「不動産投資」と聞くと、購入のハードルが高そう、暴落とかするんじゃない? ……など、ちょっと身構えてしまう方もいるのではないでしょうか。そもそも家賃収入以外にどんな利益を得られるのか、税金がどれくらいかかるのかもよくわからないですよね。そんな不動産投資ビギナーに向けた“第一歩”的な質問を、投資インフルエンサーのジェレミーさんに直撃。ていねいに解説してもらいました!
Contents
まずは抑えるべき、“インカムゲイン”と“キャピタルゲイン”
――不動産投資をする人たちが一定数いますが、どのように利益を生んでいるのでしょう?
不動産投資における利益は「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」の2つあります。インカムゲインはその不動産を持っている間に得られる利益のことで、キャピタルゲインは不動産を売却することで得られる利益のことです。
例えば3000万円で不動産を購入したとします。その物件を賃貸に出したら、その期間は毎月の家賃収入、つまりインカムゲインを得られます。そして仮に、数年後に物件を売却することになった場合、例えば3500万円で売れたら、ざっくり500万円の利益が出ます。これがキャピタルゲインです。
――インカムゲインは家賃収入と想像するとわかりやすいです。でも、例えば数年間住んだ後に、購入額よりも高い金額で売れることってあるんですか?
もちろんこれは、実際にその時になってみないとわからない、というのが正直なところです。でも、キャピタルゲインがありそうなエリアを予想することは可能です。例えば最近だと日本橋エリアや六本木エリア、高輪ゲートウェイ駅の周りなど、大規模な開発があるエリア。これは日本だけではなく世界のどこでもいえることですが、都市開発が行われているエリアは、将来的にたくさんの人が集まりそうだな、少なくとも廃れないよな、と予想することができます。こうして将来的なキャピタルゲインを見込んだり、少なくともキャピタルロスの可能性を減らしたりすることができます。
――では、いわゆる不動産を“転がしている”人たちは、そういうことから逆算して不動産の売買を行っているんでしょうか?
そういうことになります。でも、短期的に転がして上手くいっているのは、サイコロを振って「6が出るのか1が出るのか」の違いであって、多少の必然を含めたラッキーにすぎないと思います。短期間で転売を繰り返すことで利益を上げるようなやり方は、僕は推奨しません。個別株や仮想通貨取引と比べると、不動産は中長期的に、ある程度安定かつ安心して持てるのがいいところだと思っているので。
金融資産と不動産資産の「大きな違い」とは?
――そもそもジェレミーさんはどうして、ほかの金融資産ではなく、不動産を多く持っているんですか?
単純に、不動産が大好きだからです! 家そのものも大好きですし、インテリアなどを含めた住空間が大好きなので、それが投資になるならめっちゃいいじゃん! と思っているからですね。
――好きなものだから、ということですね。金融資産を持つ人も多いですが、不動産資産との大きな違いはどこにあるんでしょうか?
値上がりを見込んで買うというところは、ある程度金融資産にもその他金融資産にも共通しています。大きく異なる点の1つは、不動産は値付けがされているようでされていないこと。上場株式やビットコインなどの金融資産は誰が買っても、その瞬間の値段は同じですよね。でも不動産は違う。例えば野菜と一緒で、本当はレタス1つ300円だけど、「うちの店によく来てくれるから、今日は250円でいいよ」ということが起こり得ます。
例えば5000万円の物件を内覧に行ったらたまたまオーナーさんと意気投合して、「君なら4500万円で売ろう」とか。当事者間のやりとりや関係性によって価格が決まることが、往々にしてあるんですよね。
――でもそれって、逆に騙される可能性もありそうですね。
そうならないために、相場を知っておく必要があるんです。エリアによって、だいたいの値段があります。例えばマンションを借りるにしても、このエリアでこのスペックだったら、だいたい家賃は15〜16万円くらいかな、と借りる側目線での目測が立てられますよね。それと同じで、売買でもその相場からどれだけ安いか高いかという話なんです。相場より安く買えたら、買った瞬間から“含み益”になります。この“含み益”を最大化できるような買い方や建て方をしておくと、キャピタルロスを抱えにくく、いい買い物をしている状態になります。
――そうなると、あんまり大きな利幅が望めない気がするんですが……
これはすべての投資に言えることですが、投資は「ほかの人よりもいい判断をしたかどうか」のゲームととらえることができます。例えば街中を歩いていると、人が住んでいなそうな空き家を見かけることがありますよね。不動産の登記簿謄本は誰でも見られるようになっているので、その家の持ち主を調べることが可能です。持ち主を調べて手紙を送ると、「実はずっと売ろうと思ってたけど、面倒くさくて手をつけてなかったんだよね」という人に出会うことがあるんです。そういう場合は相場より安価で譲ってもらえることもあって、例として500万円で購入した土地と建物が、更地にしたら3000万円で売れるなんてこともあるわけです。
先ほどもお伝えしたように、不動産は相場があるようでないんです。買う人やタイミング、買い方やその後の使い方によって仕入れ値が変わるんです。ほかの金融商品より安く仕入れやすいからこそ、利幅やリスクを入り口の時点でコントロールすることが可能です。
不動産投資って実は、すごく手間がかかるんです
――なるほど。仕組みを聞いていたら、やれそうな気がちょっとしてきました!
