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パラレルキャリアは柔軟性こそ命! 起業家・ガスケール杏子さん流、長続きするためのビジネスモデル

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大手外資系投資銀行を辞め、一念発起して産前産後ケアの会社「anzucco」を立ち上げたガスケール杏子さん。産前産後ケアについては門外漢の身でありながらサービスを始めた彼女には、ビジネスを続けるために不可欠な“マイルール”がありました。そして、2018年新たに海外の資産運用会社とのコンサルタント契約、女性エグゼクティブを中心としたネットワーク「THE CHOICE」の東京ヘッドとパラレルキャリアをスタートさせつつも、2児の母としてパワフルに日々を過ごすための秘訣“柔軟性”についてもお話を伺いました。

“海外で成功しているビジネスモデル”で欲しいサービスをつくる

――産前産後ケアの会社を立ち上げたきっかけを教えてください。

大学卒業後、外資系投資銀行に勤めていた20代は、いわゆるバリキャリで朝の6時半から日付が変わるまでひたすら働いていました。転機となったのはちょうど2627歳のころ、海外の同僚たちから聞いた妊娠・出産・産後の話が、私が知っているものとはあまりに違ったことでした。彼らは、「妻が妊娠したから助産師を手配しなきゃ」、「産後院を手配しないと」とか聞いたことがないような「産前・産後ケア」の話を当たり前のようにしていたんです。初めは、自分の英語の聞き取りが間違っていたのかな? と思ったほど()

――海外では当たり前のサービスが日本ではまったく浸透していなかったんですね。

調べてみると、海外に比べて日本で受けられる産後のケアの手薄さに愕然としました。自分が猛烈に働いていたというのもありますが、その状況で妊娠・出産して仕事に復帰するというイメージがまったく沸きませんでした。ここ数年こそ、「産後ケア」に関するいろいろなサービスが出てきていますが、8年前の当時はその概念すらありませんでしたから。マタニティの間はお腹も大きいし、周りのみんながサポートしてくれますが、いざ出産したらその後のサポートがまったく無いことに危機感を感じて……。当時、私はまだ婚約もしていませんでしたが、「自分が子どもを産むときにこんなサービスが欲しい!」と一念発起し、産前産後ケアに特化した「anzucco」を立ち上げました

 ――まだ当事者になっていないのに、そこに目をつけられるところがさすがです。

調べてみたら面白かったというのもありますが……。起業するときは、2パターンしかないと思っていて、ひとつはゼロから自分が考え抜いたものをやるか、もうひとつは、海外で成功しているビジネスモデルをもってくるかのどちらかなんです。もちろん、法律が違うので、すべて同じものを取り入れるわけにはいきませんが、日本でできる範囲で、「自宅で助産師のケアを受けられるサービス」を始めてみました。

―― 後者のパターンと「産後ケア」がマッチしたんですね。でも、外資系投資銀行からまったく専門外の分野で、しかも会社を立ち上げてしまうのはすごい覚悟です。

逆にビジネスモデルありきで入ったから良かったのかもしれないです。もちろん、自分が欲しいサービスかつ競合がいなかったというのは、ビジネスを始めるときの基本だと思います。起業はボランティアではないので()。一方で常に考えているのが、社会的意義のない仕事は長続きしないということ。それがあるかどうかは、起業をするうえですごく重要なポイントだと思います。

長続きするのは“社会的意義”のある仕事

――具体的にはどのようなことでしょうか?

今回の産後ケアの会社に関していうと、最大の要は「産後鬱」の抑制でした。日本の産後鬱の発生率は世界的にみてもかなりの高さです。9割が予備軍、隠れも含めると3割が発症していると言われていて、そのいちばんの理由は「相談できる人がいない」、「グーグルしか頼るものがない」というお母さんたちの孤立化から来るものでした。海外で当たり前とされる「プロの手を借りる」という概念を、日本にも取り入れられたらと思いました。特に、授乳はお母さんのメンタルに直結してくるものなので……。産後、プロが自宅に来てマンツーマンで話を聞いてくれたり、アドバイスをくれたりすることでお母さんたちに安心感を与え、産後鬱の抑制につなげることができます。

――9割が予備軍!? 驚きです。産後鬱の抑制には大きな社会的意義がありますね。

実はもうひとつあって、それが「助産師の働き方改革」です。私が会社を立ち上げた当時は、助産師さんの98%が病院勤務で、お産をとらなくてはいけないので当直もありました。小さな子どもがいるお母さんたちは今までの働き方ができないので、助産師なのに自分自身が出産したら本当の産後の仕事ができないというジレンマがあったんです。実際の産後の助産師さんたちの仕事はというと、保健所で働くか新生児訪問のアルバイトで虐待防止の1回きりの訪問をするというものでした。実際に、やりがいを感じられない助産師さんも多かったんです。

