Paranaviトップ お仕事 働き方 デビュー作が大ヒット!ママ警察官がマンガ家に転身したワケ『「ハコヅメ」仕事論』

デビュー作が大ヒット!ママ警察官がマンガ家に転身したワケ『「ハコヅメ」仕事論』

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大ヒット漫画『ハコヅメ ~交番女子の逆襲~』。2021年には戸田恵梨香さん・永野芽郁さん主演でドラマ化。作者の泰三子さんは、10年間の警察勤務後、漫画初心者から半年でデビューしたという経歴の持ち主です。パラキャリ大先輩の泰さんに学ぶ、お仕事術を紹介します。

マンガを描き始めたモチベーションは、職場=警察署の広報?

「これ、いったいどんな人が描いてるんだろう?」 

『ハコヅメ ~交通女子の逆襲~』(以下、『ハコヅメ』)を読んだとき、頭をよぎったのはこんな疑問でした。警察経験者? 性別は? 何歳くらいの人? よくあるお仕事マンガの枠を超えて、ギャグもあればシリアスなミステリー要素もある。下ネタギャグに噴き出していると、厳しいジェンダー問題が急に差し込まれたりもする。

この油断ならない怪物マンガの作者が、泰三子さん。某県の警察に10年勤務した後、マンガ未経験からいきなり「モーニング」に投稿して半年でデビューしたという異色の経歴の持ち主です。

そう、泰さんはパラレルキャリアを実践した大先輩。そんな泰さんのデビューまでの経緯と制作の秘密をビジネス書としてまとめたのが、『「ハコヅメ」仕事論』です。

「ハコヅメ」仕事論

『「ハコヅメ」仕事論』(泰三子・山中浩之/日経BP)

『ハコヅメ』の主人公と同じく、交番で女性警官としての勤務経験がある泰さん。その後防犯広報の仕事をする中で、「どうすればもっと多くの人に警察の仕事を知ってもらえるだろう」と思ったことがマンガを描き始めたきっかけだといいます。 

紙でも、ウェブでも、どっちも警察にはすごくハードルが高いんです。予算が必要になるし、それで、前から酔っ払ったときにいつも同僚が、「『モーニング』とかで警察のいい感じのマンガが始まっていたら、警察にいい子がいっぱい来るのにね」と話していたのを思い出して、じゃ、と、自分で描いて編集部に送ったんですよ。-『ハコヅメ ~交通女子の逆襲~』より 

泰さんは、マンガを描いたことがあるわけでもなく、熱心な読者だったわけではないそうです。なのに、「描いてみよう!」「送ってみよう!」とひょいっと境界線を越えることができた。この柔軟な姿勢が、パラレルキャリアをはじめる上でとても大事なんですね。 

チャンスの神様には前髪しかない。運をつかんだ秘密は「抜群のスピード感」

レスポンスの良さって完成度より100倍大事ですよね。-『ハコヅメ ~交通女子の逆襲~』より

はじめて描いた原稿を編集部に送ったのが2016年の10月末。1114日に編集部と電話で打ち合わせをして、その翌日には10ページのネーム(マンガの下書きとなる、コマ割りやセリフ案が描かれたもの)が出来上がっていたという泰さん。編集者から参考書が送られてきたら翌日には読了、夜に連絡がきた修正依頼は翌朝には対応、ととにかく仕事が早い。

泰さんによると、これは警察で身に着けた感覚とのことです。厳しい訓練と業務でついた体力はもちろんのこと、どんどん対応しなければならない事案が多いのでとにかく「スピード」を求められていた警察時代。

マンガ家のデビューは、案外タイミングが大事といいます。編集部で開催される選考会のタイミング、既存の連載が終了するタイミング、ページに穴ができてしまって代理の原稿が必要になるタイミング……。デビューしてからも、読者をつかむためにはいつどんな展開を持ってくるべきかを器用に調整する能力も必要です。 

マンガ業界の常識はまったく知らなかった泰さんですが、抜群のレスポンスの良さ・柔軟な対応力が、超スピードでのデビューと、デビュー作での大ヒットを呼んだ秘密といえそうです。 

「女性警官は一割程度」圧倒的なマイノリティ経験が生んだ問題意識

『ハコヅメ』のストーリーには、泰さんの体験がたっぷり盛り込まれています。テンポのよいギャグでくるまれてはいますが、現場の厳しさ・管理職の哀愁、そして女性警官のリアルも。

生理中もゴリゴリ走り込みさせられる訓練とか、「女性の気持ちがわかるだろうから」と性犯罪被害者への聴取をたくさんやらされるとか、想像しただけで辛い気持ちになってしまいます。全体の1~2割といわれる女性警官の現実は、男性社会の中で孤立しやすく、キャリアの展望のしにくさなど、まだまだ問題がありそうです。 

泰さん自身は、「せっかく連載を持たせてもらえるのであればそれを頑張ろう」と警察を辞め、専業マンガ家になったそうです。女性警官として働き、ひとつひとつの事案に対処することは、もちろん社会にとって大切な仕事です。しかし泰さんにはマンガ家としての能力とチャンスがあって、広く世に問題提起をすることができる。なにか問題を解決したいと思うときに、選べる選択肢は人それぞれいろいろあるということだと思います。 

私は子どもが2人いるのですが、自分の子どもばっかり守っているようじゃ、大人になったときにどうせ私の力では守れなくなる、事故に遭うかもしれない、事件に巻き込まれるかもしれない。じゃあどうやったら子どもたちが危険な目に遭いにくくなるか。-『ハコヅメ ~交通女子の逆襲~』より 

2児の母という顔ももつ泰さん。プライベートの生活で感じていること・考えていることも、作品の世界観を支える大きな柱になっているのですね。 

パラレルキャリアでビジョンを実現していくためには、自分のこれまでの経験を糧にすることと、柔軟でスピード感ある対応力が求められます。『ハコヅメ』と『「ハコヅメ」仕事論』で、その極意を学んでみませんか。

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梅津奏
Writer 梅津奏

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