Paranaviトップ お仕事 働き方 上野千鶴子さんに聞く「日本で、女性リーダーの代わりに『わきまえる女』が大量生産されてきた」理由

上野千鶴子さんに聞く「日本で、女性リーダーの代わりに『わきまえる女』が大量生産されてきた」理由

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世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップ指数2021」によると、日本のスコアは153カ国中120位。中国や韓国よりも低い、厳しい結果となりました。令和の時代になってもなお、男女格差がこれほど色濃く残っているのはなぜでしょうか。社会学者で、「女性学」を生み出したジェンダー分野の第一人者・上野千鶴子さんに話を聞きました。
>インタビュー後編はこちら!「上野千鶴子さんに聞く、女性が幸せに生きるために大事なのは『ガマンしない』『孤立しない』こと」

みんなが「わきまえなくなった」という成果

――森元首相の女性差別発言は海外でも報道され、日本中が恥ずかしい思いをさせられました。

日本には未だに、「おっさん」の性差別発言が蔓延していて、もぐらたたきのようにあちこちで再生産される状態が続いています。「森発言」の現場では、周りから同調する笑いが起きたそうですね。男性同士の忖度と根回しでいろんな物事を決めてきた、長い歴史がありますから。

上野千鶴子さんに聞く「日本で、女性リーダーの代わりに『わきまえる女』が大量生産された理由」

一方で、性差別発言が見過ごされなくなったということには大きな意味があります。政界の大物だろうが大企業の偉い人だろうが、NGなものはNG。女性差別は一発退場モノなんだとみんなが認識して、批判の声を上げられるくらいには、世論が変化してきました。2017年に問題になった、壇蜜さんが出演した宮城県のPR動画も炎上しましたが、いざ公開されるまで制作者側は誰も問題に気づかなかった。だけど電通・佐々木宏さんの発言を発端とした五輪演出に関する一連の報道では、少なくとも問題視する人が例のLINEグループの中にいて、内部告発したことがきっかけとなりました「森発言」のときにはTwitterで「#わきまえない女」というハッシュタグが生まれました。こういう変化には勇気づけられます。

――例えば数年前だったら、同じ人が同じ発言をしたとしても、これほど問題視されなかったかもしれません。

だから、今こそ日本が変わるチャンスです。こういうのは裁判の判例と同じでどんどん積み重なっていくものだから、成功体験の前例を作るのが大事。数年前にSNS#MeToo」ムーブメントが起きたとき、何より新しかったのは、年上の女性たちから「私たちがセクハラをガマンしてきて、ごめん」という声が上がったこと。これまで年上の女性たちは「騒いだら、あなたのためにならないよ」「うまくいなすのがオトナの女」なんて言って、声をあげようとする女性を抑圧する側に廻ってきました(笑)。それも、彼女たちが少数派として男社会で生き延びるための生存戦略だったと考えれば、同情に値しますけどね。その結果が「わきまえる女」なわけです。

企業は「女性が生き延びられない仕組み」になってる

上野千鶴子さんに聞く「日本で、女性リーダーの代わりに『わきまえる女』が大量生産された理由」

――女性が働くなんて当然の時代ですが、出世するのは男性ばかり……という職場も多いです。日本に女性リーダーが少ないのはなぜでしょうか。

まずは企業内部の構造です。日本の大企業が女性を総合職で一定数採用するようになって数十年経ち、今、ビジネスの現場には女性がたくさんいます。でも、役員や管理職クラスは未だに男性が大多数。それは、女性が生き延びられない仕組みがあるからです。女性社員は、能力や状況によらず帝王学コースからはずされるので、管理職候補の人材のプールが育っていないのです。出産・育児でマミートラックにはまりますし、管理職の長時間労働が、女性の昇進の最大のネックだという指摘もあります。

――仕事と家事・子育ての両立は、永遠の課題に思えます。

仕事に加えて家事・子育てもワンオペでやっている女性と、専業主婦に身の回りのことを丸投げしている男性とじゃ、仕事にかけられるパワーが違って当然ですよね。役員やマネージャー職の男性はだいたい既婚子持ちですが、同じポストの女性は非婚・離別や子無しが多い傾向があります。東大の林香里(かおり)さんというジャーナリズム研究者が『テレビ報道職のワーク・ライフ・アンバランス』(大月書店、2013)という著書の中で、データをもとにマスコミ業界の現状を明らかにしています。

それから、自己評価の傾向に違いがあることも、女性リーダーが少ない原因の1つだと言われています。自分のパフォーマンスを「男性は過大評価、女性は過小評価しがち」ということが、国際的な調査によって科学的に明らかにされています()とくに日本では「女性らしさ」の一部として、「ひかえめさ」が要求されてきたことが一因でしょうね。
 Age and Gender Differences in Self-Esteem

「女性初の○○」によくある、2つの傾向

上野千鶴子さんに聞く「日本で、女性リーダーの代わりに『わきまえる女』が大量生産された理由」

――男性社会では、女性そのものが少数派。そこに適応すると、どうしても「わきまえる女」化してしまうのでしょうか。

そうですね。「女性初の○○」という人たちには、2つの傾向があります。まずは「おじさんのペットになる」パターン。決して男性をおびやかさない、便利で扱いやすい女性たち。「わきまえる女」たちですね。もう1つは「男性に過剰同一化する」パターン。必要以上に男性らしくふるまったり、無理にたくさんお酒を飲んだり、過剰に男性化する女性です。この過剰同一化は、性別に限らず、多数派に適応しようとする少数派によくみられる現象です。白人社会に参入した黒人中産階級にも、「東京もん」らしくふるまおうとする上京してきた地方出身者にも。

そしてとにかく、多数派は少数派を分断させたがる。先輩や上司に、ほかの女性と比べられて「○○さんと違ってあなたは……」なんて対立を煽るように言われたことはありませんか? これは「Divide and rule(分割統治)」といって、植民地支配などに使われたやり方です。少数派同士をわざと対立させて、支配しやすくする鉄則ですね。

――まだまだ終わらない“男性社会”。少しでも変えながら私たちが幸せに生きるため、大事なことって何? 上野さんのインタビュー後編はこちらから!

女性リーダーを応援する、Japanese Women’s Leadership Initiative(JWLI)

上野さんが代表を務める、NPO法人ウィメンズ・アクション・ネットワーク(WAN)

上野千鶴子(うえのちづこ)●社会学者。認定NPO法人ウィメンズ・アクション・ネットワーク(略称WAN)理事長。東京大学名誉教授。女性学、ジェンダー研究、介護研究のパイオニア。京都大学大学院社会学博士課程修了、平安女学院短期大学助教授、京都精華大学助教授、コロンビア大学客員教授、メキシコ大学大学院客員教授などを歴任。1993年東京大学文学部助教授、95年東京大学大学院人文社会系研究科教授を経て現職。近著に『在宅ひとり死のススメ』(文春新書、2021年)『あなたの会社、その働き方は幸せですか?』(祥伝社、2020年、出口治明氏と共著)など

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椿 萌
Writer 椿 萌

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