夏の暑さもまだまだ残っている昨今、「何となく仕事をやる気が出ない……」という方、多いのではないでしょうか。春から新しい環境に飛び込んだ人も、秋ごろには慣れてきて少しゆとりができるとともに、「夏休みの名残かどうしても体が動かない!」という声も。そんな人にオススメしたい、モチベーションアップの思考術をお伝えします。
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「目標と目的」をわけて考える
「目標」と「目的」をわけて考えたことはあるでしょうか。そもそも、この2つの違いを知っていますか? 厳しい目標に向かって日々努力しているアスリートに聞いても、即答できる人は意外と少ないんです。
ざっくり言うと、「目標」は可視化できるもの。具体的なかたちで他人と比べられるものです。例えばビジネスなら「年収1000万」「年間営業100件」などの数字。スポーツならリーグ優勝、得点ランキングなどの順位です。これは誰にでもわかりやすいですし、具体的な目標を設定することは非常に大切です。
では「目的」とは何でしょうか。これは「目的」は目に見えず、他人と比べこともできないものです。例えば「人に元気を与える」「日本のファッション業界を盛り上げる」など。会社でいう、理念のようなものですね。
大きな目標を立てて、因数分解してみよう
目標を持つことは、仕事をするにしてもスポーツをするにしても、モチベーションアップにおいて非常に大切です。ですので、まずはいい目標設定方法をお伝えします。いい目標は、とにかく具体的。そして段階にわけられています。
わかりやすい例として、スポーツを取り上げます。将来の目標が「プロサッカー選手になること」という中学生がいるとします。プロサッカー選手になるためには、まず高校時代にどう過ごすべきなのか考え、クラブのユースに行くのか、高校のサッカー部に入るのか決めます。そうするとおのずと、どの高校を目指すのか、その高校には勉強して入るのか、推薦を狙うのか、といったことが見えてきます。さらにそのために、自分は1年後までに何を達成していないといけないのか、3カ月後は? 1カ月後は? じゃあ今日からの1週間では何をする……?
こうして大きな目標から自分のすべきことを因数分解して、小さな目標をつくっていくと、目標への思考回路が整理されますし、軸がぶれません。また、長いスパンの目標を持つことで、細かい目標が達成できなかったときにもかんたんに方向修正できます。
運命の分かれ道は「違うルートを探せるか?」
重要なのは、細かい目標にとらわれすぎないことです。一度目標を立てて、すべてその通りに進められる人はなかなかいません。ただし、そこでつまずいてしまうともったいない。本来達成するべきなのは最終的な目標であって、そこまでの小さな目標は「ルートをわかりやすくするための標識」みたいなものです。ですから、まずはやってみて、ダメなら違うルートに変えたっていいんです。
運命の分かれ道になるのは、そこで「違うルートを探せるかどうか」。普段の生活の中で、思考力を鍛えているかどうかがポイントになります。思考とは「自分でその場の状況を判断して、考えて、行動に移す」こと。目標を達成できなかったときには、自分にできることを考えて行動できるかどうかが大事です。思考力を育むことが、目標立ての裏テーマだったりするんです。
「私、何がしたかったんだっけ?」の落とし穴
パラキャリ女子の中には、すでに自分なりの目標設定を実行している人も多いかもしれません。最近よくいわれる「PDCAサイクルを回す」「自己肯定感をアップする」といった話の中では、目標設定がよく重要ポイントとして挙げられています。では、目的はどうでしょうか?
最初は目的を決めていても、日々忙しく働いているうちについ忘れちゃう、見失っちゃう……という人はとても多いんです。仕事に追われてへとへとに疲れた時、ふと「あれ?私って結局何がしたかったんだっけ?」と思ったことはないでしょうか。
目標設定を明確にすることは大切ですが、それに偏りすぎると、目標が自分を追い込む凶器に変わってしまうことがあります。「ああ、自分で立てた目標なのに、なんで達成できないんだろう」「もっと頑張らなきゃ……」なんて思っているうちに、気がついたら心も体もキャパオーバーに! なんてことにもなりかねません。
目的を持つことは、いつか自分の支えにもなる
そういう時に大切なのが、目に見えない、人と比べられない、「目的」です。私自身を例に挙げてお話しします。私は普段、精神科医、スポーツメンタルアドバイザーをしています。そんな私の目的は、少しでも“笑顔の人が多い社会をつくること”。
ですから、診察でも「笑顔があふれる診察室」をテーマにしています。スポーツメンタルでも、プロを目指す厳しい環境でも「サッカーが好き!」という気持ちを忘れずに、いつも笑顔の選手でいてほしいと思います。それが余裕を持って自分を客観視できる理由にもなり、結局、選手としてのスキルアップににつながります。
医師としてひたすらお金を稼ごうと思えば、精神科より稼げる科がほかにあります(笑)。スポーツメンタルも、日本ではあまり浸透していないため、ほとんどマネタイズできず、賢い選択とはいえないかもしれません。
でも私には、お金を稼ぐよりも大切な目的があるので、周りに揺さぶられたり理解してもらえなかったりしても、軸がぶれることはありません。目的の存在は、目標をうまくクリアができなかったときの支えになるし、いろいろな外的要素から自分のモチベーションを守る大切なポイントにもなるんです。
仕事が忙しくなればなるほど、目標や目的を見失うこともしばしば。改めて自分の本当の目的を考えると、できることやりたいことがもっと見えてくるかもしれません。目的意識を持って、楽しく有意義なキャリアをつくっていきましょう!