Paranaviトップ お仕事 起業/独立 気象キャスターから、和歌山県のフルーツ農家へ。「夫婦で新しい世界に飛び込んだ」吉瀬りえさんの挑戦

気象キャスターから、和歌山県のフルーツ農家へ。「夫婦で新しい世界に飛び込んだ」吉瀬りえさんの挑戦

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和歌山県でハッサクやブドウなどをつくりながら、webショップ「きみのフルーツ」の商品加工や開発を担当している吉瀬りえさん。なんと気象キャスターから始まったという異色のキャリアです。そこで培ったマーケティング力を生かしながら、柑橘農家としてどんどん新しいことにチャレンジしているそう。そもそも東京で気象キャスターになった吉瀬さんが、どうして農家に転身したのでしょうか。キャリアチェンジの葛藤や、フルーツにかける思いについて聞きました。

農家は、アイディア次第でいろんなことができる仕事

――代表商品は、ハッサクジュース「HASSAKU」ですよね。

はい。甘味料はいっさい使わず、カツオ有機肥料でていねいに育てたハッサクをぜいたくに絞った極上のジュースです! フルーツが嫌いっていう人、あんまりいませんよね。プレゼント用として使ってもらえることも多いですし。農家は、自分がつくったものでみんなを笑顔にできる幸せな仕事です。

――吉瀬さんは今、「きみのフルーツ」の商品企画やマーケティングを担当されています。

農家は「百姓」ということもありますが、百は「たくさん」を表す言葉で、「百の仕事をできる人」という意味だそうです。実際、農作物をつくるだけじゃなくて、いろんなことができるんですよ。世界的に活躍しているチーズソムリエと一緒に、世界に発信できるハッサクチーズをつくったり、各国を巡って世界のカカオに精通したチョコレートソムリエとデコポン・オランジェットに合う希少なチョコをマリアージュさせたり、チーズやワインのメーカーとコラボしたり。とくに、色や形がよくないフルーツを私のアイディアで新しい商品に生まれ変わらせて世に出していけるのはうれしいし、すごくクリエイティブな仕事だと思います!

――逆に、農業ならではの苦労もありますよね。

この前は大雨でブドウの実が割れて、だめになってしまいました。大寒波がきて、凍害でデコポンの半数を売りに出せなかったこともありました。自然相手のことなので、いつも不安がつきまとってます。

気象キャスターから、和歌山県のフルーツ農家へ。「夫婦で新しい世界に飛び込んだ」吉瀬りえさんの挑戦

看板商品「HASSAKU」。大量生産できないので、毎年争奪戦です!

気象キャスターからはじまったキャリア

――オフィスワークとは全然違うやりがいや大変さがありそうです。そんな吉瀬さんですが、ファーストキャリアは「気象キャスター」だったとか。

はい。でも、気象キャスターになりたかったわけじゃないんです。大学生のとき、趣味でライフセービング(海での救難救助活動)をやっていたんです。本場のオーストラリアに何度も足を運びました。で、マリンスポーツと切っても切り離せないのが「気象」。一生懸命やってきたライフセービングに近い世界として身近だった「気象」が私のファーストキャリアになりました。

――どこかの企業に就職したんですか?

2002年にウェザーニューズという会社に入ったのが始まりです。ライフセービングのような、自分の好きなものを追い求めた結果、気象キャスターたどり着いたという感じですね。キャスターに注目されがちですが、ウェザーニューズではほかにもコンテンツをつくったりマーケティングしたり、いろんな経験をさせてもらいました。

――プライベートはどうだったんでしょう?

