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教えて、先輩リーダー!石山亜紀子さんに聞く「“失敗”が気づかせてくれた、職場以外の私の軸」

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私たちのロールモデルとなる女性リーダーを、たくさん輩出してきたJWLI。気になるのは、先輩たちが「どうやって“失敗”を乗り越えてきたか?」。今回はParanavi編集長代理のさくらが、JWLI卒業生で横浜市男女共同参画推進協会 男女共同参画センター横浜南 管理事業課長の石山亜紀子さんに、「選択的夫婦別姓」という軸を見つけるまでのストーリーをインタビュー。「私、2度目の女なんです(笑)」と言う石山さんのエピソードは臨場感たっぷり、必見です。
*このイベントは、2021年9月16日に「Venture Cafe Tokyo」のThursday Gatheringの一部として行われたものです。

最初の就職は「憧れだけを求めて」失敗

教えて、先輩リーダー!石山亜紀子さんに聞く「“失敗”が気づかせてくれた、職場以外の私の軸」

さくら

石山さんは今、横浜にある男女共同参画センターで女性支援活動をされています。どういう理由でこの仕事を始めたんですか?
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石山

もともと国際協力に興味があって、学生の頃に、新興国の女性支援の現場を見たいと思い、バングラディシュに行ったんです。現地の女性が「これまでは、自分の意見を発することすらできませんでした。いざ意見を口にしてみたら、社会を変えるきっかけになってうれしかった」と言っていて。きっと、似た思いをしている女性が日本にもたくさんいるに違いないと思って、日本国内に目が向くようになりました。
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さくら

日本は、ほかの国と比べるとジェンダー後進国ですよね。
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石山

はい。世界経済フォーラムが発表しているジェンダーギャップ指数をみると、日本はいつも下位(。2021年版は、156位中120位)。子どものころからずっと感じていたもやもやとか生きづらさは、ジェンダーが原因だったのかなと思うようになりました。
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さくら

「選択的夫婦別姓」に向けた活動もされています。これは石山さんの個人的なご経験からきているんですよね?
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石山

はい。私の母が選択的夫婦別姓を目指して、最終的に離婚に至っていて。それも、今の仕事に就いた理由の1つです。
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さくら

大学を卒業されて、最初の就職はどうでしたか?
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石山

まず、就活が人生初の失敗なんですが(笑)。就職氷河期だったにもかかわらず、大人気業界のマスコミばっかり受けて全敗しました。外務省の非常勤スタッフに潜り込んだんですが、だんだん違和感が出てきて……。もう一度海外に行ってちゃんとジェンダーを学び、外から日本を見てみようと、タイの大学院に入学したんです。

選択的夫婦別姓の成功事例・タイの大学院へ

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さくら

どうして、アメリカやヨーロッパじゃなくタイだったんですか?
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石山

私、下の名前が「亜紀子」というんですが、親が「21世紀のアジアに羽ばたく」という意味を込めて名付けてくれたんです。それに運命を感じて、アジアのどこかに留学してみたいなと思ってました。
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さくら

自分の名前のとおりに生きるって、なかなかできないことだと思います。素敵!
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石山

それで、ジェンダー関連で修士の学位が取れる大学院を探したところ、タイにあったんです。タイは、セクシュアリティやLGBTの分野で日本よりずっと先進的な国で。選択的夫婦別姓の成功事例でもあるので、迷わず留学先に選びました。
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さくら

タイが、選択的夫婦別姓の成功事例だとは知りませんでした!
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石山

タイではもともと、結婚したら夫の姓にしなければいけなかったのが、女性たちの活動と国連からの勧告を受けて、妻の姓を選ぶこともできるように変わったんです。中国は夫婦別姓、ネパールも選択的夫婦別姓ですね。
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さくら

日本には、選択的夫婦別姓に反対する人がいます。とくに女性で反対している人は、どういう理由からなんでしょうか。
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石山

選択的夫婦別姓に反対する女性たちにインタビューしたことがありますが、「夫婦別姓にすると家族が壊れる」「浮気につながるんじゃないか」という意見でしたね。実は日本も、以前のタイと同じく、選択的夫婦別姓にするよう国連から勧告を受けているんです。それなのになかなか実現せず、結婚後、女性の96%が改姓している状況(※)です。
※厚生労働省「婚姻に関する統計」2015年時点

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選択的夫婦別姓の活動をしている時の一枚(左から2人目が石山さん)。広い世代の仲間がいます。

選択的夫婦別姓の動きは、10〜20代や男性にも

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さくら

石山さんが熱意を持って取り組んでいらっしゃる選択的夫婦別姓の活動。具体的にはどうやって始めたんですか?
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石山

2018年、サイボウズ代表取締役社長の青野慶久さんが、選択的夫婦別姓を求めて裁判を起こされました。その活動グループに参加したのがきっかけで、本格的に活動を始めました。法律を変えるためにはまず地方から働きかけようということで、市議会や地元選出の国会議員に陳情して、意見書を出してもらうのが主な活動内容です。
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さくら

一緒に活動されているメンバーの皆さんは、どんな方が多いんでしょうか?
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石山

多いのは、キャリアをつくっていくうえで、慣れ親しんだ苗字を失いたくないという人ですね。それから、自分は苗字を変えたけど、娘には同じ思いをさせたくないという女性も。私自身、事実婚をしたこともあって、当事者として向き合えるようになりました。
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さくら

「VERY」モデルの牧野紗弥さんも、夫婦別姓に向けてペーパー離婚の準備を進められているそうですね。
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石山

結婚して苗字を変えたけど、なんとなくもやもやしたなあという女性は多いと思います。苗字は自分のアイデンティティの一部ですから、半ば強制的に変えざるをえないという現状は、実は大きな損失なんじゃないかなと思います。
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さくら

最近は、選択的夫婦別姓の活動がSNSで話題になることも多いですね。若い人にも広がってきていますか?
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石山

はい。10〜20代でも、興味を持つ方が増えています。そういう方はSNSでの情報発信も上手で、ずいぶん時代が変わったなと思います。また、男性からも「彼女が苗字を変えたくないと言っていて結婚できない」「苗字については彼女の意思を尊重したい」などの声が寄せられるようになってきました。男性も自分ごととして、選択的夫婦別姓に関心を持ってくれるようになりつつあるようです。
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さくら

いい傾向ですね。今も視聴者の方から、チャットに「私の両親は離婚していますが、母は未だに父の姓を名乗っています」「2人で好きな姓を選べればいいな〜」というコメントをいただきました!

