例えば、ライターやイラストレーターとしてお仕事をして、文章や絵を作るとき、そこには「著作権」という権利が発生します。実際に、契約書に「著作権」について書かれたものを目にしたことがある人もいるかもしれません。もちろん、ライターやイラストレーターに限らず、「何かを生み出す」クリエイターの人はすべてこの「著作権」に関わっているとも言えるでしょう。また、自分だけでなく、ほかの人の権利の範囲についても、しっかり理解しておくことで、自分のみを守るだけでなく、想定していなかったチャンスを掴むことも可能です。今回は「創作すると手に入る権利」として、その代表である著作権を味方につけていくための知識を紹介します。
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「著作権」の中身はこんなにある!
クリエイターは創作をすることで、多くの権利を手に入れます。創作すると手に入る権利で代表的なものは、「著作権」。まずは、著作権の全体像を見てみましょう。
あなたが作品を創った瞬間、その作品についてこれだけ多くの権利が手に入ります。ここで、権利を手に入れるとは、これらの権利を独占的に利用できる、という意味です。
例えば、「複製権」であれば、その創作した物(著作物)を複製する権利を独占的に有するということです。そのため、勝手に複製している人がいたら「やめてね」と言うことができますし、特定の人に対して、「自由に複製していいよ」などと利用を許諾することができます。
「著作権」と「著作者人格権」
それでは、各権利について、もう少し詳細に見ていきましょう。
「著作権」が手に入らない場合もある
それは、創作したものが「著作物」に該当しない場合です。前提として、著作権法では、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したもので、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義しています(著作権法2条1項1号)。そのため、この定義に該当しない場合、創作したものが「著作物」にあたらず、先ほど紹介した権利の束は手に入りません。著作物の定義は以下の4つの要件に分けることができます。
これら4つの要件を満たさないため、著作物に該当しないものは以下のものがあります。
アイディアはパクっても著作権侵害にはならない
特にクリエイターの間では、「アイディア」が著作物に該当しないということがよく取り上げられます。
例えば、「漫画や小説の設定」というアイディアそのものは、思想又は感情を「表現したもの」ではないため著作物に該当しないということになります。「偉大なハンターである父を探すために、少年が冒険する物語」「鬼にされてしまった妹をもとに戻すために鬼たちと戦う物語」「あるとき右手に生物が寄生し、奇妙な同棲生活が始まる物語」のような設定そのものはアイディアであって著作物に該当しません。そのため、これらと同じ設定の漫画を描いても、著作権侵害にはならないというわけです。これは、これらの設定を考えた人が、法的な主張をすることができないことを意味します。
一方で、これはあくまで法律的には違法にならないが……、という話に過ぎず、「パクリだ!」等SNSで話題になり、炎上してしまう可能性は十分にあります。
そのため、他の人のアイディアを活用する場合には、3つの段階を考えると良いと思います。①法律の観点、②リスクの観点、③創作意義の観点です。
まず、設定などのアイディアは、活用しても法律的に違法にはなりません(①)。一方で、有名タイトルの設定をそのまま活用する場合、それがSNSで炎上することはありえます(②)。ただし、それでも創作をする意味がある、意義があるという場合には、創作をする(③)。
このように、上記①②③を、他の人のアイディアを活用するか否かを決めるタイミングで考えておくことが大切です。
著作権は「社会的な価値」とは関係なく発生する
「私の作品なんかでも著作権が生じますか?」そんな風に自信なく聞いてこられたクリエイターの方がいました。大丈夫です! 著作物の要件を満たせばすべての人が著作権を手に入れます。社会的な価値とはまったく関係ありません(その作品が社会的に価値がないと思っているわけではありません、念のため)。「子どもが楽しみながら好き勝手に描いた絵」。これが典型的な著作物で、その瞬間その子どもが著作権を手に入れています。あなたの作品も一緒です。
次回はこの「著作権」をもう少しだけ掘り下げます。いつからいつまで使えるの? 創ったものを誰がどんなふうに使えるの? そんなことを学んで頂くことで、もっと自分の活動が自由になっていきます。