ウェザーニューズから外資系医療機器メーカーに転職して、そこで夫に出会い、結婚して出産しました。ただ、ワーママとして120%の力で突っ走ることができないモヤモヤがありました。のびのびと自分のやりたい仕事しながら子育てもできる道はあるのかなと、ぼんやり考えはじめましたね。もともと、子育てが一段落したら何か新しいことをやってみたいなという気持ちもありましたし。

気象キャスターから、和歌山県のフルーツ農家へ。「夫婦で新しい世界に飛び込んだ」吉瀬りえさんの挑戦

家族でしめなわ体験をしたときの思い出

夫に押し切られて、農業の世界に飛び込んだ

――そこから、どうやって農家に行き着くんでしょうか?

夫の叔父が、和歌山県紀美野町で柑橘農家をやっていて。後継者がいないからやってみないか、と夫が言い出したんです。そのときは猛反対しました(笑)。農業という世界があまりにも遠くて想像がつかなかったので。2人目の子がほしいねと言っていたタイミングでもあったので、農家よりも安定しているサラリーマンがいいんじゃないかと提案したんですが、「今より農家のほうが儲かるよ」と断言されたのを覚えています(笑)。

――それに、キャリアについてのモヤモヤもあって、農家への転身を決めたんですね。

はい。夫がプレゼンしてくれた「農業計画」が面白かったので、信じてついていこうと決意しました。もともと夫と同じ会社で働いていたので、仕事のできる人だと知っていましたし、彼がここまで言うなら農業の世界に飛び込んでみてもいいかなと思いましたね。

それに、農業について調べてみたら意外と、私がそれまでやってきたことを生かせるとわかったんです。ウェザーニューズでも医療機器メーカーでもやっていたマーケティングの考え方を、農業にも応用できると知って少し安心しました!

――始めた当初からうまくいったんですか?

最初はすごく苦労しました。フルーツは工業製品と違って、すべてが規格に沿った、計画通りのものにはできあがらないんです。農業は大地の力と人間の力を合わせる仕事なので、必ずしも人間の計画通りにはいきません。

ラッキーだったのは、就農して2年目のころ、爆笑問題さんのテレビ番組でうちを紹介していただいて、一気に認知が広がったことです。贈答用に買ってくれるお客さんも増えました。

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限定商品『ハッサクとチーズのショコラ仕立て』。一口目にチョコの甘さ、次にチーズのコクがくる、不思議な味わい

夫婦で「一緒に作り上げてる感」がある

――農業の面白いポイントはどういうところですか?

決してお金がたくさん儲かる世界じゃないけど、一生懸命やったらやった分だけ成果が返ってくるのが面白いです。もちろん異常気象に苦しめられることもありますが、フルーツたちは必ず私の努力に応えてくれる。

それから、自由にいろんなことにチャレンジできる職業でもあります。0から何かを始めたいという人にはすごく合っている仕事ですよ。夫婦で一緒に歩んでいる実感があるし、一緒にものをつくってるからこそこんなにぶつかったり励ましあったりできてるんじゃないかな。

――お客さんとの関わりはいかがでしょうか。

お客さんの笑顔や「おいしい!」という声が直接届くのは、やっぱり大きなやりがいです。逆に100点のできじゃない年は、私たちはあんまり市場に出したくないんですが、でもおいしいことには違いないし、売らないと生きていけないっていうジレンマがあるんです。そういうときも、キャンセルせずに「今年もおいしいね」って食べてくれるファンの存在は何よりの支えです。いい年も悪い年も歩んでくれるのは心強いですね。

――安くておいしいものばかり求めがちですが、正解はそうじゃないと。

そもそもいちばんおいしいタイミングで食べたいなら、人間の都合に合わせて食べ物を動かすんじゃなく、人間のほうが食べ物に合わせにいくのが本来あるべき姿です。Amazonの便利さに慣れちゃって、ほしいときにほしいものがすぐ届くって勘違いしがちですよね(笑)。

そうやってつくり手と食べ手の常識が少しずれている中、実際にフルーツをつくって世に送り出しているからこそわかる苦労や苦悩を夫婦で共感しあえることは、お互いにすごく心強いです。お互い励まし合いながら、いろんなことを乗り越えてきました。

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ハッサク畑で、2人のお子さんと♡

できないことはできない。そんな自分を責めない

――農家への転身もそうですが、移住も大変でしたよね?