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石山さんがハマっている、シンガーソングライター・藤井風さんのライブにて♪

自分の存在意義をかけて…「私、2回目の女なんです」

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さくら

石山さんは、JWLIの女性リーダー育成プログラムに参加されたそうですね。いつのことだったんでしょうか。
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石山

2015年にボストンでのプログラムに参加したんですが、実はその前に1度応募して落ちていて。2度目のチャレンジで合格できました。応募したきっかけは、職場で人事異動があり、ジェンダー関連の活動ができなくなってしまいそうだったことです。やりたいことができなくなるかも……という危機感から、自分の存在意義を確かめたいと思っての挑戦でした。
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さくら

2回応募するという熱意、さすがです!
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石山

この時期、日本女性学習財団のエッセイにも応募しまして。こちらも1度は落ちて、2度目で選ばれました。私、2度目の女なんです(笑)。
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さくら

(笑)。失敗から学んでいるからこそ、2回目で成功するわけですよね。
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石山

失敗したら、何がダメだったのか分析するようにしています。JWLIのプログラムにはどうしても参加したかったので、卒業生の方にどうしたら合格できるか聞いて回りました。皆さん、英語のレッスンをしてくださったり、ビジョンをクリアにするようにとアドバイスしてくださったり、あたたかい方が多かったです。

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JWLIの同期メンバーと!向かって右が石山さん。

パーソナルストーリーを「周りに語ること」が大事

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さくら

2回目で見事合格された、JWLIのプログラム。現場では具体的にどんなことをしたんですか?
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石山

マネジメント論やリーダーシップについて学びました。いろんな世代の女性リーダーが参加しているので、年上の人からはリーダーであり続ける姿勢、年下の人からは上手な情報発信のやり方や、対立でなく対話する方法を学びました。そしてみんなに共通しているのは、自分独自のパーソナルストーリーがあること。それを基に行動するから方向性がはっきりしているし、周りから共感を得られるんだなあと思いました。
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さくら

ストーリーを語ると、後輩や仲間がついてきてくれるようになりますよね。
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石山

はい。個人的な経験をストーリーにして、語ることがポイントなんだと思います。ここで出会った仲間たちとは、「カリスマじゃなく、スモールリーダーになろうと話しています。周りの力を最大限に引き出す役割をしたいねと。
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さくら

JWLIのプログラムに参加して、石山さんにはどんな変化がありましたか?
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石山

上の世代の方にも、自信を持って意見を言えるようになりました。JWLIでは「自分の意見を言わないと、存在する意味がない」って言われるんです(笑)。こうして職場以外の居場所を持つと、新しい自分が見つかったり、違う可能性を見つけてくれる人に出会えたりするものですね。
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さくら

家でも職場でもない居場所、大事ですよね。若い女性たちに一言お願いします。
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石山

みなさんも、自分の心にピンときたことには正直に行動してみてほしいです。小さくても、失敗しても、行動することでチャンスが広がって、だんだん道が開けていくと思います。

日本初、民間の婦人会館建設までの手記
出版&デジタルアーカイブプロジェクト 寄付募集!
大正から昭和にかけて、日本で初めて横浜に女性たちの社会活動の拠点「婦人会館」を作るために奔走した女性たちの、活動の記録が発見されました。100年前の先輩女性たちの活動から、コロナ禍の今を生きる希望を見いだします。

「ガールズ支援」チャリティーTシャツ 販売中!
テキストレーター はらだ有彩さんとイラストレーター muranoさんのイラストが素敵なTシャツになりました。売り上げは、不調やひきこもり等を経験し、生きづらさ、働きづらさに悩む若い女性たち(ガールズ)の自立への一歩をサポートする事業に充当します。

石山亜紀子(いしやまあきこ)●(公財)横浜市男女共同参画推進協会 男女共同参画センター横浜南 管理事業課長。JWLI2015年フェロー。外務省非常勤職員、不動産仲介会社等の勤務を経て、アジア工科大学院(タイ)留学。ジェンダーと開発学科修了。(公財)日本女性学習財団「日本女性学習財団賞」2014年度奨励賞受賞。現職では、働きづらさに悩む若い女性対象のしごと準備講座、大学や企業向けのデートDVやハラスメント防止講座の講師を務める。選択的夫婦別姓・全国陳情アクションメンバー。安全な場でジェンダーやセクシュアリティについて語る「大人の教室」を主催。

JWLI(Japanse Women's Leadership Initiative)●2006年、アメリカのボストンで創立。日本の女性リーダー育成のための活動をしており、卒業生は100名を超える。主な活動は以下の3つ ①JWLI:ボストンでの4週間のプログラムと日本での2年間のメンターシップ ②CCJA チャンピオン・オブ・チェンジ日本大賞 他薦により選ばれた社会変革に取り組む女性リーダーに贈られる大賞 ③JWLI Bootcamp:4週間のボストン研修を3日間の合宿型研修に凝縮し、日本国内で日本語で提供。

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小野アムスデン道子
Writer 小野アムスデン道子

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