、転職や副業などは、あくまで自己実現のための手段の一部にすぎないんですよね。だからこそ、単にスキルを装着してもらうだけでなく、理想に向かって自走できるようなマインドチェンジをもたらすことが本質的な価値だと思っています。自分に自信が持てなかったり、今まで他人軸での評価や価値観を気にしてしまったりする人の固定概念を解放して、自分らしい生き方を叶える伴走者でありたいなと。

ほかのスクールではデザインやプログラミング、英会話などすでに顕在化した課題にアプローチしていることが多いですが、SHEは「なんとなく今の自分にモヤモヤする」「自分を変えてみたい」と、潜在的な悩みを抱える方々にも興味を持ってもらえていると感じます。

――最近では、「ライターで稼ぐ」とか「デザイナーでどこでも働ける」とか、わかりやすい手段ばかりがフォーカスされることが多いですよね。マインド面の変化は目に見えないゆえにサポートが難しい部分もあると思うのですが、どのように工夫されていますか?

2つの施策に力をいれています。1つ目は、「コミュニティ」の心理的安全性を担保すること。入会していただいた方には、「『私なんて』は禁止」などのお約束ごとを用意して、自分の目標や学びに真摯に向き合えるような環境を整えています。

SHE・お約束

SHEで掲げている「お約束」
出典:SHE

2つ目は、「コーチング」で理想への進捗管理を行うこと。入会日が近い4~5名のグループを作り、まずは今後のありたい姿を共有することから始めます。「Webデザインに興味がある」「在宅で働けるようになりたい」などの“Doing”だけではなく、「こうありたい」という“Being”を明確にしてもらうんです。その後の月1回の定期コーチングでコーチや仲間から変化を認めてもらったり、「あなたならできるよ」とエンパワーメントの言葉をかけてもらったりすることで、自信をどんどんつけていくんですよね。少しずつでも変わっていけたという成功体験が積み重なることで、1年後には見違えるほどの変化を起こす人をたくさん見てきました。

一人ひとりが自分の価値を発揮できる社会に

SHE代表・福田恵理さん

事業拡大に向けて総額4.4億円の資金調達を実施。
出典:資金調達の裏側とSHEのこれから

――2021年の2月には4.4億円の資金調達が発表されました。今後の展望をお聞かせください。

私たちのいちばんの強みは、コミュニティの熱狂度。この熱量を活かしつつ、SHEブランドをさらに強化させていきたいですね。具体的には、受講者と講師・コンテンツとのパーソナライズマッチングを推進したり、あらゆるコミュニティ体験をテクノロジーによって最適化したりなどを考えています。

また、力を入れているのが2つの新事業です。ビューティー領域のトータルプロデュースをする『SHEbeauty』では、他人軸での「美しさ」の定義から解放されて自分らしい美を実現できるように。マネースクール『SHEmoney』では、義務教育では教えてもらえなかった理想のライフプランを実現するために必要なお金の知識装着とサポートを。キャリアの面からだけでなく、本当の意味で、一人ひとりが自分にしかない価値を発揮できる社会をつくっていきたいなと思っています。

これらの新事業を発表したときに、「『SHE』が提供するサービスなら安心して受けられる」と言ってもらえたことがすごく嬉しくて。ミレニアル世代の女性に寄り添い、安心感と信頼感を持ってもらえるブランドになれるよう、良いサービスを提供していきたいですね。

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村尾唯
Writer 村尾唯

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