移住して今年で6年目ですが、移住は私にとって人生初の「自分がマイノリティになる経験」でした。6年かかってようやく、こちらの価値観や文化に慣れてきたかなという感じです。

最近は移住ブームですが、ただ自然豊かなところに移住すれば幸せが手に入ると思っているならそれは勘違いです(笑)。「自分がどう生きていきたいか」によって決めるべき。いろんなことをシェアできる仲間がほしければ、地方は最高ですよ。子どものこともみんなが大事にしてくれて、地域で子育てできますし。

――子育てにおいてマイルールや、大事にされていることはありますか?

怒鳴って言うことを聞かせるのはNG! それから、なんでもできる、なんでも知ってる親になろうとしないこと。できるだけ子どもと一緒にものを調べたり考えたりするようにしています。

私、実は理想的な農家じゃないんです。虫は嫌いだし、お弁当には冷凍食品を使うし(笑)。できないものはできない、やらないことはやらないと決めて、できない自分を責めず「ここまでできたからOK!」って考えるのがコツかも。

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――吉瀬さんは、ソーシャルビジネスコミュニティ「ワクセル」のコラボレーターにご登録されています。きっかけは何だったんでしょうか?

おおきに代表取締役社長の、野寄聖統さんという方から紹介してもらいました。野寄さんは私のハッサクジュースのお客さん第一号で、私にとってすごく特別な存在。コロナ禍でまだあまり具体的な活動はできていないんですが、ワクセルには主催の嶋村吉洋さんのつながりでいろんな人たちがいるので、農業とは違う世界にいる人たちとの関わりによって新しいことをやれるんじゃないかと楽しみです。

和歌山も過疎化が進んでいるので、星が綺麗だったり文化遺産があったりという観光資源を生かして、イベントをやって化学反応を起こして、地域おこしできたらなんて……。私自身、まだまだやりきれていないことが多いので、コラボレートすることの無限大の可能性を感じています!

>ソーシャルビジネスコミュニティ『ワクセル』(主催:嶋村吉洋)
>吉瀬さんのワクセル コラボレーターページはこちら!

――これからやりたいことがたくさんありますね!

はい! ハッサクは剥きにくく、人気が右肩下がりのフルーツなんですが、ハッサクならではのいいところを押しだして世界に展開していきたいですね。枝豆が海外で「えだまみ」って呼ばれてお寿司の付け合わせになっているのと同じように、ハッサクを大きく育てたいです。それから商品加工の面では、加工場を広げて、育児と両立して働けるような環境を整えていきたいです。

――20〜30代の女性たちに、応援メッセージをお願いします!

やらない後悔は後を引きますよ! 一度新しい世界に飛び込んでみると、どんどん道が開けていきます。私の場合、現実をあまり知らなかったから進んでこられたというのもあります。本当にやりたければ自然と体が動くはず。Paranavi読者にもどんどん突き進んでほしいです!

「きみのフルーツ」オンラインショップはこちら!

吉瀬りえ(よしせりえ)●フルーツの新しい愉しみ方を提案する きみのフルーツ/8℃ 代表。オーストラリアへの大学留学、帰国後気象会社に就職、海外気象番組制作、国内キャスターに従事。その後、医療機器メーカーへの転職を経て結婚出産。2016年和歌山県紀美野町へ移住し就農。主にフルーツ栽培を担う夫のサポート役として栽培を手伝う傍ら、フルーツ専門ネット通販「きみのフルーツ」の運営と、商品開発をメインに担当。ハッサクやミカンなどの柑橘、ブドウや梅など、自分達がこだわって作ったフルーツを皮まで愉しんでもらえる、様々な企画に取り組んでいる。新聞・TV、雑誌掲載など多数。

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椿 萌
Writer 椿 萌

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