経営者が考えるべき“WinWinでいられる”プライシング

――助産師さんが労働環境にそんな問題を抱えているとは知りませんでした。

うちでは、経験の豊富な助産師さんたちからの「母乳相談やお母さんの悩みを聞きたい」という声を受け入れて、1人のお客さんはほぼ同じ助産師が担当するなどして、ご本人たちのやりがいを重視して働いていただいています。正直、会社としてのサービスとしては、決して安いものではありません。ある意味ハイエンドと言われてしまいますが、その理由はうちが儲かるためではなく、助産師さんのお給料をしっかりとお支払いしたいという想いからです。お給料を下げればサービスの価格はもっと抑えられますが、うちで働いてくれている助産師さんがこの仕事だけで食べていけるように、国家資格も持った経験も持った人としてリスペクトをこめてお支払いしています。助産師さん側もうちで働くほうが条件がよかったり、キャンセルリスクも少なかったりするので、積極的に仕事をとってくれます。そこで、ウィンウィンの関係でいられるのがベストだし、経営的にもポジティブなこととして捉えています。なので、ビジネスモデルの中でプライシングはすごく大切ですね。

――従業員のモチベーションに直結しますよね。起業するときに助産師さんたちとの関係性を含めて、どのように進めていったのでしょうか。

すぐには辞められなかったので、半年くらいは自分の中で準備してから退職しました。具体的には、産前産後ヨガインストラクターやチャイルドボディセラピストの資格を取得する一方、都内産後ケアセンターで実務経験を積みました。とはいえ、産前産後ケアについては門外漢の身。ビジネスサイドの人間なので、助産師の方々に「どうしたら働きやすいですか?」としっかりとコミュニケーションをとることを徹底しました。知らないので教えてください、というスタンスだったので、助産師さん側も心を開いて話してくれたというのも大きかったですね。

――産前産後ケアの一環で、ヨガの事業もされていますよね?

はい。ヨガはリピート率がとても高いですね。起業当初は私もユーザーの声を生で聞くためにインストラクターとしてやっていましたが、現在はヨガ講師の方にやってもらっています。自宅に来てもらってパーソナルでできるので、子どもが居るお母さんたちには本当に喜ばれています。この2つが事業のメインで、ほかにも企業向けに助産師を派遣して、産後の生活についての話や産前産後ケアのセミナーなどもしています。立ち上げから8年たったので、初期にサービスを使ってくれた方が、2人目3人目の出産のときも使ってくれて。そういうビジネスモデルではないかなと思っていましたが、意外とリピーターの方がいらっしゃって嬉しい限りですね。

展望はあえてつくらない、柔軟に大きいことに挑戦したい

――現在は「anzucco」以外のお仕事もされているんですよね?

2018年に海外の資産管理会社から声がかかり、コンサルタント契約として、主に国内の不動産投資の仕事を始めました。個人では決して入りえない、スケールの大きな投資案件に携わることができ、ダイナミクスを楽しんでいます。金融時代に使っていた脳みそを引っ張り戻してきた感じですね。同年、企業の女性リーダーや女性エグゼクティブを中心としたネットワーク「THE CHOICE」の東京支部のディレクターに就任。メインテーマである”FOREVER LEARNING” を実現するべく、女性たちに学び続ける場を提供しています。プライベートでは、2児の母として家事育児にも奮闘中です。

――今後の展望を教えてください!

ないですね()。というのも、会社に勤めていたときや起業した当時は、3年後にこうなっていたい、5年後にこれくらいの売り上げになっていたいという目標はありましたが、この1〜2年パラレルキャリアとしてやっていると、フレキシビリティこそ命だなと実感しています。今のこの働き方も半年前は想像していなかったし、こうでありたいと固めてしまうと選択肢が狭まってしまう気がします。逆にぶれていないのは、自分にとってのプライオリティは家族であり、そのためにも18時以降は仕事をしないということ。今の子どもたちの年齢に関してコミットしたいことを最大限行いながら、自分ができることややりたいこと、なるべく大きいことをやりたいなと思っています。

恐らく、ライフステージも関係していて、子供たちが小学校に入ったりすると、生活パターンがより安定してきて、仕事の取り方がまた変わると思うんです。今は子どもが小さいので病気で呼ばれたりすることも多く、そこも含めてフレキシブルでありたいですね。子供の遊びにもとことん付き合いたいと思っています。先日はママ友から「仕事してたの知らなかった!」と言われたくらい、ママ友ランチや子供たちの放課後のプレイデートも楽しんでいます。それに、こんな風に「まま抱っこ~」と自分を頼ってくれるのはあと2〜3年かなと思うので、なるべく一緒に過ごせる時間を大切にしています。その基準で仕事を選びにいっているので、展望というのはなくて。フレキシブルにできるだけ大きいことをやりに行く、というのが理想ですね。

ガスケール 杏子(ガスケール きょうこ) ●海外留学を経て、大学卒業後、外資系投資銀行に勤める。海外の妊娠/出産における充実したサービスに感銘を受け、「自分が出産時に欲しいサービスは自分でつくる!」と2014年に「anzucco」を設立。「専門家による、科学的根拠に基づいた、安心できる情報とサービスを提供する」を理念に、助産師が自宅で一対一で行う産褥訪問を中心に、産前産後ヨガインストラクターによるプライベートレッスンなども展開。その後、20164月に長女を出産。産後も仕事を続けつつ、2018年には、新たに資産運用会社のコンサルタント業と、アジアのエグゼクティブ女性を中心としたネットワーク「THE CHOICE」の東京ヘッドとして始動。3つの仕事をこなしつつ、同年12月に長男を出産。怒涛のパラレル生活を経て、現在はフレキシブルに仕事・子育てを両立しながら活動中。

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杉森 有規
Writer 杉森 有規

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