投資インフルエンサーとして、役立つ情報をSNSで発信しているジェレミーさん。不動産投資、クレジットカードについて聞いた前回、前々回とは少し趣向を変え、今回は好きなもの=不動産で投資を行っているジェレミーさんに、「自分の好きなものは投資につながるか?」という疑問をぶつけてみました。すると、思いもよらぬ深い答えが返ってきました!
Contents
「好き=投資」は狙ってできることじゃない
――ジェレミーさんは好きなもの=不動産に投資し、利益を得ていますよね。“推し活”というものが一般化している昨今、私たちも好きなものを投資につなげることができるんでしょうか?
たしかに、僕の場合はたまたま好きだった「不動産」が投資のど真ん中だったんですよね。例えば、美容が大好きな人が化粧水や乳液にお金をかけたら、それは真夜中に食べるカップラーメンにお金を使っている人に比べて、数年後の自分の肌に投資していることになるとは思います。ただ、洋服が大好きな人が洋服にお金を使ったとしても、それは1、2年しか着られずに消費になってしまうかもしれません。
人によっては好きが高じてセンスが磨かれ、雑誌で取り上げられたりインフルエンサーになったりして収益を上げられるかもしれないけど、狙ってなれるものではないんじゃないかな。好きなものについては、振り返ってみたら結果的に投資になっていたよね、ということが多いと思います。
――なるほど。やっぱり、好きなものにお金を費やしたとしても、投資につなげるのは難しいんですね。
そもそも投資をするって、お金だけじゃないんですよ。
――……と、言いますと?
皆さん投資をするっていうと、どうしてもお金を使うことをイメージしがちですが、例えば、本を読んで知識を得ることも、未来の自分のための立派な投資です。
パラナビ読者の中にはお子さんがいらっしゃる方もいると思うのですが、わかりやすいのが教育投資ですよね。親の目線では教育費というコストの話になりますが、子どもの目線で考えると、これは時間の投資。東京大学に入るには、一般的に2000時間の勉強が必要だと言われています。その2000時間を、遊ぶことではなく勉強することに費やして東大に入り卒業すれば、東大卒の平均生涯賃金である約4億6千万円超を得ることができるかもしれない。これは大卒男性の平均と、1億8千万円くらい差があります。知識の運用利回りは学べば学ぶほど上がっていくので、勉強をして自分に知識をつけるために時間を投資することは、お金の投資をするよりも断然コスパがいいんですね。
「投資家マインド」を持って、自分の時間の使い方を棚卸する
――東大卒と、世間一般の平均にそんなに大きな乖離があることにもまず驚きました(笑)。でも、なるほど、時間を使うことも自分への投資になるんですね。
そうやって視点を変えて振り返ってみると、投資活動になっている行動はたくさんあります。未来のもうちょっといい自分のためになる行動かどうかという考え方をすれば、浪費なのか、消費なのか、投資なのかが判断できるはずです。
また、旅行などがそうですが、複数の性質を持っているものもあります。旅行にお金と時間をかけることは消費でもあるけど、経験という意味では投資だし、僕の場合はSNSでの発信にも繋がるから、コンテンツ作りと捉えたらそれもまた投資です。その意味で、僕にとって旅行はすごくコスパのいい行動なんです。
――浪費、消費、投資を判断するだけでも、生活の仕方が変わってきそうです。
自分の時間の使い方を、一度棚卸ししてみるといいかもしれませんね。そうすることで、自然と「投資家マインド」を持つことができるようになるはずです。
僕は昨年リタイアしましたが、これは40年分の社会人経験をぎゅっと10年間にまとめたからできたことなんです。セルフブラック企業で働き詰めでしたが(笑)、そのおかげで30年分の時間が返ってきたことになります。つまり、あと30年は、自分で自由に投資も消費も浪費もできる。もちろん犠牲にしたものもありますが、それを超えるリターンがあると思えたからこそ頑張れたんです。今の自分の行動が、将来どれだけのリターンに繋がるんだろう? と考えることを、僕は「投資家マインド」と呼んでいます。
――30年分の時間が返ってくる、というのも、投資の成果なんですね。ここもやはり、金銭的なものをリターンと捉えてしまっていました。
そうですね。ここまで、主に時間の話をしてきましたが、それは皆さんが思っている以上に時間の価値が高いからです。人間の生涯年収が2、3億円とされているので、貯金として持っている数百万円程度とは比べ物にならないくらい“あなたの時間”には莫大な価値があります。
そういうことを考え始めると、どんどん“時間乞食”になってしまって、僕は待ち合わせの相手が遅刻をしてくると、大変失礼ながら「僕の時間のほうが高いんだぞ」って思っちゃう(笑)。ここまでになる必要はないかもしれませんが、今使っている自分の時間や労力が、どれくらい誰かのためになっているか考える癖はつけてもいいかもしれませんね。時間は限られていますから。
――でも、そういう風にすると、すごくせかせかした日常になりませんか?