でも、初心者の方には不動産投資はあまりお勧めしません(笑)。なぜなら、非常に手間のかかる投資だから。僕はもう10年くらい不動産投資に関わって運用していますが、不動産は「投資」じゃなく「事業」と考えたほうがいいと思っています。
皆さん、お仕事をするときは自分の手足を動かしますよね? 不動産も同じです。いい物件を選定して、必要があればリノベーションをして、魅力的な物件にする。正しい賃料の値付けをして、仲介会社経由でお客さんに住んでもらって、退去があれば清掃したり、場合によっては再リノベーションする……ね、すごく手がかかるでしょ? 買ったときのまま放置しておけばお金を生んでくれるという性質の投資ではないんですよ。
――そんなにいっぱい、やることがあるんですね……。
もちろん、手放しで全部お任せする方法もあります。いわゆるワンストップ型の不動産投資ですね。ただ、こういうものは往々にして、よくない投資になってしまう場合が多いです。なぜなら、仲介業者さんの利益が大きく乗りすぎているから。
株を取り扱う証券会社さんの利幅はわずかなのに、不動産となるとなぜか、仲介業者の利益がぐっと大きくなるんです。投資全般に言えることですが、やっぱり世の中おいしい話なんてないんですよ。しかもよく知らないもの、よくわからないものに手を出したら、基本的にはケガします!
――不動産投資でケガしたら、かなり重傷になりそうです。
投資は、リスクとリターンが見合っている場合がほとんどです。ハイリターンを得られる可能性がある不動産投資は、ハイリスクになりがち。もちろんラッキーで得をするケースはありますよ。例えば10年前に友人におすすめされて、よく知らずにビットコインを買っていたら、今100倍くらいになってるかもしれませんが、それはラッキー。
「投資」と「投機」は違うんです。投資は資本を投げて、投資家としてそこからの利益を得ること。ちゃんと仕組みを理解して、どんなリスクやリターンがあるかをコントロールできなければ、投資とはいえません。理解していないものは投機、つまりギャンブルと同じですよね。
投資をすることで、世の中がクリアに見えるようになる
――知識がないと、投資しているつもりがギャンブルになっちゃうかも……ということですね。耳の痛いお話です。でも、投資の勉強ってどんなことをすればいいんですか?
資産用の不動産を扱っている大きなメディアがいくつかあるので、まずはそれをチェックするのも入り口として有効かもしれません。そこに掲載されている物件が必ずしもいいものとはいえないけど、コラムや掲示板、コメント欄を見ることで不動産投資の全体像、いうなれば“目次”がわかるようになるはずです。あるいは、本屋さんに行って、不動産投資に関する本を20冊くらい読むこと。難しい本である必要はないです。これも業界の“目次”を知ることが目的なので。パズルをつくるとき、みんな端っこから完成させていくじゃないですか? それと一緒で、新しいことをはじめるときは、まず全貌の枠組みを知るといいと思います。
――パズルの話、とても分かりやすいです! でも、枠組みを掴んだからといって、すぐに購入はできませんよね?
僕のSNSに連絡をくれる方にも多いんですが、座学ではよく勉強できてる人って結構いるんです。でも、話を聞いてみると、実際の物件に足を運んでいない人も結構いる。不動産は、見るのにお金はかかりません。ただ、数千万円も持ってないのに見に行っていいのかな……と腰が引けてしまって、現地に行きにくいんだと思うんです。
――はい、めちゃくちゃ尻込みします(笑)。
大丈夫ですよ、見に行って。皆さんもウインドウショッピングするでしょ? それで、いいものがいい価格で売ってたら買うじゃないですか。不動産だって、額が違うだけで同じことなんです。ネットや本でパズルの端っこを形作って、それから実際に内見に行けば、真ん中のピースの置き方は自ずと見えてきますよ。
――知識と体験の両方の側面から勉強するということですね。この知識って、ほかのことにも役立つのでしょうか?
もちろん役立ちますよ! 利益を得られるのも投資のメリットですが、自然と世の中のことを勉強するようになって、世界がめちゃくちゃクリアに見えてくるんです。投資活動は、いわば資本主義経済の活動そのもの。日本をはじめ多くの国の経済は資本主義で成り立っているので、投資を勉強することで物事を横断的に見られるようになります。
――そんなおまけがついてくるんですね!
はい! だから僕は、もはや投資の勉強だと思わないくらい、楽しく勉強しています!(笑)
ジェレミー(Jeremy Tsang)●カリフォルニア生まれで東京育ち、UCLA卒、香港大学院卒。アメリカの大手投資ファンドに就職後、独立し民泊事業やUber Eatsの立ち上げ事業に参画。現在はシェアハウス経営をする傍ら、2棟のホテル経営を計画中。自身のインスタグラムでは、ストーリー配信で投資や不動産についての知見を惜しげもなく公開し、現在フォロワーは4.2万人。