Paranaviトップ お仕事 働き方 育休中に感じる「焦り」の正体は? パラキャリ柴田菜々子さんが救われた「自分いちばん」の精神

育休中に感じる「焦り」の正体は? パラキャリ柴田菜々子さんが救われた「自分いちばん」の精神

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広報の仕事をこなしながら、ダンサーとして数々の舞台にも立ってきた柴田菜々子さん。2019年に取材をしたときには、そのパワフルな働き方や挑戦したいことについて語ってくれました。それから2年半後に第一子となる男の子を出産した柴田さん。パラレルキャリアでママとなった今、パワフルでバイタリティ溢れる姿は変わらないようですが、たくさんの「予想外」に悪戦苦闘しながらも楽しんでいる様子を赤裸々に聞かせてくれました。

何をするにも余裕がなくてネットで検索する毎日

柴田奈々子さん

——2021年の2月に出産されましたね。改めて、ご出産おめでとうございます! 妊娠出産を通して予想外のことはありましたか?

ほとんどが予想外でした()。前職で主婦に特化した人材サービスの会社に勤めていて、周りにもママが多かったので、あらかじめ育児についての知識だけはあったんです。生まれるととんでもなく大変だとか、ホルモンバランスで自分がコントロールできなくなるという話は聞いていたんですが、実際にやってみると最初の2、3ヶ月が本当に大変で……。世のお母さんは毎日どういうモチベーションで生きているんだろうって疑問に思っていましたね。

——すごくわかります。みんな普通にやっているのが不思議ですよね。

ミルク、寝かしつけ、またミルク、寝かしつけのルーティンで、朝も夜もないじゃないですか。体力にも自身があったはずなのに、妊娠前から15キロ太っていたのですぐに疲れて息切れしちゃって……。幸い夫の仕事が時間の融通がきくこともあり、子どものお世話も一緒にやってくれていたのでかなり救われていましたが、本当にすべてが予想外でした。

——柴田さんの体力をもってしても赤ちゃんのお世話となると予想外の大変さだったんですね。案外余裕でした! とかもあるかなと思っていたので。

まったくそんなことはありませんでした()。何をするにしてもわからないから、とりあえずネットで検索する毎日で、どうして泣いているんだろう? とか、今ミルクの量どれくらいあげるんだっけ? とか、謎のボツボツできてるけどこれは一体何?とか、急にうなりだして苦しそうとか……。赤ちゃんに何が起こっているのか全然わからないから、常にカオスでした()今もそうですけど、とにかく全世界の親・ママに尊敬の念を抱かずにはいられなかったですね。

柴田奈々子さん

——毎日なんとか赤ちゃんを生かすことで精いっぱいですよね。産む前に計画していたけど、うまくいかなかったことなどありましたか?

そこまでギャップはなかったかもしれません。そもそも、自分がこんなに早く出産するとも思っていなかったというのがありました。コロナ禍でダンスの公演が1年分パッタリなくなって、夫も9歳年上なので「産むなら今だ!」と思ったタイミングだったんです。前職で子育てに関する大変な話を色々と聞いていたのと、周りから私が母親になるイメージがないと言われすぎて()、そもそもの期待値が低かったのもあるかもしれません。逆に自分がどこまでわが子をかわいがることができるのかなと不思議な感覚でしたね。

「子どもの優先度が上がりすぎた」自分の気持ちに驚き

柴田奈々子さん

——実際生まれてみたらどうでしたか?

正直、生まれた後も自分の子という実感があまりなくて、「この子はどこから来たんだろう?」という感覚に近かったです()。あとは、大変さを聞いていた分、赤ちゃんはかわいいだけという幻想をもっていなかったからか、想像の倍くらい「かわいい!!」という感情が芽生えたことにも驚きました。

——加点方式ですね! 自分の赤ちゃんのかわいさって未知数ですもんね。

でも、逆に価値観が180度変わって子どもの優先度が上がりすぎて、産後1ヶ月くらいはすごく焦りました。それまで、「将来的にダンスでイベントを開催して海外でパフォーマンスしたい」という自分の中に描いている未来があったのですが、そのモチベーションが本当になくなってしまったんです。自分の中で子どもの割合が大きくなったことはいいことだと思っていましたが、そうなる自分を想定していなかったので「私これからどうするんだろう?」という焦りが出てきて……。仕事も全然したくないモードに入っちゃって、産後3ヶ月くらいは自分の変わり様にびっくりしていました。

——そこはとても意外ですね。柴田さんはダンスと仕事が生き甲斐なイメージだったので。

私も意外でした()!  意外すぎて2回くらい占いに行ったりして「私どうなってるの? どうなっちゃうの?」と自分の未来を占いに委ねてみたりして。自分としっかり向き合う時間を持てないと、自分のことがわからなくなってしまうんですよね。

——1人の時間を確保するのは大事ですよね。育児に追われていると思考がストップしてしまいますもんね。

本当に大事です。そこから3ヶ月経ってようやく子ども以外のことも少しずつ自分の中に入ってくるようになったという感覚ですね。

——スイッチが入ったきっかけはあったんですか?

3、4ヶ月で、子どもが保育園に行き始めてからですね。その頃「今の価値観でいたら全神経が子どもだけに向いて、働きたくないモードから抜けられないんじゃないか」と思い始めていたので、保育園に入れる決心をして心の余裕が生まれたら徐々に外にも目を向けられるようになりました。でも、そのときは社会に戻れなくなる焦りが強すぎてこのまま赤ちゃんと一緒にいたいという本能的な気持ちを受け入れらない自分に対してモヤモヤもしていたように思います。とはいえ、家庭に入るといっても掃除や料理は苦手だし「全然向いてないよ~」と思っている自分がいるのに、心と身体とがちぐはぐしているような感じでしたね。

「社会への焦り」と「子どもを見ていたい」気持ちの板挟み

——昔の自分に戻さなきゃみたいな感覚ですかね?