もちろん、無駄も大切です。僕が犬を愛でている時間は何の生産性もないけど、僕の人生における幸福度は上がります。要は、自分の行動が、浪費なのか、消費なのか、あるいは投資なのかを明確に理解しておくことが重要なんです。
衝動買いなどの浪費はあとから後悔してしまうこともあるけど、最初から「今は浪費」と理解していれば、それを思いっきり楽しめるんですよ。僕はこれを“確信犯的な無駄遣い”と言ってるんですけど(笑)。ほかの時間で投資してるから、浪費や消費を楽しめる。自分の時間、お金、労力を何に振り分けているのかを棚卸して理解しておくと、24時間フルに楽しめるようになるはずです。
投資が幸せを感じる一助に?
――だからジェレミーさんはいつも楽しそうなんですね!
ありがたいことにSNSを見て、楽しそうと言っていただくことが多いのは、浪費もめいっぱい楽しんでるからだと思います。あとは、自分が幸せを感じる仕組みを知っているということも大きいかもしれませんね。
――幸せを感じる仕組みとは何でしょう?
幸せそうな人って、循環する何かの一部になっている人のことなんですよ。ある企業に就職していて、その企業が目指す社会に共感していて、そのために仕事を通して貢献できている実感がある人は幸せだと思います。
僕がやっている、投資ファンドに投資をして、インドのシングルマザーの自立を支援していることもその1つ。手元に5万円があればインドで起業できて、現地のシングルマザーが豊かになるのなら、ブランド物を買うのではなく投資する。寄付をするのももちろん素晴らしいことだけど、それだと一時的な助けでしかないし、社会へ循環する貢献は望めません。一方通行なものではなく、循環するものが投資なんですね。
こんな風に、何かに関わって誰かのためになり、それがさらに社会をよくすることにつながっていると感じられると、人は機能として幸せを感じられるんです。
――人のため、引いては社会のためになるからこそ、投資は自分の心まで豊かにしてくれるんですね。
金銭的リターンがあるのはうれしいけど、そんなに年収が増えてもうれしくないじゃないですか(笑)。今までに自分が幸せだったポイントを考えると、家族とどこかへ出かけた思い出とか、大学でアホなことをやっていた時間こそが幸せだったと僕は思うんです。お金と幸せ、両方のリターンがあることで、みんな幸せになるような投資が広がるといいですね。
ジェレミー(Jeremy Tsang)●カリフォルニア生まれで東京育ち、UCLA卒、香港大学院卒。アメリカの大手投資ファンドに就職後、独立し民泊事業やUber Eatsの立ち上げ事業に参画。現在はシェアハウスや一棟貸しホテル、レンタルスペースを経営をする傍ら、2021年に実験的にリタイア。自身のインスタグラムでは、ストーリー配信で投資や不動産についての知見を惜しげもなく公開し、現在フォロワーは4.9万人。