Paranaviトップ お仕事 働き方 「仕事も人生も、決めるのは私!」『元彼の遺言状』剣持麗子は最強の自分軸の持ち主だった

「仕事も人生も、決めるのは私!」『元彼の遺言状』剣持麗子は最強の自分軸の持ち主だった

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「お金にならない仕事は、しない主義なの」有無を言わせぬ笑顔で言い切るのは、頭脳明晰な弁護士、剣持麗子。フジテレビで放映中の月9ドラマ、『元彼の遺言状』の主人公です。原作の小説は、小説家・新川帆立さんのデビュー作。2クール連続で月9ドラマの原作に決定した「時の人」が描く、新時代のワーキングウーマンとは?

「私が欲しいのは、お金」求めるものが明確だから悩まない

元彼の遺言状書影

   『元彼の遺言状』(新川帆立/宝島社文庫)。続編の『剣持麗子のワンナイト推理』、『倒産続きの彼女』も宝島社から発売中。 

「これはきっと映像化するな……!」

最初に『元彼の遺言状』を読んだとき、まずそう思いました。くっきりしたキャラクター設定、メリハリあるストーリー、働く女性を取り巻く新しい価値観が反映された清々しい空気。これが作者のデビュー作で、作者自身が弁護士と小説家を両立させるパラレルキャリア(現在は作家専業)を実践する女性だと知って、その新鮮さの理由がわかった気が。

いちばんの魅力は、なんといってもヒロイン剣持麗子の強烈なキャラクター。強烈と言っても、ただ強いだけの女性とは違います。麗子は仕事における優先順位が非常に明確で、そのために常に合理的に行動しようとします。 

「お金がもらえないなら、働きたくありません」――『元彼の遺言状』(新川帆立/宝島社)より

「私はお金が好きだけれど、お坊ちゃんと結婚したいとは思わないのは、こういう窮屈な気分が大嫌いだからだろう」――『元彼の遺言状』(新川帆立/宝島社)より

麗子が追い求めているのは、お金。しかも桁違いの。くわえて、「自分の能力をもってすれば、中途半端な玉の輿など眼中になし!」と自信満々。上司への忖度や婚活で自分を殺すのではなく、あくまで自分の力で求めるものをつかみとろうとする気概が、麗子の魅力の源なのです。

好きか嫌いかは、属性ではなく自分で決める

笑顔の女性

強い女性キャラクターというと、思い浮かぶのは「強権的な男性キャラクターとの対立」「女同士の陰湿な足の引っ張り合い」などのギスギスした人間関係。 

『元彼の遺言状』にもそういうシーンがないわけではありませんが、少なくとも麗子はそんなステレオタイプにおさまる女性ではありません。

覇気のない元彼にも、麗子に子どもっぽいライバル心を向ける年下女子(元彼の従妹・紗英)にも、あきれつつも鷹揚に対応する麗子。どんなに立派な肩書の持ち主を前にしても、堂々と自分を主張する麗子。出くわす相手にいちいちマウンティングしたりこびへつらったりするなんて、忙しい麗子にとっては「効率悪すぎ」なんでしょう。

 ドラマ版でも、麗子が紗英(演じるのは関水渚さん)に対して、「あなたにしてはお手柄よ」「紗英ちゃんがいてくれると安心!」と笑顔で声をかけるシーンが。つんけんする紗英をからかっているようですが、素直に彼女の尽力を認めているのが伝わってきます。

物語を盛り上げるには、麗子が男性社会と戦う構図にしたり、麗子に嫉妬する女性たちとのバトルを演出したりする方が簡単でしょう。しかし新川さんは麗子を、「好きも嫌いも自分の目でジャッジする」という自分軸の持ち主として描いています。そんな麗子の「自分軸の強さ」が、この物語に新しい風を吹かせているような気がしてなりません。

麗子にとっても「変化すること」は苦痛。でも拒まない

ドラマではすでに『元彼の遺言状』の謎は解き終わり、続編の『剣持麗子のワンナイト推理』(宝島社)のストーリーに進んでいます(ドラマオリジナルストーリーも有り)。お金第一主義の麗子ですが、元彼の遺言状事件をきっかけに少しずつ変化もみられるようで……。 

たとえ一生遊んで暮らせるだけのお金があったとしても、私は仕事をしているだろう。自分なりに考えたことを実行に移して上手くいった時は嬉しいし、何もしないのでは人生があまりにつまらない。だから私は働く。そのあたりのどこかに、自分が求めるものがあるような気がしている。――『元彼の遺言状』(新川帆立/宝島社)より 

「私が求めるのはお金!」という気持ちに嘘はないし、それを追求するために常に合理的に行動する麗子。

それでも、マチ弁(地域密着型の小規模事務所の弁護士のこと)・村山先生との出会い、嫌々請け負うことになった儲からない案件の依頼人たちとの交流を通じて、「もっとほかになにか、求めるべきものがあるのかもしれない……」という思いが芽生えてきているようです。

「なんで私がこんな仕事しなくちゃいけないのよ!」とプリプリしながらも、事件解決に奔走する麗子。彼女のことですから、いきなり人情派弁護士に変身したりはしないでしょう。しかし、健全な自己肯定感と強い自分軸の持ち主だからこそ、麗子は変化にちゃんと立ち向かってゆけるのです

ドラマもそろそろクライマックスへ。さらに、7月からはじまる次の月9ドラマも、新川帆立さんの新作『競争の番人』が原作となるというニュースも飛び込んできました。こちらも、元警察官が公正取引委員会に飛ばされ、違うカルチャーの中で奮闘するというお仕事物語(原作とは少し設定が違います)。乗りに乗った新川帆立ワールドに、これからも注目です! 

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梅津奏
Writer 梅津奏

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