そうですね。広報の仕事をするとなると、日々情報収集してメディアの方々とコミュニケーションしていかなきゃいけないのに「今のトレンドがまったくわからない」という状況になって「置いていかれる」と感じることも多くて……。だから、育休中に広報のコミュニティに入ってできるだけ情報をキャッチアップしたりして「少しでも世の中についていかなきゃ!」と必死でしたね。

柴田奈々子さん

——どこかで社会とつながっていないと、取り残されたような感覚に陥りますよね。産後の自分の変化に心と身体がついていけていないような。

そうなんです。焦りと自分の気持ちが合っていないというか……。別にそんな焦ることでもないのにどうしてこんなに焦っちゃうのかなって思っていました。長い人生のたった1年で、子どもだって日々成長してすごくかわいいしずっと見ていたいっていう半面、焦りを抱えているというアンバランスな感じでした。何が正しいのかわからなくて、気持ちの折り合いをつけるのが難しかった時期ですね。

——子どもを産んでからの気持ちの変化って、前もってわからないから戸惑いますよね。個人差もありますし。

誰かとまったく同じはずはないし色々な形があっていいはずなのに、初めての感情がありすぎて迷ってしまうのかもしれませんね。そして、自分の時間がないとなると考える時間も余裕もないですしね。私の場合、実際にやってみて自分の時間を確保しないと自分にも子どもにも良くないと痛感し、当初の想定より早い産後2、3ヶ月で保育園に入れることに決めました。

——お母さんの精神が安定していることが、結局子どもにとっても良いんだなと感じますよね。

そうですね。生まれる前から「赤ちゃんも大事だけど、自分のこともちゃんと優先しよう」と決めていたので、比較的早い時期から保育園に入れるという選択がしやすかったのかなと思います。もちろん小さいうちはお世話が必要だと思っていたので、「無理をしない」というのと「自分をないがしろにしない」というのは心がけたいなと思っていました。

パラレルキャリアは子育てしながら働くための予行演習

柴田奈々子さん

——素敵な考えです。前職の知識が生きていますね。

まさに「無理をしない」というのは、パラレルキャリアで週3勤務をしていた時から意識していたことなんです。無理をすると結局どちらにも悪影響があるっていうのを感じていたので、「両方頑張るけどどちらかが倒れるまでは絶対やらないし、危ないなと思ったら休む」というやり方は育児にも応用していました。

——なんとパラレルキャリアで培った精神だったのですね!!

そう思います。前職の社長に言われてすごく印象に残っている言葉があって「仕事復帰後の女性は、未知の子育てに加えて、今までフルで働けていた時間を無理やり短くして、しかもまた違う負荷がかかっている状態で仕事をスタートするなんて結構危ないし、すごく難しいに決まっている。そりゃみんな辞めるよね」と。当時私がパラレルキャリアをスタートするときも「育休復帰後の予行演習だと思えばいいんじゃない? 子育てとの両立じゃないけど、時短で働いて違うものと両立するのは今後の役に立つと思うよ」と言われて始めたんです。

——社長のお言葉に共感しかなかったです()! 確かに子育てをしながら仕事するのもパラレルキャリアと似たような感覚なのかなと思います。

子育てはより大事にしないといけないものだし、仕事と違ってお休みもないですからね(笑) 

——そこは仕事と違う部分ですね()。自分のリラックスタイムは何をしていますか?

マッサージが好きなので、妊娠中から産後まで「天使のたまご」というマッサージサロンに通っていました。帝王切開だったので産後はあまり運動もできないし、血の巡りも悪くなってむくんでしまうのが悩みで「よもぎ蒸し」に助けられました。油や老廃物が目に見えて出てくるところもデトックスしている感じがあって好きでしたね()

——産後は特に自分と相性のいいリフレッシュ方法を見つけて、自分を労わってあげる時間を持つことが大事ですね。

私みたいに、マッサージに行ったりジムに行って体を動かしたり、好きなテレビ番組を観たり、何でもいいですが色々なものを試して疲れやモヤモヤを発散できたらいいですよね。自分のコンディションがいいと、子どもともまっすぐ向き合ってあげられるようになった気がします。子どものお世話をすることは大前提ですが、お母さんになっても遠慮せずに「自分のご機嫌」をとっていけたらなと思っています。

柴田 菜々子(しばた ななこ)● フリーの広報、 ダンサー。 “踊る広報”として活躍し、 パラレルワークをテーマにしたイベントなどにも登壇する。 幼少期から器械体操、 フラメンコ、 新体操などを経験。 桜美林大学のダンス専攻に進学し、 コンテンポラリーダンスを始める。 2013年、 新卒でビースタイルへ入社。 フルタイムで勤務していたが、 2015年7月に週3日勤務に変更して以降、 ダンスチーム「TABATHA」を中心とするダンサー活動との両立し社会とコンテンポラリーダンス界の架け橋になれるように「踊る銭湯プロジェクト」を仲間と企画運営。 2020年に結婚、2021年の出産を期に会社を退職しフリーランスで広報の仕事をスタートさせる。”踊る広報”から、さらなるステージを目指し活躍の場を広げる。

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杉森 有規
Writer 杉森 有規

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